たなぞう

WEB本の雑誌

ちょろいもさん > 読書ノート

ちょろいもさんの読書ノート

2006年マイベスト候補
今年読んだ中で読了時点でマイベスト10になりそうな候補作です♪
<前のページ 1  次のページ>

 

みんなの感想を読む
 21

ララピポ

著者 : 奥田 英朗

出版社:幻冬舎

発売日:2005-09

評価 :

完了日 :

 連作短編集なんだけれど、最初の短編を読んだときはすごーく読後感が悪くて、全然笑えなかった。「最新爆笑小説!」「いや~ん、お下劣!」とか帯に謳ってあるんだけど、どこが爆笑なのよ…と。で、続く短編も読むたび読むたび後味が悪い。みんな「負け犬」が主人公なんだけれど、この負けっぷりというか、生き方の不器用さが痛々しくて。そしてラストがみんな救われない。なんなんだこの短編集は…。

 ところが最後の短編でそれまでのイメージが一新。うわっ、この本ってこういう話だったのか! ララピポってそういう意味か!と。その転換の仕方がもう、鮮やか。

 それぞれの短編同士の絡まり具合とか、ちょっと角度を変えると今までと違うものが見えてくる、という描き方とか、さすが奥田英朗、という感じ。上手い。

 読み終わるとそれまでのいや~んな感じがきれいに払拭されて、なぜか少しほんわかした気分にすらなった。
 というか、ララピポ読んで和んでるのはやっぱりわたしだけなんだろうか(笑)。

 しかし、表紙カバーをとった中表紙のあまりのお下劣さにはひきましたがね(苦笑)。


その他の本の感想はこちら♪
http://www.geocities.jp/choroimo/


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 9

バルタザールの遍歴 (文春文庫)

著者 : 佐藤 亜紀

出版社:文藝春秋

発売日:2001-06

評価 :

完了日 :

 第三回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。第二回は大賞該当作がなかったので、実質的には二回目の大賞受賞作。

 ひとつの体に宿った二つの魂、メルヒオールとバルタザール。彼らを本当に理解してくれたのは従妹のマグダのみだった。
 公爵の爵位を持つ二人はハプスブルグ家が没落しナチスの台頭する時代の中で転落の一途の人生を辿る。放蕩により財産を食いつぶし、父が財産整理をしてただひとつ残していた広大な屋敷も父の死後叔母に奪われる。父の後妻として家に入ったベルタにバルタザールは夢中になるが、彼女も父の死と同時に姿を消す。結婚の決まったマグダに想いを残しながらも二人は屋敷のあるウィーンを出てゆく。どこへとも当てのなかった二人は思いつきでアフリカを目指すが…。

 あらすじを書いてみたところでこの小説の魅力はひとつも伝わらない。佐藤亜紀、恐るべし。まるで翻訳小説のような佇まいのこの作品は品格ある文章で読者を一気にメルヒオールとバルタザールの二人に惹きつけて離さない。そこにあるのは退廃の美だ。二人は二人であるがためにいつでも孤独ではない。彼らは彼らの世界の中に完結している。つねに最悪の選択肢を選んでしまう彼らはそれ故にけして転落した先から這い上がることがないけれど、その転落に悲壮さはない。

 彼らをとりまく登場人物もまた魅力的。
 従妹のマグダ、義母のベルタ、ナチの少尉エッグハルト、叔父のグラーベンメッサー、使用人にして父の秘密を知るロットマイヤー。

 一筋縄ではいかない登場人物たちに、一筋縄ではいかない物語。物語は終わっても、二人の遍歴は続く…。
 「読書」の醍醐味を思う存分堪能することができた一冊。


その他の本の感想はこちら♪
http://www.geocities.jp/choroimo/


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 3

少年時代〈上〉 (ヴィレッジブックス)

著者 : ロバート マキャモン

出版社:ソニーマガジンズ

発売日:2005-07

評価 :

完了日 :

感想は下巻に♪


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 49

夜市

著者 : 恒川 光太郎

出版社:角川書店

発売日:2005-10-26

評価 :

完了日 :

 第12回日本ホラー小説大賞受賞作である表題作と、書き下ろし「風の古道」を収録。

 いずみは高校時代の同級生・裕司から夜市に誘われる。そこはおよそあらゆるものを売っている、この世ならぬ異界だった。幼い頃裕司は弟とともに夜市に迷い込み、そこで弟を売って「野球の才能」を手に入れた。その罪悪感から彼は、弟を買い戻すためにここを訪れたという。意を決していずみは言った。「あなた、私を売るつもりでしょう?」

 これがデビュー作だということにまず驚く。このクオリティの高さ、エンタメ度の高さ、そしてホラーとも和製ファンタジーともつかない独特の雰囲気をきっちりと確立した完成度の高さ。読み終わった後にいつまでも続くなんともいえず深くもの悲しい余韻。恒川光太郎、今後絶対に注目しようと決めたわ~!

 弟を売ってからずっと罪悪感に苛まれ、それがいつしか虚無感となり裕司をしっかりとつかまえる。彼の気持ちがよくわかるから予想もしなかった彼の行動がすんなりと納得できるし、胸が詰まる。弟の人生がまたきっついのよね…。彼らの行く末をいつまでも考えてしまった。

 そして、同時収録の「風の古道」がまた、「夜市」に勝るとも劣らぬ作品なのだ。ふたつの作品の世界観がさりげなくリンクしているところも個人的にはちょっとおいしかったわ。ラストの「これは成長の物語ではない。」からの一節がすごく好き。そうだよなあ、際限のない迷路だよなあと。

 人を選ばずみなに自信を持ってオススメしたい一冊!


その他の本の感想はこちら♪
http://www.geocities.jp/choroimo/


この感想へのコメント

3.りんご (2006/08/03)
こんにちは。私は3日ほど前に読み終わりました!いろんな意味で涼しくて暑い夏にぴったりの本でした。個人的には夜市よりも古道に行ってみたいかなあ・・・(笑)しとさんも是非読んでみてくださいませ!
4.ちょろいも (2006/08/04)
>りんごさん

古道もすごくいいですよね~♪
この時期に読まれたなんて、ラッキーですね(笑)。
この本がデビュー作だなんて驚きですよね。はやく次作が読みたいものです。

もっと読む(4件)

 

みんなの感想を読む
 3

少年時代〈下〉 (ヴィレッジブックス)

著者 : ロバート マキャモン

出版社:ソニーマガジンズ

発売日:2005-07

評価 :

完了日 :

 ゼファーはけして平和なだけの町ではない。人種差別は横行し、ギャングたちが賭博や娼館を牛耳り、殺人事件は解決されず、近隣にできたスーパーマーケットのせいで職を失う人たちがいる。しかしそこには確かに、「古き良きアメリカ」がある。
 登場人物がひどく大勢いるのだけれど、彼ら一人一人に個性があり、町の一部になっている。彼らがいるからゼファーがあるのだとよくわかる。

 一番の要は最初に起こる殺人事件の真相なのだけれど、それ以外の膨大なエピソードがそれぞれ小さなミステリや、成長物語になっている。手に汗握るスリリングな場面もどっさり。

 マジックレアリズムっぽさが全編の基調になっていて、わたしはそういうのはわりと好きなのだけれど、もしかするとその辺りにひっかかる人がいるかも。

 非常にいろんな要素が詰め込まれていて、気を抜くとちょっとわけがわからなくなるんだけれど(笑)、あちこちにさりげなく伏線がちりばめられており、小さな謎が大きな謎へと繋がっており、かなり読み応えのある作品だった。


その他の本の感想はこちら♪
http://www.geocities.jp/choroimo/


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 5

蝶のゆくえ

著者 : 橋本 治

出版社:集英社

発売日:2004-11

評価 :

完了日 :

橋本治は意識的な作家だなあと思う。どんなささいなことも、さらっと流さずに、必要なことを必要な文体で必要なだけの量の文章で描く。暴くべきことは容赦なく暴く。けれど、冷徹なようでいてどこか暖かい。

 なんといっても最初の「ふらんだーすの犬」がすさまじい。深く考えずに逃避の挙げ句に親になってしまう美加。彼女に子どもを産ませたことで「これでもう自分の義務は終わった」と考える美加の最初の結婚相手・俊一。子どもがいることをうち明けられて「いいじゃん、別に」と答える、想像力の欠如した二番目の夫・幸信。こんな人々が現実を生きている姿がありありと浮かんでくる怖さ。そしてラストの1文の衝撃。しばらく続く作品が読めないくらい打ちのめされた…。

 「金魚」もかなり強烈。短編だというのに、加穂子の夫の家の歴史と加穂子たち夫婦のこれまでの軌跡がありありと浮かび上がってくる。加穂子が姑に感じる哀れさに強引に共感させられてしまうような力強さがある。

 ちょっとほかの作家とは比べられないような存在感。
 やっぱり橋本治はどこか違う、とあらためて思い知った作品。


その他の本の感想はこちら♪
http://www.geocities.jp/choroimo/


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 13

アラビアの夜の種族 (文芸シリーズ)

著者 : 古川 日出男

出版社:角川書店

発売日:2001-12

評価 :

完了日 :

 苦節16日(笑)。おもしろかった!!!!
 これはホントに、本好きの、本好きによる、本好きのための本。本好きじゃない人には辛いかも…。ベルカもそうだけど、ホントに受け容れ層が狭そうだわ…(笑)<古川作品。
 けれど、わたしには思いっきりど真ん中!

 一言で言うなら書物の物語。
 なのに、「ああ、これって本の物語なんだ…!」と気づくのがものすごく後半だった。何度も何度も、これは本ですよ、って書いてあるのに。

 それにしてもこんなに読む作品読む作品好きなのに、どうして古川作品はいつも読むのに苦戦するんだろう。序盤はいつも全然進まない。今回はホントに途中で挫けるかと思った…。挫けなくて本当によかった(笑)。

 「読まれている瞬間、おなじ時間を生きているのは、その一冊と、その一人だけなのです。一冊の書物にとって、読者とはつねに唯一の人間を指すのです。」
 ああ、この言葉にシビれない本好きがいるだろうか。

 最後の最後まで先が読めなかった。
 だいたい「こういうふうに進んでこういうふうに着地するのかなー」という予想があって、それは裏切られたりすることもあるけれど、その裏切られ方も最後の最後に「そうきたか!」くらいなことが多いのに、これはもう途中経過から翻弄されっぱなし。アーダムと、ファラーと、サフィアーンの運命がどういうふうに絡むのか、どうその糸がもつれていくのか、そしてその結末はどうなるのか、これは悲劇なのかそれとも大団円で終わるのか、その辺の予測がまるで不能。
 物語的にはRPGゲームのような設定&内容(剣と魔法とドラゴン!)なのに、そして登場人物たちの語り口調はときに辟易するほどくだけているのに、それじゃあ内容が陳腐なのかというとまるでそうじゃない。わたしは読んでいて中盤あたりはトルネコの冒険を連想したのだけれど、かといってその連想が物語を貶めることはまるでない。
 文章に、力が溢れている。

 入れ子になった物語の外側の、「災厄の書」を編もうと試みるアイユーブや、”夜の種族”である語り部ズールムッドの物語も予測不能。

 ああ、読書の愉しみを最大限に堪能させてもらったわ…。
 数日は余韻に浸りっぱなしだった。


その他の本の感想はこちら♪
http://www.geocities.jp/choroimo/


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 5

下山事件―最後の証言

著者 : 柴田 哲孝

出版社:祥伝社

発売日:2005-07

評価 :

完了日 :

 かなりおもしろかった。
 なんというか、さすが関係者の孫。ずるい気もするけど(笑)。後出しじゃんけんぽいとこもなきにしもあらず。

 けれど、最初は関係者の孫というだけが強みなんだと思っていたら、轢死現場に残っていた血の道についての洞察や、事件を思い切りマクロな視点から見る考察など、おおっと刮目する部分がたくさん。
 結局下山総裁がナゼ殺されたか、という核心部分においても、きっと松本清張説(by日本の黒い霧)の肉付けに終わるんだろうと思ったらまるっきり松本説をひっくり返し、かつ説得力のあるものが。
 今までのところ真相に一番近いところにきているのがこの本かもしれない。

 けれど、肝心の所はなんでぼかしてるのか。書けない理由があるのか。
 結局あなたも真実は墓場に持っていってしまうのか…。
 それがすごく不満。

 それからびっくり仰天なのは、森達也証言ねつ造疑惑が浮上したこと。読み始めからどうも、最初の頃は一緒に取材していたはずの森達也に対しての著者の不信感を感じるというか、そいういうところはあった。森達也と一緒に取材し、かつ後から森達也を出し抜いて名を上げようとした(?)諸永裕司に対しては好意的なのに、なぜ森著『下山事件 』は無視するのかなーと(ちなみに森著『下山事件』も諸永氏『葬られた夏―追跡・下山事件 』も取材のもとになったのは「彼」として描かれているこの本の著者・柴田氏の親族の証言)。
 そうしたら、森著作には証言ねつ造部分があると爆弾発言。

 うーん、こういうのは結局当事者じゃないとわからないけれど。でもどうもこの”平成三部作”には下山事件そのものに対する部分よりも取材活動中のお互いのトラブルやドロドロ、みたいなものが多い気がする(諸永著作は未読だけど)。森達也なんて思いっきり下山事件より「ボクは諸永に裏切られました」という部分がメイン?みたいになっているし。

 もしも証言ねつ造疑惑が本当のことだとしたら、これまでの森氏にたいするイメージも少し変わってしまうなあ。センチメンタルに過ぎる部分こそあるけれど、正直な人だと思っていたのに。それってポーズだってことなのか?
 まあでも、結局「言った、言わない」の水掛け論で、どちらの言い分も鵜呑みにはできないけれど。

 ただ、森氏の作品に証言ねつ造があったとしてもそうでなくても、また、どちらの作品がより真相に迫っていたとしても、正直に言えばわたしの胸に響いたのは森達也の『下山事件』だった。ノンフィクションとしてのできはこちらの方が上だし、証言ねつ造は本当にあったとしたら許されないことだと思うのだけれど。「関係者の孫が書いた」というのはセンセーショナルだ。けれどそれだけに、その本はごく個人的なものになってしまう可能性を含んでいる。

 森達也の『下山事件』を読んだとき、わたしは確かに下山事件を自分の身に引き寄せて考えることができたのだ。けれどこの本を読んだとき、その真相(?)に驚愕はしたけれど、その事件はわたしにとって「関係者の孫にとっての下山事件」でしかなかった。
 渾身の作品なだけに、それがとても残念だった。


その他の本の感想はこちら♪
http://www.geocities.jp/choroimo/


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 1

アラビアン・ナイトメア (文学の冒険シリーズ)

著者 : ロバート・アーウィン,若島 正

出版社:国書刊行会

発売日:1999-09

評価 :

完了日 :

 「アラビアの悪夢って何ですか?」
 「それはただの噂で、というのもその病気をいちばんよく知っている人間はそれがどんな病気か語れないからだが、ともかくはっきりしない不思議な話で、病気か呪いかわからない。アラビアの悪夢は、猥褻かつ奇怪で、単調かつ残酷だ。この悪夢病にかかると、悪夢が毎晩訪れても、朝になるとその夢を忘れてしまうのが症状のひとつでね。意識しないうちに無限の苦痛を経験することになる。毎夜毎夜終わりのない苦しみが続き、朝になると患者は起きて何事もなかったかのように日常生活をこなし、一日の労働を終えるとさあ今夜もぐっすり眠ろうと考える。純粋な苦痛だな。…」

 15世紀、カイロ。巡礼者としてこの町を訪れたバリアンには秘密の任務があった。しかしカイロで思わぬ足止めを喰ううちに、カイロに一緒に入った一行のひとり、画家のジャンクリストフォロは1冊の本を残して連行され、その本を手に入れたバリアンは毎夜悪夢に悩まされるようになる。 彼の病気を治すためといって、同じく一行のひとりであるヴェインは彼を猫の父のもとに連れて行く。しかし不安に感じたバリアンは彼らから逃れ、町をさまよっているうちに語り部のヨルと出会う…。

 と、あらすじを書いてみてもこの物語を説明することはできない。どこまでが夢なのか。どこまでが物語なのか。物語が入り組んだ入れ子になっていて、読んでいるうちに自分がどこにいるのかわからなくなってくる。はっと気づくと自分が口から鼻から血を流していそうで怖い(笑)。

 幻想的でエロティックで奇妙で不気味な物語。

 まさに悪夢をそのまま本にしたようなこの味わいはほかではちょっと味わえない。嫌いな人は受け付けないかもしれないけれど、好きな人にはたまらないめくるめく悪夢の世界を感じることができるはず。

 とにかく、一度手に取ってみることをオススメ!!


その他の本の感想はこちら♪
http://www.geocities.jp/choroimo/


この感想へのコメント

1.LIN (2006/08/04)
ちょろいもさん、こんばんは~♪
ちょろいもさんの記事で、ここのことを知り、
早速、登録してみました。
『アラビアン・ナイトメア』読みたいんですよー。
『アラビアの夜の種族』とどっちがオススメですか?
ロバート・アーウィンは『必携アラビアン・ナイト』って本を
書いていてそれがすごくほしいんですけど、
どうしても見つかりません(しくしく)
2.ちょろいも (2006/08/05)
>LINさん

おお、LINさんもお仲間ですね~(はぁと)。
ナイトメアと夜の種族は、どっちがオススメ…というのはかなり難しいです。でもLINさんは確か夜の種族の文体の軽さがダメって言ってませんでしたっけ…? ナイトメアにはそんなことはないと思うので、もしかしたらそちらの方がLINさんのお気に召すかもしれませんわ~。
必携アラビアン・ナイトは素晴らしいらしいですね。
わたしも機会があったら読んでみたいです。
 

みんなの感想を読む
 2

ぬかるんでから

著者 : 佐藤 哲也

出版社:文藝春秋

発売日:2001-05

評価 :

完了日 :

もう何を言えばいいやら…

『イラハイ』でしびれ、『沢蟹まけると意志の力』でもうダメかと思うほどヤられてしまったわたしなんだけれど、この作品で徹底的に打ちのめされた。

佐藤哲也、すごすぎる。

今回は初めての短篇集だったんだけれど、表題作である冒頭の「ぬかるんでから」でもうシビれた。続く13篇すべての作品がわたしを内部から崩壊させた。

短篇なだけにあのしつこすぎるくらいのしつこさはかなり薄まっているのだけれど、その分読みやすさは上昇。そして、こちらの方が他の長編よりもストーリー性が高い(笑)。

誰にでもお勧めできる本じゃないかもしれない。
でもわたしは大好きだ!
佐藤哲也の本に出会うことができて、かつ、佐藤哲也の作品に選ばれることができて、わたしは本当に幸せだ。


その他の本の感想はこちら♪
http://www.geocities.jp/choroimo/


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 14

パリ左岸のピアノ工房 (新潮クレスト・ブックス)

著者 : T.E. カーハート

出版社:新潮社

発売日:2001-11

評価 :

完了日 :

 いやー…。
 なんでクレストブックスはこんなにいい仕事ばっかりするんだ!!

 小説ではなくてノンフィクションなんだけれど、上質の小説のような味わいのある一冊。 パリの閉鎖的な、けれど一度入り込むことさえ出来ればとても居心地のよい独特のコミュニティ。

 ピアノの魅力に惹かれたひとりのアメリカ人が小さなピアノ工房に集まるコミュニティに招き入れられ、やがてピアノの深く多彩な魅力にますます取りつかれ、人間関係の滋味を味わい、音楽に彩られる人生に足を踏み入れる。

 ああ、いいなーこんなピアノ工房。

 思わずうちのアップライトを弾いてみたくなった。
 そして、ベートーベンのピアノソナタを聴きたくなってCDラックを探すものの、ない。 あ、これもいいわ!とセロニアス・モンクのCDを引っ張り出してくる。 ジャズなんて滅多に聴かないんだけど(笑)。 とにかく、ピアノ曲ならなんでもいいから聴きたい気分になった。

 綿密に調べて緻密に書き上げるタイプのノンフィクションじゃなくて、けれどピアノの魅力、パリの魅力を限りなく引き出している一冊。

 きっと素敵な時間が過ごせること請け合い。


その他の本の感想はこちら♪
http://www.geocities.jp/choroimo/


この感想へのコメント

4.ちょろいも (2006/09/16)
>ペネロペイアさん

ぜひ、読んだら感想を教えてくださいね。
気に入ってくださるといいんですが。
5.anokeno (2007/06/10)
私も読んでみたくなりました ありがとう

もっと読む(5件)

 

みんなの感想を読む
 7

ある秘密 (新潮クレスト・ブックス)

著者 : フィリップ グランベール

出版社:新潮社

発売日:2005-11

評価 :

完了日 :

 「ぼく」は生まれつきひ弱な少年だった。間に戦争は挟まったものの、難を逃れ幸せに暮らしてきた両親の間の一粒種で、両親の愛を一身に受けて育ったはずなのに、「ぼく」は不安で、ある日屋根裏部屋で小犬のぬいぐるみを見つけたのをきっかけに、心の中に「兄さん」を作り出した。以来「兄さん」の影に隠れるように暮らしてきた「ぼく」に、やがて「兄さん」は重荷になってくる。そして15歳の誕生日を迎えた翌日、「ぼく」はある秘密を知ったのだった…。

 本当に価値のある、いい作品に出会うと言葉を失う。
 けして長くはない物語に、詰まっているのは本当に純粋で美しい結晶体。無駄な文章はどこにもない。

 静かに、少しずつ、心の中に流れ込むような物語。
 悲しく、つらい秘密を知って、それを抱えて、昇華させてゆく「ぼく」。読み進むうちにしんしんと胸の中に何かが降り積もっていくようだ。

 フランスで「高校生が選ぶゴングール賞」という、高校生が選ぶ賞を取った作品らしいのだけれど、こういう作品を選びうるフランスの高校生の質の高さに驚きと羨望を感じた。

 ちなみにこれは作者の自伝的小説と言っていいみたい。訳者あとがきで、作者グランベールへのインタビューの内容が触れられている。

 ”…両親の物語を書こうと思いついた。…夢中で書き上げた。だがそれから苦労が待っていた。文章が感情に流され、あまりに思い入れたっぷりであることに気がついたのだ。…「残ったのは骨の部分だけでした。結局、それだけが必要だったのです」。”

 ああ、これこそが、この作品を明確に「手記」ではなく「物語」にしている理由なのだ。

 とにかく胸に染みる一冊。巡り会えた幸せに感謝する一冊。


その他の本の感想はこちら♪
http://www.geocities.jp/choroimo/


この感想へのコメント

2.ちょろいも (2006/08/02)
>しらっちさん

なんというか、押しつけではなくすごく色々なことを考えさせられました。本当に「逸品」ですよね~。
3.anokeno (2007/06/10)
高校生のレベル高いですね

もっと読む(3件)

 

みんなの感想を読む
 3

異国伝

著者 : 佐藤 哲也

出版社:河出書房新社

発売日:2003-09

評価 :

完了日 :

どこまでもどこまでも続くナンセンスな掌篇集。
「あ」から始まり「ん」で終わる45篇の「あまりにも小さいので地図に載ったことがなかったし、旅行者向けの案内書にも載ったことがない」国々のお話。

普通思いつかないだろ!というような独特の風習や考え方、暮らし方をイソップ物語のように寓話を含んでいるんじゃないかと思わせる口調で、ただただ淡々と書き連ねている。

「ん」で終わるのはわかっていても、読んでいるうちに一生読み終わらないんじゃないか…という気分になってくるのは、どこまでもどこまでも一本調子で次々と物語が湧いてくるからだ。

小さな国々は簡単に滅び、蹂躙され、ある国はしぶとく生き続け、別の国はその国の物語が始まらないうちに話が終わってしまう。すごく無機質な物語群の中で「冷気の感触」だけが異質の暖かいお話だったなあ。

いろいろと元ネタのありそうな話も。そのすべてがわからなかったのはわたしの無知のせい…。orz
しかし、「帝国の逆襲」は笑った(笑)。


その他の本の感想はこちら♪
http://www.geocities.jp/choroimo/


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 7

イラハイ (新潮文庫)

著者 : 佐藤 哲也

出版社:新潮社

発売日:1996-09

評価 :

完了日 :

 第5回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。ぶっ飛んでる!

 とにかく文体が独特。この文章に慣れることができなければ読むのはかなりツライんじゃないかしら。わたしはものすごーく好きですが。

 あまりにもくだらない話をものすごーく論理的にしつこくしつこく語っている。
 だいたい、「この物語にはこのような目的が与えられているので…(以下長いので略/笑)…始まりに発端があって終わりにその結末があり、その間には発端から結末に至るまでの経緯が記されている物語である。」って書いてあるのに、本も半ばにならないと物語が始まらないってどうよ(笑)。

 今ばっと開いて任意の文章をちょっと書き写してみると、

 「この兵士が高級なのであれば、我々の上に立つ者であり、我々はこの兵隊に対して敬意を払わなければならない。その敬意を払うことによって得る我々の利益はなにか、また我々が受ける損害は何か」
 キリウリの代官はこれに答えてこのように言った。
 「敬意を払うことによって得る利益とは、その兵士の姿に似せた立派な石像であり、これは町の共有財産となる。そして敬意を払うべき相手はすでに死体となっているので、これによって受ける損害はなにもない」
 これを聞いた町の者は残らず納得し、遺体に向かって平伏した。


 こんな文体の小説ってなかった気がする。わたしは読んでいて何度も何度も聖書を連想した。聖書ってこんな文章だよね…。

 ああ、どうして今まで読んでなかったんだ、佐藤哲也。
 好き嫌いは分かれるかもしれないけれど、個人的には、もしかすると奥さんの佐藤亜紀の『バルタザールの遍歴』よりも好みかもしれない。どっちが作品として上かとかそういう話は別にしても。

 とにかく、今かなりシビれてます(笑)。



その他の本の感想はこちら♪
http://www.geocities.jp/choroimo/


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 2

夢の棲む街

著者 : 山尾 悠子

出版社:早川書房

発売日:2000

評価 :

完了日 :

いや~~~~~~。
愉しませていただきました。
難解といえばかなり難解で、きっちりとした筋があるようでいてなく、伏線も貼っているようで貼っているわけでなく、溢れるイメージを一冊の本に閉じこめたかのような、幻想的で、魅力的で、読者に媚びない短篇集。

個人的には表題作の「夢の棲む街」と「遠近法」がやっぱり別格な感じ。
しかししかし、「ムーンゲイト」も「シメールの領地」も「ファンタジア領」も捨てがたい…! 「月蝕」だけがちょこっと他の作品と雰囲気が違うかな。

突き放したような、神の視点に徹した描きっぷりがなんとも。コアなファンが多い、といのも頷ける。

ただ今山尾悠子強化期間実施中(笑)。『仮面物語』もものすごく好きですが、これは絶版なんですね…。


この感想へのコメント

1.hiiragi (2006/09/07)
どうもはじめまして。自分と近いタイミングで(悲しいことに)マイナーなこの作品を読んだ人がいるなんて!と、つい嬉しくなってしまって、コメントしてしまいました。
確かに難解ですけど、一つ一つの描写が魅力的でそれだけで満足してしまいました。これが絶版ってのも悲しい話ですね…。
2.ちょろいも (2006/09/09)
>hiiragiさん

いらっしゃいませ♪
最近山尾悠子作品にはまっています。先日は『ラピスラズリ』を読みました。相変わらずの美しい世界にうっとりです。『山尾悠子作品集成』も読みたくってウズウズしています(笑)。
ホントにいい本がすぐ絶版になってしまう時代ですね…。
 

みんなの感想を読む
 14

七姫幻想

著者 : 森谷 明子

出版社:双葉社

発売日:2006-02

評価 :

完了日 :

 たなばたの織女の7つの異称をそれぞれのタイトルに掲げた、古代から江戸時代までにまたがる連作ミステリ短篇集。なんというか、(常野物語+勾玉シリーズ)÷2、これにミステリの粉をまぶしたような感じ(笑)。

 それぞれの短編にどうやら藤原家と絡んでいるらしい同じ一族が絡んできて、さらに読み進めるにつれて時代が下っていく。あの少納言さんとか出てきてちょっとオオッと思ったり。ハードボイルドな少納言さん…(笑)。

 ラストの物語で綺麗に物語の円が閉じて、美しくフィニッシュ、みたいな。

 それぞれの時代の雰囲気が出ていて、全体を雅な薫りが包む。高雅な姫の悲恋あり、イニシエーションを経て成長する少年の物語あり、才気走った女の陰謀話あり、奥ゆかしい初恋の物語あり。それぞれの作品はバラエティに富んでいて、しかしきちんと一本筋の通った連作になっており、しかもミステリとしても一定の水準を超えていると思う。

 愉しめました♪


その他の本の感想はこちら♪
http://www.geocities.jp/choroimo/


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 2

人間の土地 (新潮文庫)

著者 : サン=テグジュペリ,堀口 大学

出版社:新潮社

発売日:1955-04

評価 :

完了日 :

 伊坂幸太郎『砂漠』を読む前に予習として読了。

 サン=テグジュペリといえば『星の王子さま』。それ以外の著作を読んだのは実はこれが初めてだったのだけれど、そのあまりの真摯さ、高潔さに圧倒された。

 郵便機の定期航空の操縦士として働いていたサン=テグジュペリと彼の同僚たちの様々なエピソードを淡々と描いているのだけれど、その文章の中に彼の「生きる姿勢」ともいうべき矜持がにじみ出ている。今の時代こんな人はまずいないだろうし、今の時代こんな本はまず書かれないだろう。けれどもしかしたらこういう本は今こそ読まれるべきなのかもしれない。

 アンデス山脈飛行中に消息を絶ち、必死の捜索にもかかわらず見つからなかった同僚ギヨメが7日後に発見されるまでの壮絶なエピソード。
 砂漠の不帰順族に捉えられ、奴隷にされていた男が、解放された後その圧倒的な自由さから逃れるために与えられた金銭をすべて遣ってしまうエピソード。
 そしてサン=テグジュペリ自身が砂漠で遭難し、発見されるまでの、『星の王子さま』の発想のもととなったと言われるエピソード。

 どれもこれも、おもしろおかしく描かれているわけではない。
 けれど、そこには、万人に共通の、原始的で、尊い、そして忘れ去られがちな大切なものが流れている気がする。

 ”人間であるということは、とりもなおさず責任を持つことだ。人間であるということは、自分には関係がないと思われるような不幸な出来事に対して忸怩たることだ。人間であるということは、自分の僚友が勝ち得た勝利を誇りとすることだ。人間であるということは、自分の石をそこに据えながら、世界の建設に加担していると感じることだ。”

 この文章を読んで、思わず襟を正さずにいられる人がどのくらいいるだろうか。


その他の本の感想はこちら♪
http://www.geocities.jp/choroimo/


この感想へのコメント

1.ちから (2006/08/03)
『夜間飛行』は何度か読んでいるのですが『人間の土地』は未読です。でも、いまさらながら読んでみようかな、と思いました。

考えてみれば、伊坂幸太郎の「砂漠」というイメージ自体、サン=テグジュペリから継承されたものだったのかも。
2.ちょろいも (2006/08/03)
>ちからさん

『夜間飛行』、ぜひ読んでみたいです。
『人間の土地』は確かに「今さらながら」なんですが、古い中にも変わらないものがあることを感じさせてくれる一冊でした。
伊坂の『砂漠』にはこの本の内容がバシバシ出てきます。『人間の土地』を読んでから読むと、にやりとする場面がたくさんあってお得な気分になれますよ♪
 

みんなの感想を読む
 68

砂漠

著者 : 伊坂 幸太郎

出版社:実業之日本社

発売日:2005-12-10

評価 :

完了日 :

 これが直木賞をとれなかっただなんて!! 未だに思い返すと地団駄を踏みたくなる(笑)。

 なんといっても西嶋のキャラが秀逸。『チルドレン』の陣内にかぶる部分もあるんだけれど(彼にもらった本に影響を受けているくらいだから当然なのか?)、一見非常識で場を読めない、周囲から敬遠されがちな人物なのに、つきあえばつきあうほどよさがわかってくる、その西嶋のわかりづらい「よさ」が、読者には非常によくわかるように描かれている。

 北島が少しずつ「地面に近づいてくる」様子もよくわかる。それが唐突でなく、とても自然にそうなっていくように感じられるのは、やっぱり丹念にストーリーが積み重ねられているからだと思う。

 いくつかの事件が起こるのだけれど、それは物語の本筋ではなくて、あくまでも「重要なエピソード」の連なり。彼らがいかにお互いを仲間とみなすようになり、「砂漠」へ出ていくための力をつけていくか、いかに素晴らしい学生生活を送ったか、大事なのはそういうことだ。いわば伊坂版『夜のピクニック』。

 「夏」で起こる事件は中でもあまりにも重くて胸が痛んだけれど、彼らはそんな深刻な事件さえも乗り越える力をつけていく。

 サン=テグジュペリの『人間の土地』がところどころで効いていて、ニヤリ。

 今までわたしの中で伊坂作品ベストは『ラッシュライフ』だったんだけれど、これはそのベストに匹敵する作品。これまではなんというか、ストーリーの勢いとか、パズル的な気持ちよさが伊坂作品のウリだった気がするのだけれど、ここへきてその軽妙洒脱さを失うことなく、物語が積み重なっていく重厚さの片鱗が窺えるようになってきた気がするわ。ヘンだけれど尊敬に値する人物を巧みに描いているあたりも、今まで以上に著者本人の優しさ、暖かさを感じる。この作品自体が、『死神の精度』みたいな「鳥瞰型」小説とまるで違う伊坂作品の別の面を見せている。

 学生生活を送って「砂漠」に出た人たちなら誰でも、自分の学生生活を振り返らずにはいられない。振り返って初めて、あの時代がいかに人生の「オアシス」であったかに気づく。そして思うのだ。「あの時はよかったな。オアシスだったな。」
 なんてことは、まるでない。


その他の本の感想はこちら♪
http://www.geocities.jp/choroimo/


この感想へのコメント

1.ドロップ (2006/08/09)
「砂漠」、色々な所で良い評判を聞いていましたが
ちょろいもサンの感想文を読んで、マスマス読みたくなりました。読んだら感想文を書いてみます。ではでは。
2.ちょろいも (2006/08/16)
>ドロップさん

『砂漠』はわたしの中ではかなり伊坂作品上位に入る作品です~♪ ドロップさんの感想を楽しみにしていますね♪
 

みんなの感想を読む
 11

〈プラチナファンタジイ〉 奇術師 (ハヤカワ文庫 FT)

著者 : クリストファー・プリースト

出版社:早川書房

発売日:2004-02-10

評価 :

完了日 :

 まったく何の前知識もなく読み始めたわたしは気がつくと混乱のるつぼへ。なぜか純粋なミステリだと思って読んでいたら、これって幻想文学だったのね~!! しかもカバー見返しにはちゃんと「世界幻想文学大賞を受賞」って書いてあるじゃん!!orz

 ちょっと異質なファンタジーだけれど、すごく愉しめた。質の高い、内容の濃い作品。ファンタジーと今書いたけれど、どちらかというとホラーか、SFっぽいかな? でも、素晴らしい作品の前にはジャンル分けなど無用、というのがよくわかる。

 物語は大きくはアンドルー視点、アルフレッドの手記、ケイトの視点、ルパートの日記の4つに分かれる。そして最後にエンディング。同じ事実が見方によってまったく違って見えることにびっくり。真実は最後まで具体的にはっきりとは書かれていないので、読み手が内容から真実を導き出さなくてはいけなくて、そういう点でも刺激的な読書だった。

 さすが、世界幻想文学大賞!

 そして、解説で「『魔法』と密接な関係を持っている」と書かれていたとあっては、こちらも読まないわけにはいかないわ~!!

その他の本の感想はこちら♪
http://www.geocities.jp/choroimo/


この感想へのコメント

<前のページ 1  次のページ>

Copyright c 2006 WEB本の雑誌 All rights reserved.