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ちょろいもさんの読書ノート

日本ファンタジーノベル大賞関係本
日本ファンタジーノベル大賞受賞作を追いかけてます。
また、その賞出身作家も追いかけてます。
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 20

シャングリ・ラ

著者 : 池上 永一

出版社:角川書店

発売日:2005-09-23

評価 :

完了日 : 2007年02月09日

 地球温暖化が進み、熱帯と化した東京。世界的に炭素税が課され、国連の衛星イカロス3号が世界中の炭素排出量を監視、大量の炭素を出した国にはペナルティが課せられる。すべての経済は炭素指数によって動いていた。そんな世界の流れの中で、東京は気温を5度下げることを目標に東京を森林にする計画を発動する。巨大な高層都市「アトラス」に住むことができれば快適な生活を送れるが、裕福でない人間にアトラスは厳しかった。反政府組織「メタルエイジ」はアトラス計画を倒すべく活動を続け、その頂点に立つのが若き北条國子だった…。

 最初はハードSFにホラーの入ったかなり重厚な物語かな?と思ったら、いつのまにやらアニメチックなハチャメチャストーリーに…。上下二段組み600ページ弱と、かなりの長さのある作品なんだけれど、スピード感があって読みやすかった。
 アトラス計画の謎とか、経済炭素と実質炭素の乖離とか、嘘をついたものに死をもたらす美邦とか、設定はすごく面白い。ちょっとオカルト入りすぎ…な感もなきにしもあらずだけれど、まあアニメだと割り切ることにする。さらにちょっと登場人物がターミネーター入りすぎ…な部分も、まあアニメだと割り切ることにする(笑)。

 でも個人的にアニメっぽいのはあんまり好きじゃないのよね…(苦笑)。なかでも涼子のキャラクターはやりすぎじゃないかなあ。わたしは彼女の登場でどっぷり浸かっていた世界からちょっと引いてしまったわ。

 キャラクターは、何と言っても、モモコさんが素晴らしい! モモコさん最高!
 重要キャラであるはずの草薙が弱いのがもったいない。
 あと、個人的には香凛のご両親がものすご~~~~~~く気になった。

 ただ、そういうキズはいろいろあるのだけれど、読んでいる間はすごーく愉しんだことは確か。これだけの長さをだれさせないのはスゴイ。たぶん連載だった、というのも大きいのかも。場面の切り替えや展開が早くて、少しずつ読者をひっぱるのよね…。逆に言えば、連載だからスピード重視で細かいことは割におざなり、話がドラゴンボールっぽくなってくる…ということになっちゃったのかな。


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 7

バガージマヌパナス―わが島のはなし (文春文庫)

著者 : 池上 永一

出版社:文藝春秋

発売日:1998-12

評価 :

完了日 : 2007年02月09日

 第六回ファンタジーノベル大賞大賞受賞作。

 あー、このころからやっぱり『シャングリ・ラ』の萌芽はあったんだなー。この底抜けの明るさ。こういうの読んじゃうと北海道民としては沖縄になんか「負けた」と思っちゃう(爆)。北海道を舞台にしたら絶対にこんな作品にならないだろうと思うから。まあ、『雪の夜話』の舞台を沖縄にしたらあのリリカルさは出ないのと同じなんだけど。

 ひとりの美しいけれどフユクサラー(怠け者)な少女・綾乃が、ユタとして独り立ちするまでの物語。先祖崇拝に携わる沖縄独特の巫女・ユタの話は多分『ハイドゥナン (上)・(下)』で読んだのが最初だと思うのだけれど、同じ沖縄、同じユタの話でもこの作品とハイドゥナンでは全然違うのが面白い。こっちは神様さえもが人間くさくってユーモラス。ユタも神秘的なイメージとはほど遠い。

 綾乃の親友である86歳のオバァ、オージャーガンマーが何と言ってもいい味を出しているんだよねえ。綾乃の永遠のライバル(?)となる、ガメついユタのカニメガがまた、憎めない魅力的なキャラだ。

 笑って笑って最後にほろり。
 王道ですな。


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 14

芥子の花 (金春屋ゴメス)

著者 : 西條 奈加

出版社:新潮社

発売日:2006-09-21

評価 :

完了日 : 2007年01月25日

 相変わらずの江戸人情もの。
 ファンタジーでは絶対にないと思う。ちょこちょこ出てはくるんだけれど、そういう設定が。
 時代考証逃れ…じゃないよね…?(大汗)

 単純で人情家で熱血漢の「ザ・主人公」辰次郎。
 「異国市」で知り合った江戸生まれのビルマの少年・サクの暮らす異人村が上質の阿片の原料・芥子を栽培していた疑いをもたれ、その疑惑を晴らすために仲間と共に江戸の町を走り回る。危険な場所にも潜入捜査。彼はサクの村を救うことができるのか…?
 今回はふんわりと恋の気配も。

 うーん、とっても面白い時代ものなんだけれど、「わたしには必要のない物語」だったかな…。  ばりばりのエンタメで、しかもわたしはエンタメ結構好きなんだけど。なんでかなあ。
 サクっと読めて口当たりが軽くて人情味があって。別に悪いところをこれといって挙げられないんだけれど。

 こういうのが「合わない」ってことなのよね…。
 いや、ゴメスを読んだときにそう思ってたんだけれど。

 当然のように3作目が出そうな気配で物語は終了。また読んじゃうのかなーわたし(苦笑)。
 読まない勇気も必要だって、わかってるんだけどね…。


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 1

1809―ナポレオン暗殺 (文春文庫)

著者 : 佐藤 亜紀

出版社:文藝春秋

発売日:2000-08

評価 :

完了日 : 2007年01月25日

 1809年、フランス工兵隊のパスキ大尉は対オーストリア戦における架橋担当者
としての任に着いていた。歴史の上ではまったく無名の1個人であったはずの彼は、
仕事の上で便宜を図らせることの多かったウィーンの抜け目のない商人・ジードラ
ーが彼と一緒にいた居酒屋で殺害されたことをきっかけに、否応なく歴史の渦に
巻き込まれていく。

 とにかくディティールがすごいと評判の本書、確かに細部まで綿密な描写で一分の
隙もない精巧な精密機械のような作品だった。ものすごーく精密な機械って、何も
わからない人間が見ても芸術のようだ。この本もまさにそんな感じ。
 なぜただの1工兵隊員であるパスキが雲上の人のようなスタニスラウス公爵に
異常なほどに執着され、まったく望んでいない陰謀に巻き込まれなくてはならなかっ
たのか。ジードラーを殺した下手人は誰で、その動機はなんなのか。秘密警察のイグ
ナツは何を探り出そうとしているのか。そして、公爵の目的は何なのか。
 数々の謎が網の目のように交錯し、やがて点と点が線で結ばれていき、そこには
美しい精緻な織物が姿を現す。小説ってスゴイわ…。

 ただ、まったく温度が感じられない。パスキはすごく情熱的な人物なんだけれど、
かれの情熱がこちらに伝わらない~。そのあたりも精密機械、な感じ。

 ともあれ、他の作品も俄然読みたくなった。


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 1

小説のストラテジー

著者 : 佐藤 亜紀

出版社:青土社

発売日:2006-08

評価 :

完了日 : 2007年01月25日

 頭使いました。orz
 これは感想を書くのが難しい…。
 でもでも、とっても面白くて刺激的でスリリング。
 わたしが言いたくてもとてもここまで明確に言葉にできなかったことが全部これに書いてあるような。

 読書における「無数の敗北の上に、鑑賞者の最低限の技量は成り立つ」、とか。
 「五線譜に書かれただけの譜面が潜在的にしか音楽ではないのと同様、読み手の読解が始まる瞬間までは、どんな作品も、潜在的にしか作品ではない。いわば、読解は演奏です。」、とか。

 読書って化学反応を起こすことなんだなあ。

 受け手が読書することによって引き起こす反応は千差万別だ。なぜならそれは受け手がもっている性質(?)が千差万別だから。
 同じ本を読んでも人によって感想がバラバラなのはナゼかと言えば、読み手は読みとった文章を自分の中で咀嚼し、引き受ける段階で自分のそれまでの読書歴や人生経験などと照らし合わせ、書かれている言葉の意味を読み手なりの別の意味とすりあわせていくから。その作業の中で当然読み手の読書歴も更新されてゆくし、考え方、受け止め方も更新されてゆく。読書を受動的に行うか能動的に行うかは読み手次第だ。そういう意味で読書は音楽や絵画に通じるものが確かにある。

 読んでホントによかった。でも、佐藤氏のようにわたしはまだ上手に言葉を操れない。この感情をうまく言葉に表せない。

 うーん、ちょっともう少し考えたいわ。

 けれど、ぜひぜひ、これをすべての物語の読み手に。


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 1

酒仙 (新潮文庫)

著者 : 南條 竹則

出版社:新潮社

発売日:1996-09

評価 :

完了日 : 2007年01月25日

 代々の放蕩の末に身上を潰し、大好きな酒を浴槽に満たして溺死しようとする暮葉左近は、すんでのところで仙人によって救われる。彼の額には酒星のしるしがあったのだ。しるしのあった者はいずれその使命を果たすときがくる。左近の酒呑み修行は続くが、やがて邪悪な魔酒を世に広めようとする三島業造を知る。果たして彼は三島との対決に勝つことができるのか…?

 おもしろい。
 おもしろいよこれ!

 なんで日本ファンタジーノベル大賞の大賞じゃなくって優秀賞なわけ!? と思ったら、この回の大賞は『イラハイ』だったのでした。まあ、それじゃ仕方ないか(笑)。

 いやでも、普通は『イラハイ』よりこっちでしょう。こっちの方がよっぽど万人受けしそう。少なくとも左党は絶対にこの本を推すんじゃないか(笑)。さすが、一筋縄ではいかないファンタジーノベル大賞。やっぱり好きだ(笑)。

 もう、読んでる間中、幸せで幸せで。
 くー、うまいお酒が飲みたいなあ。でもって、うまい肴が食べたいよー。出てくるお酒も食べ物も、ほんっっとうにおいしそう。ああ、生まれて初めて、本を読んでお金持ちをうらやましいと思った(笑)。

 すごくバックグラウンドが豊かな人だなあと思う。
 古今東西のいろんな知識をしっかりと吸収して、自分のものにして、それをひけらかすのではなく必然の知識として開陳できる人。バカバカしいといえばバカバカしい話なのにそこはかとなく全編に溢れる知的な雰囲気。

 あー、酔っぱらっちゃったなあ。


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 1

熱帯

著者 : 佐藤 哲也

出版社:文藝春秋

発売日:2004-08-25

評価 :

完了日 : 2007年01月25日

 緊張の夏。日本の夏。を描いているんだけど、やたら弛緩した作品だ(笑)。

 ある日突然一方的に大型プロジェクトに関わる契約を破棄された栗栖洋一の悲嘆を哀れに思った神々は、彼の恨みを込めた願いを聞き入れて東京を熱気と湿気の中に陥れた。東京はこうして熱帯となった。
 すべての不明事象を処理するという使命を負った不明省の職員・多々見不運は、そんな熱帯の東京の中で異動通知により「中央統制局保管五課」の配属となる。不毛の湾岸地帯に位置する立ち入り制限区域・「不明島」の倉庫内にある保管五課では、厳重な警護の元で”事象の地平”を管理していた。
 事象の地平を巡り、正体不明の伝統の技で日本の夏を快適にしようと目論む大日本快適党が、快適党の動きを監視するCIA東京支局が、元KGB工作員が、そして水棲人が暗躍する。
 果たして事象の地平は守られるのか。日本の夏はどうなるのか?

 どうやら「イリアス」をパロディ化しているらしいのだけれど、お、イリアスだな、とクスリとできる人って世の中にどれくらいいるんだろうか。少なくともわたしは未読。スミマセン。恥。

 ストーリー的にまったく重要性のないことを執拗に細かく細かく描いていて、その部分がまたすこぶる面白いから始末に負えない。気がついたら何の話だったかわからなくなっちゃうじゃないかー!(笑)

 個人的には昔システムの開発にちょこっと関係した仕事をしていたことがあるので、システム開発のドタバタ部分はかなり自分の経験に引き寄せて笑ってしまった。どう考えても設計ミスを「仕様です」とか(爆)。どこも同じなのか、システム開発って(笑)。

 ストーリー的に重要じゃない多々羅群島の物語。
 ストーリー的に重要じゃないプラトン・ファイト。
 ストーリー的に重要じゃない不明省のシステム開発。

 面白いパーツが目白押し。
 あと水棲人、かわいすぎ。

 ただ、主要なストーリー部分は今までの佐藤作品の中では一番読みやすかった。まるで普通の小説みたいに。それがなんとなくもの足りない、「”佐藤哲也”が足りない」とか思っちゃったわたしはちょっと何かをどこかで間違ってしまったんだろうか…。


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 15

忘れないと誓ったぼくがいた

著者 : 平山 瑞穂

出版社:新潮社

発売日:2006-02-20

評価 :

完了日 : 2007年01月25日

 「ぼく」の手元には数分間のみのビデオテープがある。そこに映っている彼女のことを、覚えている人間は今では誰もいない。けれど確かに彼女は存在し、「ぼく」は確かに彼女に恋をしていたんだ…。

 デビュー作『ラス・マンチャス通信』(感想はこちら)とはぜ~んぜん違うど真ん中の恋愛モノ。しかしなんでファンタジーノベル大賞受賞作家が恋愛モノを…? 読んでいて市川拓司を連想するようなちょっと不思議設定の入ったラブストーリーだった。まあ、そういう意味ではファンタジーなんだろうか…。

 読んでいる間はそれなりに愉しめたんだけれど。

 けれど、なんで「消える」設定なんだろう。
 恋人が不治の病、というのとほとんど、いや全然変わらない。
 そこはヒネッたんだよね、ということなんだろうか。
 ヒネれてませんけど…。

 あんなに大好きだった彼女の記憶が消えていってしまう。それを必死にかき集め、つなぎ止め、記録しようとする少年。
 彼がそれをするのは彼女が完全に消え去っているわけじゃない状態なんだけれど、どんなに好きだった人でも時間が経てば記憶が風化され、時には美化され、演出されてしまうのは別にその人が消えてしまわなくても、誰にでも起こりうること。
 だからこそ感情移入も難しくないわけなんだけれど。

 でもこの設定にする意味がわからない…。もっともっと違う作品にできたんじゃないのかなあ。

 いっそタカシくんもフェードアウトする側になっちゃうとか(笑)。
 みんなで記憶の鎖を作って彼女をつなぎ止めるとか。
 フェードアウトする仕組みをしらべる科学者になってその現象の謎をつきとめるとか。

 もったいないというか何というか。

 でも読んでいて辛いなあと思った。
 お腹を痛めた自分の子どもを忘れてしまうとしたら。
 それって好きになった彼氏を忘れるより百億倍くらいキツいと思う。 ってまた母親目線だなあ、自分。orz

 あと個人的には時計屋のお爺さんに是非とも活躍して欲しかった(笑)。
 イワじいにも。

 次作ではラス・マンチャス路線に戻って欲しいなあ…。


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 5

アマゾニア

著者 : 粕谷 知世

出版社:中央公論新社

発売日:2004-10

評価 :

完了日 : 2007年01月25日

 2段組400ページ強となかなかの長編なのだけれど、とにかく力業でぐいぐい読ませる作品だった。なんというか、イマジネーションがスゴイ。16世紀のアマゾンが舞台なんてありえない(笑)。いわゆるアマゾネスの部隊長が主人公なんだけれど、この主人公とか、部族を守る精霊の少女とか、キャラ造形がけっこうラノベっぽい。骨太な設定にラノベキャラ、ってなんだか有川浩を連想してしまうんだけれど(苦笑)、こっちの方がもっともっと骨太だ。あ、『シャングリ・ラ』もそういえばそうだなあ。

 アマゾンの奥地で女だけで暮らす泉の部族。女たちは年に一度、”陰の宴”を開いて他部族の男と交わり、精度の高い方法で女児を生み分ける。万一男児が生まれてもすぐに相手の男の部族に引き取ってもらえるから安心。森には悪霊やなんかが救っているけれど、泉の部族には部族を守る”森の娘”という精霊がいるから大丈夫。森の娘は部族の若い娘の体に宿り、数年に一度、その体を取り替える。
 けれどある時スペインから招かれざる男たちがやってくる。彼らのひとりはかつて森の娘が人間の娘だった頃に結婚を誓った男の生まれ変わりだったものだから、森の娘はすっかり男に夢中になり、部族の掟を破って男たちを泉の部族に招き入れてしまう。
 そうして微妙だったバランスが崩れ始める…。

 …と、あらすじを書いていても面白そうな話だってことは伝わるんじゃないかと思うんだけれど。

 けれどあえて苦言をいうなら、勢いに任せて、魅力的な設定に乗っかったまま一気に書いたようで、読んでいて判りづらい部分や荒っぽい部分が散見。主人公・赤弓が水底の森に行ってしまうあたりとか。しっかりものの副官・夕羽の性格にもブレがありすぎる気がする…。赤弓も隊長のわりにかなりせっかちで早とちりで情けない性格なのだけれど、まあこれはラノベ性格だからと考えることにしよう(笑)。

 後半にかけてかなり壮大な話になっているけれど、うーん、もう少しきっちりとまとめてほしかったような。もう少し整理して、書き込むべきところは書き込んで、流すべきところは流したらもっともっと精度の高い素晴らしい傑作になったんじゃないかと思うんだけど。もったいない…。


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 2

沢蟹まけると意志の力

著者 : 佐藤 哲也

出版社:新潮社

発売日:1996-07

評価 :

完了日 : 2007年01月25日

 読むのにものすご~~~く時間がかかってしまったけれど堅牢強固な意志の力によって読了。

 ”カニジンジャー沢蟹まけるは改造人間である。彼を改造したマングローブは世界征服を狙う秘密結社である。沢蟹まけるは人間の自由のためにマングローブと戦うのだ。”

 まあ、そういう話っちゃそういう話なんだけど、とにかく脱線しまくりで話が進まないったらありゃしない。『イラハイ』も進まないけれどイラハイよりさらに話が進まない。

 じゃあ何をそんなに脱線してるのかというと、それは「堅牢強固な意志の力」について語りまくっているのだ。
 あるときは宇宙人が、あるときはハードボイルドな主人公が、あるときは大地震の被害者が、あるときは19世紀初頭の英国海軍戦列艦艦長が、堅牢強固な意志を示す。示しまくる。
 「これで仕舞いってことがあるかい」と老婆が叫ぶ。

 ああ、佐藤哲也にはやられっぱなし。
 ものすごくクセがあるので、合わない人にはとことん合わないんじゃないかと思う。けれど、うっかり気に入ってしまうと抜けられない…。

 ただし、あまりにも文章が濃いので、続けて何作もはとても読めないわ(笑)。


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 1

愛をめぐる奇妙な告白のためのフーガ

著者 : 琴音

出版社:幻冬舎

発売日:2006-05

評価 :

完了日 : 2007年01月25日

 第17回日本ファンタジーノベル大賞で優秀賞を受賞したものの、賞を辞退したことで話題になった作品。

 一切の感情がない「私」は、元恋人のキオミが自殺したことを知り、彼女の部屋を訪れて1枚の手書きの地図を見つける。地図を頼りに訪ねた先は、東京にありながら誰にも省みられない、不思議な町だった。彼女はそこで客の「告白」を聞く仕事に就くことになる。そこで出会ったパンノキ、アヤメ、ミシンと海亀、天使、革命家、占い師の老人、そしてとりわけ葉(イップ)との関わりにより、「私」は感情を取り戻していく。しかし葉はある日を境に突然「私」に対する態度を変えたのだった…。

 個人的にはやたらに句点の多い文章はちょっと読みづらかったかな…。「フーガ」と題する意図はなんとなくわかったけれど、別々の人間が別々の文脈で「フーガ」を比喩に使うのはちょっとくどくてひっかかった。あと、かぎかっこをつけない会話文というのもよくあるけれど、この作品ではそのやり方が少しわかりづらい。『おがたQ…』なんかは全然違和感なかったんだけどなあ。

 主人公が「感情がない」ので、感情移入するのが難しい(笑)。かといって桐野夏生の小説のように感情移入を拒むような作品であるわけでもない。というかこれを読んでものすごく感動する人は感情移入しまくりなんだろうし。

 なんというか、せっぱ詰まった人間のせっぱ詰まった心情をそのまんまナマで出されたようで、読んでいて痛々しかった。この痛々しさがある種の読者をものすごく刺激するのだろうことはよくわかる気がする。とにかく痛々しいのよ…。いろいろな意味で。

 最後まで違和感というか、よくわからなかったのは、なぜ葉は「私」のことがそれほど好きだったのかということ。二人が唐突に恋愛関係に陥るので、置いてきぼりをくった感じでちょっと面食らった。葉は確かに魅力的な人物だと思うけれどね…。

 たぶん、受ける人にはめちゃめちゃ受ける本だろうなーと思う。
 でも、わたしにはあんまり必要ない本だったかな…。


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 9

バルタザールの遍歴 (文春文庫)

著者 : 佐藤 亜紀

出版社:文藝春秋

発売日:2001-06

評価 :

完了日 :

 第三回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。第二回は大賞該当作がなかったので、実質的には二回目の大賞受賞作。

 ひとつの体に宿った二つの魂、メルヒオールとバルタザール。彼らを本当に理解してくれたのは従妹のマグダのみだった。
 公爵の爵位を持つ二人はハプスブルグ家が没落しナチスの台頭する時代の中で転落の一途の人生を辿る。放蕩により財産を食いつぶし、父が財産整理をしてただひとつ残していた広大な屋敷も父の死後叔母に奪われる。父の後妻として家に入ったベルタにバルタザールは夢中になるが、彼女も父の死と同時に姿を消す。結婚の決まったマグダに想いを残しながらも二人は屋敷のあるウィーンを出てゆく。どこへとも当てのなかった二人は思いつきでアフリカを目指すが…。

 あらすじを書いてみたところでこの小説の魅力はひとつも伝わらない。佐藤亜紀、恐るべし。まるで翻訳小説のような佇まいのこの作品は品格ある文章で読者を一気にメルヒオールとバルタザールの二人に惹きつけて離さない。そこにあるのは退廃の美だ。二人は二人であるがためにいつでも孤独ではない。彼らは彼らの世界の中に完結している。つねに最悪の選択肢を選んでしまう彼らはそれ故にけして転落した先から這い上がることがないけれど、その転落に悲壮さはない。

 彼らをとりまく登場人物もまた魅力的。
 従妹のマグダ、義母のベルタ、ナチの少尉エッグハルト、叔父のグラーベンメッサー、使用人にして父の秘密を知るロットマイヤー。

 一筋縄ではいかない登場人物たちに、一筋縄ではいかない物語。物語は終わっても、二人の遍歴は続く…。
 「読書」の醍醐味を思う存分堪能することができた一冊。


その他の本の感想はこちら♪
http://www.geocities.jp/choroimo/


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 2

ぬかるんでから

著者 : 佐藤 哲也

出版社:文藝春秋

発売日:2001-05

評価 :

完了日 :

もう何を言えばいいやら…

『イラハイ』でしびれ、『沢蟹まけると意志の力』でもうダメかと思うほどヤられてしまったわたしなんだけれど、この作品で徹底的に打ちのめされた。

佐藤哲也、すごすぎる。

今回は初めての短篇集だったんだけれど、表題作である冒頭の「ぬかるんでから」でもうシビれた。続く13篇すべての作品がわたしを内部から崩壊させた。

短篇なだけにあのしつこすぎるくらいのしつこさはかなり薄まっているのだけれど、その分読みやすさは上昇。そして、こちらの方が他の長編よりもストーリー性が高い(笑)。

誰にでもお勧めできる本じゃないかもしれない。
でもわたしは大好きだ!
佐藤哲也の本に出会うことができて、かつ、佐藤哲也の作品に選ばれることができて、わたしは本当に幸せだ。


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 9

ラス・マンチャス通信

著者 : 平山 瑞穂

出版社:新潮社

発売日:2004-12-21

評価 :

完了日 :

第16回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。

 父母と姉と暮らす「僕」の家には、「アレ」が住んでいて、好き勝手に暮らしていた。
 誰も「アレ」のすることを邪魔することは出来ない。しかし「アレ」は次第に「僕」の姉に興味を示しだし、「僕」はふとしたはずみで「アレ」を殺してしまう…。

 異形のモノが普通に生活の中に存在する世界で、「僕」は正しく行動しようと足掻きながらもどんどんと追いつめられていく。施設に送られ、仕事を失い、そして…。

 読んでいる間は引き込まれてぐんぐんと読み進み、読了して呆然とした。ええっ、結局いろいろな説明はナシのままなの!?
 帯に「カフカ+マルケス+?=正体不明の肌触り」とあるけれど、たしかにカフカっぽい不条理さやマルケスっぽいマジック・リアリズムが散りばめられている。でも、カフカもマルケスも、読み終わった後にこんな欲求不満な感じは残らなかった…。

 説明をせずに放っておくこと自体が悪いわけではないし、それが効果的な場合もあるけれど、でももう少し親切にしてほしかったなあ…。

 ただ、この独特の雰囲気はかなり好き。読んでいる最中は先が気になってやめられなかった。


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 16

後宮小説 (新潮文庫)

著者 : 酒見 賢一

出版社:新潮社

発売日:1993-04

評価 :

完了日 :

 栄えある第一回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。

 1607年、先帝の崩御と同時に新しい後宮のための宮女を集めるために宦官たちが各地へ出立した。自らの出身地から宦官・真野が連れ帰った宮女候補はただ一人、まだ道女(一人前の女性)となる前の美しい少女・銀河だった。
 後宮の入り口で、銀河は謎めいた黒ずくめの美女・双塊樹(コリューン)と出会い、宮女となるべく数多の宮女候補たちとともに仮宮に住まわされる。同室に割り当てられたのは高貴で美しく、冷たい玉遥樹(タミューン)、気位の高い世沙明(セシャーミン)、そして無口で無表情な江葉の3人だった。そして世にも奇妙な宮女教育が始められる…。

 おもしろかった。
 もっとマジメなファンタジー(笑)かと思っていたら、全編これパロディというとんでもない本。一瞬中国の歴史に基づいたストーリーだと信じそうになってしまったわ! 滅び行く国の後宮の物語なのだけれど、その原因を作る乱を起こす反乱軍の主要メンバー、混沌のキャラが秀逸。

 中華ファンタジーの一種なのだけれど、実際にあった史書に基づいている、という形式を取っていて(もちろんこの史書もでっちあげ!)、なんというか、作者の距離感が絶妙なのですな。

 やっぱりデビュー作だからなのか、ちょっと話の流れがぎくしゃくした部分があるにはあるのだけれど、そんな些細な瑕疵はどうでもよくなってしまう痛快な作品でした。


この感想へのコメント

1.戸羽葉平 (2006/09/25)
 こんにちは。こちらでは初めましてでしょうか。
 酒見賢一はコレと『墨攻』しか読んでませんが、とても大好きです。漢文調の文体と凝縮感がイイですよね。あとは人を食ったようなストーリー展開とか。
 また他のシリーズ物も読んでみたいものです。
2.ちょろいも (2006/09/25)
>策序さん

いらっしゃいませ♪
わたしも酒見賢一はこれしか読んでいないのです…(汗)。
でもとっても好みの作風の作家さんだなあと思います。
めっちゃおもしろいという噂の『陋巷に在り』とか、『泣き虫弱虫諸葛孔明』とか、読みたいものはたくさんあるんですけどね…(涙)。
 

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 2

昔、火星のあった場所 (徳間デュアル文庫)

著者 : 北野 勇作

出版社:徳間書店

発売日:2001-05

評価 :

完了日 :

 二つの会社が火星の権利争いを行った挙げ句火星は分解し、時空の狭間に生まれたある世界。そこでは人間とタヌキが勢力を競っていた。
 一方の会社に所属し、火星を奪い返すための開発事業に携わる”ぼく”は同期入社後退職した”落伍者”が”鬼”となって事業を妨害していることを知らされ、彼と対決するために上司とともに火星へ赴く。しかしそれが原因で”ぼく”は職を失うことになった…。

 人工知能”小春”を開発している”ぼく”の”彼女”。
 たぬきが見よう見まねで興した”会社”。
 火星へ旅立ったスペースシャトルとそこで眠る宇宙飛行士たち。
 突如町に出現した”駅”と、糠田精機の社長が命に替えてまで守ろうとした、そこで見たものの記憶。
 物語は非常に難解。こんなに簡単な言葉でこんなに難解な話が書けるなんてある意味スゴイ。ひとつひとつの文章を抜き出したところで、その作品が難解であるなんてとても思えない。けれど、読んでも読んでもその作品の全貌はうまく像を結ばない。読者に与えられるパズルピースはとても小さくて、しかもすべてのパズルピースは揃っていない。

 なんだか読んでいるこちらまでが「たぬきに化かされた」ような気分になった、不思議な不思議な作品。

 結局、ばかばかしい争いの挙げ句崩壊した世界をなんとかもとに戻すために、一人孤軍奮闘したのは”彼女”だけだったのかしら。


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 7

イラハイ (新潮文庫)

著者 : 佐藤 哲也

出版社:新潮社

発売日:1996-09

評価 :

完了日 :

 第5回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。ぶっ飛んでる!

 とにかく文体が独特。この文章に慣れることができなければ読むのはかなりツライんじゃないかしら。わたしはものすごーく好きですが。

 あまりにもくだらない話をものすごーく論理的にしつこくしつこく語っている。
 だいたい、「この物語にはこのような目的が与えられているので…(以下長いので略/笑)…始まりに発端があって終わりにその結末があり、その間には発端から結末に至るまでの経緯が記されている物語である。」って書いてあるのに、本も半ばにならないと物語が始まらないってどうよ(笑)。

 今ばっと開いて任意の文章をちょっと書き写してみると、

 「この兵士が高級なのであれば、我々の上に立つ者であり、我々はこの兵隊に対して敬意を払わなければならない。その敬意を払うことによって得る我々の利益はなにか、また我々が受ける損害は何か」
 キリウリの代官はこれに答えてこのように言った。
 「敬意を払うことによって得る利益とは、その兵士の姿に似せた立派な石像であり、これは町の共有財産となる。そして敬意を払うべき相手はすでに死体となっているので、これによって受ける損害はなにもない」
 これを聞いた町の者は残らず納得し、遺体に向かって平伏した。


 こんな文体の小説ってなかった気がする。わたしは読んでいて何度も何度も聖書を連想した。聖書ってこんな文章だよね…。

 ああ、どうして今まで読んでなかったんだ、佐藤哲也。
 好き嫌いは分かれるかもしれないけれど、個人的には、もしかすると奥さんの佐藤亜紀の『バルタザールの遍歴』よりも好みかもしれない。どっちが作品として上かとかそういう話は別にしても。

 とにかく、今かなりシビれてます(笑)。



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