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ちょろいもさんの読書ノート

クレストブックスを読む。
クレストブックス、全部持ってます。
もちろん全部読んでます。
そう言いたい憧れをもつ本好きは多い。多分。
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 14

パリ左岸のピアノ工房 (新潮クレスト・ブックス)

著者 : T.E. カーハート

出版社:新潮社

発売日:2001-11

評価 :

完了日 :

 いやー…。
 なんでクレストブックスはこんなにいい仕事ばっかりするんだ!!

 小説ではなくてノンフィクションなんだけれど、上質の小説のような味わいのある一冊。 パリの閉鎖的な、けれど一度入り込むことさえ出来ればとても居心地のよい独特のコミュニティ。

 ピアノの魅力に惹かれたひとりのアメリカ人が小さなピアノ工房に集まるコミュニティに招き入れられ、やがてピアノの深く多彩な魅力にますます取りつかれ、人間関係の滋味を味わい、音楽に彩られる人生に足を踏み入れる。

 ああ、いいなーこんなピアノ工房。

 思わずうちのアップライトを弾いてみたくなった。
 そして、ベートーベンのピアノソナタを聴きたくなってCDラックを探すものの、ない。 あ、これもいいわ!とセロニアス・モンクのCDを引っ張り出してくる。 ジャズなんて滅多に聴かないんだけど(笑)。 とにかく、ピアノ曲ならなんでもいいから聴きたい気分になった。

 綿密に調べて緻密に書き上げるタイプのノンフィクションじゃなくて、けれどピアノの魅力、パリの魅力を限りなく引き出している一冊。

 きっと素敵な時間が過ごせること請け合い。


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4.ちょろいも (2006/09/16)
>ペネロペイアさん

ぜひ、読んだら感想を教えてくださいね。
気に入ってくださるといいんですが。
5.anokeno (2007/06/10)
私も読んでみたくなりました ありがとう

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 7

ある秘密 (新潮クレスト・ブックス)

著者 : フィリップ グランベール

出版社:新潮社

発売日:2005-11

評価 :

完了日 :

 「ぼく」は生まれつきひ弱な少年だった。間に戦争は挟まったものの、難を逃れ幸せに暮らしてきた両親の間の一粒種で、両親の愛を一身に受けて育ったはずなのに、「ぼく」は不安で、ある日屋根裏部屋で小犬のぬいぐるみを見つけたのをきっかけに、心の中に「兄さん」を作り出した。以来「兄さん」の影に隠れるように暮らしてきた「ぼく」に、やがて「兄さん」は重荷になってくる。そして15歳の誕生日を迎えた翌日、「ぼく」はある秘密を知ったのだった…。

 本当に価値のある、いい作品に出会うと言葉を失う。
 けして長くはない物語に、詰まっているのは本当に純粋で美しい結晶体。無駄な文章はどこにもない。

 静かに、少しずつ、心の中に流れ込むような物語。
 悲しく、つらい秘密を知って、それを抱えて、昇華させてゆく「ぼく」。読み進むうちにしんしんと胸の中に何かが降り積もっていくようだ。

 フランスで「高校生が選ぶゴングール賞」という、高校生が選ぶ賞を取った作品らしいのだけれど、こういう作品を選びうるフランスの高校生の質の高さに驚きと羨望を感じた。

 ちなみにこれは作者の自伝的小説と言っていいみたい。訳者あとがきで、作者グランベールへのインタビューの内容が触れられている。

 ”…両親の物語を書こうと思いついた。…夢中で書き上げた。だがそれから苦労が待っていた。文章が感情に流され、あまりに思い入れたっぷりであることに気がついたのだ。…「残ったのは骨の部分だけでした。結局、それだけが必要だったのです」。”

 ああ、これこそが、この作品を明確に「手記」ではなく「物語」にしている理由なのだ。

 とにかく胸に染みる一冊。巡り会えた幸せに感謝する一冊。


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2.ちょろいも (2006/08/02)
>しらっちさん

なんというか、押しつけではなくすごく色々なことを考えさせられました。本当に「逸品」ですよね~。
3.anokeno (2007/06/10)
高校生のレベル高いですね

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 1

黄金の声の少女 (新潮クレスト・ブックス)

著者 : ジャン=ジャック・シュル

出版社:新潮社

発売日:2005-05-28

評価 :

完了日 :

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 7

新潮クレスト・ブックス 遺失物管理所 (新潮クレスト・ブックス)

著者 : ジークフリート・レンツ

出版社:新潮社

発売日:2005-01-26

評価 :

完了日 :

 ヘンリーの新しい職場は鉄道の遺失物管理所だった。彼はいっぺんにその職場が気に入った。上司のハルムスも、ベテランのブスマンも、そしてもちろん美しいパウラも。
 遺失物管理所にはさまざまな人が訪れ、またさまざまな物が集まってくる。ある忘れ物から彼は一人のバシュキール人・フェードルと知り合い、親交を深めるようになる。ヘンリーの姉のバーバラも彼に惹かれていく…。

 遺失物管理所という舞台から、さまざまな人間模様が描かれるのかと思ったら、それはおまけのようなものだったのがちょっと意外。物語はどちらかというと淡々と進んでいく。まるでさらさらと流れる小川の底の小石たちのキラキラ光る様子を描いたような作品、とでも言う感じかしらん。

 明るくて前向きだけれど上昇志向のないヘンリー。彼がちょっかいを出す人妻のパウラ。行動的なヘンリーの姉・バーバラ。そして純粋すぎるほど純粋なフェードル。

 ちょっとヘンリーの性格のつかみどころのなさに戸惑った。明るくて人なつこくて、パウラに何度でもちょっかいを出して、ただその場をすーっと泳いでいるようかと思うと、横暴な暴走族と話し合おうと彼らを捜し回ったり。彼にとって一番大事なものって何なんだろう?
 フェードルの後半の唐突な行動にもややびっくり。

 読んだ後は心地いい気分になれたんだけれど、後から考えてみると少し、わたしとは隔たりを感じるというか…(苦笑)。
 とっても雰囲気のいい作品なのだけれど。


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 4

新潮クレスト・ブックス彼方なる歌に耳を澄ませよ (新潮クレスト・ブックス)

著者 : アリステア・マクラウド

出版社:新潮社

発売日:2005-02-26

評価 :

完了日 :

 とくべつに何が起こるわけでもない。けれども静かに静かに、厚みを増していく物語。久しぶりに「読書体力」を要する本を読んだ気がする。

 18世紀末にスコットランドからカナダの島に渡った男とその家族。彼らの子孫は「クロウン・キャラム・ムーア(赤毛のキャラムの子供たち)」と呼ばれ、島のあちこちに存在した。

 一族の歴史を語るような内容に『百年の孤独』を連想した。クロウン・キャラム・ルーアは衰亡を辿ったわけではないけれど。

 正直、最初はいつまでも進まない物語に読むのが苦痛だった。さらに読み進めながらも、一向にぐいぐい読者をひっぱるような展開にならずに、退屈な本かも・・・と思ったことも。けれど淡々と読み進み、本を閉じて呆然とした。いつのまにか物語がじわじわと自分の中に侵食し、その重厚さに圧倒されていたことに気づいて。

 この物語はけしてリーダビリティのある、スピード感のある物語ではない。途中で挫折する人もきっといるだろう。けれど読み終わったときのこの手ごたえ、この余韻。さくさくっと読めてしまう本ではけして手に入れることのできない幸福感。
 ああ、本を読むことが好きで幸せだ。

 同じ兄弟でありながら、突然の環境の変化によってその人生がまったく違う方向へ進んでいってしまうアレグザンダーと長兄のキャラムは、それでもしっかりと繋がっている。それは彼らが「クロウン・キャラム・ルーア」だからだ。道を歩いていてまったく知らない人からとお小遣いをもらう。それはお互いがクロウン・キャラム・ルーアだからだ。
 キャラムの子供たちもさることながら、頑張りすぎる犬の一族もいいんだよねえ。

 日ごろ軽めの読書に物足りなさを感じている人は、ぜひ読んでみてほしい。きっと本を閉じたときには静かな波のように、何かがひたひたとこころに押し寄せてくるはずだ。


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 1

新潮クレスト・ブックス ナターシャ

著者 : デイヴィッド・ベズモーズギス,小竹由美子

出版社:新潮社

発売日:2005-04-01

評価 :

完了日 :

旧ソ連ラトヴィアからカナダに移住してきたユダヤ系移民・バーマン一家の物語。どれも切ない物語が繊細に描かれている。移民して間もない頃、慣れない生活と差別とに(特に両親が)苦労する中で、同じ移民の夫婦から日中の世話を頼まれた犬を事故に遭わせてしまう冒頭の「タプカ」でいきなり心を掴まれた。

 連作短編の形になっており、主人公であるバーマン家の息子・マークの視点でストーリーは進んでいくのだけれど、やっぱり圧巻は「ナターシャ」。いい人だけれど貧しい大叔父と結婚して旧ソ連からやってきた女の連れ子としてマークの前に現れた14歳のナターシャは、16歳のマークを性的な意味で翻弄する。その奥の彼女の抱える哀しさのようなものに、振り回されてばかりのマークは気づいてやることができない。

 読みながら、けれど結局わたしにはバーマン一家の本当の意味での悲しみや、喜びは理解できないのかもしれない、と思った。ユダヤ人でなく、移民でなく、本当の意味での差別も受けたことのないわたしには。
 けれど「わからないことがわかる」というのが大切なんじゃないかな、と思う。

 「わからない」と認めるのは、相手を認めないこととは違う。「わからない」と了解しているからこそ共感できるものもあるし、歩み寄れる部分もある。まったくわたしとは違う生活を送る彼らの生き方は、確実にわたしの中のどこかを刺した。
 思いがけない鋭い痛みは、けれどわたしにはとても大切だ。


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