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ちょろいもさんの読書ノート

’07 こんな本が好みです♪
2007年に読んだ本の中から自分の好みだわ~!と思った本を集めてみました。
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 1

神無き月十番目の夜 (小学館文庫)

著者 : 飯嶋 和一

出版社:小学館

発売日:2005-12-06

評価 :

完了日 : 2007年02月16日

 読み通すのが苦しかった。

 1602年(慶長7年)、常陸は比藤(ころふじ)村の肝煎(庄屋)・大藤嘉衛門は突然水戸城からの使いを受け、山深い小生瀬(こなませ)村まで案内させられる。広い村はなぜか全くの無人で、にもかかわらず宿とした民家にはつい最前まで確かに人が暮らしていた生活の跡が残っていた。村人はいったい何故、どこへ消えたのか。やがて嘉衛門はかつてこの村で暮らしていた若者・吾助から教えられた「カノハタ」で酸鼻極まる光景を目にする…。

 ラストが最初にわかっているから、読むのが辛い。
 読むほどに胸が苦しくなる。
 行き違い、誤解、疑心暗鬼、物事は悪い方へ悪い方へとじわじわと進んでいく。

 小生瀬の一揆と虐殺は実際にあったと言い伝えられているらしい。しかしその年代は特定されず、公式な資料も一切残されていない。そんな出来事をここまで膨らませ、ひとつの物語にまで昇華する飯嶋和一のすごさに驚嘆。

 検地・刀狩りと言えば豊臣秀吉の行った代表的な政策。

 わたしが知っているのは、そんな学校で習ったたった1行の知識だけだ。しかも普段、わたしたちは歴史を施政者の立場から見ることが多い気がする。信長はいかにして天下を統一したか。家康はいかにして幕府を盤石なものとしたか。

 けれど被支配者から見たとき、歴史はまったく別の様相を現す。

 戦は地獄。
 けれど、平和も地獄。

 検地がこれほど恐ろしいなんて考えたこともなかったわたしの浅はかさ。

 苦しくて苦しくて、光がどこにも見えなくて、けれど読み通すだけの価値が確かにある。
 淡々と、少しずつ外堀を埋めるように、物語をすすめていくその文章の美しいリズム。誇りを持って生き生きと暮らしを送る村人達の描写。魅力的な登場人物達。
 苦しい中にも確かに、この本には読書の喜びがあった。


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 2

マグヌス

著者 : シルヴィー ジェルマン

出版社:みすず書房

発売日:2006-11

評価 :

完了日 : 2007年02月14日

 『ある秘密』で注目したフランスの「高校生が選ぶゴングール賞」2005年受賞作。相変わらずレベル高っ…!

 男の子は5歳の頃、ひどい病気にかかって命と引き替えにそれまでのすべての記憶を失った。母親はありったけの時間を割いて、彼をもう一度育て直した。
 彼の手元にある少し焦げた匂いのするクマのぬいぐるみ。その首許に巻かれた布には「MAGNUS」とその名が刺繍されている。

 ナチスの強制収容所で働いていた医師である父を持つ男の子は、住んでいた家を出て逃避行に出ることになる。覚えた名前は変えなければならない。やがて父と別れて母と二人になり、男の子はその母親も失うことになる。
 またもや男の子は名前を変えなければならない。


 作品は「断片(フラグマン)」と「注記(ノチュール)」、「続唱(セカンス)」、「反響(レゾナンス)」などによって構成されている。記憶力の優れた男の子。けれど彼の抜群の記憶力をもってしても、ひとりの人間の人生は断片の寄せ集めに過ぎない。失われた記憶は埋めることができない。

 この作品の裏テーマは「父と子」だなあ、と思う。父を愛し、憎み、その憎悪によって人生に大きな打撃を受ける男の子。憎みながらもきっと父親を愛し、求め続けていたのだろう彼の行動は切ない。愛していなかったのならなぜ言語の習得にそこまでの情熱を持つことができただろう。父と、彼の同伴者を見てここまで彼を憎む必要があっただろう。

 愛されずに育った男の子は愛し方を知らない。しかし自分が愛を得たと確信した途端に彼の愛は奪われる。

 失い、再び得、そしてそれをまた奪われる。
 記憶も、愛情も。

 しかし、積み上げては崩れる賽の河原の小石積みのようでもある彼の人生は、それでも崩れない何かをちゃんと積み上げているのだ。名前を失っても、記憶を失っても、愛情を失っても、人生が失われるということにはならない。

 ひとりの修道士が現れる。「こんにちは、息子」。
 彼は男の子に何も与えないけれど、彼から何も奪わない。

 悲痛で、重く、薄い本であるのにずっしりと心に響いた。そして最後に射す一筋の光明はなんて明るく暖かいんだろう。

 自分探しなんてしてる人はぜひ、この本を読んだらいい。


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 1

BA‐BAHその他

著者 : 橋本 治

出版社:筑摩書房

発売日:2006-12

評価 :

完了日 : 2007年02月02日

 いやーーーーーーー 。

 なんていうか、やっぱり橋本治って「別格」だと思う。

”咲く花は雨に打たれ、色衰えて骸となる。そよぐ柳は風になぶられ、木枯の時、しおれしなびた鞭となる。”

”受胎の日が決まって、タロウは天使の許へ通い始めた。”

”バイトを始めてまだ一ヶ月もたっていないが、「男達の序列」に関しては分かるようになった。店で一番大切なのは「客の中の序列」で、客の男達にとっても、そのことが一番の大事であるらしかった。”

”俺、離婚するよ。
 え? あいつしかいないじゃん。他に結婚してないし。”

”時に、冬十月。散る花とてもなく、下り居の帝は、御前の紅葉を散る花と思し召されて眺めおわします。”

”もしもそれがシャア役の池田秀一だったら、組長は、肩を組んで酒を汲み交わしたかっただろう。しかし、相手はアムロさんなのだ。迷惑はかけられない。”


 同じ本に収録された短篇の一文を抜き出して並べてこうだもの。またそれぞれのジャンルがもう、めちゃめちゃ。強いて括るなら「橋本治」。こんな作家がいったいどれだけいるんだろう。

 橋本治の目線はどこにでも乗り移れる。それがスゴい。
 女子高生にも、親離れできない初老の母親にも、小学生男子にも、平安の「物狂いのお心が宿られていた」帝にもなれる。

 どれもこれも鳥肌の立つような(ホラーって意味ではなく!念のため)作品が多かったけれど(個人的に表題作はイマイチ…)、あえて選ぶなら「関寺小町」、「他人の愛情」、「孤帝記」、「組長のはまったガンダム(前・後編)」、「火宅」が好きかなあ。


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 15

僕たちは歩かない

著者 : 古川 日出男

出版社:角川書店

発売日:2006-12

評価 :

完了日 : 2007年01月30日

 めっちゃめちゃ薄くてまずびっくり(笑)。
 でも文章はまがう事なき古川日出男。

 「26時間制の東京」で出会った、「どこかから戻った」僕たちは、同じ料理人として切磋琢磨し合う仲間たち。これからも仲間が増えることこそあれ減ることなんてないと思っていた…。
 しかし僕たちから仲間は失われる。そのひとりに会うために、僕たちは冒険に出る。そうだ、僕たちは歩かない。

 ここまでファンタジーな古川作品はたぶん、これが初めて。有名な神話を彷彿とさせる物語なのだけれど、突飛な設定がめちゃめちゃ素敵~。

 文章の疾走感が物語の疾走感と絶妙にマッチして、ベルカやサウンドトラックみたいな「文章の激流に呑まれる」ような体験は出来ないかわりに文章とともに疾走する感覚を味わえる。

 ああ、これから古川作品に興味があるけれど読んだことのない人には、これを真っ先に勧めることにしよう。
 これならきっと、初古川でも戸惑うことは少ないはず。

 古川ジャンキーなわたしには正直少しだけもの足りなかったんだけれど、でも、とっても素敵な古川日出男から読者への小さな冬のプレゼント、だと思う。


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 8

アド・バード (集英社文庫)

著者 : 椎名 誠

出版社:集英社

発売日:1997-03

評価 :

完了日 : 2007年01月20日

 廃墟と化し、危険であやしい生物たちが蠢き、わずかな人間たちが細々と暮らす町からマサルは弟とともに旅立つことを決意する。かつて何者かに捕らえられた父を捜して。
 旅の道連れとなったアンドロイドのキンジョーとともにマサルたちは巨大な都市を目指す。そこは広告に支配された想像を絶する街だった…。

 とにかくそのイメージ喚起力がすばらしい。
 ヒゾムシ、ワナナキ、地ばしり、蚊喰い虫。
 おぞましくもどことなく愛らしい奇怪な生物群。
 空を埋め、海を操り、人間の日常生活に連なるほとんどすべての道具に組み込まれる押しつけがましい広告、広告、広告。
 オットマンとターターさん(なぜかわたしまでさんづけしてしまう/笑)の勢力争いのその行く末に待っていた世界。

 これがSF大賞か!
 やっぱりわたしはSF者なのか!(笑)

 でもあまりバリバリハードなSFではないので、SF嫌いの人でもこれならすんなり読めるのでは。文章もとても読みやすくて、しかもとにかくすごい独創的な不思議な世界で、しかも兄弟プラスアンドロイドのわくわくするような冒険譚なので、わりと多くの人に安心してオススメできる作品。

 とにかくこの世界を見よ!


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 2

虚航船団 (新潮文庫)

著者 : 筒井 康隆

出版社:新潮社

発売日:1992-08

評価 :

完了日 : 2007年01月13日

 読むのに3日もかかってしまった。

 とにかく、おもしろい。
 めちゃめちゃにおもしろい。
 鳥肌が立つくらいにおもしろい。

 ホントは1日たっぷり何もしないでこの本だけを持って、ずっとずっと読み続けたかった。 なかなかそうはいかない主婦の時間の細切れさよ…。
 だってこれは一気読みこそがふさわしいと思う。
 いつまでもいつまでも続く文章。
 途切れない文章の中でいつのまにか主語すら変わってしまうその超絶文章。
 この文の途中で本を閉じざるを得ないことの辛さったら。

 まずいきなり最初からぶっ飛んだ。
 だって文房具が乗組員の宇宙船ですよ。
 出だしの文章が、
「まずコンパスが登場する。彼は気がくるっていた。針のつけ根がゆるんでいたので完全な円は描けなかったが自分ではそれを完全な円だと信じこんでいた。」
ですよ。
 いきなり何が始まったのかと(笑)。
 相変わらずまっったく前知識ゼロだったので。

 この文房具が文房具なのに容貌の形容が文房具だったり人間だったりする。最初えっと思って、読むうち「だってこれは虚構だから」という作者の声が聞こえてくる。
 そうか、虚構だからアリなのね!
 と受け容れられるかどうかが最初の関門かもしれない。
 難なく関門突破(笑)。

 第1部はどこへともなく航行を続ける文具船の中の文具たち。誰もが少しずつ狂っている文房具たちが本当に人間くさくて、哀れで、おかしくも切ない。ゲラゲラ笑いながら泣けてくる。だってこれは自分のことだから。
 コンパスのくどさが切ない。
 赤鉛筆の視野狭窄が切ない。
 存在感のない虫ピンが切ない。
 カウントすることだけが愉しいナンバリングが切ない。

 第2部はその文具船が殲滅命令を受けた対象である、流刑に処されたイタチ族たちの惑星クォールの歴史。これはちょっと読むのがつらかった…。
 まるで歴史の教科書を1冊最後まで読まされるような記述。
 何年に何族がどこへ移動した、何年に何が発明された、何年に誰が反乱を起こし、何年に誰が王位を継いだ…と延々と淡々とつづく歴史の叙述。
 ただ、なんせイタチなので呆然となるような内容もたくさんあって面白くないというわけでは全然ない。
 …と思っているうちにだんだん気づいてくる。
 これって…イタチの歴史だよね?
 だってオコジョの兵士とか美女のスカンクとか、全然まるっきり人間と違った意表をつく歴史が…書かれていくんだよね?
 イタチの王とイタチの法王が権力抗争を繰り広げる。
 鼠鬼女(そきじょ)狩りが行われ、屁に火が燃え移らなければ鼠鬼女となり処刑、火が燃え移れば焼け死ぬという見分け方が採用される。
 ルネッサンスが起こり、ミンクのロナルド・ダ・ミンク、ゾリラのゾリランジェロなどが活躍する。
 …。
 ええ、これはイタチの歴史ですとも。
 わらって読めばいいんですよ。

 第3部は殲滅計画実行の顛末。
 絶望的な計画の行方。
 狂った文房具たちの運命。
 そしてダダ漏れしてくる作者の日常。
 思いっきりなメタフィクション展開。
 すごいよなあ、ツツイ。すごすぎるよ。

 そして何よりも素晴らしいのは、とんなに意味深で、ブラックで、皮肉に満ちていたとしても、これはとびっきりのユーモラスな作品だということ。ホチキスが針を吐く度わたしなんてもううれしくてうれしくて(笑)。

 なんというか、空前にして絶後。
 傑作! って今さらわたしが言うまでもない(笑)。
 世の中には才能ってあるんだ、と思う。

 もうこれで今年のベスト1は決定ですか?
 作品の刊行から20年以上が経って、これを越えた作品はありませんか?

 とりあえず、この作品はずっと残すべき1冊だと思った。
 後生に伝えるべき一冊。


この感想へのコメント

3.戸羽葉平 (2007/01/27)
>機能がいろいろ強化
 うーん。うーん。まぁ、強化されたんでしょうか(笑)。
 今は忙しいんですが、2月後半は暇な時間が増えそうなんで、そのときにでも読ませて頂きます。なんか、一気読みした方がいいみたいなんで。
 折角なんで、自分に合ったら良いなぁ~。今から楽しみ!
4.ちょろいも (2007/01/27)
>策序さん

強化されてますよ(笑)! ブログとかHPとか登録できるようになりましたし。
一気読み推奨ですがものすごく体力勝負になるかと思います(笑)。
合わなかったら許してください(笑)。

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