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2008年 読んだ本(75)

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ニセ人事課長さんの読書ノート

2008年 読んだ本
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 1

指導者の条件―人心の妙味に思う (PHP文庫 マ 5-8)

著者 : 松下 幸之助

出版社:PHP研究所

発売日:1989-02

評価 :

完了日 : 2008年11月30日

今週行く研修の課題図書2冊目。
謙虚と感謝。真理は普遍と言えども、ここにある高潔さが今の世にどの程度に通用するかと思うと…。


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 1

経営心得帖 (PHP文庫)

著者 : 松下 幸之助

出版社:PHP研究所

発売日:2001-05-01

評価 :

完了日 : 2008年11月29日

今週行く研修の事前課題図書。
雨が降ったら傘を差す。当たり前のことなんだけど、商売になるとこれが結構難しいもんで。


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 2

シャングリ・ラ 下 (角川文庫)

著者 : 池上 永一

出版社:角川グループパブリッシング

発売日:2008-10-25

評価 :

完了日 : 2008年11月29日

フゥ~っと、漸く読み終えた。面白いんだけど、ちょっとしつこく長かったんだよね。
上巻でだいたい舞台設定が整ったかと思っていたけど、涼子みたいなキャラが出てくるは、草薙が×××××だったり、ミーコが×××になったり、どんどん話が展開して、昔々の冒険活劇みたいに主人公がクリフハンガー…でも翌週には意外とあっさり味方が現れて脱出、みたいな展開が次々続いて、涼子や小夜子や水蛭子は何回殺されてもまた出てくるし、もう目茶苦茶破茶滅茶。
アトラス建設の謎が知りたくてひたすら読み進めたら、これがあらぬ方向へ飛んでいくし、それでも最終章のノンストップな展開にはドッキドキで、最後の余韻も落ち着いて。
と思ったらもう9頁あるけたたましさ。ちょっと疲れた。。。


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 3

シャングリ・ラ 上 (角川文庫)

著者 : 池上 永一

出版社:角川グループパブリッシング

発売日:2008-10-25

評価 :

完了日 : 2008年11月22日

この頃どこの企業でも環境経営ってやつに躍起で温暖化阻止のためその元凶と見做されるCO2削減に努めているけれど、11年周期で増える筈の太陽の黒点が増えず、実は長~い目で見ると地球は寒冷化に向かっているという説もあったりするのをご存知?
てな具合で最近は何をおいてもエコ、エコだけど、とまれ、この小説、温暖化の果てに再び起こった関東大震災で壊滅した東京が森林化され、その上に築かれたアトラスという超巨大高層都市に首都機能と一部の裕福な人間が移転、アトラスに移転出来ない難民は熱帯雨林と化した地上でゲリラとして政府に立ち向かう、といった設定。
そうしたハードな社会、経済、文化的問題を背景に堅い話と思いきや、そこに展開されるはアニメも顔負けのSF的設定に呪術や医学や兵器や小ネタもテンコ盛りのストーリーで、反政府ゲリラの若きリーダー・國子、アトラスの新迎賓館に幽閉される美邦、炭素が支配する経済を逆手にビジネスに走る香凛の3人の少女を中心に、彼女らを取り巻く脇役のキャラ立ちも賑々しく、凶暴な森やアトラスの威容、國子の信じられないような戦いっぷりには、頭の中にビジュアル思い浮かべながら読みつつ、想像力乏しくて文章の中身に絵が追いつかないくらい。
舞台設定は整い、太陽と月になぞられる國子⇔美邦、凪子⇔タルシャン⇔香凛、モモコ⇔小夜子⇔ミーコ、それぞれの対峙も散りばめられ、漸う國子がアトラスへ乗り込む。続く下巻でどう展開?期待料込みでの☆4つ。


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 1

ジェシカが駆け抜けた七年間について (角川文庫)

著者 : 歌野 晶午

出版社:角川グループパブリッシング

発売日:2008-10-25

評価 :

完了日 : 2008年11月06日

寒くなってきてそろそろマラソンの季節ですね。来週に迫った東京国際女子マラソンは1979年に始って黎明期の女子マラソンの歴史を紡ぎ、30周年の今年を限りにその役割を終えて姿を変える。
この本、東京の大会とは直接の関係はないのだけど、時代的には丁度その大会が始まった頃に、クラブチームでメジャーなマラソン大会を目指して走っていた女性を描いたミステリー。
エチオピア人のジェシカは貧しい暮らしから這い出るために、日本人監督ツトム・カナザワが主宰するクラブチームで練習を積む。走りで頂点を目指す様々な国から来たチームメイトの中にアユミ・ハラダという日本人ランナーもいた。
そのハラダが監督との間のトラブルで失意の内にチームを去り、程なく自殺体で見つかる第1幕。その5年後、アメリカの観光地に死んだ筈のハラダが現れ、しかもその分身がいるかの如く描かれる第2幕。そのまた2年後、ジェシカが走る新潟でのマラソンの競技中、スタジアムの用具室で何故かジェシカと監督が対峙する第3幕。漸う事件が起こり(監督が死体で見つかり)犯人探しが始まる第4幕…。
女子マラソンの世界を描き、精神に重きを置く鍛錬と合理的科学的であろうとするトレーニングもせめぎ合いなども適度の背景描写として、謎解きが始まる。
この謎解き、それを知らないとなかなか分からないと思うけれど、そう思って読み返すと色々気付きの種は蒔いてあって、「葉桜の…」の時には今いちスッキリしなかった私ですが、今回はまあ納得です。


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 5

金春屋ゴメス (新潮文庫)

著者 : 西條 奈加

出版社:新潮社

発売日:2008-09-30

評価 :

完了日 : 2008年11月03日

3連休の最後はゆったりと、ファンタジーノベル大賞受賞の時代劇調本作で締めるかと。
月に人類が住む近未来の日本で、関東と東北の間に人工的に江戸時代を再現した「江戸」という国が存在。子供の頃に江戸国に住んでいたことのある大学生の辰次郎が、父の希望で再び江戸国に入国し、長崎奉行の元で鬼赤痢と呼ばれる疫病の謎を追う。
辰次郎とともにやってきた江戸萌えの松吉や海外フリークの奈美に金春屋の仲間たち、そして何よりタイトルロールのお奉行様。それぞれ個性も容貌も様々に、辰次郎の過去を紐解く作業と鬼赤痢という病原体の正体を突き止めるミステリーが絡み合い、現代に出来たテーマパークのような江戸の町や山里の風情も相まって物語は進む。
意表をつく舞台設定に良く練れた謎解きでスッキリとした読後感。かつて日本にあった風景や人情を懐かしみ、そこから物の道理とか国家という存在やその中での個人のあり方についても少し考えさせられる。


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 4

ストロベリーナイト (光文社文庫)

著者 : 誉田 哲也

出版社:光文社

発売日:2008-09-09

評価 :

完了日 : 2008年11月01日

久しぶりに藤沢出張になったので、少し厚めのこの本でもって往復の長い車中は過ごすことに。
溜め池近くの植込みに青いシートにくるまれ放置されていた男の惨殺死体。ノンキャリアながら若くして警部補にのし上がった警視庁捜査一課の姫川玲子が、直感と行動力を武器に事件の真相に迫る。毎月第二日曜に起こる殺人。関連性のない被害者。捜査で浮上した「ストロベリーナイト」とは?
てなお話で、良く考えられていて結構面白いのだけれど、色んな話が詰まってて夫々に異なる話のトーンをちょっと捌き切れなかった感もあり、中盤のこれでもかというグロい場面ではしばしページが進まず…。その割りに犯人の動機がそんなもんかという類で、まあ最近の犯罪なんてそういうもんなのだけど、なんとなく世の中のキャッチーなところを集めて見せてだけみたいになっちゃってちょっと残念。
で、玲子警部補、少女の頃の辛い過去を乗り越えて警部補まで辿り着き、女ながらに班を仕切っているは良いけれど、「これぞ階級社会の醍醐味よ」なんて行動や直感と行動力の捜査はあまりに危なっかしくて、部下の男どもも普通によくあるパターンで殆ど役に立たず、私ゃ、どちらかというと嫌われ役と思しき勝俣の心境で読み進めてしまいました。


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 4

推定少女 (角川文庫)

著者 : 桜庭 一樹

出版社:角川グループパブリッシング

発売日:2008-10-25

評価 :

完了日 : 2008年10月26日

降るのか止むのか、そぼ降る雨の中、本の中の気分はこんな感じかと思いながら、菊花賞の行き帰りの電車の中でで読了。
この白雪って娘、SFチックに登場したけどお話はSFでもなさそうで、これはいったい…?ダストシュートで凍っていた少女。超音波みたいな声。へんな行動。へんな追っ手。綾小路麗々子誘拐事件。山に墜ちた宇宙船と逃げたはずの青い目をした宇宙人。町中を走っていたパトカー。逃げ出したAAクラスの狂人。
いきなり、何、これ?って感じで、訳が分からない内に急展開のお話に振り回されながら、少女が大人になっていく狭間の心理が得体の知れない混沌の絵姿となって展開する様を目にする。
15歳の頃って、こんな風に見えない敵と戦っていたのかなあ?こういう風に思う私は、白雪に銃を突きつけられたアベックの女と同類ということね。
エンディングが3つ用意されていて、1つは最初に作者が用意したもの。3つ目は、ハッピーエンドにしてとの出版社の要請を受けて、改めて用意したもの。2つ目がかつて作品が出された時に日の目を見たもので、3つ目を短くしたもの(但し刈り込んだことで微妙にニュアンスが異なる)。
もはやいい大人の私としては2つ目が腑に落ちて、3つ目のぐずぐずしたやつも捨てがたく、という心持ちなのだけど、しかし、多分、この作品のトーンとしてピタッと来るのは1つ目ですね。訳の分からない話が決着もせずに読者に委ねられて続いていくという感じで。
『まだ見ていない色を語る言葉はない』。若さを語ってなかなか含蓄のある台詞じゃないですか。


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 1

百寺巡礼〈第2巻〉北陸 (講談社文庫)

著者 : 五木 寛之

出版社:講談社

発売日:2008-10-15

評価 :

完了日 : 2008年10月25日

第1巻の奈良のお寺をどこも訪れないままに早一月経って第2巻は北陸へ。
19番目の明通寺から読みました。昔、敦賀に住んでいた頃に大阪からのお客様を、そのもっと昔、逆の立場で私がしてもらったようにお連れしたお寺で、鬱蒼とした杉木立の中の三重塔が目に浮かび暫し懐かしさに浸りました。次の神宮寺の項と合わせて、かつて若狭地方が日本の表玄関として文化の入り混じりの中心地であったことが良く知れます。
今回も筆者の筆は縦横無尽で、その寺に纏わる話から話題は色々な方面に飛びますが、『宗教的感覚が豊かでいきいきとした社会をつくる』こと、『目に見えない言葉の大切さ、役に立たない言葉の大切さ』があることなど、そこかしこに精神的な安寧が横たわり、『ときにこころをしなわせ、ため息をつく。そんな時間をもてることが、とても貴重に思え』ます。
真宗王国と言われる北陸地方が旅しながら、勿論、吉崎御坊に端を発し、寺内町として栄えた瑞泉寺や茅葺屋根の阿岸本誓寺を巡る旅もありますが、日蓮宗の妙成寺、山岳信仰から発した那谷寺など、北陸というのはその昔は多彩な信仰が入り組んでいた場所であるということも知れます。大乗寺・永平寺・瑞龍寺の曹洞宗のお寺からは修行の厳しさが伝わり、『心配ごとが浮かんできても、ずうっとそのままでいいから-』という瑞龍寺の若い僧侶の、優しいしかし凛とした言葉に改めて背筋の伸びる感じがしました。


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 6

警察庁から来た男 (ハルキ文庫)

著者 : 佐々木 譲

出版社:角川春樹事務所

発売日:2008-05-15

評価 :

完了日 : 2008年10月18日

「うたう警官」(文庫では「笑う警官」)に続く道警シリーズ第2弾。
前作の事件から半年以上が過ぎ、漸く落ち着いたかに見えた道警に、警察庁から予告なしの特別監察が入る。警察庁のキャリアである藤川監察官は、半年前、道警の裏金問題について百条委員会で証言し今は警察学校の総務係に飛ばされている津久井に協力を要請した。一方、札幌大通署の閑職にはずされた佐伯と新宮は、ホテルでの部屋荒らしの捜査を発端に突き当たった薄野の風俗営業店をめぐる過去の事件に絡んでいく…。
という訳で、前作の登場人物が再び主人公となって登場。今回も二日の間の話がドンドコ進み、藤川・津久井の監査と佐伯・新宮の捜査の2つのお話が交錯しながらラストへ向かって収斂する。最後はちょっと呆気ないところはあるのだけど(最後の台詞もちょっと…)、良く練れたお話がスピーディーに進んでいくのは前作以上。
前のお話を良く覚えてなかったのだけど、読み進む内に思い出せるようになっており、相変わらず小島百合は頼りになって、前作で謎だったところが今回明らかになったりして、前作読んでなくても楽しめると思うけど、読んでたら2度美味しいって感じかも。


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 1

灰色のピーターパン―池袋ウエストゲートパーク〈6〉 (文春文庫)

著者 : 石田 衣良

出版社:文藝春秋

発売日:2008-10-10

評価 :

完了日 : 2008年10月17日

おなじみIWGPシリーズの第6巻。
いつも通りに一冊の中で四季が巡り、池袋の移ろう季節の中で起こる事件の数々。盗撮映像売買で恐喝されるハメになった小学生、足に障害を負わされた兄の敵討ちを頼んできたブティックの販売員、ロリコンの噂を立てられた無認可保育園のアルバイト…。
相変わらず世相を切り取ったテーマ仕立てやクラシック音楽などのディテールには飽きないものの、お話の展開はいささか呆気なし。今や誰もがマコトを知らぬ者がなくなり、タカシもサルも礼にいもゼロワンも必要な時にはすぐに頼りになるとなれば、それも宜なる哉。
まあ「オール讀物」に載せる時の頁の制約があるんだろうけど、もうひと山あるとね。最後の話だけ2か月分で、さすがに一筋縄で行かぬ相手に一ひねり加えながらも、お終いはチョイ甘の話になっちゃって。
かつてあった緊迫感と斬れ味が薄くなっている気がする。


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 1

心ヲナクセ体ヲ残セ (角川文庫)

著者 : 加藤 幸子

出版社:角川グループパブリッシング

発売日:2008-09-25

評価 :

完了日 : 2008年10月13日

フゥ~、何とか読了。
帯や今月のPHP誌上で梨木香歩が大絶賛なんだけど、私にはこの鳥が語る物語の良さが分かんなかったです。どっちかと言うともどかしいばかりで…。
まして冒頭続く24の掌編の連作は全く掴むことが出来ず、こちらから読み出したからちっとも頁が進まず、危うく途中棄権の危機でした。
まあ、鳥ってあまり好きでないしね。「ジーンとともに」で描かれるニジドリというのは大変珍しい鳥のようで、人前には姿を現さず、不思議なことに13年に一度の周期でのみ姿が確認され、今年がその年に当たるらしい、というのは興味深い話ではあります。


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 6

レヴォリューション No.3 (角川文庫)

著者 : 金城 一紀

出版社:角川グループパブリッシング

発売日:2008-09-25

評価 :

完了日 : 2008年10月04日

いやぁ、愉快、痛快。
有名進学校ばかり集まっている新宿区にたった一校だけ存在している典型的オチコボレ男子高。ドクター・モローと渾名される生物教師の言葉に乗せられて群れ集まった“ザ・ゾンビーズ”の面々。主人公の南方、リーダー的存在のヒロシ、在日三世の舜臣、バイトで家計を助ける萱野、史上最弱のヒキを持つ男・山下…。そんな彼らの冒険譚3つ。近所にある偏差値も美女占有率も高い名門の女子高生をナンパするために学園祭に潜り込もうとしたり、死んだ友人の墓参りのために資金を調達したり、美人女子大生につきまとうストーカーを捕まえたり。
ヤングサンデーに漫画になって載ってたようで確かにそんなノリもあるのだけれど、その中に友情とか差別や格差の問題とか命の問題も潜り込ませて芯の通ったストーリーになっていて、ちょっと泣かせる。標題作で、降り出した雨の中、医者から死刑宣告に等しい言葉を投げられたヒロシを抱いて主人公が神に願う病院の屋上のシーンは出色。
『高校生活最後の夏休みなのに、彼女もいず、かといってうちこむ趣味もなく、更には勉強する気もない。精力と体力と知力を持て余している健全な十八歳の男』という表現があって、今の高校3年生はうちの息子もそうだけど、大学全入時代の受験生として現役合格目指して必死で勉強中だろうし、就職する子は9月の面接試験に向けて3者懇談の真っ最中というところなのだろうけど、僕らの頃は浪人前提でなんとなくこういう表現が分かる高3生活でしたよね。だから、喧嘩が強くて怖いもんなしの“ザ・ゾンビーズ”を羨ましくもあり、だけども僕らの生きた10代も確かに十分に物語はあって、それはそれで今を生きている上での大事な財産だと改めて思う。
最後の話の犯人には、私もニセとは言え人事課長なもので、ちょっと閉口…。


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 13

水の迷宮 (光文社文庫)

著者 : 石持 浅海

出版社:光文社

発売日:2007-05-10

評価 :

完了日 : 2008年09月27日

私、水族館が好きでね。ひんやりした空気のほの暗い館内、そこだけ明るい水槽の中に群舞する海獣や魚の群れ。いつまで見ていても飽きないですよね。
この本は、閉鎖間際から立ち直り今は環境展示が人気を集める水族館が舞台。3年前、不慮の死を遂げた片山の命日に、館長に届けられた携帯電話に送られてきた一通のメール。水槽への攻撃を暗示する内容に職員たちは見学者に悟られないように対応を重ねるが、次々と水槽は危険に晒され、そこからは片山の死が連想され、そして遂には殺人事件が起きて…、というお話。近年の水槽の巨大化や自然に近い展示方法の進化をもたらした水族館の職員たちの努力など、水族館好きには興味深い話を背景にしながら話は進む。
私、石持浅海は「月の扉」に続き2冊目で、細かい設定や謎解きは理詰めでよく出来ていると思うのだけど、「月の扉」の飛行機内もそうだったように、事件の割には緊迫感が薄く、探偵役の推理に引っかかる蒔かれた種もいささかきれいに嵌りすぎ。多分、作者はこの作品を、ミステリーでなくて水族館に思いを賭けた人たちの物語として書いたがため、中盤の丹念さに比べ最後はピースを嵌めるのを急いだかなぁ。
従って、結末はああいう終章で、内容も文章も表紙も良い雰囲気のお話なのだけど、殺人を夢が免罪したというところには大きな違和感。貴子が水槽裏から出ていったところで終わったと思ったもんね。


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 1

百寺巡礼 第1巻 (1) (講談社文庫 い 1-60)

著者 : 五木 寛之

出版社:講談社

発売日:2008-09-12

評価 :

完了日 : 2008年09月23日

日差しは変わらず夏の強さも木陰の風は秋の気配を運ぶ彼岸の中日。そんな日に読むこの本の、なんとまあ清冽で凛とした佇まいに溢れていることか。
仏の掌の上で慈しまれるように仏像を愛で、未訪の寺はもとより既知の場所でも改めて訪れたくなる描写と薀蓄。
人情溢れるひっそりとした山里で凛と立つ室生寺。
花の寺の俗っぽさに現代の巡礼を見る長谷寺。
大衆の志や信心に支えられ立つ二つの塔が時を超えた景色を見せる薬師寺。
命を投げだしても遂行された鑑真の遺徳を偲ぶ唐招提寺。 
一瞬一瞬の天候に応じ変化する苔の海に伎芸天のおわす秋篠寺。
聖徳太子から親鸞へ受け継がれた平等思想に思いを馳せる法隆寺。
日本人の心の渇きを癒す斑鳩の里にある中宮寺。
仏教伝来というカルチャーショックの中心地の飛鳥寺。
二上山の彼方に浄土への思いを募らす當麻寺。
日本が日本たるに必要であった大仏をいただく東大寺。
ただ寺を巡礼した紀行文にあらず、話題はそこから白秋や堀辰雄に飛び、またあるいは怨霊信仰や浄土信仰に及び、思想や学問に大事なこと、インターナショナルということ、和魂洋才、渡来人や女性について、などなど縦横に語られる。
あと9巻続くのでこれはとても楽しみ。☆一つは今後のために取っておく。


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 24

魔王 (講談社文庫)

著者 : 伊坂 幸太郎

出版社:講談社

発売日:2008-09-12

評価 :

完了日 : 2008年09月20日

時あたかも自民党総裁選の真っ盛り。坊ちゃん二世議員が二人続いて投げ出した政権。乱立する5人を眺めても、もはや首相の器に相応しい人材を育成輩出することが出来なくなったこの国の政党の体たらくが透けて見える。
そんな時に伊坂幸太郎「魔王」文庫化。あとがきに「ファシズムや憲法、国民投票などが出てきますが、それらはテーマではなく」とあるも、『聞こえのいいことばかり口にし、何も決定せず、何も断言せず、憲法をはじめとする法律を恣意的に解釈し、国民を騙すかのようにずるずると、任期を勤めていく政治家』とか『誇りが持てないのは大人が醜いからだよ。…そういうの見てるから、舐めているに決まってるんだ』とか見ると「そこから滲んでくる不穏さや、切迫感や青臭さ…を含ませたくなって」だけとは言えない部分をどうしても感じる。
『怒り続けたり、反対し続けるのが苦手なんだ』というこの国の人間に対する課題提起を、相手に思い通りの言葉を喋らせる能力を持つ兄と十分の一の賭け事なら当てられる能力を持つ弟の極めて個人的な生き方の中での戦い方を通して、伊坂幸太郎らしく語る物語。えも言えない不安感が議論や夢想の形で描かれていき、伊坂幸太郎をもってしても重たい話になってしまい読後感は聊か微妙。妻を通して描かれる弟の物語が僅かの希望。
ところで、文中、水沢と思しき競馬場が出てきて、競馬好きとしてはニヤリなのだけど、伊坂幸太郎ってどこまで競馬知ってるんだろうねぇ。描かれる競馬場や馬の走る姿は絵になっているし、単勝の転がしで儲けるなんざぁなかなかやるなってなもんだし、大前田課長の競馬好きの加減などとても好ましい。今の中央競馬で10頭立て以下のレースなど数えるほどしか無いから、それに絞った単コロで1億円以上稼ごうとするとちょいと時間掛かりそうな気はするけれど。


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 14

ユージニア (角川文庫)

著者 : 恩田 陸

出版社:角川グループパブリッシング

発売日:2008-08-25

評価 :

完了日 : 2008年09月14日

恩田陸である。このネトーッとしたというかドローッとしたというか、物語の冒頭、季節の移ろいを指して「じわじわと境界線を侵食するように季節が塗り替えられていく。曖昧に、未練がましく、ぐずぐずと」とか「むっとするような…不穏な雨雲は、…卑屈に忍び寄り、のたりと身体をもたげて町に這い上がってくる」という表現があるけれど、全編まさにそんな感じ。
32年前の暑い夏、嵐の午後、地方の名家・青澤家の祝宴で出された飲み物に毒が盛られ17人が殺され、ひとり盲目の美少女が生き残る。犯人が遺書を残して自殺した後も、事件関係者達はある一人の人間を疑っていた。そして事件からおよそ10年、関係者の証言を集めた本が出版され、それに呼応するように消される証拠…。
物語は更にその20年後。今一度、同じ道程をあるインタビュアーが辿る。かつて本を出した満喜子、取材を手伝った後輩の学生、青澤家に出入りの女性、事件を追った刑事、満喜子の兄、文房具屋の若旦那、近所の子どもだった人、満喜子の本の編集者…、彼らが語る事件は同じものを語りながらそれぞれ異なる。妙に細かなところと曖昧なところ。ヌメッとした落ち着かなさ。
事件の様相だけでなく、事件を語るそれぞれの人の人生と人となりを描いて、結末へと向けての物語の盛り上がりは上々。ただあやふやなものを辿っている不安定さが貫かれた故、いささか最後はあっけなし。


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 12

ナイチンゲールの沈黙(下) [宝島社文庫] (宝島社文庫 C か 1-4 「このミス」大賞シリーズ)

著者 : 海堂尊

出版社:宝島社

発売日:2008-09-03

評価 :

完了日 : 2008年09月10日

上巻の長~い前振りの後に、突然、火喰い鳥・白鳥の登場。ここからは前作と同様に畳み掛けるような展開。加納と白鳥、似た者同士の牽制と相克。小夜と冴子の歌声の秘密。アツシをめぐるバッカスとシトロン星人。エーアイ(死亡時画像診断)やデジタル・ムービー・アナリシスなる飛び道具。相変わらず読ませる。
ただ、今回のミソは、前作が医療現場のリアルな臨場感や緊迫感にあったのとは異なり、小夜と冴子という二人の歌姫がその声を聞く者の心に映像を結ばすことが出来るという特殊な歌声の持ち主というところにあり、その非現実感がいささかぎこちなく、また直接登場しない桜宮院長の罪深さ含め色んなことがテンコ盛りで、それ故、ミステリーとしては舞台背景に凝った割にちょっと散漫、なんとなく消化不良の感は否めず。


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 11

ナイチンゲールの沈黙(上) [宝島社文庫] (宝島社文庫 C か 1-3 「このミス」大賞シリーズ)

著者 : 海堂尊

出版社:宝島社

発売日:2008-09-03

評価 :

完了日 : 2008年09月07日

バチスタ・スキャンダルから9ヶ月経った年末の東城大学医学部付属病院。今回の舞台は小児科病棟。
病院一の歌声を持つ看護師・浜田小夜は眼球の癌を患う子供たちを担当しているが、彼らのメンタル面でのケアを不定愁訴外来、通称愚痴外来の田口に依頼することになった。そんな中、担当患者である少年の父親が殺され、警察や入院中の伝説の歌手を絡めて事態は…、といった上巻。
今朝もラジオでやってたけれど医療の現場って大変そう。そんな病棟の描写は前作同様読ませる。人物のキャラも相変わらずそれぞれに際立ち、今回も上巻には白鳥は登場せず(下巻には名前あり)、しかし加納という警視正が登場。これがまた曲者。
ただ前作がすごく面白かったので期待が大きかったせいもあるけれど、今回は前回ほどのスピーディーな緊迫感には乏しく、小夜も城崎も冴子も加納もそれぞれ訳あり感だけ振りまいて、下巻に向けての長~い前振りってな感じ。


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 42

のぼうの城

著者 : 和田 竜

出版社:小学館

発売日:2007-11-28

評価 :

完了日 : 2008年08月31日

えらく評判いいですね。
戦国の時代、天下統一を目指す秀吉の軍勢が関東の雄・北条家を潰すために小田原および関東に点在する支城を攻める。支城のひとつ、武州・忍城も石田三成指揮する2万の大軍に囲まれ、僅かの兵で交戦することになった城代・成田長親。領民からも侮られ木偶の棒から取った「のぼう様」と呼ばれる長親のもとで、果たして城は持ち堪えられるのか…。
長親は本当に大丈夫かといううつけ振りも、外見からはおよそ窺い知れない人間力を持ち、そのもとで武士も領民も三成の水攻めにも屈せぬ坂東武者の荒々しき男振りを見せる。合戦の様子は迫力あるし、勇猛な武者の振舞いには敵味方なく賞賛する当事のあっぱれな戦さの様子も清々しい。長親をはじめ彼を取り巻く武将・正木丹波守利英、柴崎和泉守、酒巻靱負や珠と甲斐姫の母娘、それぞれ登場人物のキャラも立ち、敵方である石田三成、大谷吉継もまた良い。
平易な文体で劇画を見てるとか映画の脚本を読んでいる感じで、映画化の話もあるようだけど、映画になったらどこを削るのと思うくらいサクサクズンズンと話が進む。史実をもとにして創作が膨らんだとは言え、歴史小説とか時代小説というよりは痛快戦国時代エンタテインメント。例えば飯島和一の重厚緻密さとは比べるべくもなく、ちょっと甘めの☆4つ。


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