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神崎さんの読書ノート

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 30

ボトルネック

著者 : 米澤 穂信

出版社:新潮社

発売日:2006-08-30

評価 :

完了日 :

恋人を弔うために東尋坊を訪れていた嵯峨野リョウは、気が付けば金沢に戻っていた。家に帰ってみればそこには、居ないはずの「姉」が居た。そう、リョウは自分が生まれなかった世界にやって来ていたのだ。
そこで過ごす、辛くて重たい三日間は、彼にすべてを突きつけた。青春は楽しいだけではない、現実はこんなにも痛くて辛くて容赦ない。それを最初はなんでもないようなコミカルな風に描いているが、最後にはやりきれない、どうしようもない気持ちが残る。こちらは短編だが、この間「世にも奇妙な物語」でドラマ化されていた、朱川湊人『昨日公園』とはまったく対の話なのだと感じて、いろいろ考えさせられてしまった。とにかく、傑作だ。


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 24

闇の底

著者 : 薬丸 岳

出版社:講談社

発売日:2006-09-08

評価 :

完了日 :

所轄署の巡査部長である長瀬の管轄で、女児暴行殺人事件が起こった。それと同じ頃、同じ埼玉県内で一人の男の首切り死体が見つかった。捜査陣が慌ただしく動いていたそんな時、サンソンと名乗る人物から埼玉県警に犯行声明が寄せられた。──罪深き者どもよ、よく見るがいい。これより幼き子どもの命を狙うものあれば、過去に女児を陵辱し殺害した者たちを殺して行くといった内容だった。それをなぞるかのように女児の遺体が発見され、また、前科のある男の首切り死体が発見される。過去に事件で妹を失った、長瀬の行く先は。

日高署巡査部長の長瀬、一課の村上、そしてもうひとり「サンソン」の計三人の視点から語られる。
その中の主人公となる長瀬の苦悩が、相も変わらずうまい。第一章の初っ端に殺された女児の葬式場面を持って来られて、とにかく感情が煽られてしまう。それがサンソンの登場により、さらに高ぶってしまうのだ。こんなことをした人間が許せない、サンソンは間違ってはいない、この腐った世界を浄化してくれるのだという気持ちが沸いて来る。加えて長瀬は過去に妹を殺した男を憎んでいる。だが彼は県警援護に飛ばされ、そいつと同様の腐った奴らを殺そうとしてくれるサンソンを捕まえなければならない立場になってしまった。職務と心情と、その葛藤が痛々しいぐらいに響いて来る。
しかしラスト近くではサンソンの祈りも空しく、女児は拉致され殺害される事件が続く。たとえ過去の殺人者が殺されようと、痛ましい事件は繰り返される。ただただ、虚無感が胸を痛感するばかりだ。
だが長瀬の行き着く先は、闇の底の穏やかな暮らしだった。
当初のタイトルは『サンソンの祈り』というもので、個人的には中盤までこのタイトルの方が良かったのではと思っていた。しかし最後まで読み通して、なんともやりきれない辛さや重たさを実感してからは、改題に納得した。『闇の底』という物語からしたら、文句なしの星五つ、充分に成功しているからだ。
因みに仕掛けもうまくできていて、私はこのサンソンに思い切り見事に騙された。


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 18

λに歯がない (講談社ノベルス)

著者 : 森 博嗣

出版社:講談社

発売日:2006-09-06

評価 :

完了日 :

密室状態の研究所で発見されたのは、銃殺された身元不明の四人。現場から唯一見つかった事実は『λに歯がない』というカードと、四人とも歯が抜かれていたということだった。

せっかく『四季』という素晴らしい作品で終わったのだから、Gシリーズはない方が良かったのでは、と思っていた。が、前作『εに誓って』から俄然シリーズとしてのおもしろみが出て来た。その分、一つひとつの事件やその度に出て来る脇役らが薄っぺらくなったが、シリーズものとしては仕方がないのかとも思う。
事件そのものよりも、犀川と西之園、加部谷と海月の議論がなかなかおもしろかった。そして何よりも驚いたのは西之園の考えの変化。以前からのシリーズ読者なら、やはり読むべきだろう。
これから先に続く鍵が、少しずつ明かされていて、Gシリーズの行く筋を盛り上げている。何所にどう繋がっていくのか、気になるところだ。


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 9

遮断

著者 : 古処 誠二

出版社:新潮社

発売日:2005-12-20

評価 :

完了日 :

防空壕に残された四箇月赤ん坊を取り返しに行くために、赤ん坊初子の母親チヨと共に、逃亡兵となった佐敷は北上する。
既刊『接近』よりもさらに生々しく書かれた沖縄戦争と云ったら、迫力の度合いがわかってもらえるだろうか。『接近』は淡々とした文章で戦争を遠くから眺めていたが、今回の『遮断』は目の前の攻撃包囲網をかいくぐって行くために、さらにリアルに感じられる。ほぼ米軍が勝利を信じているその中を、母親は子のために必死に北上する。誰もが生きているわけがないとかぶりを振る、独りぼっちの四箇月の子のために。その母親の強さと云ったらない。
途中一緒になる少尉と佐敷の違いも、考えものだ。個人的には少尉に同意することが多かったが、両者の立場の違い故、どちらが正しいと云われることはないだろう。戦争というものを、あらゆる立場から考えさせられる、凄い作品だ。
また、少しずつ明かされる佐敷の行動には、素直に驚かされた。


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 6

接近 (新潮文庫)

著者 : 古処 誠二

出版社:新潮社

発売日:2006-07

評価 :

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こんなにも短く淡々と語られるというのに、その事実が生々しく感じられるのだから凄い。あまり深いことを云えないが、安次嶺弥一こそが、戦争の象徴と云えるのかもしれない。


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 7

デモナータ 3 スローター (デモナータ 3幕)

著者 : ダレン・シャン

出版社:小学館

発売日:2006-08-10

評価 :

完了日 :

一幕の主人公グレブスのその後。デモナータから帰って来たダービッシュの元に、映画撮影の協力がかかる。タイトルは『スローター』、悪魔を題材にするという話に不穏を感じたダービッシュは、グレブスとビルEを連れて屋敷を出るが、撮影現場では本物の悪魔たちが待ち構えていた。
今回は一、二幕よりもさらに迫力を増した、正に大虐殺で少しばかり辟易した。何所に悪魔が潜んでいるのかわからず、誰が悪魔と手を結んでいるのかわからず、ただ疑心暗鬼に陥るばかりだ。身近に居るその人も、あの人も、と周囲がすべて悪魔の一味に感じられてしまい、ぞっとした。
この戦いで最終的に絞られるのは、前回がカーネルであった代わりに、今回はグレブスという少年についてだ。今後に繋がる大切な部分と云えるだろう。
ダービッシュの鈍さに苛々したり、「魔術」という名のご都合主義が少しばかり気になってしまうのが失点と云えば失点。──ダービッシュは一幕のデモナータでの戦いを引きずっているがために、ご都合主義はグレブスの秘密に繋がっているのかもしれないが、今回のダービッシュはあまりにも鈍過ぎた気がするので、一応。
次回は最後の主人公が登場し、加えて年代も遡るそうだ。期待して待ちたい。


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 6

デモナータ 2 悪魔の盗人 (デモナータ 2幕)

著者 : ダレン・シャン

出版社:小学館

発売日:2006-01-28

評価 :

完了日 :

二幕の主人公はまた一幕とは違う、コーネルという少々内気な少年だ。他人には見えない「光のかけら」が見える彼は、変人扱いされ、淋しい思いをしていた。ある日神隠しのような出来事にあってから、家族と共に新たな町に引っ越したが、そこに悪魔の襲撃が起きて、コーネルもデモナータの世界へと引きずりこまれる。
途中でデモナータ、悪魔にまつわる人間たちの不安定さにやや失望したが、その後のどんでん返しにはページをめくるしかない。一幕ではよくわからなかったデモナータが舞台となっている上、悪魔を阻止する勢力魔術同盟など、それなりに世界が開けてくる楽しさにどきどきする。
最後運命に逆らえず進む少年は、ダレン・シャンを思い出させた。


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 7

デモナータ 1 ロード・ロスデモナータ1幕

著者 : ダレン・シャン

出版社:小学館

発売日:2005-06-10

評価 :

完了日 :

名作『ダレン・シャン』の著者が、新シリーズに突入。『ダレン・シャン』があまりにも良いものだったので、新しいシリーズに手を出すのが遅くなってしまった。が、今まで躊躇していたことを後悔した。予想を裏切らない楽しいシリーズの登場だ。
ヴァンパイアに続く今度の題材は悪魔。ちょっと生意気だが根は優しい大柄の主人公グレブスは、突然の惨劇で家族を失い叔父の元で暮らしだす。引っ越した先の新たな村で次々と明かされる真実、そして運命に立ち向かって行く。
最初はわけがわからぬまま、流されるままに読んでいたが、なんだ、なんだと云う間に引き込まれてしまうから不思議だ。またしても現実と独特の世界とが混じり合った世界での話で、何所かに、悪魔の世界デモナータへの入り口があるのではないかとぞっとしてしまう。


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 12

少し変わった子あります

著者 : 森 博嗣

出版社:文藝春秋

発売日:2006-08

評価 :

完了日 :

予想外に、おもしろかったので。
一風変わった料亭に通う主人公。そこに相伴するのは、「少し変わった子」たち。その料亭での会話をつらつらと語るだけ、なのだが。
次にどんな人が出て来るのか、どんな話をするのか、そして彼はどんな考えを持つのか、一つひとつの話に、強くもなく弱くもない、どうでも良いとは思いながらも、ほのかな期待を持って読んでしまう。
そしてやはり、森さんらしい鋭い言葉がたまに飛び交って、注目せずには居られない。
最後にそれとなく仕掛けがあるのだが、こののんびりとした雰囲気に呑まれて油断していた。


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 3

山猫

著者 : 神永 学

出版社:文芸社

発売日:2006-07

評価 :

完了日 :

心霊探偵八雲シリーズでおなじみ、神永学氏の初ノン・シリーズ小説。──シリーズ化するのでしょうか、はて。山猫の活躍はこの後も見たいな、と個人的には気になるのですが。
誰でも楽しめるエンターテイメイト性を重視しているらしい著者らしく、今回も主人公が窮地に陥ったり、ラストにも痛快さがあり、なかなか楽しめる一冊だろう。この著者はやはり、キャラクターが映えている。
ただ、楽しさよりもミステリとしての質を問われる方にはあまりおすすめしないでおこう。早い時点でなんとなく予測できてしまうので、あくまで楽しい義賊の物語として読んでもらいたい。


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 11

赤々煉恋

著者 : 朱川 湊人

出版社:東京創元社

発売日:2006-07-10

評価 :

完了日 :

何かを思い求めた人々を綴った短編集。
中でもおすすめは『アタシの、いちばん、ほしいもの』。一人称で書かれるそれは最初とても愉快に描かれているのだけれど、その状況を知ると、とにかく切なくて淋しくて。それと同時にラストに少しだけれど救いがあって、じんわりと暖かくなれる。
背筋がぞくりとするような話からじんわりと暖かくなれる話まで綺麗にそろっている。因みに神崎が気に入ったのは『アタシの、いちばん、ほしいもの』、ちょっと憤りを感じたのは、『いつか、静かの海に』。一つひとつの作品それぞれに味があるので、何かを求めた人々の行く末の違いを、それぞれで感じて欲しい。


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 4

仮面幻双曲 (小学館ミステリー21)

著者 : 大山 誠一郎

出版社:小学館

発売日:2006-06

評価 :

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『アルファベット・パズラーズ』がおもしろかったので、期待しておりました作者さんでございます。
ほとんど縁切り状態となっていた双子の弟が、兄を殺しに町に戻って来た。しかし弟は整形手術をしていて、整形後の顔がわからない。この町に戻って来たはずの弟はいったい誰なのだろうか。
これは犯人当て小説でしょう。ドラマ性はあんまりなく、小説という文章や物語の質よりもトリックを重視しますという方は、おもしろく読めるかと思う。それらしくおおと思う場面もなくはないので。
しかしここの探偵って、やっぱり無能かなぁなんて切ない思いも感じた。犯人当ての探偵はそんなものでしょうが、この作品は特に。


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 9

銀の犬

著者 : 光原 百合

出版社:角川春樹事務所

発売日:2006-06

評価 :

完了日 :

ケルト神話を元に書かれたようで、思わずファンタジー魂
をうずうずさせられた。
彷徨える魂を行くべき場所に送り届けるために旅を続ける楽人オシアンと相方のブラン。舞台や登場するものがファンタジックでだりながら、なぜその人はそこを彷徨い続けるのかという謎もあって、両者が好きな私のような方は楽しめるかもしれない。大切なものを失った人々のその後の辛さも、切々と伝わって来て痛いものがある。ただ個人的に、あまりに話が綺麗すぎてちょっと辟易したものがある。
しかし声なき楽人オシアンの言葉を当たり前のように聞き取ってしまうブランや、獣使いと獣たちなどの信頼関係には素直に良いなぁと思えた。
楽人オシアンと伝説のオシアンの関係は、何もないようでいて何かあるらしく気になっている。どうやら期待できるらし続編を、楽しみに待っていたい。


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