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カーシーさんの読書ノート

ほっこりひょうたん島♪
安直なタイトルで失礼します(~_~;)
心がほっこりしたり爽やかになったりする作品をここに
セレクトしていこうかなと。
心が苦しくなった時の本との差別化ですが、たぶん向こうの方が
より実用的な感じで、こっちは小説的にほっこり楽しめるものをと
考えております。実際はあいまいだと思いますが…(゚∀゚;)
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 2

シャーロック・ホームズの冒険―新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)

著者 : アーサー・コナン ドイル,Arthur Conan Doyle,日暮 雅通

出版社:光文社

発売日:2006-01

評価 :

完了日 : 2008年11月04日

日暮版購入! 挿絵があって読みやすい。
が、ここには延原版の感想メモ★★★を書く。
他の版は、訳の違いを調べたりする資料になった…(謝

・ボヘミアの醜聞
⇒アイリーンという名の機知に富んだ女性がホームズ相手に一杯食わせる話。
妙にスカっと痛快な読後感。ポーの「盗まれた手紙」が原型みたいだが、要点は、人が巧妙に隠したものをいかに見つけ出すか。
「海軍条約文書事件」もその構図ネタのバリエーションだと思う。

・赤髪組合
⇒有名で未読の私もネタを知っていたため、インパクトはなし。しかし奇天烈で愉快。

・花婿失踪事件
⇒メアリーがかわいそう。恋心を弄びやがって。義父がずる賢いと困る。成敗してくれる法律がないのが残念。
話の方向性は違うが、ネタの構図としては、唇の捩れた男と同じではあるまいか。

・ボスコム谷の惨劇
⇒無実の青年を救うための捜査。浮かび上がるのは、重病老人の無法者時代か。守るべきもののため、老い先短い命を振り絞る。
弱みを持つ者の話の構図として「グロリア・スコット号」が思い浮かぶ。
「さらばお別れです」老ターナーはおごそかにいった。

・オレンジの種五つ。
⇒ワトスンはお話の導入部の天才ではないかと、
各編を読むたび思ってきたが、これは今まで読んだ中でダントツのサスペンスをもった導入部!

風の咆哮が聞こえてきそうなほどの嵐の描写と、オレンジの種が五つ送り届けられたものが次々に殺されていく話とが相まって、冒頭からグイグイ読ませる!

しかし、本文中にも竜頭蛇尾という意味合いの言葉を出ているように、幕切れがあっけなさ過ぎて残念。できれば、KKKの一味と、四つの署名よろしく、長編にてデッドヒートを繰り広げて欲しかった。

・唇の捩れた男
⇒名作らしく、なるほどとは思ったが、それ以上感心もしなかった。構図・テンション的には「花婿失踪事件」とかわらんかも?

・青いガーネット
⇒鳥の胃袋にあった貴重な宝石をめぐってドタバタ。
鵞鳥の仲介店のオヤジとホームズのやりとりがユーモア賞。

・まだらの紐
⇒有名なので仕掛けは知ってた。ゆえにインパクトはなし。
しかし、ワクワクする雰囲気が冒頭から漂っていていい。

癇癪持ちの怪力で依頼人の義理の父ロイロット博士。狒々(ヒヒ)や豹が放たれている屋敷。茨だらけの狭い庭には、ロイロットの友人だというジプシーたちがテントで暮らす。
依頼人(妹)の姉は、死ぬ前に口笛のような音を聞いたとしきりに気にしており、結果、変死を遂げるのだが、死に際に「まだらの紐よ!」と叫んでいる。
そしてその口笛の音がとうとう妹のもとに…。

仕掛け自体に完全犯罪のリアリティないけど、雰囲気は好き。
※どうせなら「スネーク・フライト」くらいやっとくれ(^^;

・花嫁失踪事件
⇒貴族の花嫁が式後に逃げ出した話。フタをあけてみると事件でもなんでもないが。まぁ災難としか言いようがない。

・椈屋敷
⇒ミステリの要素とかそんなこと関係なく、これか「技師の親指」が、「冒険」の中では一番好き!

女家庭教師ハンターが聡明で、実に勇敢に行動する(彼女をスピンオフしてもよさげ!)。
ハンターが再就職することになった椈屋敷には、アダムスファミリーに出てくるような面々が住んでいる。
主人のルーカッスルは豪放だが、ニコニコの笑顔にはいかにも裏がありそうで、
その妻は無口でいつもうら悲しさを秘めて泣いている。
一方、ハンターが頼まれた息子はというと、弱い虫や小動物を殺しまわっては喜ぶ性格で、
召使い夫婦もまた、酔いどれ二重あごの巨漢の犬番頭(凶暴なマスチフを手名付けている)と、
ムッツリとだんまる冷酷な感じの妻という案配で、
やはり一癖も二癖もありそうなのだ。

そして、開かずの扉には、椈屋敷に秘められた秘密が…。
暴かれるのは、傲慢な欲望によって歪められた家族の姿か。

・技師の親指
⇒ドイツなまりのある陸軍大佐が、相場の10倍の報酬で圧搾機の故障診断をその技師に頼んだ。
さらわれるようにして連れ込まれた屋敷には、黒い衣服をまとった謎の美女がいた。
彼女はカタコトの言葉で技師に逃げろ!というが、時すでにおそし!?
診断を終えた用済みの技師は、見たこともない巨大な圧搾機によって!―――

いやぁ、ドキドキしますよこれは! なぜか、「魍魎の匣」を思い浮かべてしまったし、最高に読ませる!
※「叡智」の中に入ってるが、本来は「冒険」の中の一遍。

・緑柱石の宝冠
⇒宝冠を盗もうとしていたとして逮捕された青年。
構図は違うが、無実の青年系の話だからボスコム系とも言えるか。
しかし、こっちはちょっと悲しいなぁ。
向こうは愛しい人が真実応援してくれたからいいけど。こっちは愛しい人のために・・・。
※「叡智」

あとは、延原氏のあとがきがいい。氏はホームズのどの作品にもユーモアを感じてやまないという。
その感じたユーモアは、読んでみればわかる通り、そこかしこの行間から溢れている! 延原ホームズ万歳!


この感想へのコメント

1.Tetchy (2008/11/04)
延原訳ホームズ大絶賛ですね!しかも今回も懇切丁寧に1編1編感想を書いて下さり、愉しく拝読しました。
某所でも延原氏が日本人にホームズ像を形成させたみたいな事が書いてあり、そうかもなぁと思いました。
私は原書に描かれたホームズの挿画見て、その悪魔的風貌にショックを受けた覚えがあります。
2.カーシー (2008/11/05)
>Tetchyさん
「グロリア・スコット号」など、古い文体が出てくるときは汗をかきますが、キャラ立て、韻律自体のセンス、ユーモアは延原版が抜群かなと。

>原書ホームズの挿画見て、ショックを…
創元版の表紙にもなってるパジェット画ですかね。誰?って思ってましたけど(笑)
雰囲気は嫌いじゃないですが、私のホームズ像は延原節のユーモアに包まれて別人に! 私にとってホームズといえば延原版になってますね。
 

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 7

緋色の研究 (新潮文庫)

著者 : コナン・ドイル,延原 謙

出版社:新潮社

発売日:1953-05

評価 :

完了日 : 2008年10月24日

創元推理ですでに読了済みだが、
どうしても延原版がほしくて購入!
パラパラしてみたけど、私にはやっぱり
こっちのホームズがよさそうです!

実は最近、阿部さん版と、延原さん版とを
(後進の日暮さんもかじったが)、
はからずも読み比べてしまう機会があったのですが、
その時、阿部さん版の方のホームズの何かが気になって、
うまく入れなかったということがあったのです。

それは阿部さん版のホームズが、
なんだかクールで淡白で上から目線でえばってる感じが強く、
(あくまで個人的な見解ですぞ)
私の理想のホームズとは食い違っていっるので
きっとそのキャラ造形の違いのせいで
納得いかなかったのかなと。

そう見当をつけていたのですが・・・
今、パラリしたときの感触ですと、
そのせいだけではなかったようなのです。
どうも、もっと全体からにじみ出ている部分も加味して
延原さん版のホームズを
選びとってしまったような気配なのです。

延原版の物語において、
あのなんとも言えない、滋味豊かで奥行きのある、
懐かしげで味わい深い世界を成立せしめているのは、
とりもなおさず、鋭敏でいて、どこか明治紳士の
トボけた風味をかもしだす、名物主人公ホームズの
キャラによるところが大きいと思っていたのですが
(基本的にセリフに格調と趣があっていい)、
実はそれだけではなく、ベースの語り部である
ワトスンの言葉遣いや、あるいはワトスンその人がもつ
独特の親近感、もしくは、
ワトスン視点での誠実な情景描写の力もあいまって、
成立できていたのだと思えてきたのです。
(それいっちゃったら文章全部ってことになるけど、
まさにそうなのです)

全体の文章のリズムも含め、
登場人物それぞれの言葉遣いから立ち上る
妙に懐かしく滑稽で生き生きとした雰囲気、
そして、懐深く横たわる延原さんの登場人物への温もりあるまなざしが、
あの格調あるほっこり世界を
現出させていたのではないでしょうか?
そこに私はひかれたようです。
※注)阿部さんにはぬくもりの眼差しがないといってるわけではありません!

追記:
パラパラのつもりが手に取ったらやめられず、
最後まで読了。夜が明けていた…。
<メモ>
・やはり延原訳では、ホームズが自惚れていても気にならない。ファンになってるので、もはや客観的な目で見れてない可能性もあるが;
 →原作自体、高慢な自惚れ屋として描いてあるのだから、そのキャラ設定は変えようがないが、訳者がその性格をうまく憎めない風味に落とし込んでくれてる。延原節の格調キラリ!

・ライバル刑事たちのかき分けは、延原訳でもどうにもなってなかった。しかし、吸引力が落ちることはなかった。
 →もっとも月並みな二人を描かれているのだから、月並みな、いわく、どっちがどっちでもいいようなキャラになってしまうのは仕方ないのかも?

・登場人物の会話がどうかすると、長屋の人情ものみたになってほっこりする。
 →延原訳の方がその指向が強いと思われる。

・ホームズが成果をライバルに奪われることを気にしていることは原作にあるので仕方ないが、延原訳の方がやはり達観させている趣あり。よって気にならない。
 →ホームズがそれを少し不満に思ってないと、ワトスンが活躍を記録することになる経緯が弱くなるので、筋書き上も仕方ない。

・解説で、訳者延原さんの朴訥なまなざしを見、「わが意を得たり!」となった。
 →ホームズが、ライバル刑事に具体的なヒントを出さないでズルしている部分があり、もっとフェアでいてくれたら素晴らしいのにとあった。
  →ホームズに対する真摯なまなざしを見、延原さんが落とし込みたかったホームズ像が私の理想と一致していたのだと勝手に実感。
   →がむしゃらになっても、がむしゃらに見えない、スマートですっとぼけてる憎めない延原ホームズは、この朴訥な愛あるまなざしによって生み出されているのだ!

・今日のワトスンの一言。
ホームズと一緒に住むことに決める時、進めた友人自らが、彼と住むのは大変だろうと言い含むシーンで。
「どうして? どんなところがいけないの?」
純朴そうな目が見えてきそうだ。

・今日のホームズの一言。広川太一郎でお願い。
「それではと――そのほかの僕の欠点はなにかな? 僕はときどき憂鬱になって、何日もつづけて口をきかないことがあるが、そういうとき僕が怒っていると思ってくれちゃ困るんです。ただ黙ってほっといてさえくれれば、じきもとのとおりになるんですからね。ところでこんどは君のほうのうちあけたところを聞こうじゃありませんか。いっしょに暮らすとなればそのまえに、おたがいの短所を十分知りあっていたほうが好都合だからね」

・おまけで月並み探偵グレグスンの一言。
殺された人物が泊まっていた下宿のかみさんを尋問し、さらに先を促すグレグスン。
「なぁる……それで?」
なぁる……か(笑)


この感想へのコメント

3.Tetchy (2008/10/22)
読書ノートの数から察すると、本を読まない人間だったというのは本当に意外ですね。
しかも感想も堂に入ってるし。
私の変な推測にきちんと解答してくださって、どうもありがとうございます。
こちらこそ恐縮してしまいますね。

ちなみにプロフにも書いてますがが私も積読家です。
多分老後まで読む本に困らないと思います(^^;A
4.カーシー (2008/10/22)
>Tetchyさん
いやはや、本当に面倒くさがりで、読むのも書くのも、
まったく文字はあかんかったのです(汗
Tetchyさんに認めて頂けるものがあったとしたら、
恐悦至極にございます。

ああ、Tetchyさんも、積読家でござましたか。
私も、もはや読み切れまいと思っておりますが、
子供ができたら読んでくれるのでは?
と皮算用しております(笑

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 9

シャーロック・ホームズの冒険 (新潮文庫)

著者 : コナン・ドイル,延原 謙

出版社:新潮社

発売日:1953-03

評価 :

完了日 : 2008年10月24日

念願の延原版の「冒険」GET!
まだ創元の阿部版を読んでる途中なのに
どうしても満足できず…;;

本屋に入り、早速第一番目の
「ボヘミアの醜聞」をパラリ。
創元・阿部版の「ボヘミア」では、
もう冒頭の方から軽くうーむと
首を傾げたくなるシーンがある。

毎度おなじみの推理あてゲームで、
ぶしつけな質問をワトスンになげかけるシーンだ。
まずそこでむむ?となり、すぐそのあと、
観察についてご教示くださるシーンでも
軽くイラっとくる。

まさか延原さんに限ってそんなことはあるまい、
と固く信じていつつも、やはり祈るような気持ちで、
その箇所を開いてみた。

結果、我慢できなくなり、すぐにレジへと
走ったのであった。
せっかくだから、記載しておこう。
あくまで私の主観の問題だが。

まず、
①ワトスンへの質問・毎度おなじみ推理あてシーン

<創元・阿部版>
①「結婚生活はきみにいいのだね」と彼は話しかけた。「ワトスン、このまえ会ったときから、七ポンド半はふとっただろ?」
「七ポンドだ」私はこたえた。
「そうか、もう少し太ったように思えるが。きっと、もう少し重いよ、ワトスン。それからまた開業したのだろう? そうとは聞かなかったが?」

※ほっといてくれ、といいたくなる。

<新潮・延原版>
「君には結婚が合っているんだ、と見える。このまえから見ると、七ポンド半は肥ったぜ」
「七ポンドさ」
「フーン、もうすこしよく考えてからいうのだった。ほんのちっとだけね。それで、また開業したらしいね。僕はそんな意向のあることなど聞かなかったぜ」

※ユーモアがあって、全然むっとしない。ていうか、カワイイ?
※上から目線でなく、フランクな仲間通し気兼ねなくやってる感じもいい。
※「もうちっとだけね」「~だぜ」といういうな言い回しの味わいが効いている。

<光文社・日暮版>(おまけ)
「結婚生活はきみにあっているようだね、ワトスン。この前会ったときから、七ポンド半は太っただろう」
「七ポンドだよ」
「そうか。もう少し重いような気がするんだがな。もうほんのちょっと。それから、また開業医に戻ったらしいな。そうしたいという話は聞いていないが」

※日暮さんのは、全体的に物言いがやさしいので大丈夫。味わい的には可もなく不可もなく、といった塩梅。

②いつも登ってたはずのアパートの階段の数を質問し、答えられなかったワトスンに観察についてのご教示をするシーン。

<創元・阿部版>
「たとえば、きみも、玄関からこの部屋へあがる階段は、なんども見ているだろう?」
「見ているよ」
「なんどぐらい見たかね」
「そうだな、ほぼ数百回は見ているだろう」
「では、なん段ある?」
「なん段だって! 知らないよ」
「そら、見たまえ。観察しないからだ。しかも見るだけは見ているのだ。ぼくがいいたいのはそこなんだよ。いいかい、ぼくは十七段あると知っている。それは見ると同時に観察しているからだ」

※やかましい!

<新潮・延原版>
「たとえば君は、玄関からこの部屋まであがってくる途中の階段は、ずいぶん見ているだろう?」
「ずいぶん見ている」
「どのくらい?」
「何百回となくさ」
「じゃきくが、段は何段あるね?」
「何段? 知らないねえ」
「そうだろうさ。心で見ないからだ。眼で見るだけなら、ずいぶん見ているんだがねえ。僕は十七段あると、ちゃんと知っている。それは僕がこの眼で見て、そして心で見ているからだ」

※延原版のやりとりには、井伏鱒二の山椒魚さえ彷彿させる、なんともいえない味わいがあるぜ、君。
※そして、天才的なのは、「心で見ないからだ」というセリフ。これをここにハメてくるセンスに脱帽。
※押しつけがましく、「ぼくが言いたいのはそこなんだよ」というダメ押しを入れてないことも◎!

<光文社・日暮版>(おまけ)
「たとえば、玄関からこの部屋へ上がる階段を、きみは何度も見ているね」
「ずいぶん見ている」
「何度くらい?」
「そうだな、何百回と見ているな」
「じゃあ聞くが、何段ある?」
「何段かだって! そんなのは知らないな」
「そうだろう! 観察していないからだ。見るだけは見ているのにね。ぼくの言いたいのはそこなんだよ。ぼくは十七段だということを知っている。見るだけでなく観察もしているからだ」

※「見るだけならみているのにね」とか、少し優しい感じはあるが、やっぱり、可もなく不可もなく。


以上の部分だけみても、
私がレジへ駈け込むだけの理由があることは、
分かる人には分かってもらえると思う。

「ボヘミア」の前述した箇所などは、
ほんの序の口にすぎず、阿部版ホームズでは
私はいたる所でホームズに好感がもてず、
困惑してしまった。
自分の理想(好み)にそぐわないのだ。
延原版というものがなかったら、
これほどホームズを好きにはならなかったであろう。
延原ホームズバンザイ!


この感想へのコメント

7.このは (2008/12/13)
幻想じゃないですよ~。
『オレンジの種5つ』(冒険)です。

「おや!」ふと私は顔をあげて、ホームズを見た。
「呼び鈴が鳴ったようじゃないか。こんな晩に誰が来たのだろう?君の友人だろうね?」
「僕は君のほかに、友達は一人もないよ。話しに来いと人にすすめたこともない」

自分もこのくだりはお気に入りです♫
8.カーシー (2008/12/13)
>このはさん
おお、引用までしていただいて、ありがとうございます!

そう、サラっと書いてあるところが、憎いんですよねぇ(笑)

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 5

緋色の研究 【新版】 (創元推理文庫)

著者 : コナン・ドイル

出版社:東京創元社

発売日:2006-04-28

評価 :

完了日 : 2008年10月21日

やっぱり最初から読むべきかなと思い直し、
金を工面。購入。

・夜、とある空家で起きた殺人事件。
目を見開き歪んだ表情で天井を見つめる死体。
外傷はないのに、血痕が部屋のあちこちに飛び散っており、
壁には「復讐」という謎の血文字が。
いったい誰がどんな理由で殺したのか?
2部構成でこの謎を解いていくドイルのデビュー作!

第一部では、勘違いしまくりのライバル刑事たちを尻目に
ホームズが見事な手並みで犯人逮捕するまでが描かれ、
第二部では、時間軸をさかのぼり、
喉がカッサカサに乾いてきそうな荒野からの救出譚と、
モルモン教団村からのドッキドキの脱出劇が活写され、
それによって、犯人の動機があきらかとなる。

<感想メモ>(多少ネタばれあり!)
・ホームズとワトスンが、その人生を交えるまでの運びと、
出会いのシーンは最高。

・ホームズは血の研究に没頭してて、あまり周り見えてない感じの天才でインパクトあり。

・ただし、極私的には、全体(阿部訳というのとデビュー作というのと)、複数の原因があるのかもしれないが、ホームズが自惚れ過ぎたり、はしゃぐ感じがあるので、いまいち私の理想のホームズ像とフィットしてくれなかった。
 →延原訳ではどうなのかしらん?

・ワトスンのホームズ人物評価リストは極端で笑える(^^

・ライバル刑事たちはキャラ的にはもっとかき分けて、立たせてほしかった。彼らとの競争はどうでもよかった。なのでサスペンスや疾走感、吸引力は下がり目の印象。

・また、ホームズが事件の成果を、最終的には彼らに奪われることを、多少気にしている感じがするのもマイナス↓
 →難事件を解決すること以外頭になく、誰が得するのかなどということは周りが気にするだけで、自分では歯牙にもかけないでほしい。
 →四つの署名(延原訳)のときは感じなかったし、ひょっとするとデビュー作以後は、成果が奪われることにはほぼ達観できていて、私の理想のホームズになっている?

・なんてたって2部がいい! 水も食糧も絶え、茫漠たる荒野にて、今にもハゲタカに食われそうになっている老人と少女。
 →そこを理想郷目指して大移動するモルモン狂信者の一団が通りがかり、二人救う。
 →少女が大人の女性になると、教団幹部の傲慢な子息との結婚話が持ち上がり、迫られる。
 →しかし、当時の彼女には猟師でクリスチャンである逞しい婚約者が…。
 →異端者扱いされ、じりじりと狂信的な教団からの魔の手が迫る。
 →老人と彼女を救うために、逞しい猟師が村に潜入してきて、教団村から命がけの脱出を試みるが……。

・ミステリな部分より、この冒険脱出劇の方が圧倒的に読ませる! ミステリの腕よりこっちの方がすごいと思う。

・ちなみに、このあと書かれた「四つの署名」では、その謎もさることながら、財宝めぐる攻防部分で、またドイルの筆致が冴える! 完成度が高いぞ!
 →短編もいいけど、長編もいいじゃん。パスカと恐怖の谷も読んでみたい。
 →「緋色の研究」はひとつの長編としてググっとつづけて読ませる分にはちょっと問題あるけど、2部は、短編としても読みごたえがある!

・そのほか、作中、ポーの探偵デュパンを名指しでけなすのには驚いた。

・あとがきにほかにも影響受けた人の名前が出てたな。二部構成もその影響らしい。

・また、ポーの作品中にも出てた論説がここにも受け継がれてそのまんま出てた。
 →特異な事件ほどヒントが多く、ありふれた事件ほど、つかみどころがなく難しい、みたいな理論。

以上。

追記:
1:阿部さん訳、読み味はある意味軽快でスカっとしたんだけれど、ホームズの自惚れ加減か、言葉使いかわからんが、やはり私の夢見るホームズ像から微妙にずれてる気がする。しかし、そもそもの原文がそうなっていて、訳のせいではないかもしれない;;
 →原文自体、ホームズが調子こきすぎてるようだ。

2:
基本的に、ワトスン視点の一人称での表現だったのが、第二部では神視点が用いられていて、ちょっと趣が違う。そしてこれがジリジリとたっぷりと読ませる!


この感想へのコメント

4.Tetchy (2008/10/20)
いちいちうなずきながら、カーシーさんの感想読んでましたよ~!
長編を読むとやはり第2部こそ、ドイルの作家としての資質を感じてしまいますね。
でも世間では第1部のような本格推理物を所望したわけで、ドイルの苦悩ぶりがわかるような気がします。
さて『恐怖の谷』はどんな読後感になるのか、今から楽しみです^^
5.カーシー (2008/10/21)
>Tetchyさん
毎度お越しいただきどうもです!

なるほど、世間に求められちゃうものが違うと困りますね。
ミステリの要素と冒険譚?or伝奇ロマンが、渾然一体となった完成度の高い物語が一番贅沢ですかね(^^
「恐怖の谷」はもう購入済みなので、いずれ読めると思いますが、気長にお待ちくださいまし。
発行順に読みたいので、その前にたぶん短編集ですね。
そしてまだ未購入「パスカ犬」ですか。
ぼちぼち進んでいきたいと思います(汗

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 2

シャーロック・ホームズの冒険 (創元推理文庫)

著者 : コナン・ドイル,阿部 知二

出版社:東京創元社

発売日:1960-07

評価 :

完了日 : 2008年10月16日

「緋色」を読む前に少しだけ、第一短編「冒険」の
『ボヘミアの醜聞』を読み始めてしまった。

すると、序盤で何かひっかかった。
これまで触れてきた、新潮や光文社の訳文と
何かが違っていて、憎めないホームズに違和感が…。

なんだろう?
気のせいかもしれないが、鼻につくなにかが
一瞬胸の内をかすめていったような?

新潮のは古めかしいけれど、そのぶん格調と、
なんとも言えない奥行きのある味わいがあって、
嫌みな感じがせず、
光文社のは古めかしさはいくらか柔らかくなって
読みやすくなっているのだけれど、
それでいて、ホームズ特有の憎めない個性みたいなものは
新潮と同じような輪郭で、留めているような感じがあり、
これといった違和感もなく平行して読んでこれた。

どちらのホームズも、お約束のように
たいていワトソンや依頼者について
ズケズケと言い当てるんだけど、
それが嫌みにならない感じで、たえず、
エレガントなユーモアに包まれたまま
ほっこり笑えてくるような何かになっている。

そういうキャラの核?ともいうべき部分が、
今ちょっと読んだだけだけど、
えらぶりたい青さなのか、はたまた、
強烈すぎる自負のせいか、
かすかに鼻についた気がした。

語尾、かしら?
うーん、これはもう、ただの好みなのかもしれない。
最初にどの訳から入ったか?というのも、関係してくるかもね。前知識がヘタに入るとアレね(汗

創元版の「回想」があったら、ぜひ読んでみたいんだけど、
たとえば、新潮の(「思い出」の)延原さん訳、
『白銀号事件(名馬シルヴァー・ブレイズ)』の冒頭は――

「ワトスン君、僕は行かなきゃなるまいと思うよ」
 ある朝、いっしょに食卓についているとき、ホームズがいった。
「行くって、どこへ?」
「ダートムアへさ――キングズ・パイランドだ」
べつに驚きはしなかった。いな、むしろ私は、いま全イングランドでうわさの種になっているこのとんでもない事件に、ホームズが関係しないのを、不思議にさえ思っていたのである。

第一声、「ワトスン君、僕は行かなきゃなるまいと思うよ」なんてしびれるね~。
そして「いな、むしろ私は~」なんて古風でなんか赴きあるじゃないの!(そこはワトスンだけど)
つーかタイトルが「白銀号事件」だもん、
なんか全体レトロでいいのよねぇ。

そして、光文社の「回想」の日暮さんの
『名馬シルヴァー・ブレイズ』の冒頭は――

「ワトスン、ぼくは行かなくちゃならんようだよ」
 ある朝、朝食のテーブルについたホームズがいった。
「行くって、どこへ?」
「ダートムアさ――キングズ・パイランドだ」
わたしは驚かなかった。いやむしろ、英国じゅうでこれほど話題になっている事件に、彼がいまだに乗りだしていないことのほうが、不思議だったのだ。

こっち、ずいぶん整理されて読みやすくなってますね。
でも、新潮のいい意味での古めかしい回りくどさがクセになってると、ちとライトで物足りない時も(笑
光文社のは全編こうして読みやすくスマートになってます。
でも、ホームズの持っている感じは、自分の中ではそれほどブレずにいれた。挿絵もいいし。

「ボヘミア」の冒頭をパラリした感触だけで
決めつけはしないけど、ホームズは頭よくて、
どうかすると嫌みに受け取られかねないキャラだから、
あんましえばんない感じでやってほしいな。
といっても、これは訳文だけの問題じゃないかもね;;

あとは、最後まで読んでから判断しようと思うけど、
阿部さんの訳がフィットしてくることを祈る。

追記:
「ボヘミア」のみ読了。
ホームズが、とある女性に翻弄されるという珍しい一編。
小気味よくて、クスっとできる。
アイリーネ・アドラーおそるべし!

翻訳問題については、少し慣れてきましたが…(安;
極私的な判断では、阿部さんのホームズは
他のホームズと比べてやや淡々とクールにきどった傾向が強い印象。
(上記はボヘミアだけかもしれず、他の話では別の顔を見せてたりするかも?)

延原さんのは、もっと落ち着いてて私の大好きな故広川太一郎がハマリそうな趣きがある。
うちに秘めた推理と正義への烈々たる情熱はあるのだけど、
どんなにがむしゃらになっても、がむしゃらにみえない
飄々とした紳士の風味があって、
そこに孤高の天才のアイロニーと強烈な自負がかいまみえる感じも加わると、
もうたまらない。
「思い出」の『最後の事件』なんかは最高!

日暮さんのは、どちらかと言えば落ち着きがあるホームズの線で、
だけど言葉遣いがもっと近代チックに洗練された感じ。多少まろやかで緩くなった印象?

訳者の生年月日を調べてみると、私の予想通り、
延原さんが一番年上だった。
あの味わいは熟年の味わい、まなざしなのだな。
きっと。
延原さん:1892年生まれ
阿部さん:1903年生まれ
日暮さん:1954年生まれ


この感想へのコメント

1.Tetchy (2008/10/17)
色んな訳者のホームズを読んでいらっしゃるんですね!
すごいですね!
とても勉強になります!
私も他の作家の作品ですが、特にフィリップ・マーロウとかは訳者によってガラリと印象が変わるように思います。
中身の濃い感想を読めて、とても嬉しかったです♪
2.カーシー (2008/10/19)
>Tetchyさん
私のダラダラと長い感想読んでくださって恐れ入ります。l

訳者によって、ガラって変わるのって、
いい面と悪い面があるかもしれませんね;;
趣が違って、ほほう、となる面と、
ええ! このキャラはこうしてほしくない!
と違和感を感じてしまう面と。

同じ作品が違う訳者で複数でている場合、
自分にあった訳者を見つけて読んでいくのが
いいんでしょうかね。
見比べてみる作業も面白いですが。
 

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 5

シャーロック・ホームズの思い出 (新潮文庫)

著者 : コナン・ドイル,延原 謙

出版社:新潮社

発売日:1953-03

評価 :

完了日 : 2008年10月16日

瀬戸川さんの影響もあって、
2巻目の短編集から読み進めてしまった。
※1巻の方には有名短編があるようだけれど、2巻には謎解きミステリとしては2流だが、怪奇冒険小説・伝奇ロマンとして読むとすばらしい作品が~。無理にポオをなぞったような作品より、瀬戸川さんは一般に無視されているような作品を愛し、解説してくれたのであった。

ホームズものは初めてだったけど、
読み始めると、サクサクと止まらない。
ミステリとしてどうか?など関係なく、
読み物として純粋に面白いではないか!

途中から、光文社版の「回想」を買ってしまったので、
こっちはお風呂場に持ち込んで平行して読むことになった。

光文社の新訳の方は、分かりやすいし、
読みやすいし、挿絵もあって入りやすい。

新潮の方は、「グロリア・スコット号」とかの
手紙文の口調とか、古すぎてつらいところや、
暗号の表現も古くて、劣るかなぁと思うところもあったのだが、
なんというか、格調というか、
おもむきのある感じが、逆にこの原文自体の雰囲気をかもしだしてる気もして、いやはや甲乙つけがたし。

ホームズは色々出てるみたいだから
比較してみるのも面白いかもしれない。

次は、「四つの署名」の予定、
それから「冒険」にいこうかな。

なお、ホームズを読むにあたって、ってわけでもないけど、ポオ全集の「モルぐ街」と「マリー・ロジェ」「盗まれた手紙」を書棚から出して参考がてら読んでみた。

「モルグ街の殺人」は、なるほど、事件自体も面白いし、デュパンのキャラも悪くないと思った。この人がいろんな原点になってるのか。
「マリー・ロジェ」は、実際にあった事件とからめてあるせいか、理屈が過ぎて、長いだけでつまらない。「盗まれた手紙」は今よむと「なんだ~」って感じかもしれないけれど、引き込んでくれるものはあるし、G**警視総監?がアホでいい。いろんなものの原点がここにあるのかなぁと、ほほえましい気持ちもわいてきた。

どの編か忘れたけど、ありきたりの事件の方が実は難しく、異常と思われる事件の方が、実は解きやすい、というような説があって、それには「なるほど正しいかも」と思わされた。
異常と思われる箇所は、すべて、犯人を示す重要なヒントになるのに対し、誰もがやりそうな事件というのは、誰もがやりそうなのだから、あてどころもつかもどころもなく、逆に難しいのだ、と。

ひょんなところで、目から鱗体験できてしまっただよ。


---
追記:
ホームズものは足湯小説だなんて
ほざいたこともあったけど、ごめんなさい!

「思い出」の『最後の事件』のラスト、
ホームズのワトスンへの書き付け部分をお風呂で
じっくり再読していたら嗚咽がもれそうになった。

行間から烈々と、そしてまたしみじみと
ホームズの覚悟が伝わってきて
痛烈に悲しくなってしまったのだ!
おそるべし延原訳のすごみ! 
ホームズ、バンザイ!


この感想へのコメント

3.このは (2008/10/21)
カーシーさん、こんにちは。ホームズに条件反射してお邪魔してみました。どれも素晴らしい感想ですね♪
「最後の事件」、自分も初めて読んだ時には衝撃を受けました。あれから○○年…再読する度に独特な時代を新鮮な気持で味わうことができます。(記憶力の乏しさのおかげ)。
新潮社・延原訳に長年馴染んでたのですが、訳者によって大きく印象が変わることをこちらで知りました。自分も創元推理で新しいホームズに会いたいです。
4.カーシー (2008/10/21)
>このはさん
こんにちは。コメントありがとうございます。
初めてホームズに触れてる私ですが、延原さん訳は格調高くて好きです。
格調が高いなんていうと、敷居が高そうに思われますが、
実はその逆で、とてもリズムよくスマートにまとまっていて、
行間の奥行からはなんとも言えない味わいが立ち上り、
ほくほくと読めるんですよね(^^
創元推理の阿部さんのは軽快明朗な読み心地でしたよ。

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 5

四つの署名 新潮文庫

著者 : コナン・ドイル,延原 謙

出版社:新潮社

発売日:1953-12

評価 :

完了日 : 2008年10月15日

妙な順番で読んでしまっているけれど、
なんの先入観も持ってないせいか、
すっごく楽しめます!

子供の頃、こういうのに触れてこなかったことが
けっこう職業的には、コンプレックスとして
あったのだけれど、大人になって、
なんの先入観もなしに読めるのは、
けっこうラッキーなことかもしれない、と
思ったりしました。

ホームズがコカインやってたのは、
一瞬、ヒキそうになりましたが、
そういう弱い面があって、天才的な面があるから
にくめないキャラになってるのかも、
と思えたり。

※マニアの方が読むと、ワトスンの結婚時期に???になったり、負傷個所に???になったり、困惑するようです。
私はもともと前知識もありませんし、その辺ラフに、楽しければいいので、素直においしくいただけました!

謎解き、ミステリの要素は少ないですが、
財宝をめぐる冒険譚として存分に楽しめますぞ!

父親が死んでから、毎年高価な真珠が
一粒ずつ送られてくるようになったという、
聡明な夫人からの謎めいた調査依頼…
そして、その意味ありげな冒頭からテムズ河上で繰り広げられる息もつかせぬ船同士の追走劇と、
やがて明らかになる財宝争奪をめぐる抗争の真相、そして、
死体のそばに残された四つの署名の意味まで、
ぐいぐい読ませる納得の一冊でございました!

ホームズものって、“語り”の文学かも。
とにかく真相は、誰かの口で語られるんだけど、
その語りが聞かせるんですよね。
「それでそれで?」とスルスル読まされる。
※子供によみ聞かせしたら、喜びそう。

飽きそうになると、いいタイミングで
合いの手やら、一呼吸入ってくるし、
訳者の力量もあるのでしょうけれど
生理的にいいリズムが脈動していますな。

ホームズがイキイキしているのは、
実際にモデルが居たせいかしらん?

ともあれ、切実とした現実世界とは違う、
一昔前の箱庭的な冒険推理活劇?
この感じが、今の私にうるさくなくて、
ちょうどよく、ほっこり楽しめましたね。
※執筆当時はリアリティのある話だったのかもしれませんが、
今となっては作られた箱庭の中の、
懐かしい冒険活劇みたいに感じられて、
なんだかカワユいのです。変かな?

どっぷり苦しくなるくらい浸る世界とかじゃなく、
そこはかとなく懐かしく、なんとも言えない軽みのある世界が
骨休みの娯楽として、とても居心地いいのです。

足湯?
そう、あんまりやったことないけど、
たぶん足湯!

肩まで浸かって息苦しくなることもなく、
半身浴30分の根気も必要なく、
さらっと浸かって気持ちいい、みたいな。

いつでもサッと世界に届いて、
いつでも抜けれて、またすぐ入れる。
あの世界がいつでも近くにあるって
幸せだなぁ。

ずばりホームズは、“語りの文学”であり、
足湯小説である!(どういたしまして!)

さて、お次は「緋色」に戻って読みたいが
持ってないので、短編の「冒険」を読もうかな~。


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 2

シャーロック・ホームズの回想 新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)

著者 : アーサー・コナン・ドイル

出版社:光文社

発売日:2006-04-12

評価 :

完了日 : 2008年10月15日

本屋を物色中、パラパラしてから購入。

もともと、故瀬戸川さんが書評で
言ってたのって新潮のでなくて、
創元かハヤカワの「回想」だったはずで、
あっしが買ってしまったのは新潮の
「シャーロック・ホームズの思い出」だったのねん。

光文社版のをパラパラしてみると、
挿絵もあって、新訳もよさげて、
購入決定してしまった。

だってね、グロリア・スコット号のところみたら
新潮の「シャーロック・ホームズの思い出」と
謎の暗号文が全然違うんだもの。

その解き方は一緒なんだけど、
まったく意味の通らない言葉を
置いていっただけの新潮版の暗号文に比べて、
光文社版は(原文もちゃんと載せてあって、
その隣に)、一つの文章として
全然変じゃない手紙調の暗号文が表現されてるの。

まぁ、読み比べた人じゃないと
何を言ってるかわらないと思うけど(汗
つまり光文社の方が、スマートで
読みやすいし、わかりやすく、
なるほど感も違う感じがしちゃうわけ。

<新潮>
「万 雉の 静穏なる 事 ロンドン市の……」

と、飛び飛びで言葉続いてく、↑こっちが
新潮版の暗号文。

<光文>
「ロンドン向けの猟鳥の供給は、着実に増加しつつある。猟場管理人頭ハドスンは……」

と、普通に手紙調で続いてく↑こっちが光文社版。

見ての通り、光文社版は、一見普通の文章として、
猟に関する報告みたいになってるんだけど、
ここに暗号が潜ませてあるわけです。
※原文と解き方を併せ読むと、なるほど!となる。

ところが、新潮版は飛び飛びの文章で、
あからさまに暗号文なので、なんというか、
モロだしで、スマートではない感じがするのね…。

もっとも、光文社版を読むまでは、
新潮版にも、「ふむふむ、なるほど」と
頷いてたんだけど…(汗

あぁ、今パラパラしてる新潮版放りだして、
こっち読もうかしら?
※結局、新潮版はお風呂で読み、
光文社版は電車の中で読むことになり、
両方読むことになったのだが…。

最近は忙しくて、ネットクイズもお休み。
ホームズくらいの短編をパラリするくらいが
ちょうど良い気分なので。

もっともこんなときでもないと、
ホームズは読まなかったかもしれんが。
もともと、子供の頃に読んでた人間じゃないし。

もう大人のワタシですが、
ワトソンとのやりとりや、良い意味で
軽みのある物語が新鮮に感じられて、
普通に楽しんでます。

でも、「冒険」から読むべきだったかしらん?
あっちは創現推理で持ってるのよね(汗
バラバラですわん。

※ちなみに、「グロリア・スコット号」で
死んだ友人の父親が語る手紙部分の口調が、
新潮のは「我、生還セリ!」みたいな感じで
堅すぎてよくわからない。
というか読むのが面倒くさい。
しかし、光文社版は砕かれてるっぽかった。
それも好印象だった。

---
読了追記:
瀬戸川さんの影響で、「回想」から読み始めて
しまったけれど、さして問題はなかった。
どの編も読み出したら止まらない。
新潮の「思い出」より2編多い。挿絵もありグッド。
デュパンたちより、ホームズとワトスンの方がいいな。
コンビのやりとりに、なんともいえないおかしみがあって。ホームズは社会不適応者なところがあるが、どこか憎めない天才だわさ。
※洗練されてて当り前か。つーか、ホームズにはモデルがいたぶん、キャラがしっかりしてるのかもね。

・名馬シルヴァー・ブレイズ
・ボール箱
・黄色い顔
・株式仲買店員
・グロリア・スコット号
・マスグレイヴ家の儀式書
・ライトゲイトの大地主
・背中の曲がった男
・入院患者
・ギリシャ語通訳
・海軍条約文書
・最後の事件

どれもいいけど、あえてあげれば「マスグレイヴ家の儀式書」「最後の事件」かしら。
塩詰めの耳が入った「ボール箱」も珍しいか。
「海軍条約文書」は、ちょっと盗まれた手紙っぽいのね。
※それをいうなら「ボヘミアの醜聞」の方がそうらしいが。


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 8

るきさん (ちくま文庫)

著者 : 高野 文子

出版社:筑摩書房

発売日:1996-12

評価 :

完了日 : 2008年08月27日

人は
誰がなんといおうと
等身大の
ありのまんま
自分を生きるのが
一番幸福です。

えっちゃんと
るきさんの名コンビの日常が
それを
鼻歌を聴くような心地よさで
そっと教えてくれる。

素敵!
いろいろあるけど
気にしない気にしない。
マイペースでいきましょー♪

----
ちらっと立ち読みしたあげく、
我慢できず、購入。

その恬淡とした雰囲気、
ぶれない自分のペース。
なんだか、安心する。


この感想へのコメント

1.ようちん (2008/08/28)
こんにちは、お邪魔します
懐かしく、嬉しく、感想を読ませていただきました♪
るきさん♪ 私も大好きです♪♪
いいですよね、あのマイペース
一緒にいるえっちゃんが普通の人だから、余計に際立つ感じですよね~
ほんとに、ナポリ?に行ってしまった時には、驚きましたが、どこへ行っても変わらぬその生活ぶりに、安堵した思い出があります。また読み返してみよう♪
2.カーシー (2008/08/28)
ようちんさん、こんにちは!
コメント、ありがとうございます♪
まったくおっしゃる通りですねぇ。
帰ってきたるきさん、とかあれば読みたいです。
でもいつも通りなんでしょうね(^^

いつも「自分でいる」るきさんを読んでると、
透明で、さっぱりとした、それでいて
しっかり芯のある勇気みたいなものが、
胸の奥から湧いてくる感じがしました。

100万言の暑苦しいメッセージ届けられるより、
こっちの方が、効くときありますよね。
 

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 21

赤めだか

著者 : 立川 談春

出版社:扶桑社

発売日:2008-04-11

評価 :

完了日 : 2008年08月26日

夜中の3時から読み始めて、
朝6時半まで一気読み。

何度か本気で吹き出し、夜中に大笑い。
そして、気がつくと腹の底に
開き直ってありのままに生きる元気が
むっくり湧いている。

「落語は人間の業の肯定だ」
至言だと思った。

よく知りもしないくせに
急に落語が聞きたくてたまらなくなった。

怖いようで、情にもろい、
揺れる落語の天才、
立川談志の人となりが
ほっこり憎めない像となって
こちらの脳裏に浮かび上がり、
それがいつのまにやら
懐奥をさわやかに暖めてくれる。

※一緒にいたら胃がいくつあっても
足りなそうだけど、そのまんまでいてほしい人。
後にも先にもあらわれないであろう
めっぽう人間くさい、御仁だ。

師匠クラスの人の逸話も面白いし、
なにより弟子たちのやりとりも
笑えて、泣ける。
語り口が落語家だけに
メチャメチャよくて
立て板に水が流れるように
すらすら読めて止まらない。

どもりの志らくが好きだったなぁ。
師匠から言われたことでも
自分のやりたくないことは
絶対やりたくないんですと断って
認めさせた。つわもの。
談春の弟弟子だけど、
談春より早く真打ちになっちゃった人。
志らく以外の前座仲間もみんな
おかしかったけど。

立川談志と、その師匠の小さんとの
からみもよかった。

なんというか、
人間と人間が本当に
ぶつかったときに
何かが生まれるんだなって感じる。

そして、人はなにもビビって
生きる必要はなく、
あるがまんま、腹くくって、
これがわしなんだから
しかたねぇじゃねぇかと
開き直ってあっけらかんと生きることが
幸せなんだと思えてくる。
じゃなきゃ、別々の人間に生まれた意味もないし、
個性があっても萎縮して出るモノも出なくなる。

どうせ生きるなら
なにか自分だけにできる
おもしれぇことして生きたいと思った。

談春の前座時代は
もうそのまんま現代落語ですな。知らんけど。
本を置く暇がないとはこのこと。

元気出したい方や
日々、なにかしら緊張して生きてて
疲れ切ってる人なんかにいい処方箋本かと。

※私は元気出過ぎて、そのあと一睡もできず、
次の本を読み始めて、そのまま会社へ
行くことになってしまった。眠い!
けれど肩の力が抜けていて良い気持ちだ。


この感想へのコメント

1.anokeno (2008/11/14)
読んでみたくなりました
2.カーシー (2008/11/14)
>anokenoさん
いらっしゃいませ~。
自信をもってお薦めしますよ。
元気も出ますし。
 

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 1

偽書信長伝―秋葉原の野望〈巻の下〉 (角川文庫―スニーカー文庫)

著者 : 榊 涼介

出版社:角川書店

発売日:1992-10

評価 :

完了日 : 2008年07月16日

作者の顔は文中見えてこないけど、
読後に、作者のキャラたちに対する
温かいまなざしが感じられて
なごんでくる。

厳密な史実じゃないと駄目だという人には
あかん作品かもしれないけど、
たんに歴史好きな人にはいいんじゃないかな。

わしも、コンプティークのキャラは
全然読んでなかったし
知らなかったけど、
読んでてアイしちゃったし。
知らなくても全然大丈夫。

これのシリーズで龍馬ものもあったんだけど、
なぜか、あっちは挫折したんだわさ。

いつかまた挑戦してみたいとは
思ってるんだけど;;

あ、この偽書信長伝の感じ、
源先生の「風雲児たち」に通底してるかも!
しっくりくるはずだわさ。

あれも作者の目線があったかい!



この感想へのコメント


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 1

偽書信長伝―秋葉原(あきばっぱら)の野望〈上〉 (角川文庫―スニーカー文庫)

著者 : 榊 涼介

出版社:角川書店

発売日:1992-07

評価 :

完了日 : 2008年07月16日

DSの戦国頭脳パズルやってたら
なんだか久しぶりに
どうしても読みたくなって
開いてしまった。

10年以上ぶりじゃないかなぁ。

久々に秋葉原信長読んで驚いたのは
この文章が神視点だったこと。

神視点であっちこっちとびまくり、
いろんな人にカメラよってるのに
全然混乱しないで
スコスコ飲み込める。

この技量。今更気がつくとは。

個人的に、神視点というか
作者の顔(語り)が見え過ぎちゃうものは
駄目だったような気がしてたのだ。

たぶん、しばりょう先生か何かの作品で
あ、おれ、こういうのしらけて駄目だ、
と思ったんだと思う。

でも、これの場合は、物語を邪魔するような
作者の顔は入ってこないで、
一番いいカメラにほっこりコロコロ転がって
テンポよく進んでいく感じ。

作者の語り口が
登場するキャラたちにもあってるし、
自然なんだろうなぁ。


地図もいっぱい入ってるし
歴史をわかりやすく
俯瞰できるって気持ちいい。

もっとも、嘘日本史だけど。

というより、作者もいってるけど、
これは雑誌コンプティークで
有名だったキャラを
もしも戦国時代の中で
役を割り振って転がしてみたら?
というシュミレーション小説なのだ。

だから、もしも信長が
本能寺で殺されなかったら?
とかの、IFものの目線じゃない。

キャラを楽しむ小説になってる。

そのキャラがすこぶる
小気味よく、味わいがあっていいんだわさ。

たわけ!

と、一度でいいから
秋葉原信長になじみの鉄扇で
突っ込んでもらいたいなぁと
ニマニマしながら本気でおもった。
額から血がダラダラ出そうだけど;;

マンガくさいのに、人間くさい
このキャラたち最高です。

美少女の女しのびでもある上杉謙信と
信長のドタバタロマンスや
せせこましい四谷武田との死闘、
松平茶水のあまりに人間的な小心ぶり、
そして、太田道灌の曾孫の巨漢ヤススケや、
柴田勝家たち部下の愛しき馬鹿な活躍、
心がほっこりしてくるほど
楽しいんだわさ。

また読もうっと。







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 1

インドへ馬鹿がやって来た

著者 : 山松 ゆうきち

出版社:日本文芸社

発売日:2008-03

評価 :

完了日 : 2008年05月14日

期待してたほど笑えなかった。

でも、インドの空気は感じられたし、
著者の、なんともいえない肩の力ぬけた感じ
というか、情けなさみたいな味わい?
は嫌いじゃないと思った。

インドで漫画は売れないなぁ。


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 14

みぃつけた

著者 : 畠中 恵

出版社:新潮社

発売日:2006-11-29

評価 :

完了日 : 2008年02月22日

先輩にすぐ読み終わるから
読んでみ、と言われ。パラリ。

やなりの鬼が、きゃわゆい!
鴨川ホルモーの、ショウロンポウの巾着鬼たちを
一瞬思ったけど、見目は全然違う。

擬音のセンスと、絵のセンスで掛け算の完成度。

私は二度楽しんだ。

一度目は、病気の主人公の子が普通に、
鬼と友達になって
さみしくなくなったと読み、
二度目は、この子は連れていかれたのだと
判断して読んだ。

そうすると、まったく別の話になる。

かわいくて、ほっこり。
と。
かわいくて、静かに悲しく、でも幸せみたいな
パトラッシュ系。

いやぁ、とにかく絵がいい。抜群。
この人、米村さんの本の絵を
やってた人だったのか。
そのときは、これほど目には留めなかった。

子供にプレゼントする本としても
鬼たちが楽しいので、いいかも。



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5.風なまこ (2008/02/23)
まあやっぱり!!
でもあきらめませんよ~♪
だって「ぎゅいんぎゅいん」ってどんなどんな?なんて
ますます気になっちゃって 笑
6.カーシー (2008/02/24)
>風なまこさん
あはは。ぎゅいんぎゅいんは、
正確な擬音じゃないかもしれないですけど、
とにかくカワイイ擬音がたくさんでてきて、
こちらの想像力が刺激されるんですよ。
ほっこり系がお好きでしたら、あきらめずに
トライしてみてもいいかもしれませんね(^^♪

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 1

源内万華鏡 (講談社文庫)

著者 : 清水 義範

出版社:講談社

発売日:2001-10

評価 :

完了日 : 2008年01月12日

仕事で何も書けず、万年スランプの私。

とある目的で「風雲児たち」を読んでいると、
源内先生について、もうちょっと読みたくなり、
積読本の中から本書をとりあげパラパラする。

清水義範だから、読みやすくてやめられない。

そして、源内のポジティブな思考や自信過剰が
気持ちよく、最後は悲壮な死をとげるのだが、
なんとも救われた爽やかさが胸に残る。

同じ人間だもの、
オランダ人にできて
日本人にできねぇわけがねぇ、
そんな心意気で、自分をもっともっと信じ、
前向き楽しみながら
諸事を乗り越えていこうと思った。

「風雲児たち」も何度も読み返したい。
登場人物に、すべて温度がある。
こういうのがいいなぁ。


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 1

レプラコーンの涙―ソード・ワールド短編集 (富士見ファンタジア文庫)

著者 : 水野 良

出版社:富士見書房

発売日:1990-01

評価 :

完了日 : 2007年11月12日

WEB本の雑誌の「作家の読書道」で
乙一さんが紹介してた本。
私も久々に再読(何度も読んでる宝物)

「レプラコーンの涙」も個人的に大好きだけど、
「ジェライラの鎧」にはまた泣いてしまった。
一気読みできる完成度の高い短編。

平明な文章で読みやすく、鎧職人の仕事の
ディテールにもうならせられるものがある。
リーダビリティが高く、それが終わるまで持続される。

なんといっても主人公の女騎士ジェライラと
鎧職人のルバートの人物造詣がいい。
その心の機微に、こちらの心もチクチクしたり、
もどかしくなったり、いちいち悩まされる(楽)。

冒頭から終りまで、
「それでそれで? 次はどうなるの!?」
と目が離せず、自然に引っ張られてゆく。

オーソドックスかもしれないけれど
しっかりカタルシスを味わえる構成で文句なし。

もしかすると、心理描写が端的でわかりやすいので、
対象年齢を感じて、表現として物足りない大人たちも
いるかもしれない。
でも、大人でも十分泣ける、骨太な心情が、
ドラマが、せつない熱が、ここにはある。

この本が15年ほど前くらいの多感な時期に、
私の心を耕してくれたから、今の私がある。

一時期、現実主義というか、ある意味
強迫観念的な思想にとりつかれたことがあった。
それはたぶん、概ね、こんな思想だったと思う。

「我々は一分一秒ごとに死に近づいている。
だから一瞬たりとも無駄なことはできない。
ゲームしたり、娯楽本やらを読んでる暇があったら、
一流と呼ばれる長い歴史を生き抜いてきた文学を読みあさり、
現実に根ざしたドキュメント、あるいは
今を生きるために必要な、
心震えるノンフィクションを読み、
死ぬまでの間に、とにかく自分の現実人生に
確実に役に立つような、豊かにするような、
また、魂を高めるようなことにのみ集中していくべし」

確かに一理あったとは思うのだけど、
この勢いでガツガツやってたら、いつしか
自分というものに、“うるおい”や“優しさ”に
似たものが、すっかりなくなっていた。
厳しく、冷たく、偏りの激しい、
ガリガリした人間になっていた。

この本は、確かに架空世界の話しだし、
現実には多分ありえないような、
ヘビの怪物もちょろっと登場する。

しかし、架空世界には、架空世界の
リアリティというものがあるのだ。
少なくともこの本にはそれがあり、
人々が暮らす空気と、血の通った人間たちが
そこかしこに息づいている。

「根も葉もある嘘」と言ったのは佐藤春夫だったか。

ここに出てくる人間の心の機微は、我々と同じ、
現実を暮らす中で揺れ動くそれとなんら変わりは無い。
人間がいるのだ。
だから、架空世界といえども、
そこに息づく生の息吹は、限りなく本物だ。

ファンタジーを苦手な人はいると思う。
私自身、一時期はまったく手にとらなくなったこともあるし、
なんと言っても、この大変な現代を生きる上で、
直接的に役立つしろものとは言えない。

しかし、私のガリガリに干からびた心を豊かに耕し、
うるおいを取り戻してくれたもののひとつは、
間違いなく、この無限に広がる架空世界のお話だった。

胸のすくような、ドキドキするような、
キラキラと輝やいている痛快な読み物たち。
人間が、本当に人間らしく生きていくには、
心躍らせる物語も必要なのかもしれない。

時には、想像の羽をのばし、
架空世界で逞しく生きる人々に思いを馳せ、
感受性の世界に浸ってみるのも
悪くないのでは?

この長い人生の道行きで。




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 12

今日の早川さん

著者 : coco

出版社:早川書房

発売日:2007-09-07

評価 :

完了日 : 2007年10月02日

食費けずって買ってきました!

こんな娘たちがいてくれたら、
あたしの積読本はさぞかし喜ぶだろう。

ミステリからSFから内外の純文学から
冒険アクションやら時代ものやら
一通り粒ぞろいを読み尽くせないほど
そろえておるでよ。

あたしがあと、どれだけ買えて
読めるかわからないけど、
まだ見ぬ子供たちよ、頼んだぞ!(゚∀゚;)


--------

絵もキュートだし、それぞれに、
SFや純文学やホラーやラノベなどの
得意分野をもつオタク少女たち自体も
カワユイ。
彼女たちの苦労話や、オタク同士の牽制ぶりが
きちんと客観性のある4コマ漫画として
淡々と描かれており、本好きには
笑える仕上がりとなっておりました。


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 27

県庁の星

著者 : 桂 望実

出版社:小学館

発売日:2005-09

評価 :

完了日 : 2007年08月17日

一気読みの面白さ。

四角四面な県庁エリート職員が、
スーパーに研修にいったことで、
人間らしく成長していく様が
じりじりと見事に活写されていく。

彼が挫折し、そのあるがままの自分を受け止め、
周囲に心を開いていくよによって
周りが力を貸すようになっていく感じが
実に爽やか。

もうひとつ、パートのおばちゃんなのに、
なぜかスーパーの現場すべてに通じ、
リストラの選出権限まである二宮の家族小説という
線がある。
家族といっても、旦那とは離婚しており、
今はその息子との二人暮らしだ。
息子は生意気盛りの20歳で、
バイトして2万しか食費を入れてないくせに、
老人介護の会社を作るだの、
ボランティア団体を立ち上げるだの、
純粋な理想ばかりを熱く語る。

二宮は、社会の厳しさをや現実を知っているからこそ、
そんな甘いものじゃないと、いい諭すだけで
なぜか応援する気持ちもあるのに、それを表に出せない。

ところが地域の俳句のクラブに入っており、
そこの先輩にアドバイスをもらったり、
スーパーでひたむきに活躍するケンチョウ男に
触発され、そんな息子に温かいまなざしを
向けれるように、彼女も成長していく。

その辺の描き方が実に、地に足がついていて
じりじりと読ませられる。

最後は、スーパーがひとつになって
消防設備点検や、保険の調査を乗り越え、
リストラの危機さえしのいでハッピーEND。

ケンチョウ男は、1年の研修ですっかり
人間らしく成長し、県庁に戻ってくる。
そして、本当に心意気のある人に
県の産業振興を担当するものとして
お金を融資する相談をうける。

それは、着たいワンピースのボタンも
自分でとめられなくなった高齢者や障害者のために
脱ぎ着しやすい服を製造販売する有限会社。
5人で立ち上げたベンチャー企業だ。

書かれてはいないが、その面子の中に、
二宮の息子がいることは想像にかたくない。

いやはや、すっきり爽やかな
役人エンターテインメントであり、
家族小説であった。
あっぱれ!

追記:そもそもは映画がいいという噂を聞き、
それなら原作を読んでから、という気持ちで読み始めた。
さてさて、どっちが面白いか、見比べてみようっと。



この感想へのコメント

1.take9296 (2007/08/24)
原作は未読のままですが、映画も結構よかったですよ。
小説を読むとまた、印象が変わるのかもしれませんが。
2.カーシー (2007/08/26)
私は基本的に原作があるものは、
原作から身体に入れることにしています。
なので原作から入って早速映画も観ました。

映画は映画として成立するように原作に
手が加えられていて、映画ならではの
うねりが出てて面白かったです。

原作は、小説らしい高まりがあって更に最高でしたよ。
それぞれに緊密で完成度が高いです!
 

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スチャラカ冒険隊、南へ (富士見ファンタジア文庫―ソード・ワールド短編集)

著者 :

出版社:富士見書房

発売日:1992-10

評価 :

完了日 : 2007年08月17日

ソード・ワールドRPGリプレイ集
「盗賊たちの狂詩曲」などで活躍した
スチャラカ冒険隊の面々のその後を綴った短編集。

あのドタバタした愛すべき愚かな連中を
どうしても、もう一度心に閉じ込めたくて、
ついつい手をだしてしまった。
※レミゼ(3)で挫折か!? いや、読むつもりだけど…

無論、再読だが、話はほとんど忘れていて
ワクワクほのぼのして、やっぱりホロっときて
たっぷり楽しめた。

収録されているのは、本家本元が書いた
「スチャラカ冒険隊、南へ」山本弘
のほかに、
・「かくもささやかな凱歌」葛西伸哉
・「子供はくじけない」友野詳
・「真実の鏡」中川雅博
・「見えすぎた目」清松みゆき
の4品。

お薦めは、やっぱり山本弘の短編。
リプレイ集で実際にかもし出されていた
あのやめられない“おかし味”と
リーダビリティが存分にまた味わえる。

どんでん返しとまではいかないまでも、
サービス精神たっぷりに、きちんと
予想外の展開でひっぱってくれるし。
幸せ。。。

もうキャラを愛しちゃってるからかもしれないけれど、
ケッチャのわがままや、それに振り回される面々を
見ているだけで、顔が自然にほころんでくる。

おっと、忘れちゃならないのが、
葛西伸哉の「かくもささやかな凱歌」だ。
彼はこれがデビューの新人だったそうなのだが、
どうしてどうして、うまいうまい。

筋肉ムキムキの吟遊詩人のユズが
仲間に劣等感のある身体をからかわれて飛び出すと、
彼女は、下級貴族の末っ子で、体格でも武術でも
兄たちに劣っていて、どうにか名を揚げようと
冒険に出ていたバルビーと出会う。

そして二人が挑んだのは、古代につくられた迷宮。

まだ誰もその謎を解いたことがないというその迷宮を
この二人が力を合わせて解いていく。

――と、その迷宮が、魔法全盛だった古代において、
まったく魔法の才能のなくて、オチこぼれた男が作った
迷宮だということがわかった。

彼は、魔法が出来なくても、機械仕掛けには長けていて、
魔法の罠などが一切なくても成立する、
地形をいかした機械仕掛けの迷宮を完成させたのだ。
そのオルゴールのようなコンパクトの迷宮の名は
「かくもささやかな凱歌」。
彼が、彼であるために作った、
彼の誇りそのものの迷宮だ。

※古代では、自分の魔法の力がどれほどのものかを
周囲に誇示するために、みな、それぞれ
ピラミッドを作るように迷宮作りに没頭したのだ。

ユズたちは、この迷宮の謎を解き明かす冒険の中で、
彼の生き様を追体験し、ひるがえって、
自分らしさを受け止め、自分自身に生きる!
ということを学ぶ。

古代から、人の悩みなんて変わらないものなのだな、
ってな感じで笑い飛ばしちゃう。

この二人の成長が胸に迫るようにしみじみ伝わってきて、
実に爽やかにホロリとさせられてしまう。
そして二人は、それぞれの道へと
胸をはって戻ってゆく。
うーん、たまらん!

ほか、
友野詳の「子供はくじけない」では、
登場人物が赤ちゃんに帰っていって
そこに出てくる赤ちゃん言葉に、
卑怯なほど笑わせられてほっこりしちゃうし、

中川雅博の「真実の鏡」では、
お嬢様ケッチャと、ザボの出会いとその淡い恋模様に、
ドキドキさせられちゃうし、

清松みゆきの「見えすぎた目」では、
相変わらずカワイ子ちゃんに騙されて
新型ゾンビにさせられそうになったり、
いつものドタバタ奮闘劇が楽しめる。
使い魔のネコ、ザザもおいしいところもっていくし(愛!

はぁ~、やっぱりソードワールドの世界って最高!
ケインたちスチャラカ冒険隊よ、永遠なれだ。


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