たなぞう

WEB本の雑誌

カーシーさん > 読書ノート

カーシーさんの読書ノート

絶対再読の約束!
絶対再読しなきゃなぁと思う本。生きる目印になったり、糧になったり、仕事上お手本にしなきゃいない本だったり。

※うーん、血肉本との差別化はからなあかんかなぁ。
一応血肉本は、昔読んだ本しか入れてなくて、こっちは
最近のも入ってる感じかな。
<前のページ 1  2  3  4  次のページ>

 

みんなの感想を読む
 2

1/2の騎士 harujion (講談社ノベルス ハF- 1)

著者 : 初野 晴

出版社:講談社

発売日:2008-10-07

評価 :

完了日 : 2008年11月20日

茫然自失の五つ星。
朝の五時に読み終えて、
とても眠ることができず、
ただ呆然としている。

会社なんかどうだっていい。

なんど震えたかわからない。

こんなすごいものを書ける人がいるなんて。

自分がちっぽけでイヤになるくらい、へこむ。
(個人的理由で)

それぐらいセンスが並外れている。

乱暴にくくるなら、主人公の美少女マドカは、
アメリア・サックスか!
※J・ディーヴァーのリンカーンライムシリーズの
ヒロインで、正義感強い万年巡査の娘です。
もっともアメリア自身は昇進してしまうけど。

く。誰にも教えたくない!

どうりで、この本、しつこく私を呼ぶはずだ。
※読んでほしいって思ってる本は
かならず何らかのサインを送ってくる
という私の妄想。

金はないってのに、
買え、買えっと異色なカバーが呼びかけてきたし、
買ったら買ったで、
今「ホームズ月間」だってのに、
いつも部屋の平積み本摩天楼から
チラチラこっちをうかがって
呼びかけてくるんだもの。

ホームズの「帰還」がぱっとしなかったのを
いいことに、軽く手にとってみたら、
止まらないったらありゃしない。

運命だったのだな。これは。

ああ、今は、これ以上軽々しくは書きたくない。
そして、早急に「退室ゲーム」を手に入れたい!

でも、どうせ眠れんから
ちょっとだけほざいとこ(苦笑)

喘息もちのアーチェリー部主将で、
レズ嗜好を持つ美少女マドカと、
可憐に美しい女装趣味のオカマ幽霊サファイアが、
東北の小さな町を守るために織り成す
異常犯罪者たちとの知恵比べの死闘録!

なんだ、オバケなんか出てくるんなら、
「なんでもありじゃん」、という御仁、
どうぞ、そのまま通り過ぎていってくださいまし。

ていうか、レズ? オカマ?
それってゲテモノっしょ?
という殿方、どうぞすみやかに
ご退室あそばせ。

1/2騎士というタイトルにも、
オバケということにも、
すべて意味があり、
緻密かつ、
笑いも泣きもすべってない!
抜群の会話センスで綴られた
この稀代の青春ミステリを
どうか読まないまま
終生安泰に、まっとうしてくださいまし。

笑いあり、泣きあり、“変愛”ありの友情と、
軽はずみに使いたくない言葉だけど、
「現代の光と闇」としかいいようのないものが、
渾然一体となったこの物語世界!

私は今、果てしなく独り占めしたい!

本当に、読み終わりたくなかった。
離れたくなかった。
最初から最後まで、つかまれっぱなしだった。

初野さん、あんたって人は
なんてものを作り上げちまったんだい・・・。
このハートフルな衝撃、ほかの現代の作家では
どんな人が拮抗したものをだしてるのかな。
ぜひ、読み比べてみたい。

---
追記更新:08/11/20
・「ディープポップ」というベクトル。
⇒軽妙な筆致で、現代をオシャレに呼吸し、広く大衆に受け入れられ易い作りだが、えぐってるところは浅くない。序盤戦で対決するのは、目の見えない主人を牽引している盲導犬を、主人の目の前で殺す犯罪者だ。言葉を発せない聾唖者や知的障害者を強姦する連中が、実際にいるとの噂も聞いたことがあるが、…天は病んでいる。

・「弱者、少数派」がひとつのテーマになっている。
⇒その扱われ方に感心。欺瞞も説教臭さもない。
明らかに人の助けがいる人々を、平等に、対等に、実際に一般人と同じく扱おうとすれば無理がでる。
かといって、同情しながら手を貸すのであれば、
そこには上下の溝ができる。

戸惑いながらも、あるがままの相手と向かい合い、
友達として、誠実に、正直に
恐れも弱さも含め、自分を出し合ってつきあうだけ。
この眼差しが通ってるから、実に気持ちが良い。
※「差別とは何か」という問題を乱暴にくくらず、
真摯に見つめているのでなければ、このステージには立ててないはず。この作家やるぞ。

・読んでて浮かんだ小説
⇒リンカーンライムシリーズ。
万年巡査の娘ではなく、万年警部補の娘が主人公で、体が不自由(幽霊)なブレインがおり、さらに
周りに個性的な助っ人が揃っている。
ただし、こっちの警部補は現役で生きている。

⇒「永遠の仔」天童荒太
児童養護施設がでてくるのと、作中、動物の名前を冠したキャラが活躍するためと思われる。

⇒「微睡みのセフィロト」冲方丁
ライトなのに深さも感じさせる質感とか。「ドッグキラー」「インベイジョン」「ラフレシア」「灰男」など、次々と現れる特異な犯罪者との対決が、近未来で謎の四次元殺人を起こす四次元能力者たちとの対決を思い浮かばせた。
 ⇒セフィロトは完全に架空未来で、現代に根ざしてる感はあまりないが、1/2騎士は、ファンタジックなネタでくるみつつ、現代の問題と向き合った作品。そのスタンスがどうも初野さんのスタイルっぽい。

※ちなみに、これらを↑全部足して割ったら、
「1/2騎士」になるということではない(^^;


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 1

マンドレイクの館 (富士見ファンタジア文庫―ソード・ワールド作品集)

著者 : 山本 弘

出版社:富士見書房

発売日:1991-06

評価 :

完了日 : 2008年11月12日

ソードワールド短編集第4弾!

・「マンドレイクの館」山本弘
山本弘は正真正銘、稀代のストーリーテーラーだ!
しっとり、緻密に「ジェライラの鎧」で読ませたと思ったら、
「ナイトウィンドの影」ではコミカルに、
軽快にキャラとプロットで唸らせて、
そして、今回は「マンドレイクの館」で、
設定(伏線)と物語(伏線)とが、
これ以上なく不可分な状態で
どどどん! と畳み掛けてきて、もうメロメロ!

この設定を思いついたとき、
山本さんは全世界を見下ろして
ニマ~っと笑ったに相違ない!
※パトレイバーのムービー冒頭付近で
高所から飛び降りたあのホバみたいな笑い方で!

この驚天動地のクオリティの連発が
17年前の作品だっていうんだからね!
驚いちゃうよホント!

ってことは17年積読してきたのだけれど、
なぜもっと早く手にしてこなかったのか!
ええい! 今はグチってるバヤイではない!
ホームズとともにソードワールドを制覇するのみだ!

もし、山本さんが嫌いじゃなく、
ファンタジーもいけるというクチの方、
悪いことはいいません。
ぜひ、ソードワールドを堪能してくだされ。

もう最初の映画のようなワンシーンから
ぞくぞくして引き込まれます。
いわくありげな美人が
ふらりとその街の洋食屋?に入ってくる。
※記憶でだーっと書いてますんで、
細部間違ってても気にしないように!

ふと、メインストリート側の窓に目をやると
通り過ぎてゆくのは、
なんともきらびやかで豪奢な馬車。

その馬車から、
町民に笑顔をふりまいているのは
なんとも可憐な幼い少女。

彼女は、先ごろ亡くなった父親のあとをつぎ、
この地方の領主となった娘だという。

通り過ぎる間に、一瞬、
いわくありげな美女と可憐な少女とが、
窓を介して目を合わせたような、
合わせてないような――

この場面はよく覚えておいて、
読後に振り返ってみるといい。
納得の唸りとも、ため息ともつかぬものが
こぼれおちるに違いない。

美女は、店員にさりげなく
少女のことをたずねる。
店員は美女にほだされ、
ペラペラとしゃべる。
が、まだまだ核心に触れられない。

これを言っても
ネタばれにもならんだろうから言ってしまうが、
彼女はズバリ、
幼き領主を亡き者にすべく送られた
腕利きの女暗殺者なのであった。

前任者の尻拭いをしにやってきたはいいが、
どうにも少女について腑に落ちない点があるのだ。
やり手の前任者が、なぜあのように
見るからにか弱い少女をし止めることもできず、
終わってしまったのか?

彼女も前任者に輪をかけて腕利きの殺し屋で、
無論、失敗は許されないのだが、
信用できるのは、忠実な部下一人だけ。
暗殺者をかかえる盗賊ギルドは
裏切りにまみれた世界。
上層部さえ信用はできないのだ。

しかし、命令は絶対。

やがて、目算どおり、
忍び込んだ領主の館には
なんと、恐るべき秘密が……。

少女 VS 女暗殺者の戦いは
もうくんずほぐれつ! どうなることやら、
それぞれに背負ってきた過去や背景をまじえ、
うなるような展開が待っています!

この一遍だけで、金を払う価値はある。
ていうか、孤高の女暗殺者シャドーニードルの長編が読みたいぞ、わしは!

権謀術数にたけ、残虐にして冷徹な
盗賊ギルド上層部との死闘をじりじりと読みたい!
幹部である腹違いの兄との宿縁もぜひからませて!

・「子供たちは眠れない」友野詳
これも、作者ならではのコミカルな味わいが出てて
軽快に楽しく読ませる一品。

この「マンドレイク」の短編と、
先の「ふたりのラビリンス」という短編集は、
モンスターをコンセプトにして
あまれた作品集なのだが、まぁほんと、
いろいろな角度から楽しませてくれる。

タイトルで想像がつくかもしれないが、
ある日ある街で、子供だけが助かった夜に
ウジャウジャとモンスターがやってくる。
それをどう防ぐかが読みどころ。
※ネタがわかっても大丈夫だと思う。たぶん(汗

構図は単純だが、この作者の筆は
バカっぽいティストで狙ってて(特に敵)、
それでしっかり楽しめるので安心だ。

同じみのコボルトやスケルトンや
コブリンがわんさか登場するぞ。

・「幻獣の遺産」清松 みゆき

もしかして、清松さんのは初めてだったりして?

安定した筆致で、幻獣狩りに賭ける一行の
冒険譚を読ませてくれる。

まぁ飛び抜けてどうの、
ということはなかったけれど、
病気になった仲間を救うため、
どうしても幻の獣を殺して材料を
得なくてはならなくなったパーティの話で、
最後までしっかり牽引してくれる。

唯一頼れるのは、なぜかやる気をなくしてしまっている
狩人のじいさんただ一人。
彼を引っ張りだすことには成功するのだが…。

展開は予想の域をでないけど、
キャラのかき分けなど申し分なく、
飽かず読ませてくれる。

水野良氏の描く羽頭パーティと比べると、
じゃっかん印象が弱いパーティだが、
冒険のなりゆき次第で、もっと深化していきそうな気配。

これで清松氏は書ける人なのだとわかったし、
他の話も楽しみにしていきたい。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 1

ふたりのラビリンス―ソード・ワールド短編集 (富士見ファンタジア文庫)

著者 : 水野 良

出版社:富士見書房

発売日:1991-05

評価 :

完了日 : 2008年11月04日

ソードワールド短編集の第三弾!

くー! 冒頭から嬉しい!

・ふたりの迷宮(ラビリンス):水野良
⇒われらが羽根頭パーティがまたまた登場!
第一短編集の究極の名作
「ジェライラの鎧」(山本弘)に匹敵するできばえ!
※「レプラコーンの涙」参照!

ソードワールドの世界で
「ロミオとジュリエット」をやったらこうなるのか的なお話だ!

下敷きがしっかりあるせいか、
キャラを見せる話というより、
読み応えのある物語として堪能できる一遍。

あいかわらず、パーティの軸であるライスは
感情移入させてブレさせないし、
今回は金勘定にひいでた魔法使いチェペルが
物語を暴走気味にひっぱっていく。

とある遺跡に迷い込んだパーティ。
そこには肉体をもたず、永遠にさまよう美しい女性の生霊が・・・。
生霊にとりつかれたように進み出るチェペル。
彼はいったいどうしたというのか?

身体の奥が透けてみえる、美しい生霊の話をきくと、
彼女は愛する男をずいぶん長い間待っていたらしい。

この遺跡から出る前に、パーティは彼女の願いをきいてあげることになるのだが、その結末とは・・・。

いやはや、完成度高い短編で降参。お見事。

・惨劇は突然に:高井信
⇒やや、これはひどい。
話の書きようによっては、もう少しマシになるはずだが、
書いてはいけない書き方をして、
せっかくのサスペンスを殺している。

これは読みたくなければ飛ばしてよし。

あまり事件の起きたことのない村。
ひとりの青年がゴリラに襲われたという。
ちょうど村に立ち寄っていたのは
凄腕だと酒場で自慢話をする冒険者。

村に冒険者がくること自体珍しいのだが、
こんなにラッキーなことはない。
さっそく村長が冒険者にゴリラ退治を頼むが、
村一番の力自慢で、戦士を自負している男がひとり、
自分にやらせろ!と抗議する。

村長は、その小うるさい村の戦士を
やっかいばらいしたいと常々考えていたので、
これでプライドをズタズタにしてうやろうと、
二人を競わせて賭け事とすることにした。
※冒険者が本当に凄腕なら、
村の戦士は当然大負けすることになるわけだ。

村には娯楽がないから、みな熱狂して賭けをはじめる。
※みんな凄腕を信じてるから、
誰も村の戦士には賭けない。
だから戦士は自分で大枚をはたいた。。

ところが、凄腕の冒険者も
実はホラコキでそんなに強くはなかった。
それに村一番の力自慢とはいえ、
実践経験がまるでない戦士も
これまたそれほど強くはないのだった。

だから二人ともビビリながら、
ゴリラ退治に出向いたわけだが・・・。

村の戦士は出向いた先で、なんと例のゴリラが
メッタメタに殴られ、殺されている死体を発見する!
さては先を越されたか?
残念がろうとした瞬間、ふとおかしいことに気がつく。

もしもあの冒険者が倒したのなら、
賭け事の証拠としてゴリラの首を
切り取っていってるはずなのに、
その頭はめった打ちになってるだけで
そのまま体についているのだった。

おかしいなと思い、ゴリラの首もそのままに
冒険者を探しにでた戦士は、やがて当の冒険者が
フラフラと歩いているのに出くわす。
その首元には謎の生物が張り付いていて・・・。

・・・・・・・

うーん。冗長なところと、
作品として成立させるために
削るべきところを削ってほしい。

・緑の都市:下村家恵子
これは読ませる! 
そしてセンスオブワンダーも味わえる!
下村さんってこんなにすごいのが書ける人だったのね!

祖父が書き残してくれた地図をもとに、
緑なす空中庭園都市をさがしていた主人公ナリルは、
自分と同じものを目指し、しかも頼りになるほど
豊富な知識を持つ青年リザンと出会う。

二人は協力し合い、ついに
古代魔術師が作りたもうたであろう、
緑なす巨大空中庭園都市アーティスに
たどり着く。

そこにいたのは、
アーティスの子にして番人である
可憐な緑髪の少女アーティア。

彼女に都市で研究ができるよう、
部屋や食事や羊皮紙の用意など、
いろいろ取り計らってもらうのだが、
なぜかそのアーティアに
冷たい態度ばかりとるリザン。

そんなところからリザンと離れ、
急激にアーティアに接近していくナリルだったが・・・。

ちょっと展開がよめたところもあったけど、
この緑の古代都市の正体や、アーティアの正体など、
もうSFチックな驚きとともに
ぐいぐい楽しませて最後まで読ませる!

杖に封じ込まれた生ける古代魔術師エルドースや、
陸上シーサーペント?のような
リザンの買い馬ウェブも脱出劇で活躍するし、
情景描写も女性ならではの繊細さもあるのか、
なかなかに達者で美しく、
読み応え十分な短編じゃ!

やっぱり、ソードワールドはええのお。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 1

ナイトウィンドの影―ソード・ワールド短編集 (富士見ファンタジア文庫)

著者 :

出版社:富士見書房

発売日:1990-10

評価 :

完了日 : 2008年11月04日

ソードワールドの短編集。
ロードス島戦記の世界と一緒。

「スレイヤーズ」やら「風の大陸」やらに触れてきた
世代の人には懐かしいのではないかしら。

中学時代から積んでた本て、お風呂場で読むくらいしないと
本当に開かないなと思い、ふやけるのも覚悟の上で
今、読み始めているのだった。

これはちょっと秀逸で風呂場にはもったいない話だったが。

・ナイトウィンドの影(山本弘)
⇒山本さんてこの時からこんなに書けたのか!
※アイの物語が書けて当然!最新作ほしい!

娯楽短編としてすごいクオリティ。
リプレイで登場していた、露出度の高い
ぴっちりとした黒装束の女盗賊ナイトウィンドの
誕生秘話といえる。
リプレイと、例の「薬」の話で繋がってて
合わせて知ってる人には大満足の読後感。

こんなに時代がたっているのに、
物語は色あせてなかった。
キャラの造形が気持ちいいベタに落としこめている点と、
展開の転がし方がうますぎる!

話は、ナイトウィンドが名をあげるため、
相棒のダバールとともに
とある領主の城へ忍び込み、何かを盗もうと
手を尽くすというだけのことなのだが、
そこに別の伏線がうまく挿入され
からめてあるから一本線では終わらない!

しかも、この話自体がリプレイの伏線に
なっているという構図。うまいうまい。

・鏡よ、鏡!(高井信)
⇒文章的な技術は必要最低限。
お話も単純。無難に読める。
知能がそれほど高くないドワーフなのに、
腕力ないから賢者(セージ)を目指してしまったデュダ。
彼はいつも悪友にからかわれている。

その日も、遺跡でひろった鏡を賢者先生なら
鑑定できるよな?とからかわれたところ、
わからないとは言えず、調べることに。

で、わからないので、親友たちを誘って
その遺跡まで出向くが、恐るべきトロルに出くわし、
最後はその鏡の力でなんとやら…と。

お話もキャラもギリで及第点。
発展性はないこともないが。

・神官戦士が六人(水野良)
⇒降参。山本先生と水野先生には降参するっきゃない!

うまいなぁ。タイトルもいいけど。
キャラだて、キャラ裁き、話はこび。
よどみなく穴がない。

とある地方の美貌の領主が、
これまたこの世のものとも思えない
美しい女性を妻とした。
あるとき、その女性が
まさしく化け物だったのを見たものが出て、
領主を追い出せと騒ぎになる。

そこへ、鳥の羽根を頭にさし、
それを目立つ目印として
売り出し中の冒険者パーティがやってくる。

そのパーティは当初、
街の実力者で商売の神チャザの司祭でもある
ルファードとともに
領主にこの地域から出て行くよう
説得に行くはずだったが・・・。

その街に、主義主張の違う神官戦士が
6人集まり、事態は錯綜していく。

これが面白いのは、羽根頭パーティの主人公で、
神官でもあるライスの「軸」がブレないからだと思う。
基本となる軸がぶれないから、
脇役が、振れ幅大きく右往左往するのを、
「おいおい!」と感じられて楽しいのだ。

言い換えれば、読者の感情移入が
途切れないということ。

主人公のライスは
商売の神チャザの万年神官(試験とか、
ご供養金の少なさで落ちてるっぽい)で、
うだつがあがらず、
ちょっと優柔不断で、
ちょっとお人好しで、
だけど、ちょっと正義感もあって、
なのに、臆病には違いなくて、
されど、頑固にめげないところもあって、
ちょっとだけ訓練も積んだ戦士なだけに、
まんざら戦えないこともなくて、
なにもかも中途半端だけど
悪いやつではないプレーンな男である。

こんなファジーな主人公だもの、
自分目線にならない人は
めったにないのではなかろうか。

その周りには、
わがままで自分勝手で調子がいい、
だけど憎めないハーフエルフの女の子リーナイラと、
魔法使いで知識欲旺盛な賢者でもあるのに、
チャザの神官であるライスより
そろばんに強く、金勘定の鬼のチェペル、
そして、いつもすっとぼけて飄々としているけど、
怪力で酒飲みのドワーフ、オスターがおり、
日々、あーでもないこーでもないと、
のたまっているのだ!

この騒々しいパーティに、さらに、
曲がったことが大嫌いな至高神ファリスの神官やら、
逆に悪の道を突き進む、暗黒神ファラリスの神官(領主の弟)なんかもからんでくるから、
てんやわんやで面白くなってくるわけだ。

人って、案外融通きかないもので、
だからこそ、人と人がぶつかりあって
何かが生まれるのだけれど、
この物語にはその、ありのままの自分の信念に生き、
融通きかない人々がおりかさなって生み出す
人間模様の複雑な妙味が横たわっている。

化け物女と愛をかわしたという領主と
その化け物女だって頑固に自分を貫こうと
しているわけだしね。

そんなそれぞれの人たちが
自分の思惑で行動しようとしている中で、
われらが羽根頭パーティが選んだ道とは!?

ソードワールドの短編はもう廃れているのかもしれないけど、
ぜひ、多くのライトノベルファンに味わってほしいな。
ソードワールドをプレイしたことがない人でも楽しめるはず!


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 4

棒がいっぽん (Mag comics)

著者 : 高野 文子

出版社:マガジンハウス

発売日:1995-07

評価 :

完了日 : 2008年08月29日

るきさんの路線の話が多いのかなと思ってたら、
もっと不思議でシュールな作品集でした。

なんだか妙におかしい
センスがキラキラした不思議な日常。
小人?のコロボックルとか出てくるし。

つかみの「美しきまち」は、
シュールじゃなくて
お見合い結婚した夫婦が、
日々の暮らしの中で起きる
共同住宅での微妙な軋轢から、
協力してささやかに守りあうという、
静かに力強い作品でした。

どこにでもある小さな街で人知れず、
しっかり結ばれている夫婦の絆。
この街が美しいのは、
見晴らしのせいだけではないでしょう。

豊田徹也の「アンダーカレント」とか
好きな人にはおすすめ、かな。

でも、一番僕をとらえたのは
「私の知ってるあの子のこと」です。

人と違うことを恐れ、
親から嫌われることを恐れ、
失敗や挫折や仲間はずれを恐れ、
知ってか知らずか、どうしようもなく
良い子ちゃんになってしか
世の中を生きてこれなかった人みんなに
読んでもらいたいですね。

悪い子になれ、
と言ってるわけではないですが、
誰からも良い子と思われ続けること、
また、良い子ちゃんで居続けることが、
本当に幸福なことかどうか、
そのヒントがこの漫画にはあると思います。

今、世間で爆発しているのはたいてい、
本当の自分を押し殺し続けてきた子が
多いのではないでしょうか。

たまには、イーってやりましょう。
イーって。


---
一遍、読んでみたら、
透明感のある心地良いそよ風が
通り過ぎてった感じ。
たまらん。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 8

るきさん (ちくま文庫)

著者 : 高野 文子

出版社:筑摩書房

発売日:1996-12

評価 :

完了日 : 2008年08月27日

人は
誰がなんといおうと
等身大の
ありのまんま
自分を生きるのが
一番幸福です。

えっちゃんと
るきさんの名コンビの日常が
それを
鼻歌を聴くような心地よさで
そっと教えてくれる。

素敵!
いろいろあるけど
気にしない気にしない。
マイペースでいきましょー♪

----
ちらっと立ち読みしたあげく、
我慢できず、購入。

その恬淡とした雰囲気、
ぶれない自分のペース。
なんだか、安心する。


この感想へのコメント

1.ようちん (2008/08/28)
こんにちは、お邪魔します
懐かしく、嬉しく、感想を読ませていただきました♪
るきさん♪ 私も大好きです♪♪
いいですよね、あのマイペース
一緒にいるえっちゃんが普通の人だから、余計に際立つ感じですよね~
ほんとに、ナポリ?に行ってしまった時には、驚きましたが、どこへ行っても変わらぬその生活ぶりに、安堵した思い出があります。また読み返してみよう♪
2.カーシー (2008/08/28)
ようちんさん、こんにちは!
コメント、ありがとうございます♪
まったくおっしゃる通りですねぇ。
帰ってきたるきさん、とかあれば読みたいです。
でもいつも通りなんでしょうね(^^

いつも「自分でいる」るきさんを読んでると、
透明で、さっぱりとした、それでいて
しっかり芯のある勇気みたいなものが、
胸の奥から湧いてくる感じがしました。

100万言の暑苦しいメッセージ届けられるより、
こっちの方が、効くときありますよね。
 

みんなの感想を読む
 16

赤めだか

著者 : 立川 談春

出版社:扶桑社

発売日:2008-04-11

評価 :

完了日 : 2008年08月26日

夜中の3時から読み始めて、
朝6時半まで一気読み。

何度か本気で吹き出し、夜中に大笑い。
そして、気がつくと腹の底に
開き直ってありのままに生きる元気が
むっくり湧いている。

「落語は人間の業の肯定だ」
至言だと思った。

よく知りもしないくせに
急に落語が聞きたくてたまらなくなった。

怖いようで、情にもろい、
揺れる落語の天才、
立川談志の人となりが
ほっこり憎めない像となって
こちらの脳裏に浮かび上がり、
それがいつのまにやら
懐奥をさわやかに暖めてくれる。

※一緒にいたら胃がいくつあっても
足りなそうだけど、そのまんまでいてほしい人。
後にも先にもあらわれないであろう
めっぽう人間くさい、御仁だ。

師匠クラスの人の逸話も面白いし、
なにより弟子たちのやりとりも
笑えて、泣ける。
語り口が落語家だけに
メチャメチャよくて
立て板に水が流れるように
すらすら読めて止まらない。

どもりの志らくが好きだったなぁ。
師匠から言われたことでも
自分のやりたくないことは
絶対やりたくないんですと断って
認めさせた。つわもの。
談春の弟弟子だけど、
談春より早く真打ちになっちゃった人。
志らく以外の前座仲間もみんな
おかしかったけど。

立川談志と、その師匠の小さんとの
からみもよかった。

なんというか、
人間と人間が本当に
ぶつかったときに
何かが生まれるんだなって感じる。

そして、人はなにもビビって
生きる必要はなく、
あるがまんま、腹くくって、
これがわしなんだから
しかたねぇじゃねぇかと
開き直ってあっけらかんと生きることが
幸せなんだと思えてくる。
じゃなきゃ、別々の人間に生まれた意味もないし、
個性があっても萎縮して出るモノも出なくなる。

どうせ生きるなら
なにか自分だけにできる
おもしれぇことして生きたいと思った。

談春の前座時代は
もうそのまんま現代落語ですな。知らんけど。
本を置く暇がないとはこのこと。

元気出したい方や
日々、なにかしら緊張して生きてて
疲れ切ってる人なんかにいい処方箋本かと。

※私は元気出過ぎて、そのあと一睡もできず、
次の本を読み始めて、そのまま会社へ
行くことになってしまった。眠い!
けれど肩の力が抜けていて良い気持ちだ。


この感想へのコメント

1.anokeno (2008/11/14)
読んでみたくなりました
2.カーシー (2008/11/14)
>anokenoさん
いらっしゃいませ~。
自信をもってお薦めしますよ。
元気も出ますし。
 

みんなの感想を読む
 1

偽書信長伝―秋葉原の野望〈巻の下〉 (角川文庫―スニーカー文庫)

著者 : 榊 涼介

出版社:角川書店

発売日:1992-10

評価 :

完了日 : 2008年07月16日

作者の顔は文中見えてこないけど、
読後に、作者のキャラたちに対する
温かいまなざしが感じられて
なごんでくる。

厳密な史実じゃないと駄目だという人には
あかん作品かもしれないけど、
たんに歴史好きな人にはいいんじゃないかな。

わしも、コンプティークのキャラは
全然読んでなかったし
知らなかったけど、
読んでてアイしちゃったし。
知らなくても全然大丈夫。

これのシリーズで龍馬ものもあったんだけど、
なぜか、あっちは挫折したんだわさ。

いつかまた挑戦してみたいとは
思ってるんだけど;;

あ、この偽書信長伝の感じ、
源先生の「風雲児たち」に通底してるかも!
しっくりくるはずだわさ。

あれも作者の目線があったかい!



この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 1

偽書信長伝―秋葉原(あきばっぱら)の野望〈上〉 (角川文庫―スニーカー文庫)

著者 : 榊 涼介

出版社:角川書店

発売日:1992-07

評価 :

完了日 : 2008年07月16日

DSの戦国頭脳パズルやってたら
なんだか久しぶりに
どうしても読みたくなって
開いてしまった。

10年以上ぶりじゃないかなぁ。

久々に秋葉原信長読んで驚いたのは
この文章が神視点だったこと。

神視点であっちこっちとびまくり、
いろんな人にカメラよってるのに
全然混乱しないで
スコスコ飲み込める。

この技量。今更気がつくとは。

個人的に、神視点というか
作者の顔(語り)が見え過ぎちゃうものは
駄目だったような気がしてたのだ。

たぶん、しばりょう先生か何かの作品で
あ、おれ、こういうのしらけて駄目だ、
と思ったんだと思う。

でも、これの場合は、物語を邪魔するような
作者の顔は入ってこないで、
一番いいカメラにほっこりコロコロ転がって
テンポよく進んでいく感じ。

作者の語り口が
登場するキャラたちにもあってるし、
自然なんだろうなぁ。


地図もいっぱい入ってるし
歴史をわかりやすく
俯瞰できるって気持ちいい。

もっとも、嘘日本史だけど。

というより、作者もいってるけど、
これは雑誌コンプティークで
有名だったキャラを
もしも戦国時代の中で
役を割り振って転がしてみたら?
というシュミレーション小説なのだ。

だから、もしも信長が
本能寺で殺されなかったら?
とかの、IFものの目線じゃない。

キャラを楽しむ小説になってる。

そのキャラがすこぶる
小気味よく、味わいがあっていいんだわさ。

たわけ!

と、一度でいいから
秋葉原信長になじみの鉄扇で
突っ込んでもらいたいなぁと
ニマニマしながら本気でおもった。
額から血がダラダラ出そうだけど;;

マンガくさいのに、人間くさい
このキャラたち最高です。

美少女の女しのびでもある上杉謙信と
信長のドタバタロマンスや
せせこましい四谷武田との死闘、
松平茶水のあまりに人間的な小心ぶり、
そして、太田道灌の曾孫の巨漢ヤススケや、
柴田勝家たち部下の愛しき馬鹿な活躍、
心がほっこりしてくるほど
楽しいんだわさ。

また読もうっと。







この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 1

子供の眼

著者 : リチャード・ノース パタースン

出版社:新潮社

発売日:2000-09

評価 :

完了日 : 2008年06月25日

自殺か?他殺か?検察は後者と見た。
恋人テリの夫・リッチーの殺人容疑で、
なんと辣腕弁護士・クリストファ・パジェットは
逮捕される。
群がるマスコミ。息子・カーロやテリにも
芽生える不信。深まる孤独。
証言は次々と覆され、陪審員の心証は
日々入れ代わる。
そして、息詰まる公判はすべて終わったが…。


*****
前作「罪の段階」で、殺してやりたいくらい
憎らしいキャラだったリッチー(駄目男)が
なんと冒頭で死んでくれる!

やったー! 
今までさんざんテリーをいじめてたから
胸がスカッとしたぜ。
それにテリーはパジェットと
お付き合いして愛し合うことになっていくし
バンバンザイだぜ~……
と思ったんだけど、
やっぱり世の中そんなに甘くない、
パジェットのアリバイがどうにも怪しくて
なんか本人も隠してるし
とうとう殺人容疑で逮捕!
子供関係も恋人関係も仕事関係(上院議員選挙に
出馬するはずだった)もボロボロになってく。

でもでもでも!
その土壇場でサポートしてくれるのが
なんと「罪の段階」で、大岡裁きを
見せてくれた名女性判事のマスターズ!
彼女が弁護士として、敏腕ぶりを
これでもか!っていうほどみせてくれる!
もう本当にかっこいい! 大好き!

コップに入った半分の水も
ある人からみれば、もう半分しかない、
しかしある人から見れば、まだ半分ある。

そんな感じで、舌鋒鋭く
陪審員の印象を二転三転させて
覆していく快刀乱麻ぶり。ほれぼれ。
ここの手に汗握る
陪審員制度の裁判シーン読まなきゃ
死んでも死にきれなかった。

それだけ言えばもう
なにもいうことないんだけど、
あと3点だけ書いておく。

ひとつは、犯人はわりと序盤の方で
察しがついてしまう。
叙述トリックが使われているといえば
たぶん使われてると思う。
でも、ミステリーではないから全然大丈夫。
察しはついても、最後の方まで
確信もてない情報の入れ方してあるから
サスペンスとしてはしっかりしてる。
ぐいぐい読ませます!

もうひとつ。
この作者の書いてきたシリーズ作品の流れが
見事に読者の気持ちをつきまくってて驚く。
「罪の段階」を読んで、私は
次は、リッチーとテリ(パジェットのサポートを
していたキュートな女性弁護士)の夫婦関係を
メインに掘り下げたものが読みたいぞ!
と思ってたら、
なんと「子供の眼」がまさにそういう作品で、
さらに「子供の眼」を読み、
マスターズの弁護士としての活躍にも
ほれぼれしてしまったのだが
その肝心の彼女の過去は語られてないので、
次はマスターズの生い立ちを知りたいぞと
思ったら、「最後の審判」が
まさにそれだったのだ。

確信犯なんだろうけど、いやはや
本当に至れり尽くせりな作家さんだと思った。
※確信犯の使い方間違ってるかも。

最後に一番大事なこと。
この本を読んだ感覚なんだけど、
なんて表現したらいいんだろう。

本当に質の高い、不朽の名作映画を
5,6本続けてみたぐらいの
濃密な充足感があるのよ。

いい映画やいい舞台を思い浮かべたとき
その画や空間が、まったく過不足なく
役者の芝居や、リアリティのあるセットや
調度品や照明効果などの空気感で
緊密に埋まってるのがわかると思うんだけど、
この作家の本はまさにそれなの。

登場人物たちが今どういう心理なのか、
それが血の通ったきめ細かいしぐさや
芝居(いや、芝居じゃないんだけどさ)で
丁寧に描かれてるんだけど、そこをきっちり
はずさずカメラで抜いてくれているのね。
いいカメラマン使ってるし、
演出も無駄がなくてうまいの!

そして、建物や調度品や土地の空気まで
すっかり手に取るように緊密に画面にとらえて
伝えてくるものだから
そこにぐわっと立体化する物語は
これ以上なく、濃厚で濃密で現実的に
なっているのだ。
※小道具さん、大道具さん、そして
ロケハン隊のみなさん、本当にご苦労様でした!
と言いたくなってくるくらいすばらしい。

サクサクっと展開するスピード重視の
映画もいいけど、じっくりとつぶさに
人物を描ききって、多層・多重的に
豊かに深く、味わえる映画もいい。

濃厚ではあるけど、「罪の段階」も「子供の眼」も
三人称多視点のベストな構成で
切り替わっていくから全然飽きないし、
訳文のリズムも素敵だから
もう流れるように止まらずに読める!

つーか、サスペンス的にも気になって止まらせて
くれないんだけど(汗
登場人物にどっぷり浸かって入れ込んじゃうから、
どうなるの! どうなるの!って感じで
常に宙づり状態! いや、うまいうまい!

ともあれ、最高のリーガルサスペンスに
間違いないですから、
未読な方は今すぐ読んでください。
文庫本で出てるみたいだから幸せです。

私は、単行本で買って、8年?積んでました。
後悔してます。

いや、常に優先枠に入れてたんだけど、
なかなか(自分の中の)運命の歯車がこの本に
スポットライトをあててくれなくて…;;

とにかく、本好きの方であれば、
読まずに死ねない本だと断言できます!
今更ですが、ぜひ!!


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 1

罪の段階〈上〉 (新潮文庫)

著者 : リチャード・ノース パタースン

出版社:新潮社

発売日:1998-10

評価 :

完了日 : 2008年06月18日

お話のさわりコピペ--

弁護士クリスにテレビ・インタビュアーの
メアリから電話が入った。
有名作家からレイプされそうになり、
誤って射殺したというのだ。
かつてクリスと関係を持ったメアリは、
その後、息子カーロをもうけたが、
別れて長い間没交渉だった。
女性弁護士テリーザとともにクリスは
正当防衛の線で弁護を引きうけるが、
事件には多くの秘密が隠されていた…。



濃密。こんなに人間や空間を明確に、
実感をともなって描けるなんて…。
かなわねぇ。たまらねぇ。やるせねぇ。

前作「ラスコの死角」だっけかな?
それを読んでなかったので、
最初少し戸惑ったけど、
読んでなくても、ちょこちょこ振り返って
教えてくれるので大丈夫。

あと、主人公のパジェット弁護士の
皮肉な言い回しや比喩が
よく飲み込めないところがあって、
些細だけれど、それも躓き要素として感じた。
※あのリンカーン・ライムの皮肉だったら
すっと通じて面白かったけど。
パジェットは弁護士特有の知的にひねくれた
いいまわしで、日本文化のわしには
ちょいちょい伝わりにくいとこがある。

がしかし!

そんなちっぽけなことは
読み始めてしまえば関係なくなる。

読んでるうちに、その味わいがわかってきて
人間がつかめてくると、もう止まらない。

つーか、あれで読むのやめてたら
一生後悔してた;;

こんな濃密な小説はめったにない!
仕事忙しいのに、
夜が明けても本を閉じることができなかった。
※おかげで最近は、会社を大遅刻する日々;;

謎のひもとき方、というか
情報をあかす段階の加減も神業だけど
なんといっても、
人間の描き方が半端ない!

パジェットとメアリと
カーロのやるせない親子愛はもちろん、
パジェットの補佐弁護士のテリと
その旦那リッチーのぐずぐずになってく関係性も
目が離せない!
※↑ここはもっと描いてほしいと思ったら
続巻でひきついで描いてくれてました! 最高!

おっと、パジェットをサポートする調査員の
ムーアも良い味だしてるのも忘れちゃいけないし、
なんといっても!
裁判官をつとめた女性判事(マスターズだっけかな)や
レイプ証言にたった女性たちがみな一人一人
生々しく魅力的に描き分けられていて
心から物語に没入できるのだ!

なんで女性をこんなにヴィヴィッドに描けるのだろう。

個人的には、
めちゃくちゃイヤぁな奴のリッチーの描き方にも
脱帽してるんだけど。

もうね
自分で自分のことに気がつけない悪人。
外で誰かに頭下げて働くのいやで、
奥さんにおんぶにだっこのくせに
自分のことはすべて都合よく正当化して
狡猾なまでに
人(妻と子)をいいように利用していく。
死んだ方が良いと思うほど、イヤなやつ。
※「平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学」
を読んでたので、それを思い出した。
まさしくリッチーは、平気でうそをつく人だ。
悪人描く勉強として、読んでおいてよかったかも。

で。そのリッチーが続巻の「子供の目」の冒頭から
登場している。そこでなんとリッチーが…!

ひえ、たまんねぇ。とまらねぇ。

ともあれ、裁判ものが嫌いじゃなくて
濃密な人間模様が味わいたかったら
絶対おすすめ!
最近読んだ「最後の生け贄」がうすっぺらに感じてくる;;
いや、あれはあれでオモロかったんだし、
比べたらかわいそうか。










この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 1

罪の段階〈下〉 (新潮文庫)

著者 : リチャード・ノース パタースン

出版社:新潮社

発売日:1998-10

評価 :

完了日 : 2008年06月18日

この名作の感想が増えてくれること祈りたいな。
もうだいぶまえの本だから、みなさん
読んじゃってるんでしょうけど(汗

プロットも、人物造形も横綱クラス!
読まずに死ねない本のなかの一冊でしょう。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 4

風の陣[大望篇] (PHP文庫)

著者 : 高橋 克彦

出版社:PHp研究所

発売日:2004-12-02

評価 :

完了日 : 2008年05月21日

とまらない。
会話がうまい。
おそろしいリズム感と、人物造形。ぶれない。
よませる。

権謀術数の妙味。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 1

小説家―直木賞作家になれるかもしれない秘訣 (講談社文庫)

著者 : 高橋 克彦

出版社:講談社

発売日:1996-01

評価 :

完了日 : 2008年04月23日

必要に迫られ再読。

励みになりやす。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 6

性犯罪被害にあうということ

著者 : 小林 美佳

出版社:朝日新聞出版

発売日:2008-04-22

評価 :

完了日 : 2008年04月22日

レイプされた経験を持つ著者。
同情をさそうための本ではない。

性犯罪被害にあうとはどういうことなのか。
ひとつの現実として教えてくれる。

実際にあった人でなければ書けないもの。
当時の心模様が如実に綴られている。

性犯罪被害を受けた者とその家族の関係。
そこに生じた軋轢もまたリアルに描かれる。

これは、家族内に
精神をわずらった者がでたときの
軋轢と似ているものがある。そう感じた。

こういうすれ違いは
きっと現代のどこの家族にもあるはず。
親しいからこそ敵か味方にしかなれない家族。
敵になれば、それは二次被害。

家族は、感じ、知り、学び、わかり合い、
深く、変わっていくべきだと思う。

こんな事件には遭うべきではないし、
事件自体あってはならぬことだが、
著者は、こういう事件があったからこその
成長と深化を感じさせてくれる。
等身大の人間の弱さと強さを。

事件の前と、後では、
人生の見え方が違ってくる。

一生、ふりすてることもできず、
事件を背負っていかねばならない著者。

その声が聞けて、よかったと思う。
痛烈に。真摯に。



この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 1

サクサク現代史!(ナレッジエンタ読本 6) (ナレッジエンタ読本)

著者 : 青木裕司×片山まさゆき

出版社:メディアファクトリー

発売日:2008-03-19

評価 :

完了日 : 2008年04月22日

衝動買い。
現代史にうとすぎるので。

チラミだけど、これは買いだと思った。
---
実際、正解。
世界の流れの一部を飲み込めた気がする。
パレスチナの問題とか。

イギリスの印象悪くなった。
片山さんの簡略マンガに落とし込む技術がすごい。



この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 1

アルセイルの氷砦(V3 Edition)―セブン=フォートレス・リプレイ (富士見文庫―富士見DRAGON BOOK)

著者 : 菊池 たけし,F.E.A.R.

出版社:富士見書房

発売日:2003-05

評価 :

完了日 : 2008年04月07日

なんど読んでもおもしろい!
くさくておもろいリプレイの先達にして
最高傑作ちゃうかな。

---
セブン=フォートレス・リプレイ を
全部集めたいんだが、どうしたものか…。

とりあえず、メインのこいつだけは
なんとかGETした。
おそらく絶版でしょう。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 2

殺人現場を歩く (ちくま文庫)

著者 : 蜂巣 敦,山本 真人

出版社:筑摩書房

発売日:2008-02-06

評価 :

完了日 : 2008年04月07日

殺人事件の風景を、写真で追体験するルポ。
怒りとやるせなさと不可解さ。
そして、さみしさ。
日常だった空間が、ある日、日常のまんま、
惨劇の舞台と変わる。

未だ未解決の事件がたくさん。
人間が寒々しいほど怖くなる。

ライターが事件の事実と風景だけを
ほどよい距離をもって語ってくれるから
おしつけもあまり感じずに、
だからこそ、ヒリヒリと届いてくるものがある。


-------------
冒頭読んで悪寒と怒りに震え、
買いたい衝動にかられたが、金がなかった。
2も出てるらしい。
どちらも必読。

近いうちに、ゲームソフトでもなんでも売って
とにかく金を作ろう。

---
メシ代浮かせて、とりあえずGET!
つらい。
ゲーム売るぞ!
2はどうすっかなぁ;;


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 3

風の陣 天命篇 (PHP文庫)

著者 : 高橋 克彦

出版社:PHP研究所

発売日:2007-07

評価 :

完了日 : 2008年04月03日

いろいろ平行読みしなきゃなくて
長い中断はさんだけれど
それをもろともしないおもしろさ。

人物が深く練られてるのでかきわけが絶妙。
会話での表現、リズムがうますぎる。

とりあえずそれだけ明記。
権謀術数のシーソーでハラハラドキドキ。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 4

風の陣 [立志篇]

著者 : 高橋 克彦

出版社:PHP研究所

発売日:2001-07

評価 :

完了日 : 2008年04月03日

アテルイや田村麻呂とかが活躍する時代じゃなく、
その父親たちも若いころの話。

これまでは、アテルイたちの話の背景に
名前だけチロチロと出てきてただけの、
丸子嶋足や田村麻呂の父のカリタマロ、
さらにはアテルイの父のアザマロが
メインにすえられ、そこに物部のキレモノが
まじわって、朝廷でおきたナラマロの乱を防ぐ、
権謀術数ドキドキウハウハな物語。

いやぁ、まだ幕開けだけど
しっかり盛り上がってたまらん、
やっぱ蝦夷もの大好き。

この人の小説の何がいいってさ、
月並みな言い方で大変申し訳ないんだが、
ようするに人間が血が通ってて、
息遣いがあって、脈動してて、
文章斬ったら血が出てきそうで
目が離せないのさ。

早く続きよもうっと。


この感想へのコメント

<前のページ 1  2  3  4  次のページ>

Copyright c 2006 WEB本の雑誌 All rights reserved.