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ya_kenさんの読書ノート

2007年 読了
2007年に読んだ本を極力全部載せていきます。
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 30

娼年 (集英社文庫)

著者 : 石田 衣良

出版社:集英社

発売日:2004-05

評価 :

完了日 : 2007年10月26日

 石田衣良の作品は二冊目。一冊目は「うつくしい子供」だった。そのときの印象と今回の印象は凄く近い。よく言えばシンプル。悪く言えば単純。
 もともとストーリー重視の読み方をしていないから別に良いのだけど、ストーリーは入り組んでなくて、凄くストレート。箇条書きで綺麗にあらすじをかけそうな感じ。極簡単にあらすじを書くとこうなる。

1.それほどセックスを楽しんでいないバーテンダー(以下主人公)があるボーイズクラブの経営者(女、以下経営者とする)と出会う。
2.主人公は経営者の試験を経て、そのボーイズクラブで働き始める。
3.初めての客と仕事をする
4.二人目の客と仕事をする
5.三年目の〃
6.…

8.経営者は主人公を経営者として誘うが、直後に経営者が逮捕される。

 という感じ。もちろん、もう少しサイドストーリー的な話はあるのだけど、主軸はこうだ。何が単純かといえば上の3・4・5・6の部分は本当に順番に客を紹介し、仕事をこなし、仕事を終えるという流れに沿っているので、起伏がまったくない。極端な話、間の部分は短編小説としてもいいのでは? と思ってしまった。
 だけど、『うつくしい子供』のときと同じように読みやすいと思う。さらっと読み流すには良い本。


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 13

うつくしい子ども (文春文庫)

著者 : 石田 衣良

出版社:文藝春秋

発売日:2001-12

評価 :

完了日 : 2007年10月25日

 池袋ウエストゲートパークで有名な石田衣良さんの作品。
 
 弟が殺人を犯してしまい苦悩する子供の話なのだが、それだけではない。むしろそれだけで終わってくれたほうが俺の評価は高かった気がする。主人公は弟の殺人の動機を知ろうとするのだが、まずその過程が好きではない。凄く簡単に分かってしまった印象なのだ。別に超難解推理小説にする必要はない、何百何千ページにわたる長編にする必要も無い。とにかく読んでいると『意外と簡単に分かってしまった感』があるのだ。そのくせ、妙にページを割いているから動機探しが主軸の話かと思ってしまう。
 どちらかといえば偶然でもなんでもいいから動機を主人公に知らせてしまって、その内容に苦悩する話だったほうがすきだろうな。
 そして、最後に真犯人的な人物が現れて対峙する場面があるのだが、あまり緊張感を感じなかった。というのも、真犯人的(なぜ「~的」としているかは想像にまかせる。読めば分かると思う)な人物が存在した時点で主人公は精神的に救われてるから、いざ肉体的な危機に直面しても読んでいるこちらはしらける。
 これは俺が小説に対して精神的な部分を重視するからであって、物理的・肉体的な解決を求める人には面白いのかもしれない。もしこの内容で苦悩について、またはそれへの葛藤について書かれていたならば違った評価になったかもしれない。
 ただ、読みやすいので、小説をそんなに読まない人には良いかもしれない。


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 1

表層生活

著者 : 大岡 玲

出版社:文藝春秋

発売日:1990-03

評価 :

完了日 : 2007年10月22日

http://3cornered-books.blogspot.com/2007/10/blog-post_23.html

 『わが美しのポイズンヴィル』と表題作である『表層生活』という2作品が収録されている。読んでみて感じた共通の感想は「なんだか面白くて深くなりそうなのに、凄く薄いまま終わるなぁ」という感じ。
 表題作である表層生活はサブリミナル効果について研究する頭の良い”計算機”と呼ばれる男を中心にした話だ。読んでいて「現代版マッドサイエンティスト!?」という印象を感じたが、現代版というにはその内容が古くて、いかにも既知の事実を羅列した感じだった。コンピュータが二進数で動作しており、人の脳もシナプスの接続・非接続の二進的な情報の扱いをするという内容のことをもったいぶって書かれると「んなこと知ってるよ」と言いたくなる。どうせなら、読者がちょっと付いていけないくらい深い脳科学とコンピュータ理論を展開して欲しかった。

 『わが美しのポイズンヴィル』の方がどちらかと言えば好き。全体的には環境問題を取り上げた内容なのだが、それはどうでも良くて、最後の方で住職が話す”人の死”についてもっと掘り下げて欲しかった。墓はどうあるべきなのか、住職はどう考えているのか。それをテーマにしても良かったのでは?


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 2

芽むしり仔撃ち (新潮文庫)

著者 : 大江 健三郎

出版社:新潮社

発売日:1984-01

評価 :

完了日 : 2007年10月18日

http://3cornered-books.blogspot.com/2007/10/blog-post_19.html
 初めて大江健三郎氏の作品を読んだ。
 なんだかノーベル賞云々という話もあったので、いつかは読んでみたい作家だった。しかし難解な文章だという評価もあってタイミングを逃していたのも事実だ。
 ところが、だ。この作品を読む限り全然難解な文章ではないと思うのだ。もちろん(と言ったら起こられるかな?)最近の携帯小説しか読まない人や軽い感じの小説しか読まない人には難しく感じるかもしれない。いわゆる文学作品を読んでいる人ならば難易度としては”普通”だと思う。むしろ綺麗で分かりやすい文章なので、文学作品を読みなれていない人にもお勧めしたいぐらいだ。
 で、肝心の内容だが、これは文章量に比べてとても厚く重いものになっている。主人公を含め、登場人物の感情が溢れかえっていて苦しいほどだった。前半で感じる苦悩、中盤で感じる開放感や自由、そしてまた閉ざされる苦しみ。それが目まぐるしく回転して、最後に読んでいるこちらまで無力感を感じる。
 一作品を読んだだけだが、一気に大江健三郎ファンになったような気がする。他の作品も読みたい。
 というか、最近読みたい作品が多すぎる。


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1.まりりん (2007/10/19)
私も同感です。今年から大江作品ばかり10冊くらい読んでますが、かなり純文学の中でも読みやすい部類の文章だと思います。意外と難しいとか読みにくいとか書いている方がいて驚きました(´・ω・`)
2.ya_ken (2007/10/19)
>まりりんさん
そうですよね。
最初の数ページ読んだだけで「あぁ、読みやすい」と思いましたよ。でも安易な文章というわけではないんですよね。凄く凝った表現もあったりして読み応えはありました。
 

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 1

村の名前

著者 : 辻原 登

出版社:文藝春秋

発売日:1990-08

評価 :

完了日 : 2007年10月16日

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 29

アフターダーク (講談社文庫)

著者 : 村上 春樹

出版社:講談社

発売日:2006-09-16

評価 :

完了日 : 2007年10月16日

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 12

斜陽 (新潮文庫)

著者 : 太宰 治

出版社:新潮社

発売日:1950-11

評価 :

完了日 : 2007年10月12日

 太宰治の代表作であり、彼を有名にさせたきっかけとなる作品。
 現代的貴婦人である母とその娘が伊豆の別荘で暮らす。娘は母に尽くしたい気持ちが強く、畑仕事に精を出す。母は貴婦人らしく優雅に過ごしているが、庭でおしっこしたりする無邪気な面もある。そんな二人のもとに戦争から帰ってくる弟。戦争に行く前は大麻中毒だったが、帰ってきても結局大麻中毒になる。家の金を持ち出して画家の家で遊び暮らしているが「俺は人とは違う」という強い思いを抱く。貴族であるというだけで、『貴族』と括られてしまうのが嫌で、最後には(自然死的)自殺をしてしまう。
 一方革命を起こそうとする娘。病死する母。それらの絡みが非常に面白い。
 太宰治らしいユーモアのある作品だ。


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1.キササゲ (2007/10/13)
太宰の中でも、『人間失格』より好きな作品です。本当にユーモラスで、其の裏にはこういうのを素面で書けてしまう太宰の危うさがあるような気がして…。いいですね。
2.ya_ken (2007/10/14)
本当に彼の作品には危うさみたいな微妙な緊張感が張りつめていますね。それも作品自体の緊張感じゃなくて、作者の中の緊張感なんですよ。作者の持っている悩みみたいなものが滲んでいるように感じます。それが太宰文学を上辺だけじゃない、深く儚いものにしていると勝手に思っています。
 

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 12

国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

著者 : 村上 春樹

出版社:講談社

発売日:1995-10

評価 :

完了日 : 2007年10月12日

http://3cornered-books.blogspot.com/2007/10/blog-post_12.html

 最近、ちょっとした村上春樹ファンになっている気がしてきた。
 彼の作品に立ち込めるようなうっすらと白い空気、少しだけ曇った視界の先に見える人物像、奇抜なようで無理なく受け入れられるストーリー、なかなか簡単に書ける話じゃないと思う。ちょっと間違えるとただの突飛で奇抜な意表を突いただけの話になりかねない。そうならずに『文学』としての深さとエンターテイメント的な広さを保っているのは作者の絶妙なバランス感覚だろう。
 ところがこの作品の魅力は少し違うところにある。どちらかといえば凄くリアルな話になっているようだ。主人公の男が普通に恋愛し、浮気して相手を傷つけて(そして自分も傷つく)、幸せな結婚をするが、昔の女を忘れられずに葛藤したりする。そういうものが描かれている。凄く日常的だ。
 それでもなおこの作品が面白いと思えるのは、日常の中にある神秘性のようなものが浮き彫りになっているからなんだと思う。ある女を好きになるのにもただの一目ぼれとして片付けず、「吸引力」という言葉を使って的確に表現している。
 このタイトルも語呂の良さだけかと思えば、そうでもない。ちゃんとストーリー上大切な意味を持つモチーフになっている。

 村上春樹の不可思議なストーリーが苦手な人はこの作品から手を出してみると面白いかもしれない。


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 2

愛の渇き (新潮文庫)

著者 : 三島 由紀夫

出版社:新潮社

発売日:1952-03

評価 :

完了日 : 2007年10月03日

http://3cornered-books.blogspot.com/2007/10/blog-post_04.html

夫に先立たれた女が帰郷し、感じる不毛な愛について描かれた作品だ。この女の絶妙な精神状態とその描写といったら、もう三島由紀夫ワールド全開だ。

夫に先立たれて悲しいかと思えば、そんな簡単じゃない。たしかに涙は流すが、夫の死に対する悲しさの涙じゃない。

帰郷後に感じる次の愛。それは偽りの無いものであるはずだが、相手の男が別の女を妊娠させたあたりから始まる倒錯した感覚。

嘘でもいいから自分に対して言い訳をして欲しいと願う女の感覚。男は正直であるがゆえにその願いはかなえられず、ますます女は屈折していく。大胆な考えとは裏腹な、微妙な緊張感。

三島由紀夫の作品の中でも完成度が高いといわれるこの作品。たしかに読む価値がある。


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 47

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

著者 : 村上 春樹

出版社:新潮社

発売日:2005-02-28

評価 :

完了日 : 2007年10月01日

http://3cornered-books.blogspot.com/2007/10/blog-post.html

村上春樹氏の長編作品。
はっきり言って、読み進める途中途中でゾクッとした。不条理なストーリー、現実的な必然性の無い登場人物の行動、SFらしさを感じさせる謎。このような要素はあまり好きではないのだが、この作品では逆に凄く良い作用をしているように感じた。

一見エンターテイメント小説的な雰囲気や推理小説的な展開を思わせるが、これはあくまで文学小説だと思う。最初から最後まで文学臭さを感じる。それがたまらなく良い。なぜそういう匂いを発するのか考えると、日本の古典小説が組み込まれていたり、神話的要素が織り込まれていたりして、この手の物語にある構造や展開を飲み込んでいるからだと思う。そう、まさに『物語』という一面を持っている。

そして、えらく文学的に感じるもう一つの要素は――村上春樹氏の他の作品もそうだったと記憶しているが――登場人物がみんな強い哲学や思想をもっていることだ。俺の知る限りこのような類の作品を書く代表的な作家はロシアのドストエフスキーかな、と思う。しかしこの『海辺のカフカ』も負けず劣らず哲学家揃いの作品だ。そして、ストーリーが進むにしたがって、お互いの思想がお互いを高めあい、物語全体で一つの哲学の完成形を目指しているように見える。

ストーリーの前中半では小さな、少しづつ色合いの違う思想という名の蛇が体のヌメりを光らせながら交互に絡み合う様相を見せる。それが後半に行くと絡み合った蛇が実は大蛇を形作っていることに気付く。そこに来て初めてこの作品の偉大さを実感するのだ。

作者曰く、最初にプロット等を作らずに書き進めがら考えたらしい。恐ろしい話だ。


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 34

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

著者 : 村上 春樹

出版社:新潮社

発売日:2005-02-28

評価 :

完了日 : 2007年10月01日

海辺のカフカ(上)で感想を書きました。


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 11

仮面の告白 (新潮文庫)

著者 : 三島 由紀夫

出版社:新潮社

発売日:1950-06

評価 :

完了日 : 2007年10月01日

http://3cornered-books.blogspot.com/2007/10/blog-post_01.html

三島由紀夫の自伝的作品である。

あるとき自分が同姓にしか肉欲が湧かないことに気付く。しかし、本来は女性に対して湧かなくてはならないことも分かっている。そうして、主人公は『仮面』を被り、自分があたかも女性好きであるように振舞う。学生時代にも同級生との会話で誰よりも『女好きな』面をあらわにして、周りから「お前は女好きだ」という印象さえもたれるようになる。

そして、女性に対しても興味を持つが、それは肉欲ではなかった。しかし精神的には惹かれている。一方、男の体には肉欲が湧くが、それが普通でないことは自覚している。この葛藤が全体を通して描かれている。前半の幼少期・学生時代に自分が男色であることに気付くにいたる精神過程は鋭く、三島由紀夫の観察眼にうなるばかりだ。

男色家であることは置いておいて、本当に彼の人間観察眼は鋭く、読んでいると「言われてみて初めて気付いたが、たしかにそういう思いを抱くことがある」という思いに至る。三島由紀夫の作品を読むのは、三島の視点を借りて人間を観察する行為と等しいと思うのだ。いや、実際は小説というのはこのような作家の視点を借りてみる行為であって、それが本質的な面白さではないかと思う。奇想天外で意外なストーリーなども捨てがたいが、普段カフェで人間観察をするように本を読んでみるのも面白いものだ。三島作品はそういう面白さをうまく引き出していると思う。


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 2

蓼喰う虫―Some Prefer Nettles

著者 : 谷崎 潤一郎

出版社:チャールズイータトル出版

発売日:1955-01

評価 :

完了日 : 2007年10月01日

http://3cornered-books.blogspot.com/2007/09/blog-post_13.html

 谷崎作品としては2冊目となる(一冊目は『刺青・秘密』という短編集を読んだ)。直前に読んだ『刺青』という短編を非常に気に入り、これは長編を読まなくては、と意気込んでこの作品を読むことにしたわけだ。ところがこの『蓼食う虫』では『刺青』やその他の短編で見られる露骨な妖艶さが少なく、パッと見の印象では――文体の違い、表現方法の違いはあるにせよ――自然主義派の書いた作品にさえ思える。

 特に志賀直哉の作品との共通点を感じるのだ。もしかすると、俺がただ志賀直哉が好きで暗黙のうちに共通点を探してしまっているだけなのかもしれない。しかし、感じたものは感じたのだから仕方が無い。俺の感じる志賀直哉の特徴は『人物の状態を、その人物の周囲のものを通して表現する』ことにあると思う。例えば登場人物が何かを見る、見ると何かを感じる、ここで感じたことがその人物の内面を映し出している。だから同じものを見ても人物によって見え方が変わってくる。こういうあたりを読み取る行為を「行間を読む」っていうのだと思う。そこでこの『蓼食う虫』を見ると面白い。特に老人と主人公が一緒に行動するシーンなどは主人公が人形等を見てはそれに対する印象が揺れ動く。それが直接主人公の内面になるわけではなく、読み手が主人公の内面を想像するのだ。

 この話は結婚し、お互い嫌いあってはいないものの、結婚生活を続けられず、お互い公認で浮気をする。そんな二人の間で起こる精神の動きを描いた作品だから、派手なイベントは起こらない。徐々に二人の心が読者の心に入り込んでくる、深い水の中にいるような作品だ。谷崎初心者としては、『卍』等の作品も読んでみたくなる。


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 1

清兵衛と瓢箪・網走まで (新潮文庫)

著者 : 志賀 直哉

出版社:新潮社

発売日:1968-09

評価 :

完了日 : 2007年09月04日

 またも、志賀直哉の本を読んだ。
 一時期連続して志賀直哉の作品を読み続けていたから、しばらく離れていようと思ったのだけど、最近奈良の『志賀直哉旧居』に行く機会があり、どうしても一作品読みたくなった。

 この本に収録されている短編の一部はすでに読んだものだけど、それでも残さず全部読み直した。そして、一度目以上に楽しめることを確認した。彼の作品は良くも悪くも話の筋に頼っていない。だから、筋をあらかじめ知っていても面白さに影響が無いのだ。

 今回ある試みをした。志賀直哉は名文家だとよく言われる。確かに俺もそう思う。しかしそもそも名文とは何か? 彼の文章の何が良いのか? 分かるようで分からない。彼の文はとにかくシンプルで鋭い印象がある。だけど、もう少し深く理解できないだろうか?

 そこで、この本に収録されている『或る朝』という短編を書写することにした。もちろん手書きで。そうしたら、少しは何かが分かるかもしれないと思った。二日ほどかけて写したわけだが、その間に何度も同じ作品を読み直した。そのたびに面白かった。

 そうこうして書き写し終わって一つ分かったことがある。彼は状況を全部書かない。例えば、登場人物の心境などを隅々まで書かないということだ。この『或る朝』という作品では主人公と祖母のやり取りがストーリーの全体を占めているが、祖母が登場するたびに祖母自身、徐々に苛立ちを高めていく。しかし、その苛立ちや主人公に対する呆れは毎回説明されるわけではない。祖母のせりふの節々に現れるちょっとした言葉や、祖母の行動に現れる。

 だからこそ、作品の中で「祖母は怒った」というような表現があると、本当に酷く怒ったのだろうと読み手は理解する。だから、彼の小説はシンプルで無駄が無い、しかしながら生き生きとした作品になるのだろう、と思った。

 この小説の書写という行為は凄く面白かった。長い作品だと気力が持つか分からないが、短編ならばやり切れる。次は、志賀直哉のシンプルさと相反する耽美派の谷崎潤一郎の書写をして見たい。


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 2

銀座のカラス〈下〉 (新潮文庫)

著者 : 椎名 誠

出版社:新潮社

発売日:1994-12

評価 :

完了日 : 2007年08月28日

上巻に感想を書きました。


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 2

銀座のカラス〈上〉 (新潮文庫)

著者 : 椎名 誠

出版社:新潮社

発売日:1994-12

評価 :

完了日 : 2007年08月28日

銀座のカラス

 最近、少し古い作家の作品ばかり読んでいる。少し古いというのは例えば1800年代後半から1900年代前半あたりだろうか。別に「昔の作品はこんなに良いのに、最近のは駄目だなぁ」なんて思っているわけじゃない。ただ、読んでみたい作品がたくさんあって、なかなか現代の作品にまで手が回らないのだ。

 それでも時々現代の作品に手を出す時がある。理由なんて無いが、最近の本を読みたい衝動に駆られるのだ。そして手に取った一つの本がこの『銀座のカラス(上下)』だ。椎名誠はエッセイとSFのイメージがあるのだけど、どうもこの作品はそうじゃないみたいだ、というのが興味をそそった。図書館で借りて、家でページを開いて苦笑した。1994年発行だった。やっぱりちょっと古いのね、と妙な愛着のようなものを感じる。

この作品は椎名誠氏の私小説的なものになっている。とはいえ、登場人物は架空の人物が割り当てられていて、普通の小説としても読める。というよりも、そう読むのが正解だと思う。登場人物を見て「これが椎名誠か」なんて考えず、生き生きと小説に生きる登場人物として捕らえたほうが良い。実際彼らは生々しく、必死に生きている。不満があったり、葛藤があったり、反撥したり、警察に捕まったり……。

 読んでいて「俺はこれくらいがんばって生きているかな」なんて考えてしまった。別に彼らがスーパーマンのように華やかな人生を送っているわけではない。失敗したり、諦めたりもする。しかし、少し落ち込んでもちゃんと立ち直る。人間関係がうまくいかないこともあるが、これも諦めたりしつつも、模索して状況を打開していこうとする。

 銀座の小さな出版社に勤める男の泥臭い生き様がとても良く表現されていて、椎名誠氏の表現力の豊かさを感じる作品になっている。

 彼のエッセイが好きな人は読んでみるといいだろう。


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 1

原チャリ野郎のハラペコ日本一周―74日間1万3390km8万5909円の旅

著者 : 藤原 寛一

出版社:日本交通公社出版事業局

発売日:1997-08

評価 :

完了日 : 2007年08月28日

 日本中どころか世界中を旅している藤原寛一さんが10万円で日本一周するという挑戦をした。この凄さを感じるためには10万円の価値を考える必要がある。74日間で旅を終えているので、一日あたり1,351円くらい使える。これならば三食くらい食べられると思ったら大間違いだ。なぜならば、この1,351円にはガソリン代・フェリー代・宿泊費・トラブル対応(バイクの故障等)・有料道路代などなどの諸経費を含んでいるからだ。

 当然、宿泊は野宿になり、食事は100円のレトルトカレーのようなものが中心となる。フェリーなどは一番安いのに乗り、沖縄には行かないことを決意した。観光地などはほとんど行かず、名物料理もほとんど口にしない。この旅はそういう旅だ。つまらない旅だと思うだろうか? 無意味に見えるだろうか? それは人それぞれの価値観に委ねられる。つまらないと思うことも、面白そうと思うことも間違いではない。ただ、そういう旅のスタイルがあるというだけで、読む価値はあるだろう。

 ただ、残念というか、個人的に物足りないと思ったのは、終始日記が書いてあるだけであって、読み物としての山場や波があまりない。旅好きの俺としてはこういうのはリアルで面白いし、同様の経験をしているので、情景が目に浮かぶことも多い。しかし、誰かに勧めるにはあまりにも平淡だと思う。リアルな日記なのだから平淡で良しとするのも良いが、メリハリを付けて読み物としての価値を高めて欲しいと思った。もしかすると、いわゆる私小説を読みなれていて、小さな出来事も掘り進めると立派な物語になるという意識があるのかもしれない。


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 18

スプートニクの恋人 (講談社文庫)

著者 : 村上 春樹

出版社:講談社

発売日:2001-04

評価 :

完了日 : 2007年08月25日

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 3

海辺の光景 (新潮文庫)

著者 : 安岡 章太郎

出版社:新潮社

発売日:1965-04

評価 :

完了日 : 2007年08月24日

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 79

手紙 (文春文庫)

著者 : 東野 圭吾

出版社:文藝春秋

発売日:2006-10

評価 :

完了日 : 2007年08月13日

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