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君夜舜さんの読書ノート

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 14

狐笛のかなた

著者 : 上橋 菜穂子

出版社:理論社

発売日:2003-11

評価 :

完了日 : 2007年07月18日

夜名の森の端で祖母と二人でひっそりと暮らす小夜は、夕暮れのすすき野で野犬に追われていた手負いの子狐、野火を拾う。野犬から逃げるうちに小夜は里人の出入りを禁じている森陰屋敷に進入し、屋敷に閉じ込められている小春丸と出会う。呪いをかけられ異形になってしまったと噂されていた少年だった。
その出会いを元に小夜と小春丸は深夜の逢瀬を繰り返し、仲良くなっていく。だが、それも長くは続かず……
小春丸と最後にあってから三年、小夜十六歳の春、運命の歯車は動き出す。心の声が聞える<聞き耳>の才に秘められた真相と出生の秘密とは……悲しい物語が紡がれる。
最初、この物語は小夜と小春丸の話かと思ったが、実は小夜と野火の話だった。
「可愛いなぁ、野火」とでれでれしながら読んでいたんだけど、その不幸っぷりにだんだん不憫になってきて、それでも失わない純粋さ、けなげさに愛しさが込み上げてきた。
最後の最後まで「どうなるの? この二人……」とはらはらどきどきさせ、物語の締めではほろりと泣かせ、ほっと息をつく展開だ。「ああ、よかったなぁ」と素直に胸がすき、心が洗われるような読了感に満たされた。
情緒があって、非常に美しい世界観だった。小道具の細部まで充足に練られ、かつ必要最低限であり、無駄がない。表紙の妖しく美しい様を含めて、とても良い本だった。


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 18

前巷説百物語 (怪BOOKS)

著者 : 京極 夏彦

出版社:角川書店

発売日:2007-04

評価 :

完了日 : 2007年06月18日

「寝肥」「周防の大蟆」「二口女」「かみなり」「山地乳」「旧鼠」の六篇収録。
損料屋ゑんま屋の商いは物を貸して、その損金を取る。例えば、布団。使った分、擦れた分、汚した分、の代金を頂戴する仕組みだ。その他、鍋やら箪笥やら何でも貸す。ただそれは表稼業で裏では、目に見えない損まで商っている。
大損、まる損、泣き損、死に損、遣られ損。ありとあらゆる憂き世の損を見合った損で肩代わり。銭で埋まらぬ損を買い、仕掛けて補う妖怪からくり。
「寝肥」は世界観の説明やら登場人物の紹介が大半を占め、仕掛けとしてお粗末。行き当たりばったりだね。ゑんま屋元締めお甲に誘われて又市が初めてした仕掛け仕事です。
狙ったのか、偶然なのか、話が進むごとに仕掛けが洗練していく。「巷説物語」や「巷説百物語・続」に比べたらキレがやや落ちるが、京極夏彦らしさを存分に楽しめた。
「二口女」は仕掛けとしては大したことはないが、登場する妖怪が不気味で怖いな。ふたくちに纏わる昔話が面白い。「かみなり」も面白い。こちらは言い伝え。風習? 後に仲間となる御燈の小右衛門が登場する。私的には、この仕掛けが一番好きだな。
「山地乳」には江戸闇社会を牛耳る祇右衛門が登場するが、まだ影が見えたところ。そして、「旧鼠」に続き、「巷説百物語・続 狐者異」へと繋がる。長い間燻っていた違和感が漸くとれた。又市の御行姿の所以とは――


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 7

あなたの町の生きてるか死んでるかわからない店探訪します (UNPOCO ESSAY SPECIAL!)

著者 : 菅野 彰,立花 実枝子

出版社:新書館

発売日:2006-12

評価 :

完了日 : 2007年04月26日

タイトルから窺えるように怪しげな店を探して毒味をした体験エッセイ。一読の価値あり。爆笑本。読んでやらねば、不憫で仕方ない。こんなに切実に人に薦めたくなる本は他にないなぁ……


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 10

ねこのばば

著者 : 畠中 恵

出版社:新潮社

発売日:2004-07-23

評価 :

完了日 : 2007年04月11日

久しぶりに面白かった短編。佐助を主人公に書かれた「産土」には、してやられた。キャラでは寛朝御坊が良い味出していた。今後も登場してほしいなぁ、と思いつつ。


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 13

天と地の守り人〈第3部〉 (偕成社ワンダーランド)

著者 : 上橋 菜穂子,二木 真希子

出版社:偕成社

発売日:2007-02

評価 :

完了日 : 2007年03月19日

最終巻に相応しい満足の一冊。
先駆けて新ヨゴに戻ったバルサはトロガイに危急を報せた後、タンダを捜しにいく。一方、チャグムは大軍(?)を引き連れ光扇京へと急ぐ。戦いの中、傷つきながら成長し、未来への展望を強く持つ。
「蒼路の旅人」「天と地の守り人」第1部第2部の三冊は政治色が強かったのですが、第三部は本来のシリーズらしい「ユナグ」の場面が描かれていた。
結末はハッピーエンド過ぎるくらいハッピーエンドでちょっと都合よすぎないか? と思わないでもない。タルシュ帝国が内乱になってしまっても、それはそれでピリッと辛くて面白かったとも思うが。
もうこれで、おしまいか、と思うと寂しいですね。
これからこのシリーズを読む方はシリーズ初期の三冊のどれからどうぞ。「精霊の守り人」「闇の守り人」「夢の守り人」この三冊であれば、どれから読んでも、さして差し障りはないだろう。


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 148

風が強く吹いている

著者 : 三浦 しをん

出版社:新潮社

発売日:2006-09-21

評価 :

完了日 : 2007年02月27日

たっぷりと時間のある休日にのんびりと読んでほしい一冊である。
直木賞受賞作である「まほろ駅前多田便利軒」は読む人によって賛否両論があり、評価が見事に分裂した。楽しめた人も、全然面白くなくて「何故これが直木賞なのだ?」と疑問になった人も、一度三浦しをんさんの著作をリセットして、新たなる作家として読み始めてほしい。
故障してもなお陸上に執着し、走ることを止められない清瀬灰二の前を「走る」ために生まれてきた天才ランナー・蔵原走が駆け抜ける。彼の走りは清瀬の理想を体現していた。清瀬の中で熱い熱い情熱が噴き出し、「箱根駅伝」という夢が現実になっていく。
寛政大学陸上競技部錬成所の肩書きを持つ竹青荘の住人と共に十ヵ月後の「箱根駅伝」を目指して走りまくる、という物語。走ってるだけかぁ? まあ、走ってるだけなんだよね。後は、飲み会をしたりと。特に大事件が起こることはないが、個性派揃いの十人を、人物一人一人丁寧に描いていっている。どんな個性を持っているか、は実際読んでみて楽しんでもらったら良いと思うのここでは端折っておく。
私はこれまで「走る」ことへ興味を持てなかった。陸上を見ることも走ることも楽しいとは思えないもの。正月に全国ネットで放送される「箱根駅伝」もただ何となく目に映るという以外特別な思い入れはなく、淡々と眺めていた。その裏にあるランナーの思いなど図る由もない。
この本で知ったことは、走るチャンスは誰にだってあり、その準備たるや壮絶な練習と熱い情熱と揺るぎない意志なのだ、ということ。不可能を可能にするのは常にその熱い情熱なのだ。
飛ぶように走る、まさに飛ぶように走り抜けていく駅伝ランナー。私は常々思う。あの速さで走ってよく20キロ以上も体が持つな、と。長距離ってある程度ペースを落として走る。全力では最後まで走れないからね。でも彼らは全力で走っているんだよね。そこが不思議だった。泉の如く湧き出す体力なのか……無尽蔵なの? そんな勘違いが起こるほど凄いことなのだ。
感動。
感動!
どうしようもない、なんともいえないような衝動が突き上げる!
風を切る素晴らしさを身に沁みて感じられた。実際に走ったわけではないけれど、「走る」ことへ魅了されてしまう、その情熱を体感できた。
来年の「箱根駅伝」はまた違った角度で観戦できるだろう。
「駅伝」とは、どういったものであるかを知った今では――


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 33

獣の奏者 II 王獣編

著者 : 上橋 菜穂子

出版社:講談社

発売日:2006-11-21

評価 :

完了日 : 2007年02月24日

カザルム王獣保護場で学び始めたエリンに初めての友達ができたり、と人間としても大きく成長していく。同時に、傷ついた幼獣・リランを通して野生の恐ろしさを知っていく。
「王獣は、けっして人に馴れることはない。甘い幻想を抱いて近づきすぎれば、爪で引き裂かれて死ぬことになる」
王獣と闘蛇、そして人間。
野生と人間の距離。
生物、とは如何にあるべきか。そう問い続ける小説であった。
獣を戦争の道具にしたくない。あるべき姿のまま、あるがままに生きたい、生きてほしい、とエリンは願う。だが、人間がそういう生き物なら、獣を同じ生物としてではなく、道具としてしか扱えない生物なら、それならそれで良い……と諦めてしまう。冷めてしまった中にも一縷の光が射して――
私の中にもエリンと同じ気持ちがある。人間は所詮殺し合う生き物だ、と。日本人的には危険思想だと思うのだが、そんな崇高な生き物ではないと確信しているので共感した部分だ。
だが、物語としては絶望感に満ちた終わり方をするのも味気ない。しっかりと、ではないが、仄かに希望を残す。
この感動を味わってほしい。
小説ならではのオリジナリティに溢れた魅力ある世界を――


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 38

獣の奏者 I 闘蛇編

著者 : 上橋 菜穂子

出版社:講談社

発売日:2006-11-21

評価 :

完了日 : 2007年02月23日

主人公・エリンの母は、闘蛇の中でも強いという「牙」の飼育に携わっていた獣ノ医師だが、失意の中で闘蛇を死なせてしまう。政治の象徴であった「牙」の大量死で母は処刑されてしまう。闘蛇に食い殺される母を姿を尻目に逃げ延びたエリンは、蜂飼いのジョウンに拾われ心身ともに助けられる。傷心がやがて癒えてきた頃、エリンは王獣と出会い、その美しさに心を奪われる。蜂の生態の秀逸さに惹かれ、野生の神秘に興味を持ち、それを解き明かしたい願うエリンは母と同じ獣ノ医師を目指し、ジョウンの元を巣立っていく。
できれば二巻も続けて読んでほしい。位置づけとしては上下巻だ。児童書だから大人ではちょっと……と思っていると損をする小説です。


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 2

ユーフォリ・テクニカ―王立技術院物語 (C・NOVELSファンタジア)

著者 : 定金 伸治

出版社:中央公論新社

発売日:2006-12

評価 :

完了日 : 2007年01月25日

今年一番の小説じゃない? って面白さだ。シリーズとして続刊が出るって噂(?)もあるけど、売り上げ次第なのは周知の事実。出版社ってのも慈善事業じゃないから、まだ判然としないね。もし、興味を持った人がいたら是非とも買っていただいて、出版社に早く新刊出さないかって一緒に脅しましょう(笑)
頭の変な女の子が技術研究に熱血し、悪戦苦闘しながらも新技術を開拓していく成長物語(?)うーん、成長なのか? 本当に成長物語なのか……。電気ならぬ水気。工学ファンタジー。
研究内容は水気による花火。これだけでは何のことやらって感じだけど、まあ、花火を上げようってこと。その花火は意表をつくというか、呆気にとられるスケールの大きさ。これを考え出した作者に脱帽。私、もう何年も花火大会にはいってないから今の花火の質が分からないんだけど、これくらい進歩してるのかな。それともこの小説の技術の方が先をいってるのかな。
「ジ・ハード」のキャラクタと「ユーフォリ・テクニカ」のネルとエルとユウはかぶってるのが気になるね。かぶったから、どうだということはないが、この作者マンネリ化しているのか、と少々疑問に思ってしまった。でも、パターン化されているだけあって魅力的で秀逸なんだよね。この本から読む人には関係ないなぁ……
無性にだれてる男と無駄に元気な女の子って組合せはすごく好みなんだよね。私のツボ。読んでいて楽しい。エルの元気さ(むしろ変態さ加減)には、ネルに共感してしまい、思わず彼に同情の念を送ってしまうほどの臨場感がある。とにかくネルは大変そう……。エルの素性が○○っていうんだから、相当いかれてるよ、彼女は。
小説があまりに面白かったから、イラスト表紙については後になったけど、イラストレーターは椎名 優さん。イラストレーターの中でも一番二番に好きな作家。とても華があり、可愛くて繊細。何よりも構図のとり方が上手いんよね。一目で引き込まれてしまう。小説もイラストも好きな作家の組合せって意外とない。常にどちらかを我慢しなきゃいけない、そんな悩みを解消させた一冊だった。


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