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ぎんこさんの読書ノート

おすすめ児童文学
大人が読んでも全く遜色ない、優れた児童文学の数々です。
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 1

ベルリン1945

著者 : クラウス コルドン

出版社:理論社

発売日:2007-02

評価 :

完了日 : 2007年12月09日

 コルドンの「ベルリン三部作」最終巻です。1945年はドイツ敗戦の年ですが、本作はヘレの娘、エンネが主人公となります。ヘレは投獄されており、祖父と祖母を両親だと思って育ったエンネ。彼女が7つのころに戦争が始まったので、戦争のある生活しか知りません。空襲に怯え、食料もなく、さらに学校ではナチスの教育しか受けられなかった時代に、エンネは両親の真実を知り父ヘレと再会します。ヘレも「1919」で突然の父の帰還にとまどいますが、娘であるエンネも収容所から帰ってきた父と距離感を感じています。
 
 「1933」から12年。ゲープハルト一家はこの期間に様々な試練に耐えていたことがわかります。家族の死、マルタとの別離。ゲープハルト一家は傷をかかえながらも、戦争が終わることに希望を持っています。ですが、エンネはそんな家族の歴史を知らされていないので、父や見知らぬ叔母にとまどい、動揺します。真実を知ること、それは大人への第一歩なのかもしれませんが、敗戦という動乱期に大人にならざるをえないのはエンネにとって辛いことでしょう。ですが、エンネはひとつひとつ運命を受け入れ、成長していきます。
 
 ドイツが敗戦しようと、ナチスが崩壊しようと、人々は生き続けなければなりません。敗戦後のベルリンの様子もエンネの目を通して描かれます。ソ連軍の横暴なふるまいによる事件も多々発生しますが、しかし紳士的なソ連軍人もいます。ナチスに傾倒していた近所の住民も、ナチスの敗北が決定的になると、自分は反ナチスだったという「アリバイ作り」にはげんだり、終戦後はナチス党員だということを隠してヤミ市で荒稼ぎしている人もいます。ナチスに従った人々でも貧しい層は、ただ単に裕福になりたかっただけで、心からナチスに心酔していたわけではなかったのでしょう。だが、マルタの夫のような真面目な党員は、自らの行動を悔いて最前線に志願し、戦死していました。マルタも貧しさからナチスに傾倒した一人ですが、家族と実の兄ヘレとの関係の亀裂に苦しみます。「1919」を読んだ読者なら、ヘレとマルタの幼い日々を思い出し切なくなるでしょう。
 
 戦争が終わることによって、なんとか自分を取り戻そうとするヘレですが、自らの信条であった共産主義がどうなったか、モスクワにいた党員ハイナーに聞いてショックを受けます。結果的には、ロシアもドイツと同じように独裁主義となり、ユダヤ人差別などをしていました。なかなかハイナーの話を信じないヘレは、今後ドイツ分断という悲劇にどうやって生きていったのでしょうか。この本では終戦直後で話は終わり、その後の家族はエピローグの簡単な説明でしか語られません。冷戦時代のゲープハルト一家も読みたかったです。(2007.12.16)


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 2

ベルリン1933

著者 : クラウス コルドン

出版社:理論社

発売日:2001-02

評価 :

完了日 : 2007年12月05日

 前作の「ベルリン1918」から14年後、ヘレの弟で14歳になったハンス坊やが主人公になったのが本作「ベルリン1933」です。ナチスが政権を握る前夜を描いています。訳者あとがきによると、日本人になじみのうすいドイツ革命を扱った「1919」よりも先にこの「1933」を刊行したそうですが、ドイツの政情や人々がどのようにナチスを受け入れたのか(もしくは反発したか)、それとゲープハルト一家とその周辺の伏線を味わうには、やはり「1919」から読んだ方が良いでしょう。大きくなったハンスや姉妹のマルタの意外な行動など、前作から読んでいれば驚く設定が多々ありました。

 失業率が高い1933年のドイツで、ハンスは就職が決定し、初出勤です。家族のほとんどは失業中で、ヘレは政治活動を理由に仕事をクビになってます。真面目に働いていた母親もあっさりとクビになっていて、家族は困窮状態。仕事場でナチス党員に激しくいじめられるハンスですが、辞めることもできません。前作の主人公ヘレと違って、基本的にはノンポリで体操が好きなハンス。そんな彼はミーツェというユダヤの血をひく少女と出会い恋をしながらも、混乱のドイツで何を見てどう生きることを決意するのか。この本は14歳という若いハンスの青春物語であり、残酷な歴史の中で生きる少年と家族のホームドラマでもあります。
 
 ナチスドイツを描いた本は児童書でも多いですが、本作の特徴はドイツ革命から歴史の流れを書いたこと、あくまでゲープハルト一家の視点からみたドイツにしたこと、です。庶民にとって、大きな政局の流れははたから見ているに過ぎませんが、それゆえに大多数の読者である「一般市民」から見た戦争がリアルに描かれています。一般の国民にとって、国内の政治や国際情勢よりも家族の方が大事でしょう。ですが、その大きな流れによって家族は数奇な運命に巻きこまれていきます。ゲープハルト一家にも不吉な影が漂いながらも、希望を持つハンスとミーツェの姿はまぶしく、哀しく見えます。(2007.12.15)


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 3

ベルリン1919

著者 : クラウス コルドン

出版社:理論社

発売日:2006-02

評価 :

完了日 : 2007年12月03日

 ジャンルとしては児童書になる本書ですが、大人が読んでもまったく遜色ない作品です。ドイツ本国ですら忘れられかけているというドイツ革命を、一般庶民の少年ヘラとその家族を通して描いています。

 1918年に起こったドイツ革命は、国王を国外追放するという大きな成果を上げますが、結果的には権力者はそのまま政権に残ってしまい、真の革命はなされませんでした。その政治的混乱は長引くことになり、結果的にナチスの台頭を招くことになってしまいます。

 この物語では、貧しい主人公一家がどのように日々を過ごし、社会を見てきたかを細かく描いているので、ドイツ革命になじみのない日本人の私も、革命を身近に感じることが出来ました。今の時代から見ると、ソ連も崩壊し社会主義は衰退してしまうのがわかっていますが、この物語を読むと人々が何を求めていたか、何を望んでいたのかよくわかります。当時の人たちを現代のものさしではかることは出来ません。

 時代背景がしっかり描かれているので歴史小説としても十分楽しめますし、社会に絶望し、それでも希望を失わない人々の人間ドラマとしても面白いすぐれた小説でした。(2007.12.3)


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 5

弟の戦争

著者 : ロバート ウェストール

出版社:徳間書店

発売日:1995-12

評価 :

完了日 : 2007年10月01日

少年の弟、フィギスは小さい頃がら他人にシンクロする性質だった。弱った動物を見れば両親や兄に「助けてよ」と訴え、そうするまで絶対にゆずらない。難民の子供の写真を見れば、食事もせずに別の世界へ行ったかのようにふるまう。とまどう両親と少年だったが、あのイラク戦争が始まるまでは、まだ幸せだった…。フィギスはイラクの少年とシンクロしてしまい、アラビア語を寝言でつぶやくようになる。

 そんな話です。戦争というテーマをよく描いてきたウェストールですが、これはイラク戦争という最近の戦争を書いているので、現代人にガツンときます。戦争には、必ず敵がいるのだけど、その敵が人間であること。それをなぜか忘れてしまっている人間を痛烈に批判しています。しかし、少年の父親や少年の同級生は、当時のイギリスにはごく普通にいた人たちでしょう。それも戦争の一面なのです。そういう部分もウェストールは逃げずに書いてるのが凄いと私は思います。
 
 非常に重いテーマを易しく、しかし真っ正面から書く児童文学作家って貴重だと思います。子供だけでなく、大人も一緒に読むべき本だと思いました。(2007.10.1)


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 4

夢の守り人 (軽装版偕成社ポッシュ)

著者 : 上橋 菜穂子,二木 真希子

出版社:偕成社

発売日:2007-07

評価 :

完了日 : 2007年09月12日

 1.2巻は武人バルサの辛い過去の話が中心に進んできたが、今回はトロガイ、タンダといったシャーマンが中心のお話。元々文化人類学を研究している上橋菜穂子の本領発揮といったところで、トロガイの過去と今に至る過程は面白いし、物語の核には女性の感情ー嫉妬や強さというテーマもあり、今までとは違う味わいに仕上がっている。ただ今回は設定が多少交錯していたような。基本的には遊び人属性のユグノの魅力も中途半端だったような気がする。
だが久しぶりのバルサとチャグムの再会や、タンダを想うバルサの姿とか、色々と楽しめた作品だった。次に期待です。


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 1

かかし

著者 : ロバート ウェストール

出版社:徳間書店

発売日:2003-01

評価 :

完了日 : 2007年09月07日

「ブラッカムの爆撃機」でファンになった児童文学作家ロバート・ウェストールの作品です。カーネギー賞を受賞してます。

 いやー、面白かった!つい夜更けまで読んでしまいました。物語は14歳の少年、サイモンが主人公。ただでさえ難しい年頃なのに、サイモンのお母さんは再婚する。相手が気に入らないサイモンは、とにかくすべてを否定し素直になれない。父親への思慕から新しい生活を選んだ母を裏切り者とののしるサイモン。そんな時、サイモンは新居の近くに水車小屋を見つける。そこはいわくつきの場所で…。
 
 ジャンルはホラーになるのかな。とにかく怖い。だけど、おばけが怖いんじゃないんです。人間の中にある憎悪、嫉妬、欲望といった感情にどう向き合っていくか。サイモンもそういったどろどろとしたものに押し流されそうになります。どこの国の子供も14歳とは恐ろしい年頃ですねー。大人の事情とかも随分わかってるし、男女の関係も察してるし。でも作者はサイモンが子供でかわいそう!という書き方はしていなくて、サイモンの子供ゆえの残酷さ、わがままさもきっちり書いてる。
 
 14歳の少年だけでなく、大人にもマイナスの感情を押さえきれない時ってあると思う。その時どうすればいいか…この本には正解も解決もないけれど、ウェストールは何かを訴えていると思う。それは読み手がそれぞれ考えることだろう。
 
 サイモンの友人、トリスがとてもいいキャラクター。秋の青空のようなスカッとした心と人の気持ちを察することに長けたどこか大人びた少年。彼がサイモンの友人になったということが、ウェストールがこの物語に与えた希望なのかもしれない。(2007.9.7)


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 9

ブラッカムの爆撃機―チャス・マッギルの幽霊/ぼくを作ったもの

著者 : ロバート・アトキンソン ウェストール

出版社:岩波書店

発売日:2006-10

評価 :

完了日 : 2007年08月16日

 うーん、これは面白かったなあ。というか児童書なのこれ?ネットでの書評やら感想blogなどで評判は聞いてたけど、思ったより良かったです。書評に取り上げられてたのは、宮崎駿が表紙や漫画を書いてるというのも大きい。
 
 表題作「ブラッカムの爆撃機」は、WW2のイギリス空軍を舞台にした作品。主人公ゲアリーはウェリントン爆撃機(通称ウィンピー)の無線士で、他には親友の航法士キット、いわくありげな機長、通称「親父」などが主な登場人物です。これは宮崎駿の詳細なイラストがとても参考になるのですが、数人のチームで 1機の爆撃機を操縦するんですよ。この爆撃機、なんと布製。ちょっとでも火が出ようものならあっというまにおだぶつです。こんな飛行機でドイツに空爆していました。
 
 で、タイトルのブラッカムは別の飛行機の機長で、いやーなやつ。ところがある爆撃の帰還中にゲアリーたちの爆撃機はブラッカム機と遭遇する(これはかなりめずらしいらしい)。しかも近くにはドイツ空軍の夜間戦闘機、ユンカースが!

ゲアリーたちの仲間は、戦争時に集められた急ごしらえの乗組員たち。それぞれ生まれも育ちも違うが、命がけのフライトで強い絆で結ばれている。そんな彼らのドラマも面白いが、戦争という悲惨な経験が数多くの男たちの心を深く傷つけ「この世」に戻れない悲惨な様子もしっかり描いてます。それに、描写がものすごく細かい!作者ウェストールは子供に読ませるものでも、しっかりと嘘のない記述をしたいという主義だったらしい。こんな児童文学があるとは…イギリス文学の奥深さを見た。はっきりいって大人が読んでも全く遜色はない。
 
 宮崎駿の巻末マンガでは、宮崎が空想の中でウェストールに合うのだけど、「あなたの作品にはこのムゴイ世界と戦い続ける勇気と 失われたものへの愛惜にみちています。すてきです」とウェストールに言う。まさにその通りだなと思った。勇気、そして喪失。大きな意味での愛情。そんな今や陳腐とさえも言える要素が、ウェストール作品の中にはしっかり息づいている。
 
 他にも「チャス・マッギルの幽霊」「ぼくを作ったもの」という短編も収められている。前者はよくある幽霊譚と思いきや、意外なラストが素晴らしい。後者は戦争体験のある祖父と孫の交流。地味だけど「失われたものへの愛惜」にみちた良い短編だった。(2007.8.16)


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 3

闇の守り人 (軽装版偕成社ポッシュ)

著者 : 上橋 菜穂子,二木 真希子

出版社:偕成社

発売日:2006-11

評価 :

完了日 : 2007年04月16日

 前作「精霊の守り人」は、民族の伝説が権力者によって歪められる現実など、ハードなテーマを含みつつも全体としては女用心棒と少年の冒険活劇が物語を児童書らしくしていた。だが本作は人が持つ属性の卑しい部分 ー裏切り、嘘、嫉妬、憎しみーそんな負の部分を大きくクローズアップしており、全体的にトーンは暗い。前作のチャグムのような立場にあるカッサ少年も、自分の家の身分から所詮は出世できないのだと悟っており、成長に従って尊敬していた父親が一族の中で発言力が無いことも知ってしまう。とても現実的だが、大人になろうとするカッサの精神状態がよく描かれていると思う。
 
 主人公バルサは強い女性ではあるが、自分のために仲間と戦い、死んでいった育ての親ジグロに対する負い目から心を開くことが出来ない。彼女を愛し、多分彼女も愛しているであろうタンダに対しても、その負い目から気持ちを伝えることが出来ない。だが、チャグムとの旅で過去に向き合う気持ちになったバルサは、故郷で辛い目に会いながらもジグロの汚名を晴らそうとする。そしてカンバル王国で行われる「ルイシャ贈りの儀式」の秘密が明かされる時に、この国の真実の姿を知るのだった…。
 
 この小説の巧い部分は、ちゃんと「謎解き」があり、そして最後にちゃんと明かされることだ。これは前作でも本作でも同じで、最後にそうだったのか! という驚きがあるのが嬉しい。そして人物描写。バルサはもちろん、他の登場人物もちょっとした動作から人となりが伺えるのがうまい。今回の暗いテーマを一身に背負うことになるユグロも、卑しい部分だけでなく、最後に彼なりの言い訳をさせてあげているところなど作者の優しい視点を感じる。
 
 無念のまま、報われないまま死んでいった人たち、そして最後まで本当の気持ちを伝えられなかった親の魂はどこにあるのだろう。現実の世界では出会うことはない過去の魂。だが、このファンタジー小説の中では一瞬だが出会う時がある。そしてバルサはその魂が故郷に帰り大地に溶けてゆき、いつまでも自分と共にあることを知るのだった。もう二度と会うことがなくても。
 
 あとがきで作者が「闇の守り人」は大人に人気がある、と語っているが、それも納得。人の醜さ、そして再生を描いた本作は完全に大人向けだ。だが、きっと子供にも何か心に残る作品ではないかと思う。傑作です。(2007.4.16)


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 5

精霊の守り人 (軽装版偕成社ポッシュ)

著者 : 上橋 菜穂子,二木 真希子

出版社:偕成社

発売日:2006-11

評価 :

完了日 : 2007年01月07日

 ファンタジー小説というと西洋が舞台の作品が多くなるが、この「精霊の守り人」は、ファンタジーでは割と珍しいアジア的な風景・神話をモチーフにしてある。主人公、バルサが訪れる「新ヨゴ皇国」は日本の古代のような国であり、他にはアイヌのような民族や、様々な神話、民話を取り入れていて、独特の世界観を構成している。「守り人シリーズ」と呼ばれる一連の作品の1巻にあたる本作は、その世界観を説明するのにかなりのボリュームが割かれている。まだ続編は読んでいないが、今回名前だけしか登場しなかった国や民族などは、後のシリーズで描かれているようだ。
 
 この物語で私がスゴイ!と思ったのは、民族の持つ神話が、政治の道具になり都合よく変えられてしまったり、侵略者が侵略された民族の神話(価値観)を抹殺したりといった、とてもリアルな部分が盛り込まれていることだ。しかも、それをうまく物語に盛り込んでいて、謎解きの一部にもなっている。これは文化人類学を専攻したという作者らしい部分ではないかと思う。
 
 登場人物の織りなすドラマもいい。30代の女性である主人公バルサの苦悩、突然守られるべき皇子から一転し逃げる立場になったチャグムなど、それぞれの過去や現在の人生が語られていて、トラブルの中みなそれぞれに成長していく。中でもバルサが自分の過去に向き合い、理解するシーンは感動的だ。人と人との間には損得勘定などない、だから一緒に生きていけるーそんな人生讃歌とも言えるテーマがこの物語を児童文学としても、大人が読む物語としても素晴らしい作品にしている。
 
 本作は「精霊の守り人」というタイトルで今春アニメ化される。NHK BS2で放送予定。アニメ制作会社「プロダクションI.G」と「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」を手がけた監督・神山健治がアニメシリーズ化するそうで、NHKも力を入れているようだ。さらに実写映画化も予定されている。(2007.1.7)


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 3

琥珀の望遠鏡〈上〉—ライラの冒険III

著者 : フィリップ プルマン

出版社:新潮社

発売日:2004-06

評価 :

完了日 : 2002年11月03日

 前作の「黄金の羅針盤」「神秘の短剣」がかなり面白かったので、完結編はいったいどうなるんだろう…とワクワクしていました。ですが、ちょっと私の想像していたラストとは違ったみたい。人間の意識とはなにか?神というものは何か?という話になるかと思ったんですが、ラブストーリーへと突入してしまった。でもこれも重要な伏線だったんですけどね。
 
 ライラもただのワガママウソツキ娘(ここまで言うか)から、ウィルとの愛情と別れによって成長したんだなー。彼女はいきあたりばったりで行動してきたけど、これからは自分の意志で勉強したり経験したりして、生きていくのでしょう。
 
 そして、あいかわらずいい味だしているワキ役たち。今回の私のお気に入りはなんてったってトンボに乗った小さな人たち、シュバリエ(騎士)・ティリアスとレディ・サルマキア! アスリエルのスパイでありながら、ライラたちを助けてくれます。敵ですが、誇り高い人たちでカッコイイ!!

 そして、前回活躍した熊のイオレクと、気球乗りのリー・スコーズビーも活躍。とくに、スコーズビーの魂が解き放たれ、原子に還るシーンは良かったです。そうそう、この話のキモとして、「神の否定」があるんだと思うんだけど、キリスト教を信じる人たちにとって、人の魂が天国に行かず、原子に還るというのは結構衝撃的ではないかと…。ファンタジーでここまで「神とは」「世界とは」というテーマに挑んで成功している本は少ないでしょう。ですが、欲を言えばもう少しつっこんで欲しかった。ここまで広げた世界観がもったいない気がしました。(2002.11.3)


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 3

神秘の短剣 (下) ライラの冒険II

著者 : フィリップ プルマン

出版社:新潮社

発売日:2004-01

評価 :

完了日 : 2002年04月17日

ライラの冒険シリーズ第2巻です。と、いっても続きものになっている1つの話です。この小説の中では、世界はたくさん存在していて、ライラが住むのは私たちと同じようでかなり違う1つの世界。この巻では、私たちの住む世界が舞台になっています。
 
 1巻でライラは別の世界への扉を見つけて旅立ちました。そして、第2巻ではチッタガーゼという街に辿りつきます。ここは多重世界の交差点のような街。ライラの世界とも、私達の世界とも違う場所。そこで私たちの世界の少年、ウィルと出会います。
 
 このウィルという少年が…。これまた不幸! この小説には不幸な子しか出ないのかしらん?と思ってしまう(^_^;)父親は失踪、母親は精神的に不安定で、母親を守るためだけに生きてきたのだが、謎の男たちに狙われはじめ、偶然(でないかもしれないが)に「別の世界への扉」をくぐり、チッタガーゼに入ってしまったのです。
 
  ウィルは父親を探すこと、そしてライラは「ダスト」という謎の粒子と「真理計」が指し示した「ウィルの父親を探すこと」を信じて2人は協力するのですが…。
 
 さて、この「ダスト」。ライラの世界ではそう呼ばれていた物質なのですが、私たちの世界では「ダークマター」と呼ばれているのです。これは宇宙の大部分を占めるという物質。この小説の中では、マローン博士が研究し、この中の「シャドー粒子」に「意志」がある事が発見されています。(面白いことに、この博士は元修道女であったりする)
 
 博士が「シャドー粒子」を解析するコンピューターを作っているのですが、それはどうも「真理計」と同じ理屈らしいんですよ。このへん面白いです。ファンタジー世界での「魔法」と思われていた部分が科学に置き換えられるんですねー。
 
 「ライラの住む世界」と「私達の住む世界」は、違う世界で単語は違うけれど同じ「ダスト」「ダークマター」と呼ばれるものが存在するという設定なんです!そしてこの物質は人類の進化にも関与している…?これは…「神」なんでしょうか??
いや〜、やっぱこのへんSFでしょう。これ。
 
 そして、「ダイモン」というライラの世界の人間は必ず持っている守護精霊。私たちの住む世界の人間は持っていませんが、ライラは「ダイモンがいないのではなく、内部にいる」と言います。ロジャーが言うように、「デーモン」に発音の似た「ダイモン」とは人間の精神?なんでしょうか??
 
 一方、今回は出番なし、のアスリエル卿(前回、別の世界への扉を開いた男)は「教会」に戦いを仕掛けるのかと思いきや、もっと大きな「神」?に戦いを挑むために準備を開始。さまざまな世界から物資や兵隊を集めている…。すべてを切り裂く「神秘の短剣」も彼のもとに届けられるのか?そして「重要な子供」ライラはどんな役割を果たすのか?様々な疑問を残したまま、次巻に続くのでした…。
 
 いや、ホント…これ?ファンタジーなんですか?(しつこい)
人間の進化や精神という問題に挑む、でっかい作品という事は確かなようです。(2002.4.17)


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 11

黄金の羅針盤〈上〉—ライラの冒険

著者 : フィリップ プルマン

出版社:新潮社

発売日:2003-10

評価 :

完了日 : 2002年03月23日

まず、この本を読んだ時に思ったこと。「こ、これってファンタジー…なの?」そして「これって…子供向けなの?」という事でした(笑)。いやいや、いい意味でファンタジーの常識を破っているというか…。この作品はきっとファンタジーが苦手な人でも読めるのではないでしょうか?設定なんて、とてもSF的です。
 
 主人公、ライラはジョーダン学寮に独りで住んでいます。両親はいません。(のち明らかになる)ですが、あんまり気にしていないよーです。もう、ひたすら遊ぶ事に熱中してます。明るいというか、何も考えていないとちゃうか?というか(笑)典型的なリーダータイプで、口も達者です。怖いものなしの11才。現代的です。
 
 そんな彼女の住む世界は、イギリスやフランス、北極などの知名は出てきますが、私たちの住む世界とは異なります。科学の歴史なども、かなり違うようです。そして、北極のオーロラにかすかに見える都市の幻影。ダストと呼ばれる謎の粒子。ライラを導く「真理計(アレシオメーター)」…。どうです?ワクワクしてきませんか?
 
 私が子供の時この本を読んだら、ぜったいダイモンが欲しいと思ったでしょう!(今でもそう思うけど)子供の頃はダイモンは状況にあわせて変化して、大人になると固定された形態になる…という設定ですが、自分の気に入らない動物になったりもするんですよ。いや〜って思ったのは「ガ」のダイモン。げげげ…。このダイモンも、ストーリーの重要なキーワードになるみたいです。
 
 重要なキーワードといえば、もう一つ。この本では「キリスト教」が重要な位置を占めています。教会はかなり発言力があるみたいです。(まだ、この一作目でははっきりしない部分も多い)私が知ってる限りでは、ファンタジーでここまでハッキリ宗教を書くというのは珍しい気もします。(架空の宗教ならともかく…)この世界でキリスト教があるなら、仏教とかイスラム教もあるのかしら…。
 
 まだこの本は三部作の1作目なので、たくさん謎が残ってます。早く読みたいです。最近3作目も刊行されたので、今から読み始めると一気に読めますよ。(2002.3.23)


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