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ぎんこさんの読書ノート

2007年読んだ本
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 2

サミング・アップ (岩波文庫)

著者 : モーム

出版社:岩波書店

発売日:2007-02

評価 :

完了日 : 2007年04月21日

 イギリスの作家モームが64歳の時に「自分の人生もう長くない…」と思って人生を総括したエッセイ本。だけど実際は91歳まで生きたというのがなんとも。
当時はここまで赤裸裸に語っていいの?と言われたそうだけど、現在の人々からすればそうでもないかもしれない。私が読んで思ったのは、モームのプライベート、結婚や子供の話がほとんどといっていいくらい出てこない。巻末の略歴を見ると、モームは結婚したが同性愛者でもあったそうで、色々とトラブルもあったようだ。だが本書では一切触れていない。俗物な私からすれば、そのへんに興味が無い事もないが…。
が、作品についてはかなり詳しく解説しており「人間の絆」などの代表作を書いた理由やいきさつ、劇作家としての面白さ、苦しみなどモームの作品を読んだ人なら興味深い内容になっている。私も「人間の絆」「お菓子とビール」など読みたくなった。(2007.4.21)


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 1

新・地底旅行 (朝日文庫 お 53-1) (朝日文庫)

著者 : 奥泉 光

出版社:朝日新聞社

発売日:2007-03-07

評価 :

完了日 : 2007年04月21日

 奥泉光は「モーダルな事象」を読んでこれで2冊目です。あいかわらず楽しい登場人物がだらだらと脱線しながら話が進んでいくのが私は好きなのです。ユーモア小説として読めば結構楽しめるのではないでしょうか。
今回はタイトル通り、ジュール・ヴェルヌの「地底旅行」をベースにしているので、オリジナルを読んだ人なら笑える箇所も多いそうだ。それに「我が輩は猫である」などの夏目漱石の著作のオマージュも多々あるらしい。私はどっちもそんなに読んでないので、そのあたりの笑いはわからなかったが、それ抜きでも楽しめる。
が、とても長いのでさすがに最後は息切れがする。さらにSF設定がなんとなく中途半端な気がした(でもヴェルヌの本と基本的には同じらしいです)。このだらだら雰囲気とあんまり生臭くない登場人物が好きなら読んでみるのも良いかもしれないです。(2007.4.21)


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 3

闇の守り人 (軽装版偕成社ポッシュ)

著者 : 上橋 菜穂子,二木 真希子

出版社:偕成社

発売日:2006-11

評価 :

完了日 : 2007年04月16日

 前作「精霊の守り人」は、民族の伝説が権力者によって歪められる現実など、ハードなテーマを含みつつも全体としては女用心棒と少年の冒険活劇が物語を児童書らしくしていた。だが本作は人が持つ属性の卑しい部分 ー裏切り、嘘、嫉妬、憎しみーそんな負の部分を大きくクローズアップしており、全体的にトーンは暗い。前作のチャグムのような立場にあるカッサ少年も、自分の家の身分から所詮は出世できないのだと悟っており、成長に従って尊敬していた父親が一族の中で発言力が無いことも知ってしまう。とても現実的だが、大人になろうとするカッサの精神状態がよく描かれていると思う。
 
 主人公バルサは強い女性ではあるが、自分のために仲間と戦い、死んでいった育ての親ジグロに対する負い目から心を開くことが出来ない。彼女を愛し、多分彼女も愛しているであろうタンダに対しても、その負い目から気持ちを伝えることが出来ない。だが、チャグムとの旅で過去に向き合う気持ちになったバルサは、故郷で辛い目に会いながらもジグロの汚名を晴らそうとする。そしてカンバル王国で行われる「ルイシャ贈りの儀式」の秘密が明かされる時に、この国の真実の姿を知るのだった…。
 
 この小説の巧い部分は、ちゃんと「謎解き」があり、そして最後にちゃんと明かされることだ。これは前作でも本作でも同じで、最後にそうだったのか! という驚きがあるのが嬉しい。そして人物描写。バルサはもちろん、他の登場人物もちょっとした動作から人となりが伺えるのがうまい。今回の暗いテーマを一身に背負うことになるユグロも、卑しい部分だけでなく、最後に彼なりの言い訳をさせてあげているところなど作者の優しい視点を感じる。
 
 無念のまま、報われないまま死んでいった人たち、そして最後まで本当の気持ちを伝えられなかった親の魂はどこにあるのだろう。現実の世界では出会うことはない過去の魂。だが、このファンタジー小説の中では一瞬だが出会う時がある。そしてバルサはその魂が故郷に帰り大地に溶けてゆき、いつまでも自分と共にあることを知るのだった。もう二度と会うことがなくても。
 
 あとがきで作者が「闇の守り人」は大人に人気がある、と語っているが、それも納得。人の醜さ、そして再生を描いた本作は完全に大人向けだ。だが、きっと子供にも何か心に残る作品ではないかと思う。傑作です。(2007.4.16)


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 4

散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道

著者 : 梯 久美子

出版社:新潮社

発売日:2005-07-28

評価 :

完了日 : 2007年04月07日

 硫黄島の戦闘で指揮をとった栗林中将をとりあげたノンフィクション。2006年大宅壮一賞受賞作品。女性らしい観点から栗林の素顔を描きつつも、あまり感情的にならずに淡々と書いているのは好感が持てるし、うまくまとまっている。
 私はこういうノンフィクションは2つの手法があると思う。1つは大局から個人の存在価値を見いだす手法。そしてもう1つは個人を徹底的に描きだす方法。残念ながら、この本ではそのどちらも中途半端に終わっている。著者は栗林という一人の男を高く評価しているので、栗林の人生をもっとあぶり出した方が良かったとは思うが、実際もう彼を個人的に知っている人はいないに等しいだろうし、これが限界だったのだろう。栗林の光の部分しか描いていないので、高潔な人物ということは良くわかったし実際そうだったのだろうが、個人の人格の深みは描かれていなかったと思う。
 
 NHKで硫黄島のドキュメンタリーを見たが、日本兵のゲリラ戦法に手を焼いたアメリカ兵は、地下道の中に海水やガソリンを流し込み火炎放射器で焼いた。水浸しの洞窟の中で、日本兵の顔の皮がはがれて洞窟の壁にたくさんはりついていたそうだ。硫黄島の戦闘の悲惨さを伝えるエピソードだった。このような証言や本書は現代に生きる私たちにとって、とても重要なものだと思う。


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 3

狂気という隣人―精神科医の現場報告 (新潮文庫)

著者 : 岩波 明

出版社:新潮社

発売日:2007-01

評価 :

完了日 : 2007年04月02日

 現場の精神科医が書いた本ということで興味を持って読んだ。しかもドラマや小説のエピソードもからめて書いているのが面白い。だが文庫本で260P程というボリュームのためか、ややあっさり風味でもっとつっこんだ話が聞きたかった。
 精神病や患者について筆者が経験したことについて書いてるが、大部分は精神病患者が犯罪を犯した事件の問題点を提示している。日本の司法は精神病患者の犯罪者をほとんど無視してきたと言ってよく、結果的に医者に丸投げしていた。昨今精神病患者の犯罪がニュ−スで取り上げられることも多く、これからはもっとこの問題に取り組まなくてはならないだろう。
筆者は人口に1%は統合失調症だと言っている。正常とそうでないものの境界線ギリギリにいる人はさらに多いだろう。どんな国にでも一定の数の患者は存在している。大事なのは、社会がどう向き合うか、だと思う。彼らは、ではなく「我々の」問題なのだ。


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 4

ガラスのなかの少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

著者 : ジェフリー フォード

出版社:早川書房

発売日:2007-02

評価 :

完了日 : 2007年03月06日

舞台はアメリカ、1932年。禁酒法と大恐慌という暗い状況の中、景気のいいのは悪人だけ。いんちき霊媒師トマス・シェルとその部下のアントニー、メキシコからの不法移民のディエゴは金持ちから降霊会を依頼されてガッポリかせいでいた。
 ところが、ある降霊会でシェルはガラス窓にいないはずの少女を見る。その少女は、別の屋敷で行方不明になった少女だった。シェルは少女を見つけ出そうとするが…。
 
 いんちき霊媒師のシェルは、元々全然霊なんて信じていないマジシャンで、金持ちは騙すけれど悪人ではありません。そんな彼と彼をしたうアントニーとディエゴの活躍が楽しいミステリです。こういう話は大好きなので個人的には楽しめましたが、幻想小説なのかミステリなのかあいまいで、どっちも中途半端な気がしました。そこが好きな人もいるだろうし、このへんは評価のわかれるところだと思います。(2007.3.6)


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 5

精霊の守り人 (軽装版偕成社ポッシュ)

著者 : 上橋 菜穂子,二木 真希子

出版社:偕成社

発売日:2006-11

評価 :

完了日 : 2007年01月07日

 ファンタジー小説というと西洋が舞台の作品が多くなるが、この「精霊の守り人」は、ファンタジーでは割と珍しいアジア的な風景・神話をモチーフにしてある。主人公、バルサが訪れる「新ヨゴ皇国」は日本の古代のような国であり、他にはアイヌのような民族や、様々な神話、民話を取り入れていて、独特の世界観を構成している。「守り人シリーズ」と呼ばれる一連の作品の1巻にあたる本作は、その世界観を説明するのにかなりのボリュームが割かれている。まだ続編は読んでいないが、今回名前だけしか登場しなかった国や民族などは、後のシリーズで描かれているようだ。
 
 この物語で私がスゴイ!と思ったのは、民族の持つ神話が、政治の道具になり都合よく変えられてしまったり、侵略者が侵略された民族の神話(価値観)を抹殺したりといった、とてもリアルな部分が盛り込まれていることだ。しかも、それをうまく物語に盛り込んでいて、謎解きの一部にもなっている。これは文化人類学を専攻したという作者らしい部分ではないかと思う。
 
 登場人物の織りなすドラマもいい。30代の女性である主人公バルサの苦悩、突然守られるべき皇子から一転し逃げる立場になったチャグムなど、それぞれの過去や現在の人生が語られていて、トラブルの中みなそれぞれに成長していく。中でもバルサが自分の過去に向き合い、理解するシーンは感動的だ。人と人との間には損得勘定などない、だから一緒に生きていけるーそんな人生讃歌とも言えるテーマがこの物語を児童文学としても、大人が読む物語としても素晴らしい作品にしている。
 
 本作は「精霊の守り人」というタイトルで今春アニメ化される。NHK BS2で放送予定。アニメ制作会社「プロダクションI.G」と「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」を手がけた監督・神山健治がアニメシリーズ化するそうで、NHKも力を入れているようだ。さらに実写映画化も予定されている。(2007.1.7)


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