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ぎんこさんの読書ノート

2004年読んだ本
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 1

新版 指輪物語〈8〉王の帰還 上 (評論社文庫)

著者 : J.R.R. トールキン

出版社:評論社

発売日:1992-07

評価 :

完了日 : 2004年01月16日

 長い「指輪物語」も、この巻で大円団を迎えます。クライマックスの舞台は、決戦の繰り広げられるペレンノール野と、指輪を葬る場所、滅びの亀裂。ペレンノールでは、ガンダルフやアラゴルン、そしてメリーやピピンも剣をとり、獅子奮迅の働きをします。そして、自分の力を試したいお姫さま、エオウインも出陣。風雲急を告げる決戦はどちらが制するか?うーん、このへんは架空歴史ものっぽいですね。盛り上がります。
 
 で、もう一方のフロドとサムは、痛々しくも孤独な旅を続けます。もう限界ぎりぎりいっぱいのフロドを懸命に支えるサム。ほんとに君はいい奴。指輪にほとんど支配されつつも、必死で前に進むフロドですが、最後の最後で大きな試練が。ペレンノール野の決戦が、力と力の対決とすると、フロド達は心の戦いです。そして、意外な伏兵が運命を決定づけます。
 
 「王の帰還」の4分の1は、エピローグが占めています。決戦の後、フロドは、サムは、そしてアラゴルン達はどうなったのか。作者は丁寧に描いています。戦争の後、人々がどう生きたのかに重みをおく作者の姿勢は好感が持てますね。彼がのちにどう生きたのか、その中にこそ大事なテーマがあるように思えます。フロドは結局、ひどく傷ついた心と体を癒すことはできません。寂寥感の漂う幕引きですが、その中にも、希望は確実にあって、なによりも帰る場所のある嬉しさが、サムの最後のセリフに現れている気がします。これは作者の戦争体験が影響を与えてるのではないか…と思ってます。(2004.1.16)


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 1

最後の忠臣蔵 (角川文庫)

著者 : 池宮 彰一郎

出版社:角川書店

発売日:2004-10

評価 :

完了日 : 2004年01月01日

 寺坂吉右衛門は吉良邸討ち入りメンバー47人の中で、唯一切腹をまぬがれた謎の多い人物。実相寺に墓があるそうだが、そこを含めて7つも墓があるそうだ。寺坂が切腹を免れた理由は、逃亡説など諸説あるそうだし、彼を入れて「四十七士」なのか「四十六士」なのか、どこの時点で寺坂は抜けたのだろうか?はっきりしていない。
 
 この物語では、その謎多き寺坂を主人公としている。足軽の身分ながら討ち入りに参加し、伝令として獅子奮迅の働きをした彼を、大石内蔵助は自分たちの戦いを間違いなく世間に伝えるように、そして残された家臣や家族たちが、武士らしい生活を送ることが出来るように金を渡せと寺坂に「最後の命令」を下す。寺坂は死んでしまった46人の命を背負って生きなければならなくなった。遺族を訪ねる旅から旅への生活は辛く厳しい。だが、武士として行きたいと願う彼の矜持は、妥協を許さない。そして寺坂は、遺族たちを助けるために自分の幸せも捨てて命を賭ける。そんなストイックな姿が読者の胸を打つ。
 
 「忠臣蔵」という物語は、四十七士の切腹で終わることが多いが、この小説ではその後生き残った人たちの苦難、そして死で終わった物語を生へと再生させる。人の命を背負って生きる男たちの耐える姿は、命の大切さ、そして人の情こそ大事なのだと再認識させてくれる。


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 3

松本清張傑作短篇コレクション〈下〉 (文春文庫)

著者 : 松本 清張

出版社:文藝春秋

発売日:2004-11

評価 :

完了日 : 2004年01月01日

最後となる下巻では、清張のデビュー作「西郷札」を含む、多彩なセレクトとなっている。「支払い過ぎた縁談」は、人間の欲を利用した巧妙な詐欺の話。いや、欲張っちゃいけないんですね。身に沁みます。「骨壺の風景」は、小倉で祖母の骨壺を探す自伝的な短編。小倉の風景が寂しくも懐かしさを感じる。「鴉」は、会社で冷遇された男の復讐劇。タイトルの意味を知るラストにゾッとする。「菊枕」では、自意識過剰な美女、ぬいとその夫の人生を切なく描く。最後の「炎の記憶」は、婚約者の過去を気にする女の兄が、婚約者の過去の真実を推測するが…。過去は現在に生きる人の心を苦しめるが、過去は過去。新しくやり直すことが出来るのではないか、という優しさが感じられる一本。ラストにふさわしい短編だと思う。
 
 「松本清張賞受賞作家に聞きました」は、知っている作家が横山秀夫だけだった。横山秀夫は「地方紙を買う女」を自分だったらこう書く、という試みの文章だったが、普通に清張論を書いて欲しかった。
 
 全巻にわたる宮部みゆきの「口上」は、若い読者もターゲットに入れ、わかりやすく、作品への興味が湧くように書いてあってとても良かったと思う。


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 3

松本清張傑作短篇コレクション〈中〉 (文春文庫)

著者 : 松本 清張

出版社:文藝春秋

発売日:2004-11

評価 :

完了日 : 2004年01月01日

この巻では、「寂しい女たちの肖像」と題して女が中心の4つの短編を、そして「不機嫌な男たちの肖像」と題して男が中心の4つの短編を集めている。
 
 「寂しい女たちの肖像」の中では、私は「書道教室」が印象深い。主人公の男は、平和な家庭を持っているが、妻に不満を持ち浮気をする。ところが、愛人との関係がドロ沼化してしまい、心の癒しを求めて書道教室に通うようになるが、その書道教室は不審なところがあった…という話。主人公の男が語り手となって物語は進められるが、彼の言い分がナチュラルに身勝手なので、読んでいて「オイオイ」と言いたくなってしまう。うまいこと犯罪を隠蔽できそうになるが、妻の意外な行動で犯罪は明るみになるのだった。話も面白かったが、身近な光景の描写がとても良く(特に古本屋!)、想像しやすかった。
 
 「不機嫌な男たちの肖像」では、「共犯者」。現在は事業で成功し、幸せな男。だが、事業を起こした金は、強盗により得た金だった。共犯者に全く知らない男を選び、その後は一切連絡をとっていなかったのだが、共犯者が自分を強請るのではないかと不安に思った男は、共犯者の現在の様子を調べ始める…という話。うまくいっているのに恐怖が人の心を惑わせ、結果破滅してしまう。しかし、男は共犯者が何をしているのか、どうしても知りたかったに違いない。なぜなら、共犯者は自分が歩んだかもしれない、もう一つの人生なのだから。


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 4

松本清張傑作短篇コレクション〈上〉 (文春文庫)

著者 : 松本 清張

出版社:文藝春秋

発売日:2004-11

評価 :

完了日 : 2004年01月01日

松本清張は、私にとって「母の好きな作家」だった。うちの母は、テレビの2時間ドラマだろうが、映画だろうが、松本清張ならとりあえず見る。映画「砂の器」(1974)も、テレビで放送されるたびにラストシーンを解説してくれる。でも、私にとっては松本清張は「昔の作家」だった。

 ところが。ある時に小倉にある「松本清張記念館」に訪れる機会があった。松本清張の本一冊も読んだことがなく、最近ドラマ化された「砂の器」も見てなかった私が見ても面白いのかな…と疑問を抱きつつも記念館を見学した。結果、楽しかったです。松本清張という人は、こんなにたくさんの本を書き、そしてその内容は推理小説だけでなく、いろんなジャンルがあること、そして清張は絵が上手なこと、色んなことを知った。そして、なんといっても目玉は、東京の自宅の応接室、書斎、書庫をまるごと記念館の中に移築してある部屋。特に書斎は「作家の頭脳」といってもいい空間であり、見応えがある。残念ながら実際に書庫の中は歩けないが、外から見てるだけでも楽しい。
 
 記念館を見終わったあと、とりあえず松本清張作品を読みたいと思ったが、あまりにも作品が多過ぎてどれを読むべきかわからなかった。そこで、ちょうどいいタイミングで出版されたのが、この「宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短編コレクション」だった。まず、この本の冒頭は、宮部みゆきが松本清張記念館を訪ねた話から始まる。まさに私向け。そして、収録作品の一作目が、芥川賞を受賞した『ある「小倉日記」伝」。私がまず読みたいと思った作品がコレだったのだ。まさにツボをつかれたこの作品集は、松本清張ファンの宮部みゆきが自らセレクションし、作品解説の口上もついている初心者向けの短編集。昔読んだけど、すっかり忘れちゃったよ、という人にもオススメです。

 上巻の作品の中では、まず『ある「小倉日記」伝』がとても良かった。松本清張が芥川賞作家という事も知らなかったので、松本清張を読むならまずこれだな、と思っていただけに、このセレクトは嬉しかったし、期待に答えてくれた。物語は昭和15年、詩人Kが「田上耕作」という男から、手紙を受け取る。その手紙には、森鴎外の失われた日記「小倉日記」の空白を埋めるために、鴎外を知る関係者から聞き取りをしてまわったと書いてあった…というもの。作中では、田上の生い立ちや鴎外へなぜ執着するのかが描かれている。社会の片隅で静かに、だが執念を持って生きる田上と献身的な母の2人がとても切ない。他の作品では、地方紙に連載された小説がきっかけとなって犯罪が暴かれる「地方紙を買う女」、流行歌が完全犯罪を崩壊させる「捜査圏外の条件」など、さすがにどれも面白かった。

 「昭和史発掘」「追放とレッド・パージ」も興味深く読んだが、この事件について私がよく理解していないことと、一部分の抜粋なので、多少ものたりなくもあった。また機会を見て読み直したり、本編の方にあたってみるのもいいなと思った。


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 20

金閣寺 (新潮文庫)

著者 : 三島 由紀夫

出版社:新潮社

発売日:1960-09

評価 :

完了日 : 2002年03月31日

 この小説は、実際にあった金閣寺の放火事件がモチーフになっています。ですが、実際の犯人の心理を克明に書いたわけではなく、三島の創作による所が多いのではないかと思います。三島はこういったタイプの小説はいくつか書いているそうです。
 
 さて、感想ですが…。私はこの小説は「青春小説」だと思っています。主人公が若いというのもあるんですが、この歪んだ情念の持ち主である男の心理は、多少なりとも若い時に感じたことがある気がするんです。行動(放火)は理解できないけど、このウジウジとした考え方がね(笑)
 
 登場人物の中では、柏木がいい味だしてました。足の悪さをウリに女をひっかけたりするこれまた悪い男なんですが、最後の主人公との会話はこの小説のヤマ場になってました。
その中で語られる「世界を変えるのは、認識か、行為か」の会話は面白いです。主人公は「行為」(つまり放火)で変えるといい、柏木は「認識」でしか世界は変らないと主張するのですが…。
 
 この小説の中では、主人公が放火の後にどう思ったのかは語られません。彼の美しい物を滅ぼしたい、という「行為」でどのくらい世界が変ったのか?確かに彼の環境は変るのでしょうが、彼自身はどれだけ変ることが出来たのか…。私は結局何も変らなかったんではないかなぁ…と思いました。
 
 三島の美しい文章はやはり魅力的で、私はそれが一番楽しめました!またチャンスがあったらチャレンジしたい作家です。(2002.3.31)


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