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ぎんこさんの読書ノート

2002年読んだ本
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 19

理由 (新潮文庫)

著者 : 宮部 みゆき

出版社:新潮社

発売日:2004-06-29

評価 :

完了日 : 2002年12月29日

 この物語は、ノンフィクションの手法で語られます。事件が終わった後に、ルポライターが事件に関わった人々に取材し、それをまとめた…という感じですね。そのせいか、誰が主役というわけでもなく、事件を中心に放射状に結ばれた人物の家族や、その過去を丁寧に書いています。
 
 その家族の描写はさすがというか、よくもまぁここまで書き込んだな、というか。絵に例えると、俯瞰して町を描いていて、よーく見てみると、家の中に家族が生活している所まで描かれてあるような。どの家庭も、それぞれの事情があって事件に関わっていくんだなぁ…と実感できました。
 
 この本の主役は、もちろんそんな人々なんですが、私は「家」という器とも言えるような気がしました。人は生まれて、家族と住むわけですけど、その家族をおさめる「家」が、結構重要で、その選択を誤ってしまうと…意外な悲劇が起ってしまう。全国のお父さんは、これ読んで「マイホーム幻想」から目が覚めるかもしれません。
 
 と、いうわけで、面白い部分もあったのに、なぜか私はノレなかった。どうしてかなぁ?ひとつ言えるのが、この本のミソとも言える「ノンフィクション的手法」。事件を俯瞰して見るのには、いい手段だと思うんですけど…。私は、この語り手たるライターにも、何か欲しかったな。冷静な視線というのが必要なんだろうけど、あくまでも「他人事」という雰囲気が私にはぬぐえなかった。私もノンフィクション好きで、時々読むのだけど、「ノンフィクション」を書いてるにもかかわらず、やっぱり書き手というのは感情が出てしまいます。個性ともいうか…。その部分が、面白さを決める部分も多い。まぁ、この語り手がいわゆる「神の目線」で語ってるのだから、これでいいのでしょうけど、あえて私の好みから言えば、この目線が、私をこの物語に引き込むことが出来なかった原因かもしれません。
 
 ひとつ、私はこの部分が面白かったので書き出しますね。
 
「女性の場合、こういう部分(生活)の好みさえ一致すれば、共産主義者と資本主義者だって一緒に暮らしていけるのだ」
 
 これ、笑いましたねー。ああ、そういう部分あるなって。だけど、あえて逆を言うなら、例え主義主張が一緒でも、生活の部分で好みが一致しなかったら、うまくいかないってことですよねぇ。そこが女性の困ったとこでもあるわけで…。
 
 宮部さんの作品としては、私はベストとは言えないのですが、面白い作品だと思うし、「事件が起こるまで」の経緯を丁寧に書いているのはとっても凄いと思いました。でも、この手のだったら私は「火車」の方が好きだったです。(2002.12.29)


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 1

昏き目の暗殺者

著者 : マーガレット アトウッド

出版社:早川書房

発売日:2002-11

評価 :

完了日 : 2002年12月26日

 カナダの代表的作家アトウッドの作品はこれが初めて。この「昏き目…」が邦訳されるということで、あちこちで評判を聞いていました。それで、いきなり最新刊から読むのも失礼(?)かなと思い、「侍女の物語」か「寝盗る女」から読もうと思ってたのですが…。結局最新刊から入ってしまった(笑)。

ほら、アトウッドの作品の説明読むと、かなりフェミニズム的要素が多いようだから、少し気がひけてたんです。なんだか辛くなっちゃいそうで…。
 
 ま、そんなこんなで読み始めたワケですが…。この本は老女、アイリスが現在から過去を振り返る文、そして妹ローラが書いたSF小説、さらに当時の新聞に掲載された登場人物たちの記事。この3つによって構成されています。アイリスの語る過去の話がベースで、挟まれる新聞記事がいきなり結果を提示し、後の回想で真実が語られるという感じですね。この構成がとっても面白かったです。どうしてこうなったんだろう?という疑問が、だんだんわかってくるこのスリル!後半からは数々の疑問がうっすらと見え始めて、ページをめくる手が止まりませんでした。
 
 そうそう、この作品はイギリスの権威ある賞、ブッカー賞もとってますが、ハメット賞もとってるのです。これはアメリカとカナダの優れたミステリに贈られる賞だそうです。この賞からもわかるように、これはミステリとしても読むことが出来ます。
 
 ローラの死の真相は?SF小説のモデルは誰なのか?訳者のあとがきにもありましたが、確かに途中で謎はなんとなくわかってしまいます。ですが、私はただ「わかった」んじゃなくて、「予兆」みたいな感じがしたんですよ。それは、作者の意図だと思うんですけど、うまく事実が見え隠れしてるから。ちりばめられた部分が、最後にぐわっと襲ってくるラストが重々しくのしかかってきました。
 
 読んだあと、この本は自分にとってちょっと特別な本かもしれないって思いました。どこかに自分の一部分があるような気がして…。あ、別に私はお屋敷にも住んだことないフツーの人間ですが。だけど、私にも妹がいて、そして女なんだよね。だから、アイリスとローラの他愛のない子供時代とか、後の彼女たちの関係とか、少しだけどわかる気がしたんです。決して楽しい話ではないし、アトウッドの筆はとってもシビアで容赦ない。自分の心に食い込んでくるような、そんなお話でした。
 
 「わたしは砂であり、雪であったー書かれ、また書かれ、均されて」この一文が美しく、そして悲しくて私は気に入っています。(2002.12.26)


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 2

あなたの魂に安らぎあれ (ハヤカワ文庫JA)

著者 : 神林 長平

出版社:早川書房

発売日:1986-03

評価 :

完了日 : 2002年12月19日

 この作品は作者のデビュー長篇だそうです。そのせいか、後に書かれる作品のかけらがあちこちにちりばめられています。私は他の作品もいくつか読んでいるので、「ああ、このへんはあの作品っぽいな」と思いつつ読んでしまいました。あと、ちょっとだけディックぽくもありましたねぇ。最近発売されたハヤカワの「ディック・リポート」にも文を寄せてましたし、きっと影響あったんでしょう。
 
 このお話は、主に2人の人物を中心に進んでいきます。一人は秋山。平凡なサラリーマンですが、リアルな「別の世界のもう一人の自分」の夢を見て、苦しんでいます。そのせいか奥さんとも倦怠気味。夫婦生活はうまくいっていないようです。食料はアンドロイドが送ってくるのですが、それは全く味のないもの。だから、「幻覚機」で、人は好きに味をつけているのです。生活のすべてはマボロシだ、と秋川は次第に壊れていきます。
 
 もう一人は、「魂教会」と呼ばれる宗教の司祭、サイ・玄鬼。彼は予知能力を持っていたため、幼い頃に教会にたたきこまれ、厳しい生活を過ごしてきました。そして、ある「予知」の意味を知るために、地上に出ていきます。
 
 大体こんな感じですが、この2人をとりまく様々な人々の「日常」が描かれていきます。秋山の妻は「AAA」と呼ばれるアンドロイドに対抗する組織のリーダーと出会ったり、息子は学校での手酷いイジメがあったり。玄鬼の方も、地上に出てごくごく普通の生活をアンドロイドと過ごし、ささやかながら楽しむのですが、彼の予言が実現する時、すべての人々にとっての「崩壊」が始まるのでした。
 
 正直いって、始めの方はちょっとダルかったけど(^_^;)後半から色々な要素がからみ合ってきた時は面白くて夢中になって読みましたー!!世界の意味って何?なぜ生きてるの?という問いを持つ人間とアンドロイド。人間にはその問いの答えはありませんが、アンドロイドにはある意味がラストに用意されています。このへんは結構ドンデン返しで面白かったです。
 
 なんかねー、この小説ってカッコイイ人は誰一人としていない。みんな何か抱えてて、みっともない部分もありつつも生きてるというか。そのへんが良かったです。悶々としたサラリーマン親父の爆発小説とも言えるかも。

 私が好きだった所は、秋山の心理を見てくれる博士が、自分の意識をシャンター円盤という機械に移したのに、その事をすっかり忘れててて、自分だと思ってるのね、円盤を。秋山の息子はそれを学校の帰りに見かけて「先生、ヘンだよ」と言うけど、博士は全然わかってなかったりして。このへんちょっとシュールというか、ホラーっぽくって良かったなぁ。すごく平凡な風景だけに…。
 
 人々がそれなりの場所に落ち着くラストは私は「ハッピーエンド」だと思ってます。すべての魂に安らぎあれ。(2002.12.19)


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 2

祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)

著者 : グレッグ イーガン

出版社:早川書房

発売日:2000-12

評価 :

完了日 : 2002年12月16日

「貸金庫」
【人から人へと肉体を渡り歩く男。しかし、ある一定の期間しか留まれないので自分の記憶をメモに書き、貸金庫に保管している】
「ありふれた夢を見た、私に名前があるという夢を」で始まる一篇。自分というものを持たない男の生活を淡々と書き、孤独と悲しみが滲み出ていると思う。
 
 「キューティー」
【子供が欲しいのだが、恋人に断られた男。ネットで「キューティー」という赤ん坊製造キットを買う。これはDNAを操作してあり、4歳になると自動的に死亡するのだ】
「子供が欲しい」という欲望を、科学で満たした男が辿る悲劇。というか、本編は悲劇を予感するところで終わっている。ちょっと消化不良起こしたかな。
 
 「ぼくになることを」
【脳に「結晶」と呼ばれるコンピューターを埋め込み、成人すると神経を「結晶」に移して脳は取り除くことを「スイッチ」と呼ぶ。男はスイッチを恐れ、拒むのだが】
もし自分の記憶をすべてデータにすれば、人はコンピューターの中で生きられるのか?そしてそれは「自分」なのか?人のアイデンティティーを問う話。結構オチがすごい。
 
 「繭」
【ある研究所がテロに合う。ここでは母親から胎児へ供給される血液から、あらゆる異物を取り除くことが出来るバリアを研究していた】
これは考えさせられる一篇。母体から子供に病気、麻薬、アルコールが移らないようにする研究なのだが、それはなんと同性愛の子供も生まれなくなってしまうのでした。医療と人について、心について、考えたい深い話でした。
 
 「誘拐」
【男の元に届いた一通の脅迫メール。それにはあまりにもリアルな妻の映像がついていた。妻の無事を知り、脅迫を一蹴する男だが、脅迫はその後も続き、さらにリアルに】
「ぼくになることを」でも問われた「人のリアルなコピーは人になりえるのか?」というテーマの話。このテーマはイーガンの他の作品でも重要な位置にあるみたい。
 
 「ミトコンドリア・イブ」
【若いカップル、ポールとリーナはミトコンドリア型検査を受ける。それは自分が遡ること人類の母ーミトコンドリア・イブの家系のどの位置にいるのかを知る検査だった】
ちょっとブームだった人類の母「ミトコンドリア・イブ」。この話では、イブの存在を政治的に利用する団体と、それに対抗して「Y染色体のアダム」を研究する団体がイガミ合っちゃう。先祖探しはいと空し。結局今が大事なんですよね。架空の本「シュレーディンガーの蓮華」「ハイゼンベルクの曼陀羅」には大爆笑。
 
 「祈りの海」
【遠い未来。惑星コブナントに移住した人類。そこでは「聖ベアトリス」という神を人は信じていた。海に住む敬虔な信者、マーティンはある秘密を知る】
表題作で、ヒューゴー賞・ローカス賞受賞作。極めてSF的な要素満載なんだけど、テーマは「信仰」だと思う。イーガンの想像した宗教的イメージが美しい。
 
 その他「百光年ダイアリー」「放浪者の軌道」「無限の暗殺者」「イェユーカ」も面白かったです。 (2002.12.16)


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 2

ドキュメント 戦争広告代理店 (講談社文庫)

著者 : 高木 徹

出版社:講談社

発売日:2005-06-15

評価 :

完了日 : 2002年12月14日

 この本を書いたのはNHKのディレクターで、同タイトルの番組が2000年に放送されました。その取材を改めてまとめたものです。
 
 「民族浄化」(ethnic clensing)という言葉は、ボスニア紛争のニュースで良く聞かれたと思います。この衝撃的な言葉は、この戦争の方向を決定づけました。では、この言葉を考えたのは誰なのか。マスコミではないのです。
「民族浄化」を意図的に流して世論を操作した人物。それはアメリカのPR会社の社員なのです。
 
 ここでちょっと、「ボスニア紛争」について簡単に。バルカン半島にある小さな国「ボスニア・ヘルツェゴビナ」は、主に3つの民族で構成されています。セルビア人・クロアチア人・モスレム人です。元々、この国は隣国のクロアチアやセルビア・マケドニアと同じく、ユーゴスラビア連邦の地方だったんですが、冷戦の集結と共に独立したのです。
「ボスニア・ヘルツェゴビナ」も92年に独立をはたすのですが、この時中心となったのは故国を持たないモスレム人。セルビア人は反発。これが発端です。
 
 さてさて、物語はボスニアの外務大臣がアメリカを訪れる所から始まります。何をしにきたのかというと、小国で力をもたないボスニアが、大国アメリカを見方につける事でした。アメリカ政府を動かすには、世論を動かすしかない。そう考えた外務大臣はPR会社の大手、「ルーダー・フィン社」と契約を結ぶのです。
 
 PR会社のPRとは「Public Relation」の略。日本語にはこれにあてはまる言葉はありません。あえて言うなら、広告代理店のような感じかな。でも、PR会社の仕事はもっと幅広い。メディアはもちろん、政治家にも働きかけるんです。
 
 ボスニアと手を組んだPR会社は、様々な方法を使ってボスニアの悲劇性を訴え、セルビア人が一方的に悪いというイメージを植え付けます。スポークスマンとなった外務大臣へのアドバイスから、マスコミに配る資料作り。大きなニュース番組への出演をコーディネイトする。そして、意図的に「キャッチコピー」を流す。「民族浄化」や「強制収容所」です。
 
 メディアがここまで発達した現代で、いかに情報戦を勝ち抜くか。世論を見方につけられるか。これが戦争の勝敗を決めてしまうのです。PR会社により演出された物語。それがボスニア紛争であり、「セルビア人=悪」でした。正義も悪も、人がつくり出したのです。
 
 とにかくこのPR企業の社員はプロ中のプロフェッショナル。その手腕は本当にスゴいです。ですが、私は手放しで賞賛できないよ〜。だって、なんだか戦争で商売してるなんて…。しかも世論を意図的に操作するんですよ?どっちが正しいか、なんてあるはずないのに。
 
 まぁ、感情的には納得いかないですけど、情報とマスメディア対策をしなければ現代の社会は生き残れません。日本の政治家や外務省なんて、このへんが全く足りないみたいなんで、どうにかした方がいいのでは…。アメリカでは、官僚が民間に行ったり、その逆だったりというのが多いんですって。一生官僚じゃ、技が磨かれないから。(2002.12.14)


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 1

リンカーンの夢 (ハヤカワ文庫SF)

著者 : コニー ウィリス

出版社:早川書房

発売日:1992-08

評価 :

完了日 : 2002年11月30日

 コニー・ウィリスの本は2册目です。彼女の本も色々なジャンルがあるそうですが、これは「ドゥームズディ・ブック」と基本路線は一緒なので、私には比較的読みやすい本でした。
 
 「ドゥームズディ…」もそうなんですが、SF+歴史ものですね。この本も。ヒロインのアニーが、「南北戦争」の夢を見るのですが、それがあまりにも現実的で、歴史書を読むと、似たような描写があったりする。そこで、彼女にひとめぼれしたジェフは、彼女をつれて、取材に行く名目で古戦場を訪ねます。さらにはっきりとしてくるアニーの夢。そして作家の新作のゲラも「南北戦争」ネタです。「夢」と「創作」と「現実」が、次第に混濁して、ジェフとアニーは苦しんでいきます。
 
 私の南北戦争の知識といえば…「風とともに去りぬ」とか「若草物語」とか…。最近なら「コールドマウンテン」ぐらいしか(汗)きっとアメリカ人なら関ヶ原の戦いぐらいメジャーなんでしょうね。南北戦争マニアも多いらしいですし。しかし、作者は良く調べてあるんじゃないかな〜と思います。ロバート・E・リーなんて、とても人間味があってもっと知りたくなりました。
 
 ところで、ジェフの職業ですが、面白いですよね。作家専属の調査助手です。別に作家のたまごというわけでもなさそうです。まぁ、1册の本を作るためのスタッフというべき存在でしょうか。ジェフと作家、ブルーンの関係もなかなか面白かったですよ。うーん、ある意味親子のような関係というか…。
 
 この本には最後にウィリスのインタビューがついています。作者の作品に対する考えとかわかって、興味深かったです。「リンカーンの夢」について、「これは掛け値なしのゴースト・ストーリー」と言ってて、納得。SFというよりは合っているかな。SF的要素0だし。「さらば愛しき娘たちよ」についてのインタビューが多かったですね。やはりこれは一度読んでみたいと思いました。(2002.11.30)


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 1

三葉虫の謎―「進化の目撃者」の驚くべき生態

著者 : リチャード フォーティ

出版社:早川書房

発売日:2002-09

評価 :

完了日 : 2002年11月28日

 この本は小さい頃に三葉虫の化石を拾い、三葉虫に魅せられてしまった作者が熱くその魅力を語っている本です。幸せなことに、とうとう古生物学者にまでなっちゃってるんですけどね。
 
 作者はまず、トマス・ハーディの「青い眼」という小説の一文から読者を三葉虫ワールドに誘います。この小説で、主人公は崖から落ち、その斜面に三葉虫の化石を見るのです。
「その眼は死んで石と化していたが、それでもなお彼をじっと見つめていた」そう、この本は三葉虫から世界を見るとどんな風に見えるのか?という問いかけから始まるのです。
 
 まぁ、文学的な所もあるんですが、基本的にこの作者は三葉虫ラブラブなんです。(原題も「TRILOBITE!」(三葉虫!)だしね)スピルバークの「ジュラシック・パーク」を見ながら、どうせなら三葉虫が復活する方がいいなぁ、蘇った三葉虫が街ニューヨークの街を荒し回り、肌もあらわな美女を踏み付けたりして…とか言ってるんです。

 驚いたのは、三葉虫の眼ってカルサイト(化学的には炭酸カルシウム、鉱物としては方解石)で出来てるってこと。これってすごく珍しいらしいです。また、このレンズがすっごいうまく出来てるのです! 三葉虫の眼を知れば、彼らがどのような世界を見ていたのかを知る手がかりになります。
 
 さらに、S・J・グールドの説「カンブリア期大爆発」への反論、ナチスドイツによって不幸な最後をとげた三葉虫学者の話など、学者たちについての話もなかなか興味深いものがありましたねー。
 
 正直、専門用語が多くて、学者さんが書いたので少し読みにくい部分もあったし、話題も三葉虫についての魅力をもっと語って欲しかったなぁという思う所もありますが、三葉虫というあまり知らない生物について、楽しく知ることが出来ました。それに、口絵の三葉虫の写真がすごい。ファンタスティック!一言で三葉虫と言ってもこんなに種類があるんだ!と感動しました。ここだけでも見る価値はありますよ!(2002.11.28)


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 1

偽書作家列伝 (学研M文庫)

著者 : 種村 季弘

出版社:学習研究社

発売日:2001-11

評価 :

完了日 : 2002年11月15日

 オリジナルとニセモノの境界線って、現代になってアイマイになってきました。やはり、デジタル化というものが、さらにそれを促進したのではないでしょうか?例えば、身近な所でCD。レコードなら、コピーということは考えられなかったのにCDというデジタル・データになる事で、簡単にコピーが作れてしまい、オリジナルの価値は薄れます。ジャケットもレコード程の魅力はないですし。小説もしかり。今となっては「直筆原稿」もワープロ。さらに小説自体もHPでダウンロードできるようになってきています。
 
 さて、前置きが長くなってしまいましたけど(^_^;)この本では、古き良き時代の、ホンモノが価値あるものであるがゆえに、出てきたニセモノを売る商売のお話です。需要があるから供給がある、と言いますからね。
 
 そのニセモノを巡るエピソードがどれも面白い! 日本の歴史を聖書のように書き換えて戯曲にしてしまった作家、わずか18歳で膨大な数のシェイクスピアの書簡や戯曲を書き綴り、父親を騙していた少年、天才数学者で古文書研究科の男をまんまと騙して金もうけをした男。これなんて、あきらかにニセモノってわかるのに(古い文書なのに、近代フランス語で書かれていた)あっさり騙されるんですよ。学者でマニアなのに。蒐集家って、自分の欲しいものが目の前にあると、ニセモノであっても飛びついてしまうのかもしれないですねぇ。
 
 あと、この本は歴史のエピソードもあるのが勉強になります。すっごい驚いたのが、「ローマ皇帝コンスタンティヌス大帝贈与」の話です。えっと、かいつまんで書きますと、このローマ皇帝のコンちゃんはですね、腫瘍が出来てまぁ、色々手をつくしたけど治らなかったのです。んで、キリスト教のおかげで治癒し、改宗して、教会の地位を上げ、ヨーロッパの西の部分をすべて教会に贈与しました。このエピソードを「ローマ皇帝コンスタンティヌス大帝贈与」といいます。(ほんとはもっと詳しいので、本書をお読み下さい!)この話は、後世のキリスト教徒がいいように書いたかもしれないそうで、問題はこれを教会の憲法ともいうべき、「教皇法令集」にとりいれてしまった事。
 
 んで、さらにこの「教皇法令集」というもの自体が、誰が書いたかもしれぬ本。かなりマユツバな本なのですが、この本がヨーロッパに与える影響は大きく、なんと12世紀のイングランドによるアイルランド併合の根拠は、この「教皇法令集」によるものだったそーです。まぁ、自分のいいように勝手に解釈したんでしょうね。このイングラントとアイルランドの確執は、現代にも続いているんですからね〜。怪しい本のおかげで、今でも火種が…因果なもんです。
 
 ホンモノか、ニセモノか。もしかして、今、私やあなたが読んでる本も…。「偽書」なのかもしれない。そんな不思議な気分になりました。(2002.11.15)


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 1

地球礁

著者 : R.A. ラファティ

出版社:河出書房新社

発売日:2002-09

評価 :

完了日 : 2002年11月13日

 地球という星のロスト・ヘヴンという町に、デュランティ一家が住んでました。彼ら(彼女らは)フツーの人ではありませんでした。プーカ人だったからです…。そして、他の地球人もフツーの人ではなかったのです。

 まず、この奇妙な物語を語った作者について簡単に。
1914年にアメリカで生まれたアイルランド系アメリカ人。電気技師として働いていたが、45歳の時に突然SFを書きはじめる。なぜ書き始めたかというと「6年前から禁酒を始めて、その替わりに書いた」そうだ。敬虔なカソリック教徒でもあり、進化論を認めなかったほどである…。2002年3月18日、オクラホマの養老院で死亡。享年87歳。
 
 さてさて。
「地球礁」は、デュランティ一家が中心のお話です。ヘンリー・フランク・ヴェロニカ・ウィッチーの4人のプーカ人が「全宇宙で最もさもしい世界」地球にやってきます。住み着き、7人の子どもを作りました。(1人幽霊含む)
プーカ人とはなんぞや?作品の中では、どんな種族かという事は説明されますが、どこから来たのかはわかりません。地球人の親戚らしいです。彼らは、不思議な詩、パガーハッハ詩と呼ばれる詩で人を殺すことも出来たりします。
 
 ある日、大人たちが殺人事件で地球人に捕まってしまい、子どもたちは船で旅立ちます。しかし、泣く泣くではありません。「大人がいなくなってスッキリした」って感じです(^_^;)ついでだから死んでもらおう! と、パガーハッハ詩で殺そうとした事もありましたしねぇ。その時は大人が「返しバガーハッハ詩」で無効にするんですけど。(なんだか意味不明な…)
 
 子どもたちの航海はカゲキです。追っては血祭りに上げちゃうし、人間の脳みそは魚のエサ、いいナマズが釣れるのよvですもん。あ、でも残酷なんだけど、生々しくはないです。うーん、ある意味マンガ的というか、もっと言うと神話的なんでしょう。私は絵画的だとも思いました。ブリューゲルとかヘンリー・ダーガーみたいな絵を思いだしたかなぁ。
 
 あと、なぜか「指輪物語」の感覚を思いだしてしまった…。きっと「塚山」というのが出てきたからだと思います。「旅の仲間」でフロドたちが塚山に行くところがありますよね。「地球礁」の塚山は、インディアンの墓場です。そこでは死人も生きてるのと変わりません。この小説全体に言えるのですが、死人も平気で生者の中に混じってます。
 
 「地球礁」というタイトル。これは地球という辺境に流れ着いたプーカ人、子どもたちの航海についてであると想像できます。ラファティは海のないオクラホマ州の生まれで、海軍に入って始めて海を見て魅せられたそうです。彼の作品の中にはよく海が出てくるそうです。
 
 彼の生い立ちや様々な書評で、なんとなくわかった気にもなってきますが、それは頭の片隅に留めるだけにしておいて、ラファティという不思議な作家が描いた世界をたゆたってみる、そんな読み方がいいのではないでしょうか。たぶん、彼は見たままの世界を書いているだけなんでしょうから!(2002.11.13)


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 4

愛はさだめ、さだめは死 (ハヤカワ文庫SF)

著者 : ジェイムズ,Jr. ティプトリー,ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア

出版社:早川書房

発売日:1987-08

評価 :

完了日 : 2002年11月09日

 まず、この作者であるティプトリーがスゴイ人物です。この本の前書きや訳者のあとがきに詳しいです。SF作家としてのティプトリーは「謎の作家」であり、ファンや批評家に「男性か、女性か」との論争があったそうです。ですが、本人の告白により女性と判明。さらに、経歴がまたスゴイ。冒険家の父と作家の母を持ち、小さい頃から広い世界を見てきた早熟な青春時代。それからCIAの設立に尽力したり、40代過ぎてから大学に入ったりしました。さらに、衝撃だったのが、病気で寝たきりだった夫を射殺。自分もそのベッドの上で自殺したのです。1987年、夫84歳、彼女は71歳でした。
 
 この本は12編から成る短編集です。全部紹介しきれないので、気に入ったものだけを。
 
 「楽園の乳」
<宇宙ステーションで暮らすティーモー。彼は人間に対して嫌悪感を持っている。それは幼い頃に遭難し、パラダイスという星で宇宙人に育てられたからだ>
別世界で生きた男には、自分の仲間の中では生きられない。本当の「楽園」とは何なのか?幸福とは?そんな問いかけのある一遍。
 
 「そしてわたしは失われた道をたどり、この道を見いだした」
<惑星の調査団にコネで選ばれたエヴァン。だが、満足する結果を出せずに悩んでいた。星を去ろうとするとき、彼はどうしてもある山が気になり、船を飛び出す>
この学者同士のいがみあいというか、確執がどうにもリアル。彼はある意味目的を達するのだけど…。真理を追うゆえに絶望を見てしまう悲劇。
 
 「接続された女」
<未来都市に住む醜い女。ある男からもちかけられた仕事は、絶世の美女(但し植物人間)の遠隔操作をする事だった。接続され感覚を共有し、商品の広告を始めるのだが>
ヒューゴー賞受賞の傑作。とにかくこの女性へのクールな筆致は、男性と誤解されるだけのことはある。「広告」というものへの痛烈な皮肉もあり、とにかく一読すべし!
 
 「男たちの知らない女」
<男の乗った飛行機が墜落する。その中には母娘と操縦士、あわせて4人が乗っていた。母娘に興味を持つ男。しかし、母親は不思議な行動を…>
女である事の悲しみが伝わってくる話。男性社会で生きてきたであろう作者の本音?しかし、この世の半分は、とにもかくにも「女」なんだけどなぁ。
 
 「断層」
<ショダール星で、男は喧嘩してショダール人の触覚をひっぱってしまった。裁判にかけられある刑を受けるのだが、本人に変化は無かった。だがしばらくして男の行動がおかしくなる>
これはとっても怖い「刑」です。時間という名の牢獄に閉じ込められる程怖い事はない。
 
 「愛はさだめ、さだめは死」
<生命体が生まれ、そして母と分かれ、新たなる生命を生み、そして…。運命は避けられない>
表題作。たぶん架空の生命体の話だけど、まぁ実際の動物などにもあてはまると思う。愛も運命も、そして死も、生命にプログラミングされたものなのでしょうか…。
 
 「最後の午後に」
<ある星に住み着いた人たち。ようやく生活の基盤が出来たころ、巨大な生命体が彼らの村を破壊しようとする。30年周期でこの土地で交配する種族だったのだ>
いやー、ここまでセックスを無気味に描けるティプトリーって一体…。これは男が書いたと思うかも。イメージ的には巨神兵みたいな感じかな(byナウシカ)「人間というものは、夢を実現させて、その夢に殺される動物だ。」は名言。(2002.11.9)


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 25

陰の季節 (文春文庫)

著者 : 横山 秀夫

出版社:文藝春秋

発売日:2001-10

評価 :

完了日 : 2002年11月07日

 この「陰の季節」は、連作短編集になっています。舞台が「D県警」なので、「D県警シリーズ」と呼ばれているそうです。「刑事モノ」といっても、この作品に出てくる人たちはいわゆる「捜査をする刑事」ではなく、管理職。人事で異動の季節に苦労したり、秘書として出世コースを狙っていたり…。異色の「警察小説」です。作者は新聞記者の経験が長かったらしく、県警というものを良く知っているのでしょうね。(本文にも「外部の記者の方が警察をより深く知っている場合も」といった内容のセリフがありました)
 
 「陰の季節」
【D県警のエース、二渡(ふたわたり)は、春の人事のために忙しい日々。ようやく決まりかけた時、意外な事が。天下り先を退職するはずの尾坂部が辞めないと言ってきた。理由を調査する二渡。そこには過去の事件が深く絡んでいた】
 シリーズ一作目。「人事」という部分から見た警察が新鮮ではあるが、筋立てはわりと一般的かも。しかし、様々な立場からの父親像が、心に沁みる。二渡はこの後もちょいちょい登場。かなり有力な人物のようです。
 
 「地の声」
【胃潰瘍のため、出世コースから外れてしまった新堂。署長になるはずが、監察課に異動してしまった。監察課とは、警察内部を調査する部署。ある日、匿名のタレコミ文書が届けられる。それは、警察内部から出たものと推測された】
内部告発者が上司や同僚を密告する事を「刺す」と言う。組織の中で、出世を狙うゆえにある陰湿なせめぎあい。警視昇進の最後のチャンスを控えた男、公安に戻りたい男、そして出世コースに戻りたい新堂。泥試合と言えばそれまでだが男同士の腹のさぐりあいが面白いです。心理ミステリにもなっていて、最後まで目が離せません。
 
 「黒い線」
【ある朝、一人の婦警が姿を消した。事件か、失踪か?彼女の書いた似顔絵で、犯人の早期逮捕に繋がったと賞賛され、新聞で報道されたつぎの朝だった。婦警を管理する七尾は、上司として女として、彼女を心配し、行方を探すのだが】
今度は婦警さんたち「女性」が主人公。強烈な男社会の警察で、女が仕事するのはとっても大変みたい。七尾は若い婦警を育てるために、女性の進出を露骨に嫌う上司や、人事部と渡り合うが、婦警失踪という事態に戸惑う事になります。七尾がつきとめた真実とは。部下の事を必死に考える、七尾さんみたいな上司が欲しい&なりたいです。
 
 「鞄」
【36歳にして、警務部秘書課の課長補佐、柘植。上司に「貸し」のある彼は、確実に出世コースを歩んでいた。県議会を控えたある日、議員が議会で「爆弾」を用意していると聞く。その議員は、過去に選挙法違反で摘発され、警察に報復する理由があった】
スリリングな一遍。一番驚いたのは、県議会の一般質問の原稿を柘植が議員に頼まれて書くシーン。ええっ、そんなに警察と密着してるのー?とビックリ。さらに、議会の時に後援会をバスで連れてきて、議員が発言している所を見せようとする…なんて、リアリティがある。爆弾とは「警察に対するウレシクない質問」のことです。汚職とかね。出世のために、どうしても「爆弾」を議員から聞き出したい柘植。しかし、それには意外な真意がありました。「地の声」で描写された警察の足の引っ張りあいがここでも生かされています。家庭も友人も、犠牲にしてきた柘植。最後に息子に「一人でもいい、友達をつくれ」とつぶやくシーンにホロリ。(2002.11.7)


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 3

琥珀の望遠鏡〈上〉—ライラの冒険III

著者 : フィリップ プルマン

出版社:新潮社

発売日:2004-06

評価 :

完了日 : 2002年11月03日

 前作の「黄金の羅針盤」「神秘の短剣」がかなり面白かったので、完結編はいったいどうなるんだろう…とワクワクしていました。ですが、ちょっと私の想像していたラストとは違ったみたい。人間の意識とはなにか?神というものは何か?という話になるかと思ったんですが、ラブストーリーへと突入してしまった。でもこれも重要な伏線だったんですけどね。
 
 ライラもただのワガママウソツキ娘(ここまで言うか)から、ウィルとの愛情と別れによって成長したんだなー。彼女はいきあたりばったりで行動してきたけど、これからは自分の意志で勉強したり経験したりして、生きていくのでしょう。
 
 そして、あいかわらずいい味だしているワキ役たち。今回の私のお気に入りはなんてったってトンボに乗った小さな人たち、シュバリエ(騎士)・ティリアスとレディ・サルマキア! アスリエルのスパイでありながら、ライラたちを助けてくれます。敵ですが、誇り高い人たちでカッコイイ!!

 そして、前回活躍した熊のイオレクと、気球乗りのリー・スコーズビーも活躍。とくに、スコーズビーの魂が解き放たれ、原子に還るシーンは良かったです。そうそう、この話のキモとして、「神の否定」があるんだと思うんだけど、キリスト教を信じる人たちにとって、人の魂が天国に行かず、原子に還るというのは結構衝撃的ではないかと…。ファンタジーでここまで「神とは」「世界とは」というテーマに挑んで成功している本は少ないでしょう。ですが、欲を言えばもう少しつっこんで欲しかった。ここまで広げた世界観がもったいない気がしました。(2002.11.3)


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 1

アンダーワールド〈上〉

著者 : ドン デリーロ

出版社:新潮社

発売日:2002-06

評価 :

完了日 : 2002年10月28日

 この本は装丁がとてもかっこいいですね!象徴的でもある貿易センタービルの前に教会が…。右手の方には鳥が小さく写ってます。コンテンツやサブタイトルの部分もシンプルかつカッコイイ。下半分が黒ってのもいい。そして、印象的なのが映画の「暗転」のように挟まる真っ黒いページ。これが中々効果的に入っています。
 
 内容は…。うーん、自分でも完全に理解したのかどうか自信ないですが。まず、物語はひとつのホームランボールから始まります。その野球場にはあのFBI長官、エドガー・フーバーも居ました。そして、ソ連の核実験も同時期に。月日は流れ、ボールは主人公であるニック・シェイの手に渡る…。こんな感じですが、話はもっと複雑です。
 
 「アンダーワールド」というタイトルからも分かるように、この小説のメインはアメリカという社会の影…廃棄物、核、銃、犯罪などの暗い部分が主役です。私が思うに、この小説にはデリーロが感じるすべてのアメリカが注ぎ込まれてるのではないでしょうか?事実、彼の小説では初めて、自伝的な要素が入ってるそうです。(デリーロは一時期イタリア人街に住んでたことがあるそうです)
 
 そして、この物語のもう一つ印象に残るのは「ブリューゲルの絵」。フーバーもお気に入りという設定ですが、この絵は…なんとなく、私には暗いイメージですね。これがデリーロのアメリカのイメージなんでしょう。(死の象徴?)他にもマチスの言葉だとか、絵画ネタは多かったかな。メインの人物にアーティストがいますしね。エイゼンシュタィンの映画を見るシーンもあったなぁ。
 
 テーマはとっても社会的で、人間のドラマが好きな人にはクールすぎるかもしれないです。でも、かといって人の心が描かれていないワケではないですよ。押さえめだからこそ、グッとくるシーンもありましたし! 親子、恋人、兄弟…。そんな人と人との絆も重要なファクターでした。
 
 とにかく厚いし、時間軸がバラバラなので混乱するし、アメリカの文化や近代史を知らない私には分からない部分が多かったですが、作者の意欲というか、この本にブチまけようとした何かがドカンと伝わってきました。もし、これから読む方がいたら、ちょっとメモをとる事をおススメします。この物語は、「すべては繋がっている」というテーマがありますから。そう、野球ボールから原子爆弾まで。(2002.10.28)


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 4

愛人(ラマン) (河出文庫)

著者 : マルグリット デュラス

出版社:河出書房新社

発売日:1992-02

評価 :

完了日 : 2002年10月06日

 いい意味で、思ってた内容とは違ってて面白かったです。この小説(というか映画)に、すっごい思い込みがありました。いや、きっと濡れ場ばっかりの映画なんだろうなと。だから、小説もそんなもんだろーなと思ってましたが、読んでみると違いました。
 
 主人公の「私」は、まだ15歳半ですが、家庭が異常な状態のため、小さい大人のようになってしまってます。この物語は、「私」と恋人との情事よりも、家族との葛藤の方が重要なテーマになってますね〜。とくに母親との確執でしょうか。
 
 ここで、ちょっと舞台となっているインドシナについて。解説によりますと、当時の仏領であったインドシナでは白人が支配階級なんですが、その白人の中でも裕福な家と、そうでない家に分かれています。
 
 デュラスの家族は、両親とも小学校の教師として赴任し、父親が生きていたころは校長でしたので、裕福な生活をする事が出来ました。ところが父親が死亡した事により、一家は困窮。さらに、払い下げ分譲地で現地に住む人たちをやとって生活しようと母親が買った土地は、塩だらけで使いものにならなかったんです。白人では最低ランクの生活に陥ってしまい、白人からは相手にされない。お母さんはそれでちょっと狂気に陥ってしまいます。
 
 そんな中、「私」は、黒いソフト帽子を冠り、金色のパンプスをはいているちょっぴりみんなと違う格好の不良少女になってます。そんな多感なお年頃で出会った10歳以上年上の彼。一気に深い仲へと発展してしまうのですが、相手は「裕福な」中国人。お互いの家族が許すはずもないのでした。
 
 男の方は「こんな恋はもう二度とできない」と父親に彼女とのことを懇願したりもするんだけど、「私」の方はそこまで熱心でない感じだったな。とにかく逃げ場が欲しかったのかもしれません。

 あと、私には「狩人の夜」(D・グラップ著/トパーズプレス/1300円)が作品内に出てくるのがかなり興味深かったです。この小説では、殺人犯に幼い兄妹が追いかけられるのですが、それを自分と2番目の兄に例えています。この小説では映画の方を引用してるのかな…。映画は名優チャールズ・ロートンが監督した名作です。(2002.10.6)


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 4

西瓜糖の日々 (河出文庫)

著者 : リチャード ブローティガン

出版社:河出書房新社

発売日:2003-07

評価 :

完了日 : 2002年10月03日

 「西瓜糖の世界」は、ユートピアと呼べる平和な世界です。みんなが「アイデス」(これは「iDEATH」と書くらしい。自己の死、という意味?)で争いも仕事もなく暮らしています。
 
 ですが、この世界のはずれには「忘れられた世界」があります。どうやら一度世界は滅び、その後に人々が「西瓜糖の世界」をつくりあげたようです。「忘れられた世界」には、あまり足を踏み入れようとはしません。
 
 とにかくフシギな設定ですよね。この「アイデス」は一時期流行った「コミューン」を彷佛とさせます。この小説が書かれた時、共同体という考えに憧れたり、実際体験したりしたアメリカの若者は多かったんじゃないかな〜。そりゃ確かに、美味しいもの食べてカワイイ女の子とつきあって、仕事も創造的な物であればいいでしょうけど…。なんだか今となってはかなり夢物語です。そういう部分が、現在のアメリカではこの作家が忘れられてしまった理由かも…。
 
 でも、日本の読者には今でも若い人々に人気があるそうです。それもわかる気がします。作者も日本好きで、「アメリカより日本の方が深く理解されるかもしれない」と作品について語ったそうです。夢幻的で、美しい世界は「ユートピア」というより、日本では「桃源郷」と言った方がピッタリくるかもしれません。
 
 ですが、ただ美しい世界というワケでもなさそうな「西瓜糖の世界」。なぜそうなったのかわからないが、荒涼とした「忘れられた世界」は、現代社会が滅んだ世界なのか?この共同体には子どもが少なく、子どもだけの墓地にはたくさんの墓が…。主人公の両親を食い殺した「虎」とは一体?など、無気味な要素も満載です。
 
 私は、「アイデス」を離れた男たちが集団自殺するシーンがめちゃ怖かった。自ら鼻や耳をそぎ落とすんですよ〜!!んで、その後モップで血を吸い取るシーンには目を覆いたくなりました。この物語に出てくる人々は、あまり人の死に関心がないのか淡々としてます。またそこが不気味…。
 
 初めて読んだブローディガンは、美しさと不気味さが入り交じった不思議ワールドでした。(2002.10.3)


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 1

土曜の夜と日曜の朝 (1979年) (河出海外小説選〈24〉)

著者 : アラン・シリトー

出版社:河出書房新社

発売日:1979-06

評価 :

完了日 : 2002年10月02日

 結構面白かった。青春小説って言っていい内容でしたね。主人公アーサーはお酒が好きで、オシャレが好きで、女が大好きな(笑)一般的な男です。冒頭シーンでは、お酒の飲み比べから始まります。土曜日の夜はパプでビールをしこたま飲んで、彼女のブレンダの元へ。ダンナのいない間の情事です。
 
 ここだけ読むと、困ったヤツだ、イギリス人には人妻好きが多いのか、と思ってしまいましたけど(だって、「アバウト・ア・ボーイ」もシングルマザー狙いの男の話)。主人公、アーサーの感情が読むにつれだんだんわかってきます。ブレンダのダンナはアーサーの同僚なんですが、彼にも好感を持っている。だが、妻を寝とられる奴は「間抜けなんだ」と反感も持つ。
 
 この作品の舞台である1950年代っていうのが、私にはよくわかってないんですが、1945年に第二次世界大戦が集結し、戦争が終わって安定した生活がおくれるようにようやくなってきたって感じです。アーサーの両親も、戦争中は食料も満足に買えなかったのに、今は気にせずに買えるようになった、と言うシーンがあります。アーサーも、十分に給料をもらえるようになり、家族にお金を渡して残りは賭け事や洋服に使う余裕があるようです。ですが、まだ徴兵はあるんですね。アーサーは軍隊がだいっきらいなんですけど、一定期間服役していました。
 
 人妻とばかり付き合ってきたアーサーですが、まだ若いドリーンと出会います。始めは考え方の違いから、衝突が多かったのですが、アーサーも人妻のダンナからひどい目にあったりして、だんだんとドリーンの方に心を移していくのでした。
 
 この小説が書かれた当時の若者の姿の代表がアーサーなんだろうな、と思います。現代から見ると、アーサーはそんなに悪い方じゃないでしょーね。女に手を出してダンナに殴られたりなんて、若さゆえ〜って感じもしますし。まぁ、多少古くなってしまった部分もありますが、青春小説として面白かったです。だんだんアーサーが身を固めていく…まぁ、言い換えれば大人になっていく姿が良かったです。(2002.10.2)


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 5

路上 (河出文庫 505A)

著者 : ジャック・ケルアック

出版社:河出書房新社

発売日:2000

評価 :

完了日 : 2002年09月24日

 この作品にはストーリーというものは特になくて、サル・パラダイスとディーン・モリアーティがビンボー旅行をして、その旅の途中に出会った人や、街などを書いています。映画なら「ロード・ムービー」って感じでしょうか。
 
 とにかくその旅の内容は無鉄砲というか、乱れてるというか。50ドルって当時の価値でどのくらいかわかりませんが、主人公はそれだけ持ってニューヨークから西海岸まで行こうとします。ヒッチハイクとか、途中でバイトもしたり。ヤクあり、行きずりの女あり…。解説を読むと、「ビート・ジェネレーション」という名前で呼ばれる世代だそうです。(命名はケルアック)この世代には、バロウズやギンズバークいう作家がいて、この「路上」では主人公サルはケルアックで、他にもバロウズなどがモデルの登場人物が出ています。
 
 ま、そんな背景を知るとちょっとこの物語を読む参考になりますよね。へー、バロウズってこんな人だったんだー、みたいな。あ、でも彼がモデルのオールド・ブル・リーってあんまり出番ない。すごいヤク中だった。でも、ちょっと冷めてるというか、悟ってる部分もあったかな〜。
 
 私にはちょっと長く感じました。一つの旅じゃなくて、4回くらい旅をしてるんですが、ダラダラしてるかなーって(そのダラダラ感がいいといえばいいんですが)。ですが、この本って時々すっごいいい文章があるんです。盲目のジャズピアニスト、ジョージ・シアリングが演奏するシーンなんてかなり良かったです。「ディーンが主のいないピアノの椅子をさして『神様の空席だ』と言った」とことか。カッコいいですねぇ。音楽を演奏してるシーンでこんなにゾクゾクするとは。
 
 最後の文章も素晴らしかった。ああ、終わったんだなぁ〜って感慨深いものがありました。この本って、なんというか一度読んでから、お気に入りの部分を読み返すのがいいのかもしれない。大きな流れがある話じゃないから、どこから読んでもいいと思うし。
 
 旅行記としては、こんなに刹那的な旅行は私はカンベンって思いますけど。男たちは勝手だしなぁ…。ディーンは女とっかえひっかえだし。サルはテリーといういい女がいて、すごくいい関係だったのに置いていっちゃうし!(このテリーとの話でこの本にハマることが出来たのに)まぁ、「路上」で出会った行きずりの関係に過ぎないのかもしれません。
 
 最後に。サルがハマってたアップルパイのアイスクリーム添えは美味しそうでした。あと、メキシコのトルティーヤも!素朴で美味しそうだった。食べたいなぁ…。(2002.9.24)


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 1

ダブル/ダブル

著者 :

出版社:白水社

発売日:1990-02

評価 :

完了日 : 2002年09月16日

 この本は、リチャードソンというカナダ人が編んだアンソロジーです。あるテーマにのっとって集められた物語。そのテーマとはタイトル通りズバリ「双児・分身・鏡・影」など「一人が二人、二人が一人」な物語。
 
 アンデルセン「影」
学者の影がある秘密の部屋をのぞいたことから人間のようになってしまうお話です。秘密の部屋から音楽が流れてくるのを聞く学者ですが、そこの描写が怖い。「誰かが練習しているようなんですがね、同じ曲を何度も何度も。弾き終えたためしがない」うーん、無気味だ…。アンデルセンってそう言えば童話も暗いかも…。
 
 ルース・レンデル「分身」
ある女が自分の「ダブル」(いわゆるドッペルゲンガー)を見て、そこから女と結婚する予定の男は彼女に似た女にも心惹かれてゆく。女性作家ならではのバサッとした展開がいいですね。(抽象的ですみません)
 
 トンマーゾ・ランドルフィ「ゴーゴリの妻」
作家ゴーゴリの妻は実は精巧なビニール製だったというスゴイ話。最後のオチもまたびっくり。現実のゴーゴリの人生もかなり変ったものだったそうです…。
 
 ジョン・バース「陳情書」
シャム双生児の話。なんとなく映画「サンタ・サングレ」(ホドロフスキー監督)を思いだした。(この映画はシャム双生児の話ではないんですが)
 
 ポール・ボウルズ「あんたはわたしじゃない」
これ、かなりお気に入り。女が列車事故をきっかけに精神病院から脱走。列車事故という「死」にも無関心な女の冷静さが怖いです。ラストのグルッと入れ代わる感じもいい。映画化したら面白そう…。
 
 グレアム・グリーン「被告側のいい分」
双児が犯人で、証人がはっきり証言できなくなる話。そーいえば、最近似たような事件ありましたよね。双児の兄弟が犯人で、釈放されたってニュース。
 
 スーザン・ソンダク「ダミー」
いわゆるパーマンのコピー・ロボットの話(^_^:)。あれ、私も欲しかったよ。「この世界の問題を解決するには2つの方法しかない。抹殺か、複製かだ」
 
 エリック・マーコック「双子」
一人の人間の中に、2つの人格が入ってるために声が「いっこく堂」状態になってる子どもの話。文字の並べ方がすごい。これは見てもらうしかない(笑)
 
 フリオ・コルサタル「あっちの方では--アリーナ・レイアスの日記」
回文がモチーフになってるのが面白い。この作家、映画「欲望」(アントニオーニ監督)の下敷きになった「悪魔の涎」も書いてるのね。この作品読んでみたい!
 
 アドルフォ・ビオイ=カサーレス「パウリーナの思い出に」
愛しあってると思った恋人が、別の男のところへ。傷心から立ち直って帰った男のもとに彼女があらわれて…。げに恐ろしきは男の嫉妬。「去年、マリエンバートで」(アラン・レネ監督)という映画が好きなんですが、この作者が書いた「モレルの発明」という作品がヒントになってるらしいです。知らなかった。なんでもホログラフィーに恋する男の話らしいです。
 
 その他モラヴィア「二重生活」、オールディス「華麗優美な船」、ブラックウッド「二人で一人」も面白かったです。(2002.9.16)


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 2

ハイ・フィデリティ (新潮文庫)

著者 : ニック ホーンビィ

出版社:新潮社

発売日:1999-06

評価 :

完了日 : 2002年09月15日

 ホーンビィの第一作「ぼくのプレミア・ライフ」ではアーセナル狂の自伝を、第二作のこの作品では、ロック狂のロブを主人公に(作者の一部分と思われる)しています。いやいや、このロブの言い分を聞いてると、女性としては「えーかげんにせいや!」と後頭部をドツきたくなる男です。
 
 まず、冒頭は過去にフラれた女性のトップ5から。自分の好きな曲のトップ5を作るのが好きなもんだから、失恋のトッブ5も作ってしまいます。初恋から最近まで。良く覚えてるなぁ…ロブ。
 
 彼女が出ていって、もちろん寂しいとか、帰ってきて欲しいとか、そんな気持ちもあるんですが、ロブは彼女が新しい男とセックスしたかの方が気になってしまう。ローラに会ってその事を問いただし、「まだ」だと聞いて安堵する…。いや、そーいう問題じゃないでしょう〜と言いたくなりましたよ。
 
 しまいにはストーカー気味になったりして、とことんサイテーなロブですが、過去を振り返り、自分について考え、少しだけ前に進むようになっていきます。すごく成長して、問題はすべて解決!というわけではないのですが、ロブなりに生きていこうとするラストには好感が持てました。
 
 一つ面白いシーンがありまして、ロブがある家のレコードコレクションの買い取りに行くのですが、それが素晴らしいコレクションで、かなりの値段だろうと思いきや、はした金で引き取ってくれと女は言う。なぜかというと、そのコレクションは女のお金を使って男が集めたもので、その男は今別の女とバカンスへ…。その腹いせでレコードを処分するつもりなのです。いたたまれないロブは、1枚のレコードを買って帰ってしまいます。レコードを愛する者としてたまらないものがあったんですね。私もロブの立場だったら…辛いなぁ。欲しい本がいっぱいあっても、売られてしまったコレクターの立場を考えるとね。帰ったら本棚カラッポだったら、泣くに泣けない。
 
 音楽好きはもちろん、なにかを集めて夢中になった事のある人、そして特に男性にオススメの一冊です。やはりマニアは男性に多いですしね。(2002.9.15)


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 2

アバウト・ア・ボーイ (新潮文庫)

著者 : ニック ホーンビィ

出版社:新潮社

発売日:2002-07

評価 :

完了日 : 2002年09月02日

 主人公は独身貴族ウィルと、ロンドンに引っ越したばかりで、学校でいじめられてるマーカスです。この2人の視点で語られた章が交互に出てきます。2人はそれぞれ別の意味で孤独です。ウィルはお金はあるけど、家庭というものをもってない、仕事も持たないので、「自分の人生はカラッポ」だと思っている。30分を1コマと数え、午前中の予定をつぶすのがせいいっぱい。(うらやましいヤツ)遊びも女も映画も読書もひととおりやっているけど、どれも満足していない。
 
 「やるべきことはありすぎるぐらいにある。自分の人生を生きる必要などない。フェンスの向こうを覗いて他人の生活を盗みみればいい」
 
 これはウィルのセリフなんですが、ちょっとドキッとしましたね。小説でも、映画でも、ドラマでも、もしそれだけで生きるとしたら、それは自分の生活をしていないんじゃないかって。自分の生活があればこそ、読書や映画は楽しいものなんでしょう。
 
 そして、マーカスは元ヒッピーの母親に育てられたせいか、他の子供とちょっと感性が違う。格好も母親の好みなので流行遅れ。そんな事もあって学校ではイジメのターゲットです。しかし、母親は落ち込み気味なので頼れない。
 
 そんな「2人の男の子」が、なぜか知り合って、変化していく。特に大きな事件は起こらないのですが、それぞれ成長(もしくは退化)していき、「今のままでも十分ひどい世界」となんとか折り合っていこうとする。
 
 あまり明るくもない現実を生きる人たちが、それなりに希望を見い出していく姿がささやかに心に響く、いい作品だと思います。ほんの小さな悩みでも、本人にとっては大変なことだし、小さな望みでも(あの人ともう一度デートしたいとか、まだ読んでない本があるとか)人は十分生きていけるのかもしれないですね。(2002.9.5)


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