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ぎんこさんの読書ノート

2002年読んだ本
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 1

貴門胤裔〈上〉

著者 : 葉 広〓

出版社:中央公論新社

発売日:2002-04

評価 :

完了日 : 2002年09月02日

 まずこの本の作者について書かなければなりません。作者のイエ・グワンチンは清朝の有力貴族の末裔で、西太后が大伯母という世が世ならお姫様というお家柄。す、すごいです!しかし、世の中が変り、彼女も大変な苦労をしたそうです。文革中には農場で過酷な労働を強いられるなど、辛い日だったようです。ですが、ド根性で日本語を学び、日本の千葉大学に留学するなど、いつでも向学心を持っていたんですね!
 
 そんな彼女が自らの家族をモチーフといて書いたのがこの作品です。自分の父親とその妻+妾2人、そして兄弟7人+姉妹7人の大家族!貴族として何不自由ない暮らしをしながらも、兄弟たちは身を滅ぼすものや血をわけた肉親なのに争うことになったりします。そんなエピソードを9章にわけて書いています。始めは人間がこんなにいたら覚えられない〜と思ったんですが、みんな個性的なので混乱はしなかったですねー。
 
 戦争や革命で失われつつある中国の過去の遺産。貴族の末裔である作者でしか書けない部分がたくさんあるのでしょう。風水や骨董品の話は理解できない部分もありましたが、当時の貴族の生活を目に浮かぶように描写していたと思います。
 
 私は当初、ノンフィクションなのだろうと思ってましたが、あとがきを読むとそれは違うようです。主人公が末っ子で小説家という共通点はありますが。ですが、読んでいると「これはきっと本当にあった事なのだろうな」という部分が見える気がするのです。かえって、事実をありのままに書くよりも、作者が色々見聞きした話を虚実入り交ぜて描いてあるのが面白かったですね。一枚薄いベールがかかっているかのようです。事実はその向こうから見え隠れしている…。
 
 第二章の最後の文章がいいんですよ。すべての災いが一つの他愛ない悪意から始まったと聞き、呆然とする家族。そんなみんなに母親が言う。「悲しむのはおよし。完璧な人間など、誰もいやしない。羹にはかならず味の薄いところがあり、至宝にも必ず傷があり、長い手紙にも言い足らぬところがあり、最良の職人にもおよばぬところがあるという。…(中略)おのれの生きざまに従ってこの世を歩いてきたのです。それでいいではないか!」
 
 おのれの生きざまに従って生きた家族たち。その物語はとっても魅力的でした。(2002.9.2)


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 2

未亡人の一年〈上〉 (新潮文庫)

著者 : ジョン アーヴィング

出版社:新潮社

発売日:2005-08

評価 :

完了日 : 2002年08月30日

 この本の登場人物って、ほとんど作家なんです。それぞれジャンルは違うんですけど。ルースの父親、テッドは児童文学で、挿し絵も書く。ルースは国内でも海外でも評価の高い純文学。そして、エディもイマイチ売れない作家です。
 
 人間はまったく0から創造出来ないものです。当然作家も体験したり調べたりしたことしか書けない。ルースも意識しないうちなのか、両親が出ない、友人の性格がモデルになりがち…という部分を抱えています。エディなんて、いつもいつもマリアンとの恋をダブらせて書いてばかり(だから売れないみたい)。そんな「小説を書く」部分は、アーヴィングもこんな体験あるのかなと思えてしまいます。
 
 この本の中では、各登場人物が書いた小説も合間に挟まれています。女タラシですが、ルースのお父さんが書いた文章が一番私は面白かったです。
 
 そして、この小説は「愛」がテーマといってもいいくらい、いろいろな「愛」が出てきます。みんな、それぞれコンプレックスを抱えていて、そこから抜け出すことが出来ません。たくさんの紆余曲折をへて、ルースとエディが過去に失った愛情を得るラストは感動的でした。また最後のセリフがいいんです。
 
 しかし、アーヴィングって女性書くのウマいなって思います。マリアンなんて、とってもステキなんですよ。服の描写とかもいいしね。私が男だったら、マリアンみたいな女にホレないワケがない!と断言できます!(2002.8.30)


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 1

アメリカン・サイコ〈上〉 (角川文庫)

著者 : ブレット・イーストン・エリス,小川 高義,Bret Easton Ellis

出版社:角川書店

発売日:1995-02

評価 :

完了日 : 2002年07月29日

 この本にストーリーとかオチとかはありません。
ひたすら主人公、ベイトマンが自分やガールフレンドの服のブランドを並べ立てたり、どこどこのレストランの予約が取れただの、オーディオ製品のウンチクだの言ってばかりです。
 
 ベイトマンは金も、名誉も、女も思いのままです。仕事は一応会社には行ってますが、顔を出す程度。それでも会社に行く理由は「デキるサラリーマン」の肩書きが欲しいだけ。ランチや会議付きの朝食に出るくらいしか仕事もしてないようです。
 
 これ以上望むべきこともない生活ですが、彼はブランドの服を着ることによって自分の地位を確立したいだけで、特に好きなわけではないって気がします…。そして、暇つぶしのように行ういきあたりばったりの殺人。ホームレスをいきなり刺したり、気に入らない男を殺して、外国に行ったかのように偽装したり…。そして、コールガールや偶然会った昔の彼女をそれはそれは残酷に殺します。殺すだけでは飽き足らず、異常な行動をとっても冷静にやりとげる姿はホンット怖いです…。
 
 普通のこーいった小説って、どんな冷酷な犯人でも、何か過去にあったとか多少は感情移入できるようになってたりするんですが、この「アメリカン・サイコ」では、とっても淡々としてる。ベイトマンは自分のしてる事を説明するだけ。だから一層無気味です。彼にとって、殺人は異常なものではないんですよ。ブランド買うのと一緒ぐらいかもしれない。この無関心さというか、空虚さがベイトマンの本質…なんでしょうか。だって、もし「事件を隠そう」とか思うなら、血のついたシーツをクリーニングに出したりしない! これがまたゾーッとしたなぁ…。自分の犯行にも無関心なのか、コイツって。
 
 作者のエリスは、この作品でかなり叩かれたらしいですね。
書いたのは1991年で、もう10年以上も前ですが、今読んでも十分衝撃的です。それは殺人の凄惨なシーンもありますが、物質社会の成れの果てや性的欲望の行き着く所などを暗示しているからだと思います。物は十分持っているのに、心はカラッポ…。誰の中にも「プチ・ベイトマン」がいるからこそこの物語が反感を買い、そしてどこか引かれるのかもしれません。(2002.7.29)


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 3

ミスティック・リバー (ハヤカワ・ミステリ文庫)

著者 : デニス ルヘイン

出版社:早川書房

発売日:2003-12-20

評価 :

完了日 : 2002年07月21日

 「もし、あの時こうしていたら…」と思うことは多いですよね。例えば、好きな人にもっと早く告白してれば、とか、あと何分か違えば、事故に会わなかったなど。この「ミスティック・リバー」では、一つの事件が根底に流れています。それは、デイブの誘拐事件。この物語でははっきり語られていませんが、彼は4日間にわたって性的暴行を受けていたのです。その事件が、残された2人も、デイブ本人の心も蝕んでいきます。
 
 デイブを誘拐した犯人は3人いた少年のうち、デイブだけを選んで誘拐した。その事が大人になった今でも「なぜ自分だったんだ」「なぜあの時デイブを助けなかったのか」「もし自分が乗せられていたら…」と後悔させるのです。この事件が、彼らの現在の生活にも暗い影を落としています。
 
 3人の主人公は、そのせいか誰一人として幸せではありません。そして愛する人を失い苦しむ。立場は違っても、3人は過去の事件、そして現在起こっている事件から立ち直れずに苦しみ続けるのです。それがまた新たな悲劇を生む。暗いです。
 
 この黒い表紙にもそんな内容が表されているのかなぁ…。暗い場所に足を踏み入れた3人の絵。結末も、それは出口のない悲しさがありました。しかし、それは誰の身にも起こりうることなのかもしれません。(2002.7.21)


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 1

夜の魂―天文学逍遥 (プラネタリー・クラシクス)

著者 : チェット・レイモ

出版社:工作舎

発売日:1988-04

評価 :

完了日 : 2002年07月07日

 作者は天文学者で物理学者。この本は宇宙についてのエッセイです。と、言っても最新の宇宙理論を説明するような本ではなく、自然の植物や動物、古代の人々がどのように星を見ていたか、さらに詩や文学にからめて美しく、分かりやすく書いてあります。(詩人が多いけど、トールキンやアシモフにちょこっと触れてる部分もあったり。多岐に渡ってます)
 
 たとえば11章の「池の中の怪物」では、近所の子どもたちが釣ろうとする「沼の主」の魚から話は始まり、銀河の中心に無気味に存在するブラックホールの話になったり。他にもオデュッセウスに出てくるスキュラという怪物の話や、「白鯨」の鯨、モビーディックも出てきたりします。それぞれがブラックホールに例えられているのかな?
 
 あと、銀河系の模型の話が面白かったですね。例えば、塩ひと粒が平均的な恒星の大きさとすると、塩一万箱をうずまき状にバーッとひろげる。すると、その模型を広げる円盤の大きさは地球よりも大きくなっちゃうんですよー。銀河系って、そんなに大きいんですねぇ。
 
 作者は「夜空を観測する技術は、50%が視覚の問題で、50%が想像力の問題である」と言います。そういえば、昔私は小熊座がどうしてもクマには見えなかったな(笑)。北斗七星はホントに柄杓に見えると思ったけど…。最近星を見ることも少なくなってきました。作者は中国の陶潜という詩人の言葉書いています。
 
「私は全宇宙を一望する。こうした楽しみを味うことのできない人は、永遠に幸福になれないであろう」
 
 宇宙のどんな星でも、地球でも地上に生きる生き物も、たった92の元素の配列から出来ている。そう思うとなんだか不思議な気持になりませんか?
 
 20章にわかれてあり、一つ一つが短いのでナイトキャップのように読むのがオススメです。(2002.7.7)


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 14

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

著者 : 村上 春樹

出版社:新潮社

発売日:2002-02

評価 :

完了日 : 2002年07月01日

 この作品は、6つの短編で構成されてます。いずれも1995年1月に起きた震災がテーマになっております。有名な作品ですから、今さらここで書く必要もないでしょうが…。そーですね、まず装丁が私は結構いいと思います。単行本の時も良かったですが、文庫もその味わいを崩してないし、カバーや挿画に使われている絵もいいです。
 
 総ページ数は270P強で、さくっと読むことが出来ました。
村上春樹の作品はリズムがいいと聞きます。長過ぎず、かといってブツ切りでもない文章は心地よく読むことができるので、負担になりません。
 
 でも、あえて言うなら、「震災」というヘビィなテーマを選択したわりにはどこか迫るものがない気がするなぁ。あの日は地震を経験していない人にもかなりの衝撃だったですよね。もちろん作者もその一人で、この作品を書いたきっかけなんでしょうけど…。この作品の人物は、重要な部分から少し離れている気がして、ぐっとくる部分が少なかったなぁ。
 
 私の好きな短編は
「かえるくん、東京を救う」
ある日、男の前に「かえるくん」があらわれる。どうみても蛙の「かえるくん」は、自分とともに東京を救って欲しいと男に訴える…という話。ちょっと突拍子もない話だけど、かえるくんの冷静で知的な会話がステキ。ブラックコメディみたいな赴きが好きだな。
 
 そんで、やっぱり「蜂蜜パイ」。
この作品は、NYのテロ後にNY タイムズ紙に掲載されたそうです。大学生の時、男2人に女1人という典型的「突然炎のごとく」から「ドリカム」へと現代に続く恋愛もの永遠のパターンの3人。2人は結婚し、作家の男は女に好意を抱きつつ独身。ところが夫婦は破局し、作家は微妙な立場になる。この作家は作者を少し投影してるかなぁ?解決できない想いを抱えつつも、守るべきものを守ろうと決意するラストは明るさを感じられて良かったです。(2002.7.1)


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 1

シネロマン

著者 : ロジェ グルニエ

出版社:白水社

発売日:2001-10

評価 :

完了日 : 2002年06月10日

 この物語の時代は1930年代。映画の古き良き時代です。舞台となるマジックパレスは三流映画館ゆえ、マイナーな作品ばかり上映しています。ですから、あんまり映画に詳しくない私にはタイトルを聞いてもどんな映画かさっぱり…。名前は聞いたことあるんですけどね。ローレルとハーディとか。
 
 ですが、そんな事知らなくてもこの本は十分楽しめました。
46の断章の中に、映画のエピソードやローラン家の一人息子、フランソワの恋や田舎の人間模様がちりばめられていて、それが「マジックパレス」という一つの映画のように繋がっていきます。読者は、今ハヤりのジェットコースター的展開ではなく、流れるようなストーリーに身をまかせる楽しさがあるんです。
 
 フランソワ少年は嫌々ながらも、映画の映写技術を学んだり、同級生に見られるのがイヤだけどチラシを配ったりと大変そうですが、それでもちょっとウラヤマシイ!「シナリオ」と呼ばれる映画会社の宣伝用パンフレットを眺めたり、当時はまだ珍しかったカラーフィルムを誰もいない映画館で上映するのはいいなぁ…。私もしたいです。
 
 グルニエはチャップリンの映画「ライムライト」を元に小説を書いているそうです。この映画では制作当時では落ち目のバスター・キートンとチャップリンが共演するシーンがあるのですが、この「シネロマン」を読むとグルニエがなぜこの「ライムライト」を書いたのか、わかったような気がしました…。チャップリンの役どころも、昔は売れていたが時代についていけなくなった道化師ですからね。
 
 映画が芸人の技でなりたっていた時代のノスタルジーに溢れ、それでいて甘くなりすぎないところが良かったです。作者の映画への愛がやわらかく伝わってきました。
 
 きっと昔には日本にも「マジックパレス」のような映画館はたくさんあったでしょうね。いやいや、きっと探せばいまでもあるはず!小さな映画館で昔の映画を見るのも楽しいものです。(2002.6.10)


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 2

夜になるまえに

著者 : レイナルド アレナス

出版社:国書刊行会

発売日:2001-09

評価 :

完了日 : 2002年06月08日

この本の作者のアレナスは「めくるめく世界」「夜明け前のセレスティーノ」などの作品で現代文学を代表する作家でありながら、カストロ政権下で同性愛者という理由で迫害を受けアメリカに亡命。その後、 エイズで死期を悟り、90年に鎮静剤を大量に飲んで自殺しました。
 
 そんな壮絶な人生を送った作者が、死を前につづった自伝がこの本です。「夜」というのは眠ってしまう時…つまり「死」を意識してのタイトルだと思います。
 アレナスは1943年にキューバの寒村で生まれました。この本では彼の幼少時代から語られますが、なんというか…。いきなり男の裸で目覚めちゃったり(^_^;)まだ8才ぐらいなのに…。は、早い性の目覚めです。それに動物と関係を持ってしまったり…作者によると、25才の時には5000人の男と関係を持ったそーです。
 
 ところが、キューバ革命が起きてカストロ政権下に置かれると、同性愛者というのはかなり困った立場に追い込まれます。それに作家で海外で認められたアレナスは、当局に目をつけられる存在。密告が横行し、アレナスも友人から何度も裏切られます。そしてついに刑務所へ投獄。その刑務所がまた凄まじい。
 
 高温のスチームの中に入れられて拷問されたり、いつ看守に殺されるともしれない生活。そんな中で、アレナスは差し入れの「イーリアス」を離さない。離せば盗まれて囚人のトイレットペーパーにされてしまうから…。
 
 そんなキューバからアメリカに亡命するのですが、彼の心はどこか空白があるような気がしました。自由を求めて亡命してきたが、いいことばかりではなくて、出版代理人が彼の印税を払ってくれなかったり。それに、エイズも発病してしまいます。
 
 何ものにもとらわれず、孤独なアレナス。彼にはもう「死」しか自由は無かったのかもしれません。帰るべき故郷にも帰れない。「自由なキューバ」をなによりも望んでいたのではないかなぁと思いました。「自由なアメリカ」ではなく。(2002.6.8)


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 1

シッピング・ニュース (集英社文庫)

著者 : E.アニー プルー

出版社:集英社

発売日:2002-02

評価 :

完了日 : 2002年05月17日

 ピュリッツアー賞・全米図書賞W受賞して、さらに映画化もされました。(アカデミーにはノミネートされなかったが)。ですが、非常に地味〜なストーリー。読み終わって、「こりゃー、映画化は難しいな」と思ってしまいました。殺人などの事件も起こるんですが、それが特に重要なエピソードになるわけでもなし。とにかく、クオイル一家や新聞「ギャミー・バード」の記者たちの日常が丁寧に描かれています。
 
 そして、クオイルよりも主役ともいえるのが、彼の住む土地であるニューファンドランド島。この島を描ききることがこの作品のメインといっても差し支えはないと思います。厳しい寒さ、「去っていくものはいるが、戻ってくるものはいない」寂しい土地。だけど、マイナスの部分だけでなく、愛すべき部分もあったり…。そんな島の光や影を読んでいて感じました。私はこの島がどんな島なのか全く知らないのですが、一度見てみたいなぁ〜。映画はその点はいいかもしれないですね。
 
 クオイル家の暗い過去や島の犯罪として、児童虐待もモチーフとして書かれているんです。正直そーいう話は私には辛かったなぁ。そのへんは読むのがキツかったかも…。
 
 あと、食いしん坊の私が気になったのは、食べ物だぁ〜! イカバーガーとはどんなものなのか!そして、アザラシのヒレの肉のパイとは?鱈のチャウダーは美味しそうですねぇ…と、興味は尽きないのでした(^_^;)
 
 淡々としたストーリーですが、スルスルっと読めます。私見ですが、アーヴィングが好きな方は読んでみてはいかがでしょうか。少し似てる気がしました。(2002.5.17)


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 1

氷上旅日記―ミュンヘン‐パリを歩いて

著者 : ヴェルナー ヘルツォーク

出版社:白水社

発売日:1993-02

評価 :

完了日 : 2002年04月22日

 作者は「ニュー・ジャーマン・シネマの旗手」と言われるドイツの映画監督。その作品は、なんというか…かなり偏執的で一部のマニアを唸らせています。私の好きな作品は「アギーレ・神の怒り」(1972年)「カスパー・ハウザーの謎」(1974年)かな〜。近年、東京でもリバイバル上映されてました。
 
 そんなちょっと変った映画監督の作者が、友人ロッテ・アイスナー(ドイツの新しい映画人の育ての親)が重病だと聞く。「それも今の今こそ、かけがえのない人じゃないか。あのひとを死なせるわけにはいかない」。そしてヤッケとコンパスを持ち、「ぼくが自分の足で歩いていけばあの人は助かるんだ」と信じて、ミュンヘンからパリまで歩いていくんです。この本は、そんな旅のメモをまとめたものなのです。
 
 そんな妙な思い込みで始まった旅。しかし、本人は本気です。そう、これは巡礼の旅なのかもしれません。旅の中で、作者は幻想をたびたび見ます。そのイメージは、やはり映画と重なるものが…。そんな幻想と風景の描写が交互に書かれるので、どこからどこまでが現実かわかりゃしない!実はこの本は再読なんだけど…。やっぱり読みにくかった。集中して読まないとワケわからなくなっちゃいます。
 
 でも、その幻想と静かな狂気が、惹かれるんですよー。本人は非常にマジメな人らしく、故・黒澤明に会った時、「会った時渡したい本があるんだけど、今日出発しなくてはならない」って言ったのに、次の日もいたんだって。どうしているの?と黒澤が聞いたら「飛行機をキャンセルしてその本を渡したい。見つけたから」って言ったそうです。彼がそこまでして黒澤に渡したかった本ってなんだか気になる所ですね。こんなエピソード聞くと、「なんだかカワイイじゃないか」と思ってしまう。(映画はヘンだけどね…)
 
 最後にアイスナーに会った時の文がいいんです。「ほんの一瞬のあいだ、死ぬほど疲れきったぼくの体のなかを、あるやさしいものが、通り過ぎていった。ぼくは言った。窓を開けて下さい、何日か前から飛べるんです」これを読むだけでも、一読の価値はあると思いました。(2002.4.22)


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 3

神秘の短剣 (下) ライラの冒険II

著者 : フィリップ プルマン

出版社:新潮社

発売日:2004-01

評価 :

完了日 : 2002年04月17日

ライラの冒険シリーズ第2巻です。と、いっても続きものになっている1つの話です。この小説の中では、世界はたくさん存在していて、ライラが住むのは私たちと同じようでかなり違う1つの世界。この巻では、私たちの住む世界が舞台になっています。
 
 1巻でライラは別の世界への扉を見つけて旅立ちました。そして、第2巻ではチッタガーゼという街に辿りつきます。ここは多重世界の交差点のような街。ライラの世界とも、私達の世界とも違う場所。そこで私たちの世界の少年、ウィルと出会います。
 
 このウィルという少年が…。これまた不幸! この小説には不幸な子しか出ないのかしらん?と思ってしまう(^_^;)父親は失踪、母親は精神的に不安定で、母親を守るためだけに生きてきたのだが、謎の男たちに狙われはじめ、偶然(でないかもしれないが)に「別の世界への扉」をくぐり、チッタガーゼに入ってしまったのです。
 
  ウィルは父親を探すこと、そしてライラは「ダスト」という謎の粒子と「真理計」が指し示した「ウィルの父親を探すこと」を信じて2人は協力するのですが…。
 
 さて、この「ダスト」。ライラの世界ではそう呼ばれていた物質なのですが、私たちの世界では「ダークマター」と呼ばれているのです。これは宇宙の大部分を占めるという物質。この小説の中では、マローン博士が研究し、この中の「シャドー粒子」に「意志」がある事が発見されています。(面白いことに、この博士は元修道女であったりする)
 
 博士が「シャドー粒子」を解析するコンピューターを作っているのですが、それはどうも「真理計」と同じ理屈らしいんですよ。このへん面白いです。ファンタジー世界での「魔法」と思われていた部分が科学に置き換えられるんですねー。
 
 「ライラの住む世界」と「私達の住む世界」は、違う世界で単語は違うけれど同じ「ダスト」「ダークマター」と呼ばれるものが存在するという設定なんです!そしてこの物質は人類の進化にも関与している…?これは…「神」なんでしょうか??
いや〜、やっぱこのへんSFでしょう。これ。
 
 そして、「ダイモン」というライラの世界の人間は必ず持っている守護精霊。私たちの住む世界の人間は持っていませんが、ライラは「ダイモンがいないのではなく、内部にいる」と言います。ロジャーが言うように、「デーモン」に発音の似た「ダイモン」とは人間の精神?なんでしょうか??
 
 一方、今回は出番なし、のアスリエル卿(前回、別の世界への扉を開いた男)は「教会」に戦いを仕掛けるのかと思いきや、もっと大きな「神」?に戦いを挑むために準備を開始。さまざまな世界から物資や兵隊を集めている…。すべてを切り裂く「神秘の短剣」も彼のもとに届けられるのか?そして「重要な子供」ライラはどんな役割を果たすのか?様々な疑問を残したまま、次巻に続くのでした…。
 
 いや、ホント…これ?ファンタジーなんですか?(しつこい)
人間の進化や精神という問題に挑む、でっかい作品という事は確かなようです。(2002.4.17)


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 1

新版 指輪物語〈1〉旅の仲間 上1 (評論社文庫)

著者 : J.R.R. トールキン

出版社:評論社

発売日:1992-07

評価 :

完了日 : 2002年04月17日

 映画化された「指輪物語」は、現在本屋でベストセラー。なんでも、今までに売れた本の数と、ここ数カ月で売れた本の数は同じぐらいだそーです。…たしかこの本って30年ぐらい前に発売されてるんですよね。
 
 そんな人気にあやかって、私も遅まきながらこの壮大な物語にチャレンジしてみました。そして、かなりハマりました。この物語は子供の頃に読んでも面白いでしょうが、大人が読むともっと理解できる本だと思います。なぜならこれは「喪失」の物語だからだと私は思います。
 
 この物語は主人公であるホビット族のフロドが、親戚で父のような存在のビルボに「一つの指輪」という冥王サウロンの作った呪われた指輪をゆずりうけ、それを捨てる旅に出るところから始まります。
 
 私がまずこの物語にシビレたのは、「一つの指輪」を得て化け物になってしまったゴクリ(映画ではゴラム)のエビソード。このゴクリからビルボは指輪を奪うのです。そして、その指輪が実は強大な力を持つ指輪だとわかり、譲りうけたフロドは恐れてガンダルフという賢者に言う。「ゴクリがすべてを憎み、指輪も憎んでいたのならなぜそれを捨てなかったのか…」と。それに答えてガンダルフは「かれはそれを憎み、愛したのじゃよ。自分自身を憎み、かつ愛したように」
 
 …深い。私はこの部分を読んだ時、感動しましたよ。「所有欲」というのは、愛の一部分ですからね。この話はファンタジーですが、決してこの世に存在しない生き物の話でなく、人間の心を描いた話なんだ!と思いました。
 
 指輪を巡るダークな愛、もあれば、旅に出たフロドには「仲間」と言う情愛にも出会います。ホビット・人間・エルフ・ドワーフ・賢者という指輪を処分するための混成部隊(これはまさに現代のロールプレイングの元ネタ)で、彼らはビンチに落ち入ったり助けあったりしながら、友情を深めていく…。ああ、これぞ冒険!
 
 しかし愛とはいつか終わり、壊れるもの。この物語も部隊の崩壊で第一部は終わります。仲間の裏切りと死により、指輪混成部隊はまっぷたつに。先が気になる所で次巻に続く!です。(2002.4.17)


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 1

上海の西、デリーの東 (新潮文庫)

著者 : 素樹 文生

出版社:新潮社

発売日:1998-12

評価 :

完了日 : 2002年04月14日

 この「上海の西、デリーの東」は、タイトルの通り、上海からデリーまでの旅行記。30才を目前に出発した著者が、バックパッカーとして旅をします。なんでも、グラフィックデザイナーだったそうで、巻頭についてる写真も中々良いです。
 
 まず中国から始まる旅なんですが、読みだしてまず思ったのが、中国の悪口が多い!ホント、始めの方は文句ばっかりなんです。でも、著者は中国は好きなんですよ。私は「なんだか悪口ばっかりじゃない」と反感を持ったんですが、よく考えると著者の言い分は正しいんですよね。だって、日本と中国では考え方も社会も全く違うんだから、そこで「それでも中国はいいよね」っていう方が偽善的だと。悪い所もひっくるめて「中国が好き」なんだな、とわかりました。
 
 「没有」(メイヨー、と発音)という言葉が、著者は中国で一番聞いた言葉なんだそうですが、これは「しらん。あっちいけ」みたいな意味らしい。中国では列車の切符を買うのがとにかく大変なんだそーです。その切符売り場でなんども「没有!」って言われたそーです。しかも、発音が日本語の「ねぇよ!」に似てるのでまたそれがハラが立つ!ってのが笑えました。
 
 こんなエピソードでもわかるように、この本は等身大で、とっても親しみやすい旅行記でした。「深夜特急」のようにキザ、とも言えるほどのロマンテイシズムはほとんどありません。旅行の年代も1994年ですので、文庫にしては新しい情報だし、まぁバックパッカーまでしなくても、パック旅行からちょっと上の旅を目指す人の参考にもなりそうです。(2002.4.14)


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 1

ボトムズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

著者 : ジョー・R・ランズデール

出版社:早川書房

発売日:2005-03-24

評価 :

完了日 : 2002年04月11日

 ミステリと言えば、普通は探偵や刑事が出てきて犯人を推理するものです。この小説はジャンルからいえば、ミステリに入ると思うんですが(実際「アメリカ探偵作家クラブ賞」を受賞している)いわゆるそーいうたぐいの人は出てきません。現在では老人ホームに住むハリーが、少年時代を回想する形で話は進んでいきますが、保安官である父も特にこれといった推理力を持つわけでもなく、この土地でかつてなかった猟奇的犯罪にとまどい、白人と黒人との軋轢に心を痛めて失望してしまいます。
 
 殺人の舞台が大恐慌時代のアメリカで、しかも田舎。今ではありふれた(と言っていいのか)ネタであるかもしれない猟奇殺人も、この時代ではあまり知られていないという設定が面白いですね。現代だったらプロファイリングだの、鑑識だの色々な捜査の方法があって犯人を推理しようとするんだけど、この村の住人たちは「黒人同士の殺しあいはかまわん」って考えなんですもん。犯人を見つける気がない。
 
 このような「黒人への差別」が至る所に書かれていて、アメリカでの人種差別の深刻さをあらためて実感しました。今では少なくなっているでしょうが、この本にあるような考え方をする人はまだまだいるんでしょうね。
 
 この本は「犯人を推理」するような本ではなく、いろいろな意味での「暗黒」を感じる小説だと思いました。人が誰でも持っている闇(それは主人公の両親にもある)、犯人の闇、差別というアメリカの闇、そして深い森の闇…。
 
 ラストの息詰まる展開は手に汗握ること間違いなし!(2002.4.11)


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 1

ビューティフル・マインド 天才数学者の絶望と奇跡

著者 : シルヴィア ナサー

出版社:新潮社

発売日:2002-03-15

評価 :

完了日 : 2002年04月07日

 本書はジョン・フォーブス・ナッシュという天才数学者の数奇な半生を描いたノンフィクション。このナッシュという男、ただならぬ数学の才能を持っているのですが、人間的には…かなり困った性格の持ち主です。とにかく、自己顕示欲が強い。普通、人がだれかと(友人であれ恋人であれ)付き合う時はお互いを尊重しようとするもの。ですが、ナッシュにとって他人は「自分を引き立たせるため」だけの存在…。誰よりも他者との関係を求めてはいるのですが、そういった形でしか他人と接する事が出来ないのです。
 
 そんな男ですから、女性関係もかなり困ったもの。元々同性愛者でもあるんですが、社会的な地位も考えて(当時としては仕方がないとは思う)女性とも付き合う。エレノアという女性と子供までもうけているのに、結婚はしない、認知はしない…。自分と地位が違うという理由で。女からしてみたらトンデモナイ男ですよ!
 
 そんなナッシュは30代に入ると次第に精神分裂病が発症し研究生活もままならぬ状態に。アリシアという女性との結婚生活も破たん状態。そんな状態が30年以上も続く…。
 
 一時は「幽霊」とまで言われたナッシュが、だんだん回復していき、そしてまた家族が再生していく姿は感動的でした。
ノーベル賞も受賞し、一見ハッピーエンドかのように見えますが、現実は厳しい。父親と同じ病気に犯されている息子の世話。決して帰ってこない30年という空白…。しかし、ナッシュは家族を大事にする事を知り、そして今でも研究を続けているのだそうです。30才がピークと言われる数学の研究を、まだ自分が出来る事があるはずと信じて。
 
 「精神病」という重い病気に犯されながらも、それでも研究し、家族と生きるナッシュは「生きる」という一つの姿を見せてくれたと思いました。
 
 そんなヒューマンドラマ以外にも面白いエビソードが。
ナッシュも一時いたランド研究所。ここでは原爆や戦争戦略についての研究がなされていたんですが、ここにいた有名な物理学者、フォン・ノイマンが映画「博士の異常な愛情」(S・キューブリック監督/1969年/米)に出てくる核戦争狂ストレンジラブ博士のモデルと噂された…なんて知らなかったなぁ〜。
アメリカという新しい国が「知」を獲得するまでの近代史という部分が科学の本が好きな私には結構楽しめましたよ。(2002.4.7)


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 20

金閣寺 (新潮文庫)

著者 : 三島 由紀夫

出版社:新潮社

発売日:1960-09

評価 :

完了日 : 2002年03月31日

 この小説は、実際にあった金閣寺の放火事件がモチーフになっています。ですが、実際の犯人の心理を克明に書いたわけではなく、三島の創作による所が多いのではないかと思います。三島はこういったタイプの小説はいくつか書いているそうです。
 
 さて、感想ですが…。私はこの小説は「青春小説」だと思っています。主人公が若いというのもあるんですが、この歪んだ情念の持ち主である男の心理は、多少なりとも若い時に感じたことがある気がするんです。行動(放火)は理解できないけど、このウジウジとした考え方がね(笑)
 
 登場人物の中では、柏木がいい味だしてました。足の悪さをウリに女をひっかけたりするこれまた悪い男なんですが、最後の主人公との会話はこの小説のヤマ場になってました。
その中で語られる「世界を変えるのは、認識か、行為か」の会話は面白いです。主人公は「行為」(つまり放火)で変えるといい、柏木は「認識」でしか世界は変らないと主張するのですが…。
 
 この小説の中では、主人公が放火の後にどう思ったのかは語られません。彼の美しい物を滅ぼしたい、という「行為」でどのくらい世界が変ったのか?確かに彼の環境は変るのでしょうが、彼自身はどれだけ変ることが出来たのか…。私は結局何も変らなかったんではないかなぁ…と思いました。
 
 三島の美しい文章はやはり魅力的で、私はそれが一番楽しめました!またチャンスがあったらチャレンジしたい作家です。(2002.3.31)


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 11

黄金の羅針盤〈上〉—ライラの冒険

著者 : フィリップ プルマン

出版社:新潮社

発売日:2003-10

評価 :

完了日 : 2002年03月23日

まず、この本を読んだ時に思ったこと。「こ、これってファンタジー…なの?」そして「これって…子供向けなの?」という事でした(笑)。いやいや、いい意味でファンタジーの常識を破っているというか…。この作品はきっとファンタジーが苦手な人でも読めるのではないでしょうか?設定なんて、とてもSF的です。
 
 主人公、ライラはジョーダン学寮に独りで住んでいます。両親はいません。(のち明らかになる)ですが、あんまり気にしていないよーです。もう、ひたすら遊ぶ事に熱中してます。明るいというか、何も考えていないとちゃうか?というか(笑)典型的なリーダータイプで、口も達者です。怖いものなしの11才。現代的です。
 
 そんな彼女の住む世界は、イギリスやフランス、北極などの知名は出てきますが、私たちの住む世界とは異なります。科学の歴史なども、かなり違うようです。そして、北極のオーロラにかすかに見える都市の幻影。ダストと呼ばれる謎の粒子。ライラを導く「真理計(アレシオメーター)」…。どうです?ワクワクしてきませんか?
 
 私が子供の時この本を読んだら、ぜったいダイモンが欲しいと思ったでしょう!(今でもそう思うけど)子供の頃はダイモンは状況にあわせて変化して、大人になると固定された形態になる…という設定ですが、自分の気に入らない動物になったりもするんですよ。いや〜って思ったのは「ガ」のダイモン。げげげ…。このダイモンも、ストーリーの重要なキーワードになるみたいです。
 
 重要なキーワードといえば、もう一つ。この本では「キリスト教」が重要な位置を占めています。教会はかなり発言力があるみたいです。(まだ、この一作目でははっきりしない部分も多い)私が知ってる限りでは、ファンタジーでここまでハッキリ宗教を書くというのは珍しい気もします。(架空の宗教ならともかく…)この世界でキリスト教があるなら、仏教とかイスラム教もあるのかしら…。
 
 まだこの本は三部作の1作目なので、たくさん謎が残ってます。早く読みたいです。最近3作目も刊行されたので、今から読み始めると一気に読めますよ。(2002.3.23)


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 1

海を見たことがなかった少年―モンドほか少年たちの物語 (集英社文庫)

著者 : ル・クレジオ

出版社:集英社

発売日:1995-06

評価 :

完了日 : 2002年03月05日

 この本は、短編集(連作集?)になっています。副題に「モンドほか子供たちの物語」とあるようにすべての話では子供が主役です(主役が大人の場合は、子供の目線で語られる)。そして、子供たちはどの話でもさすらっています。家出をしていたり、放浪していたり…。親の姿はあまり出てきません。
 
 そして、重要なモチーフとなっている「海」。「モンド」の浮浪児のモンドは海辺で老人から海の向こうの話を聞くのを楽しみにしている。「リュラビー」の主人公はある日、学校に行かなくなり、海辺のお気に入りの家で海を眺める…。そーいえば、フランスでは海は女性名詞なんですよね。主人公の子供たちにとっては海は母親のような存在なのかもしれません。
 
 私はフランスの子供というと、「大人はわかってくれない」(監督F・トリュフォー/1959年/仏)とか「悲しみよこんにちは」(監督O・プレミンジャー/1957年/仏・英)とか(この主人公を子供と見るかはさておいて、「リュラビー」はセシルをほうふつとさせる)。はたまた「シベールの日曜日」(監督S・ブールギニョン/1962年/仏)など。どの映画にも言えるのはみんな小さい大人なんだよね。「海を…」の主人公たちも、おおよそ子供らしくなくて…。でも、自分が子供の頃って、もっと大人びていた気もする。ひょっとして、今の方が子供っぽい事してるかも、なんて思います。(2002.3.5)


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 2

舞踏会へ向かう三人の農夫

著者 : リチャード パワーズ

出版社:みすず書房

発売日:2000-04

評価 :

完了日 : 2002年01月28日

 この本、なんとも説明が難しい本なんです。友人が「なんだか読みにくいので途中でやめた」と言ってましたが、わかります。それ。ですが、始めをちょっとガマンして読み続けると、面白くなってくるんですよ。
 
 まず、この話は一枚の写真から始まります。表紙にもなっている「舞踏会に向かう三人の農夫」。この写真を見た現代の「私」と、1914年に撮影された「三人の農夫」であるアドルフ・フーベルト・ペーター。そして全く関係ないのだか、だんだん「三人の農夫」に関わってくる現代のライター「メイズ」。この登場人物が交互にからみ合い、そして20世紀を代表する人物も出演し(フォードやサラ・ベルナール)複雑な話を展開していきます。
 
 そんなひとすじ縄ではいかないストーリーに加え、元々物理学を学んでいたという作者が20世紀の産業・戦争・科学の話も加えてきます。一見なんの関係もない話のようですが、だんだん本筋に関わってくるのがいいですね。

 この小説のモチーフとなっている「三人の農夫」が撮られた1914年というと、第一次世界大戦のきっかけとなった、サラエボでのオーストリア皇太子暗殺事件のあった年。ある意味、この年から激動の20世紀が始まったとも言えると思います。そんな時代と現代を行き来しながら、20世紀を400pで書き切った力量はスゴイです。
 
 ま、そんな難しい事をヌキにしても、登場人物の面白さや、「私」の論じる写真論、伝記を書くという事について、などの話も難解ながらも楽しめますよ!(2002.1.28)


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 22

深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)

著者 : 沢木 耕太郎

出版社:新潮社

発売日:1994-03

評価 :

完了日 : 2002年01月10日

 仕事や学校での生活に追われていると、突然旅に出たくなる時もある。だが、大概の場合夢想に終わるものだが「深夜特急」作者は本当に旅に出てしまったのだった。ようやく軌道にのったルポライターの仕事も放り出し、貯金をはたいて「インドのデリーから、ロンドンまでバスでいく」というバカバカしいとも言える目標を立てて。
 
 主人公が旅した時代は、推定すると70年代のようだ。時はヒッピー全盛期のようで、旅の先々にヒッピーがたくさんいたらしい。主人公は少ないお金で貧乏旅行をしているが、今でいうバックパッカーズと言った方がピッタリだと思う。現在では珍しくないですが、当時は日本人の旅人が珍しい国もたくさんあっただろう。
 
 この本は6册に分かれている。アジアから始まるのだが、やっぱりアジア・中近東が色々な事件が起きて面白い。初めから読まずに、自分の興味のある地域から読んでも楽しめるだろう。
 
 作者は途中でギャンブルにはまったり、病気になって怪しい薬を飲まされたりと、とんでもない体験をくり返しながらも旅を続けていく。そして、「旅が人生に似てる」と悟り、お金を切り詰めて生活していくうちに自分の中のなにかが擦り切れていくのを感じるのだった。旅行は楽しい。しかし、人はいつまでも移動しているわけにはいかないのだろう。
 
 時代は流れ、日本の若者も世界の情勢も大きく変化したが、この本の面白さは今でも変わらない。(2002.1.10)


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