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ぎんこさんの読書ノート

2001年読んだ本
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 4

エンデュアランス号漂流 (新潮文庫)

著者 : アルフレッド ランシング

出版社:新潮社

発売日:2001-06

評価 :

完了日 : 2002年09月23日

 この本はまず献辞がいいんです。「人間に不可能なことを成し遂げさせる何ものかに感謝を捧げて」(星野道夫訳)
ちなみに原文は「In appreciation for whatever it is that makes men accomplish the impossible」いや〜、いいですよ!! カッコイイ!!献辞の訳は1996年に亡くなられた冒険家、星野道夫さんです。彼は冒険で辛い時やくじけそうな時にこの本を読んで自分を励ましたんだそーです。しかし、彼は日本語版の本を見る事なく、この世を去ってしまいました。
 
 さて、ストーリーはというと。1914年、イギリス人探検家シャクルトンは南極大陸横断へ向かう。しかし、船は氷山にはさまれて沈没。氷の海にとりのこされた28人は17ヶ月間に渡って、寒さや飢えに悩まされながらも、誰一人失うことなく奇跡の帰還を果たす…。という内容。ノンフィクションです。
 
 主人公のシャクルトンは、とっても面白い人物です。根っからの探検家で、ロマンチスト。南極大陸横断は経済的な理由もありました。彼が手を出す事業はことごとく失敗していたからです。が、彼はすごいリーターシップを持っていました。しかもそれは非常事態の時にもっとも発揮される…、いわゆる「非常の人」。フツーの環境では彼の実力は場違いだったんです。
 
 そんなシャクルトンだから、隊員を選ぶ基準も面白い。パッと見ただけで決めちゃったりとか。まぁ、5千人を超える応募があったらしいので、多少直感も必要だったかも。しかし、直感で決めてもその判断はすごく的確だったそうです。
 
 そうそう、あとがきに当時の募集広告の文がのってるけどこれがまたいい!「求む男子。至難の旅。僅かな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証なし。成功の暁には名誉と賞賛を得る。」(天野祐吉著「もっとも面白い廣告」)
かっこいいですね! こんなの見たら行く気になっちゃいますよね!
 
 が、彼らの旅はまさに苦難の連続。この本の半分は食べ物についての描写?と思うくらいに食糧不足に悩まされます。彼らの愛読書はなんと「料理の本」で、帰ったら何を食べようか?とみんなで相談するのが楽しみだったらしい。そして「最初に食べたい一品」をみんなで出しあうのですが、みんな甘いもの。そんなものなんですね。(2001.9.23)


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 3

チャリング・クロス街84番地―書物を愛する人のための本 (中公文庫)

著者 : 江藤 淳

出版社:中央公論社

発売日:1984-10

評価 :

完了日 : 2001年12月20日

「書物を愛する人のための本」との副題にあるように、この本は「本好き」にはもうメッチャたまんない本です。簡単に説明すると、ヘレーン・ハンフはニューヨークに住む物書き。紙面で知ったイギリスの古書店マーク社にあてた一通の手紙から、20年にわたる文通が始まる…。
 
 著者のヘレーンはとっても本が好きな女性。しかも、古典が好きなんです。「私は新刊書を読むのが大嫌いである」という文章に「同士よ!」と答えてしまうくらい。アメリカにはいい本がないので、イギリスのマーク社に手紙に1ドルとか2ドル入れてイギリスの本を送ってもらうのです。その注文した手紙と返信でこの本は構成されています。
 
 1949年から文通は始まるのですが、その当時のイギリスはまだ戦争から経済が復興していないようです。第二次世界大戦が終わったのが1945年ですから、まだまだ大変な時期だったのでしょう。そんな事情を察して、ヘレーンは食べ物をお礼としてマーク社の人たちに送ったりして、担当のフランク・ドエル氏以外の社員とも仲良しになっちゃうのです!
 
 一方、ヘレーンの方は売れない物書きで、当時テレビの脚本を書いたりもしてたみたいです。しかもエラリィ・クィーンのドラマの脚本を書いてたり…。本人は不本意のようですが。
 
 ヘレーンが注文する本は、すべて古典でしかも小説ではないものがほとんどですから、私なんかはちんぷんかんぷんなんですけど、「こんな素晴らしい本を私が持っていいのかしら」とか「こんなの本当の○○じゃない!」と怒ってみたりと、ヘレーンの文は本への愛がいっぱいだし、それに返事をする古書店の店員も、それに答えるために懸命に本を探したり…。
 
 今の時代、古書もネットで買えたりしちゃいますもんね。(私もそうだし)この本を読むと、やっぱり手紙っていいもんだな〜って思いました。手紙って、人柄がにじみ出ますもんね。
 
 冬にココロがあったまる、いい本でした!訳者の解説も本の愛に溢れていて、最後の最後まで感動できました。(2001.12.20)


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1.Pipo (2008/03/13)
この本に☆5つつけてくださってるかたがいて、うれしくてコメントを残したくなりました。

へレーンが古書を注文するマークス社の皆さんがとても素敵に思いました。一歩間違えばちょっと距離を置きたいお客?の彼女に、穏やかなユーモアを交えてお返事をされる皆さんがとても素敵ですね。
2.ぎんこ (2008/03/20)
Pipoさんコメントありがとうございます。
この本を読んだのはもう7年も前ですが、とても素敵な本で、同じ感想を持つ方がいるとうれしくなりますよね。今の時代は本は簡単に手に入るのですが、本を得る喜びはちょっと薄れてきてるかもしれません。また読み返したい本です。
 

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 2

エリゼ宮の食卓―その饗宴と美食外交 (新潮文庫)

著者 : 西川 恵

出版社:新潮社

発売日:2001-05

評価 :

完了日 : 2001年12月16日

エリゼ宮というのは、フランスの大統領官邸です。ここでは、もちろん大統領が住む場所ではありますが、それ以上に外交の舞台としてプロトコール(饗宴)が行われる場所でもあるワケです。
 
 この本は、そのプロトコールのメニューから外交をさぐる本。メニューを見れば、その国がフランスにとってどういう位置づけにあるかがわかるというのです…!例えば、日本の羽田首相(当時)。彼が招かれた晩餐のメニューは、明らかに格が下。特にワインを見るとわかるそーなんですが、上から5番目ぐらいのワインを選んでいるのです。もちろん、美味しいワインなんですが、普通は国賓をもてなすには物足りないワイン。
 
 なぜ、このワインをエリゼ宮が選んだのか?それは、日本が連立政権になったばかりで、羽田首相は長続きしないであろう、という考えだったから! さらに、次の政権のために、今の首相と深い関わりを持つのを避けるという意味もあるらしい…。メニューでそこまでわかっちゃうんですか??
 
 フランスという国は、もちろん美食の国なんですが、外交にもたけた国だそーです。「問題が行き詰まった時には、事態を揺り動かす事で新しい流れをつくる」という考えがあるんだって。日本も少しみならって欲しいですね。日本は「問題があるときは、見ないフリをする」ですもん(^_^;)
 
 晩餐会、といっても、基本は食事を取る事。食事している時ってとっても人間性が出るのかもしれません。
この本の中では、政治家や皇室、王室の興味深いエピソードもたくさんです。昭和天皇が、晩餐会の後にギタリストに促されて「さくらんぼの実るころ」を歌ったとか、シラク大統領は日本に造詣が深く、「元冦の役」について語りだし、日本側は誰もついていけなかった…とか。(橋本通産相(当時)が一人がんばって会話についていったらしい)
 
 私は政治とかにはとんと疎く、新聞もナナメ読みですが、こんな見方もあったのか…と目からウロコが落ちました。そして政治家にもちょっぴり親近感がわきました。外交と食事は昔っから切っても切れない関係なんですね。(2001.12.16)


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 15

模倣犯1 (新潮文庫)

著者 : 宮部 みゆき

出版社:新潮社

発売日:2005-11-26

評価 :

完了日 : 2001年12月14日

 このお話って、主役といえる人が何人かいて、それぞれになにかを抱えてる。そして事件にかかわった人がすべてこまか〜く描写されているんですよ。だから、この厚さも仕方ないかな?そして、「被害者」というとっても辛い立場を積極的に書いています。現代の社会では、殺されてしまった被害者の身内が、かえって辛い目にあうという事は非常に多いですからね。私は宮部みゆきは「火車」しか読んでませんが、こちらもローン地獄についてよく調べてるし、納得できました。
 
 宮部みゆきは「少年を書かせるとうまい」と聞きましたが、私はだんぜんジジイ&オヤジの方がいい味だしてると思います。やっぱり、この作品の救いは有馬義男ジーチャンでしょう!下町の豆腐屋さんで、すっごい出来た人物。犯人と渡りあうシーンは「ジーチャン、バシッと言ってやってくれよ!」と応援したくなりましたもん!
 
 有馬の言う事ってとってもシンプル。その分だけ説得力があります。人って、複雑な事を言われると、なんだか納得しちゃう所があるじゃないですか?テレビとかでも「あ、難しい言葉使ってるから、すごい事なんだろーな」なんて。でも、真実って本当はいつもシンプルなものなんですよね。
 
 しかし、有馬ジーチャンのセリフなんて、何度か泣かされましたよ〜。「殺人犯が捕まるまで、何がなんでも長生きする」なんて私にはそこまでの胆力ないなぁ…。
 
 私も母親にだまって遅く帰宅する時がたま〜にありますが、この小説の中の「母」を見ていたら、これからは必ず連絡するようにしよう…と思いました。
 
 こんな長い小説を一気に読ませてしまうとは…。さすが、旬のベストセラーは違うなぁ。でも、次はもっと気楽な本を読みたいです。ちょっとこれは自分にはキツかったなぁ。よその感想に「疲れた」と書いてるの、やっと分かりました。(2001.12.14)


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 5

ドゥームズデイ・ブック〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

著者 : コニー ウィリス

出版社:早川書房

発売日:2003-03

評価 :

完了日 : 2001年12月09日

 「タイムマシーン」などの言葉が出てくるように、この話はジャンルにわけるならSFです。しかし、SF的な設定はせいぜいこれだけで、他は現代とさほど変らない社会。そして物語の半分は14世紀のイギリスの村ですが、こちらもフツーの村。特に目新しさはありません。
 
 しかし、そのフツーの世界でのフツーの人々の生活や苦悩が、この物語の魅力です。「伝染病」が物語の重要なファクターになっていて、この小さな悪魔に立ち向かい、そして人を救えない空しさが伝わってきます。
 
 主人公、キヴリンは中世にロマンを求めて旅立つのですが、実際はトラブルだらけ。始めは翻訳機をうまく使いこなせず(だんだん使えるようになるのがリアル)苦労するのですが、偶然拾われた家族と話が通じるようになると、情が移ってくるのです。読んでる方も、顔が浮かぶようにイキイキと書かれた人々に感情移入できます。キヴリンも言葉が理解でき、だんだん落ち着いてくるかと思いきや、とんでもない事実が明らかになり、この村に危機が…。
 
 このへんから一気に話は加速。現代のダンワーシイの方もトラブル続出で読んでる方もドキドキです!結構辛い展開なのですが、「宗教」(と、いうか広い意味での愛)というテーマが根底にあって、どーしようもない、目を背けたくなるような死が間近に迫っても、人を信じる事、愛する事が出来れば耐える事が出来る。そして、中世の人々は確かに不幸な一面もあったけど、現代人より幸せな部分も持っていたのかもしれないな…と思ってしまいました。
 
 現代と14世紀の人たちが同時進行で語られ、しかもシンメトリー状態になっている構成も面白くて、これは600pのボリュームも納得。
 
 なんでもこの「ドゥームズデイ・ブック」には続編があるそーですね。キヴリンとダンワーシイ先生の次の冒険も見てみたいです。(2001.12.9)


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 2

ロンドン〈上〉

著者 : エドワード ラザファード

出版社:集英社

発売日:2001-08

評価 :

完了日 : 2001年11月29日

 この本のストーリーを短い文章で語る事は不可能。物語は紀元前から現代まで2000年以上の時間を通して、10組の家系の運命が語られます。彼ら(彼女)らは架空の人物ですが、実在の人物(たとえばジュリアス・シーザーやシェイクスピアやワイルド)も登場して、どこまでが真実で、どこまでが虚構なのか、見分けはつきません。(ウェディングケーキや国債のルーツのエピソードが出てくるけど、あれは本当なんだろうか…疑問です)
 
 まさに、「ロンドン・グランドツアー」とでも名付けたい内容。ロンドンに生きる人々がどのように生きて、死んでいったのか?この本を読んでいると、まるで空から神の目線で人間を見下ろしているかのような気分になってきます。
  
 章ごとに何十年も時間が流れるので、「あの人はどうなったんだ?」とか「ああ、この人があいつの孫なのか」とか、巻頭についてる年表を見ながら楽しむのもいいし、地図を見ながら想像するのもよし。現代のロンドンと比べても面白いでしょう!
 
 博物館で展示物を見ながら、昔の人はどんな生活をしたのだろう?と想像するのは楽しいですよね。この「ロンドン」を読んでると、博物館のキュレーターが、自分にだけ展示物にまつわる話を聞かせてくれているような気分になります。もし、ロンドンに行く事があれば、きっともっと楽しい!「ここでダケット一家が…」なんて感動しちゃうかも!イギリスに行って、ベーカー街やダイヤゴン横町もいいけど、この本の舞台を訪問してみたくなったなぁ〜。
 
 大変高い本ですが、ロンドンに実際に行くよりもロンドンに詳しくなれるかもしれないですよ!なんてったって2000年分のロンドンを知る事が出来るのですから!それを考えたら、1万円は安い?かも…。
 
 そして、この壮大なストーリーのフィナーレは、たくさんの登場人物がいる分だけ、長いページの分だけ感動します。最後を締めくくる文は、ありきたりかもしれませんが、今までの話が一気に蘇ってきて、胸が一杯になりました。(2001.11.29)


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 1

悪者見参―ユーゴスラビアサッカー戦記 (集英社文庫)

著者 : 木村 元彦

出版社:集英社

発売日:2001-06

評価 :

完了日 : 2001年11月07日

 日本でもすっかり国民的スポーツとしてなじんできたサッカー。日本のサッカーが何よりも恵まれている点は、政治との関わりが薄い事かもしれません。(totoくじなどありますが)そんな日本の対極にあるといえる国、それはユーゴスラビアと言えるでしょう。この国のサッカー選手は、国の不安定さゆえに数奇な運命を辿ります。
 
 もともとサッカーのさかんな国、ユーゴスラビア。日本で一番有名な選手はなんといっても「ピクシー」ことストイコビッチ。(ちなみに「ビッチ」は「息子」という意味)そんな彼等ユーゴスラビア選手が仏W杯を控えた日本対ユーゴ戦での国家斉唱で自分たちの国歌「ヘイ・スロヴェーニィ」を歌わない姿を見た作者は彼等セルビア人の複雑な国家への思い、そして混乱の中にあるユーゴを取材。それをまとめたのがこの「悪役見参」です。
 
 1999年にアメリカ(とNATO)が行ったコソボ空爆。日本ではあまり報道されず、なぜ空爆が行われたのか、よくわからない人もいるかもしれません。私もそうでした。なぜコソボをめぐって民族が対立するのか?そしてなぜアメリカがそこに絡んでくるのか?そんな疑問を作者はサッカーを通してわかりやすく、そして熱く語ります。
 
 サッカー好き、そしてプラーヴィ(ユーゴ代表のこと。「青」という意味)大好きな作者は、サッカーを通してさまざまな人々と知り合います。サッカー選手なのに、スタジアムが戦争でなくなってしまい、ピザを焼きながら練習する男。民族対立のために故郷に帰れなくなってしまった男。最近まで隣同士で仲良く暮らしていたのに、民族主義ゆえに憎みあってしまった人々。
 
 いろんな民族に直接取材する作者は、いかにこの戦争が無意味か、そしてセルビア人を悪者にし、空爆を正当化するアメリカ政府、情報をうのみにする日本のジャーナリズムに怒ります。このへんは、今のアフガニスタン空爆とそっくりです。
(「民族浄化」という言葉はアメリカの広告代理店が創ったんだって!セルビア人の悪いイメージを植え付けるために)
 
 この本の主人公ともいえる、ストイコビッチ。彼のサッカー人生は国の運命に振り回されたともいえます。もし、平和な国に生まれていたら…。セルビア人でなかったら…。でも、彼はきっぱりいいます。「生まれかわっても、僕はもう一度セルビア人になりたい」
 
 サッカーだけでなく、戦争がいかに無意味か、国家とは?民族とは?そんな難しい問題を教えてくれた本でした。戦争が行われているという事は、大量殺人が行われている。その事を決して忘れてはいけないんだと思います。(2001.11.7)


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 1

印刷に恋して

著者 : 松田 哲夫,内沢 旬子

出版社:晶文社

発売日:2001-12

評価 :

完了日 : 2001年10月21日

 本が好きな方なら、一度は気になること。それは「本ってどうやって作ってるの?」。 装丁のような華やかさはないですが、「印刷」それは人と本がぐっと近づいた人類史上最大の発明! 印刷がなければディケンズだって宮部みゆきだってただの人。
 
 そんなわけで、この「印刷に恋して」は、私にとってはすっごい興味のある本なんです。 こんなにも印刷物があふれている世の中ですが、雑誌一つとってもどのように印刷されて いるか、なんて考えた事がない人がきっと多いはず。
 
 この本を書いた松田さんは、筑摩書房で「老人力」や「ちくま文学の森」などの本の編集を てがけたベテラン。現在の印刷はDTPなどパソコンで作業する事が多いのですが、 彼は「活版」にこだわります。昔の機械って魅力あるものですよねー。 そこで、この本では「活版」から「自動写植機」「オフセット印刷とはなんぞや」 と話が進んでいくのです。
 
 いやいや、しかし「印刷」とひとことで言っても、いろんな種類があるもんですよね。 現在ではオフセット印刷が多いのですが、この本の取材をした当時(1999年)では 週刊誌は活版印刷が多かったとか。文字に迫力があるのと、職人さんが文字を拾った 方が早いというのが理由なんだって。(現在では、DTPに移行しているそうです)
 
 あと、「グラビア」という言葉をなにげに使ってましたが、これが「グラビア印刷」と いう技法の名前だとは全く知りませんでした。 グラビア印刷のインクは流動性が高いので、文字は苦手らしい。でも最近の印刷物って 文字も写真もとってもキレイだけど…。技術がどんどん進歩してるんでしょーね。
(得に通販カタログなどで、文字もハッキリ印刷しなければならないそうです)
 
 印刷の「職人さん」もまたスゴイ。パッと見ただけで「赤みが濃い」とわかってしまう人とか(他人の目からみれば、ホント気のせい?と思う程度)、見ただけでその色の 三原色の比率がわかってしまったりとか…。(絶対音感ならぬ絶対色感?)
ううむ、職人さんを尊敬する私にとっては感心することしきり。
 
 と、こーいう事を書けばキリがないんですが、印刷の世界の奥深さを見て、 ますます本が好きになりました。どんなにデジタルが発達しても、本そして印刷の世界は まだまだ続いて欲しいと思います。(2001.10.21)


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1.黒蜜ネコ (2007/03/26)
印刷関係の仕事をしていました。
DTP以前の時期でいわゆるレタッチ職人見習いでした。
もう辞めちゃった仕事なのですが好きだった仕事でも
あるので、興味津々です。
ぜひ読んでみたいです。
2.ぎんこ (2007/03/27)
 コメントありがとうございました。
印刷業界にいらした方なら間違いなく楽しめると思いますよ。豊富なイラストもいいです。今はデジタル化が進んでますが、やっぱり最後は人間の目が一番確実なんじゃないかと思います。
 

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 1

古地図に魅せられた男 (文春文庫)

著者 : マイルズ ハーベイ

出版社:文藝春秋

発売日:2001-10

評価 :

完了日 : 2001年10月21日

 実際にあった古地図の窃盗事件を中心に、過去はコロンブスやマルコポーロといった冒険家を調べ現在は地図で莫大な利益をえた売買業者、古い本を未来に残そうとする図書館員らにインタビューをし、古い地図の魅力にせまるノンフィクションです。
 
 前に聞いたんですが「人間は地図が好きか、年表が好きかに別れる」という言葉があります。(たしか三谷幸喜だったと…)ちなみに私はきっと年表派なんですが、この本はなかなか興味深いです。
 
 ビックリしたのが、マルコポーロの「東方見聞録」。実は彼は中国に行ってないのでは?という学説があるそーなんです!なんでも、本の中の中国の描写があまりにも貧しいらしい。誰でも目につく、万里の長城などの記録がないのが根拠だって。
そ、そんなぁ…。私は小さい頃にNHKで放送された「マルコポーロの冒険」に感動したのに…。
 
 あと、ちょっといいなと思ったんですが、作者は「図書館員」なんて名は過去から比べたら「優雅さにかける」名前なんだそーです。古代エジプトやシュメールでは「魔法図書館の学者」(ハリーポッターみたい)「生命のダブルハウスの記録者」「本の家の支配者」「世界を定めるもの」などの尊敬すべき職業人としてステキな名前で呼んでいたんだって!カッコイイなぁ…。昔はそれだけ本は重要なもので、それを守る図書館員は重要な職業だったんですねぇ…。
 
 この本は「ええっ、知らなかった!」と思う事がたくさんありました。1つは、現代の地図製作会社についてなんですが、地図はよく無断使用されるのである仕掛けがしてあるんだそーです。それは「トラップ・ストリート」といわれるトリックで、全く無害な所にウソの通りを書いておくんです。んで、「これ、うちの地図パクってない?」と思ったらその「トラップ・ストリート」をチェックすれば一目瞭然!ってワケ。これはどこの会社も使用しているというワケではないんですが、うまい事考えたもんです。(2001.10.21)


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1.マオ (2007/03/27)
ぎんこさん、こんにちは! 「たなぞう」でもお会いできてうれしいです。
おもしろそうな本ですね~。古いものにむやみに惹かれるたちなので、楽しめそうな気がします。図書館員の呼称なんてすごくすてきです。

>「人間は地図が好きか、年表が好きかに別れる」
異世界ファンタジーをつくるときに顕著な特徴になるっていいますね、これ。地図好きはおとぎの国のふしぎな物語を書き、年表好きが書く話は架空史に近くなりがちだとか。
2.ぎんこ (2007/03/27)
マオさん、コメントありがとうございます。結局「たなぞう」に決めてしまいました。こちらでもよろしくお願いします。この本、なかなか面白かった記憶がありますよ。読んだのは6年前なのでちょっと自信ないですが。気楽に読めていいと思います!
私の勝手な考えですが、地図好きの方はアウトドア派、年表好きな人はインドア派のような気がします。
 

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 7

聖(さとし)の青春 (講談社文庫)

著者 : 大崎 善生

出版社:講談社

発売日:2002-05

評価 :

完了日 : 2001年09月28日

 将棋の世界を知らない人でも羽生善治は知っているだろう。平成8年には史上初の七冠王となり、マスコミでも話題になった。
 
 そんな彼も認めた天才将棋棋士、村山聖(さとし)がこの本の主人公。聖は44年に広島の平凡な家庭に生まれ、成長するが3歳の時に高熱を出し、ある病気を宣告される。それは「腎ネフローゼ」。原因不明の難病だった。
 
 それからの彼は、ひたすら病気との戦いとなる。療養所での辛い日々の中、母親からもらった一冊の本があった。それは「将棋は歩から」という、子供が読むには少々難しい本。が、彼はその本を聖はむさぼるように読み、将棋に夢中になっていく。
 
 将棋の世界に生きると決めた聖は、森信雄という師匠に出会う。この師匠が大変面白い人物で、インドに1ヶ月放浪したり、ある日は麻雀ばっかりしてたりもする。棋士としては、森は聖に勝つ事は一度もないのだが、この2人はとてもいい師弟関係を築く。
 
 聖の夢は、「名人になること」。そのために生きてきたといっても過言ではなかった。ライバルであった谷川浩司に「彼ほど名人を望んだ人間はいなかった」と言わしめる程。しかし、彼には病気という、あまりにも重い枷があった…。
 
 私たちは普段、棋士という職業がどんなものか知らない。棋士。それは選ばれた人たちであり、そして厳しい世界に生きる人たちなのだ。彼らには年令制限があり、奨励会という棋士の集団に残るには、自分の誕生日までにあるレベルに達していないと脱会させられてしまう。彼らは幼い頃から将棋の英才教育を受けているので学校も中卒であることも多く、一般社会に出た場合は生活や仕事になじむにはかなり努力が必要だろう。厳しいリスクをかかえてながら、それでも名人を目指す。
 
 そんな中で、難病を抱えながら聖は将棋一筋に生きていく。その姿は純粋で、あまりにも激しい。病気というリスク、具合が悪い時にはただひたすら休んで力を貯えるしかない。そして動けるようになったら、這ってでも対局に望む。
 
 自分が病気だったからだろうか、聖は非常に優しい部分も持っていた。自分の髪や爪を切るのも「伸びているのに切るのはかわいそう」という始末。棋士として大金を手にするようになっても、ボランティアに大部分を寄付する程だった。
 
 心揺さぶられる本だ。だがそれは主人公、聖が病気だからではない。聖の将棋にかける情熱が、そして周りの人々の聖への愛が、読み手の心をとらえる。本当は誰もが彼のように、純粋に真直ぐに生きたいのではないだろうか?
 
 平成9年8月8日、村山聖は29歳の生涯を閉じる。将棋会の最高峰、A級に在籍したままだった。(2001.9.28)


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 4

光の教会―安藤忠雄の現場

著者 : 平松 剛

出版社:建築資料研究社

発売日:2000-12

評価 :

完了日 : 2001年09月14日

 場所は大阪。時はバブル。茨木春日丘教会では、新しい教会を建設することになった。しかし、資金は必要とされる額の半分以下。牧師との確執、集まらない職人、建設会社社長の死これは、「光の教会」を実現しようとした、男たちの壮絶なドラマである…
 
 と、「プロジェクトX」風で始めてみました(^_^;)新しい教会を作るのに、どんな人が関わってどのように作るのか?そしてどんな苦しみや試行錯誤があるのか?本書の「解説にかえて」から抜粋すると「一建築の誕生を建築の内側にいる人間がその知識を駆使してノンフィクションとして描き出した」本です。
 
 この本の主人公ともいえる安藤忠雄。彼は高名な建築家ですが、大変ユニークな性格。彼がそそるテーマでなければ、どんな高額の設計料を払っても仕事を受けません。そんな彼が受けた利益はゼロの依頼、それが春日丘教会の「光の教会」てす。
 
 「光の教会」は四角い箱を十字架で切ったようなデザイン。その十字架から外の光が入ると、光の十字架のように見えます。変ったデザインを実現させるため、様々な人が奔走します。安藤忠雄設計事務所のスタッフ、建築会社、そして大工。建築家から出される難問に次ぐ難問。しかし、教会を実現させるために問題を一つ一つ解決しながら進んでいく姿は「モノをつくる素晴らしさ」を感じさせます。
 
 これもフラッと入った書店でどうしても気になって買ってしまった本ですが、とっても面白かった。建築とはどのようにして作られるのか、よく分かりました。安藤忠雄をはじめ、登場人物もとっても魅力的です。(2001.9.14)


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 4

心臓を貫かれて〈上〉 (文春文庫)

著者 : マイケル ギルモア

出版社:文藝春秋

発売日:1999-10

評価 :

完了日 : 2001年09月09日

偶然手に取った本が、すばらしい内容だったという事がある。私にとってこの本はまさにそれ。開いた瞬間その文に圧倒された。「恐ろしい夢をみた」で始まるこの物語は「ゲイリー・ギルモア事件」というアメリカで起きた殺人事件を中心に、ギルモア一家の呪われた系譜や運命が語られていく。著者はゲイリーの実弟であり、どうにか一家の運命から逃れられた一人だ。彼は迷路の中をさまようように、ひとつひとつ自分の聞いたことを積み重ねていく。
 
 「ゲイリー・ギルモア事件」の異質な所は、ゲイリーは裁判で死刑を宣告されるが、これ以上の刑務所生活を望まなかった彼は死刑にされる権利を州知事に要求する。ユタ州では執行される事はなく「死刑=終身刑」だったのにだ。この発言によって、執行すれば国家が自殺を幇助する事になると大問題を巻き起こした。だが、結局刑は執行される。
 
 とにかくこの本を一言で語るのは難しい。「現実は小説より奇なり」というが、この本はまさにそれだろう。ノンフィクションよりフィクションの方が上と信じていた村上春樹が、ノンフィクションに白旗をあげてしまった程なのだから。村上春樹はその後「アンダーグラウンド」などノンフィクションも手掛けたが、この本の影響が大きかったに違いない。
 
 人間には、心や体が傷付いた時に時間や愛情によって治癒する力が備わっている。しかし、どうしようもなく心が傷付いたときは治癒することができず、傷をかかえて生きていかなければならない。この作者はその傷を自らあけ、塩を塗り込むかのようにこの本を書いたのだろう。そしてそれしか彼が生きていく方法がなかったのかもしれない。その傷こそが「家族そのもの」だったのだから。
 
 なんともはや、重たい本だ。でも、それでも生きていくマイケルやもう一人の兄フランクに、私はなんともいえない愛情を感じてしまう。そこには人間の生きる力、そしてかすかな希望があるような気がする。 (2001.9.9)


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1.芦原直也 (2007/12/04)
はじめまして、芦原直也と申します。
『心臓を貫かれて』は村上春樹が訳していたので少し気になっていたのですが、それほどの名著だとは思っていませんでした。
後で入手して読んでみようと思います。素晴らしい書評ありがとうございました。
2.ぎんこ (2007/12/04)
コメントありがとうございます。
著者は加害者の家族で、暗い家族の歴史と因縁に苦しみながら、贖罪のようにこの本を書いてます。なので他人ごととして理論整然と書いた本とは違うので、読み手としてはいらいらすることも多いかもしれません。そこにリアルさを見るかどうかで意見はわかれると思います。出来れば余裕のある時に読むと良いと思いますよ。
 

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 1

ミスター・ヴァーティゴ

著者 : ポール オースター

出版社:新潮社

発売日:2001-12

評価 :

完了日 : 2001年01月01日

本書の帯に「ファンタジー」とあるが、それほどファンタジー色は強くない。。「空を飛ぶ」という能力が存在するという設定だけがファンタジー的要素で、基本的にオースターらしい世界観になっている。
 
 物語は主人公、ウォルト少年がイェフーディやイソップという黒人の少年、インディアンのマザー・スー、イェフーディの恋人であるミセス・ウィザースプーンといった個性的な人々に囲まれ、次第に心を開き家族となっていく話で人間味のある内容になっている。NY3部作よりは「ムーン・パレス」に近い感じかもしれない(私はこっちの方が好き)。
 
 ウォルト少年は空を飛べる技術を見につけ、舞台に立つようになって成功するのだが、お金持ちになってみんな幸せになりました…とはもちろんならない。帯にもあるとおり「14のとき、二度と空を飛べなくなっていた」ウォルトは、それからまた孤独になり、絶望した後にまた人と出会い再生していく。そのへんは淡々としているが、ウォルトを描くオースターの描写には暖かみがある。
 
 「欲しいものが大きければ、その分支払う犠牲も大きい」というのはラスト近くのセリフだが、この物語の本質をよく表していると思う。ウォルトの支払った犠牲、そして得たもの。それがこの本の中につまっている。


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ねじの回転デイジー・ミラー (岩波文庫)

著者 : ヘンリー・ジェイムズ

出版社:岩波書店

発売日:2003-06-14

評価 :

完了日 : 2001年01月01日

 映画監督として有名なヒッチコックはこう言ったそうです。「爆発させてしまえばそれは単なる爆弾だが、させなければサスペンス映画ができる」これ、雑誌のプレミアに載っていたんですが、名言です。ヒッチコックらしいですね。
 
 この「ねじの回転」では、まさにこの言葉がピッタリ。物語の中では、マイルズとフローラという兄妹は亡霊に引き付けられていますが、なぜそうなったのかマイルズが学校を退学処分になった理由など、いっさい明かされる事はありません。なんとなく事実は提示されますが、それも霧の向こうに見える風景のようにはっきりしないもの。
 
 それでいて、家庭教師と子供たちの駆け引きは、息づまるものがあります。頭が大変にキレる兄のマイルズは、家庭教師をあざ笑うかのよう。ラスト近くの「さあ、--これで二人きりになった!」にはゾゾゾーッ!
 
 そして衝撃のラスト。この幕切れはすごかった。アッケにとられてしまいました〜。まるで悪い夢から飛び起きたような、そんな気分になりました。
 
 最後にプレミア誌からもうひとつ。映画監督のルビッチからワイルダーへの助言。「答えは観客に出させること。そうすれば観客から愛される」
 
 「ねじの回転」は、決して答えはくれません。ですが「恐怖」の本質を感じさせてくれました。(2001)


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