小説・新撰組 (集英社文庫)
著者 : 童門 冬二
出版社:集英社
発売日:2003-12
評価 :
完了日 : 2008年07月06日
亡き継父の書棚 普段は注目しない三段目に 池波正太郎の『忍びの女(上・下)』と共 ひっそりと収まって在った一冊。そして僕にとっては初めての新撰組作品である。
作品は実質570頁弱に渡る長編時代小説だ。新参なりに少し調べてみたところ 内容は概ね(新撰組側に立った場合の)定説に沿って展開されており その中に “車一心” という架空人物を配してある。この「時代の腰巾着」とでも称ぶべき卑屈な浪人は 物語の冒頭 近藤勇が主を務める試衛館へ道場破りとして登場。以降 徹底して近藤ら旧試衛館員と対立する側に身を泳がせつつ ほぼ全編に暗躍する。愛すべき人物では在り得ないながら 勝ち負けや損得とは無縁の処で士道を貫かんとする新撰組とは絶好の対比を為して 効果的/印象的な登場人物ではあった。
又生粋の東人が描く日本各地の人物 とりわけ京の人間の気質には独特の解釈が見え隠れして興味深い。これも本作の特徴と言えるかも知れない。
物語は 来る将軍上洛警護の為の浪士隊公募に応じる決意を 近藤が多摩の試衛館員にて門下一同に宣言するところから始まる。以降 明確な立場の無いまま京の都の警備に励む新撰組の 内紛やそれぞれの恋物語や会津藩との信頼関係 薩長両藩の不透明な動向 幕府の時代への認識不足などをざっと描いて 著者は幕末という時代のあらましを我らに語ってくれる。池田屋騒動辺りで筆圧は最も強くなり その後は殆ど一足飛びに幕府滅亡までワープするかのようで その間にある近藤の処刑も沖田の病没も土方の戦死も 極々あっさりした語り口だ。それ故 新撰組作品としてはどうしても尻窄みな印象は拭えないところだろうが 元々主人公格の死に当たっての長口上や大立ち回りが好きでない僕にとっては 時代の概要と新撰組の輪郭が知れればそれで充分である。
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