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フィリップ・まろさんの読書ノート

童話が教えてくれるもの
童話を読むのがこっぱずかしい男は童話を読まないでいるこっぱずかしさを知らない。
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 1

ピンク!パール!

著者 : 村上 康成

出版社:徳間書店

発売日:2000-10

評価 :

完了日 : 2008年06月26日

ひれの色が鮮やかな桃色であることが自慢のヤマメ“ピンク”の物語の最終章です。

ヤマメは一般的に山奥の渓流で生涯を過ごします。
ところが稀に川を下り海に出る種が現れる。降海型と言います。
その種族も成長するとまた生まれ故郷の川に戻ってくる。ただし、体型が大きく違って。
渓流にい続けるヤマメが稚魚であるしるしのパーマークをその体側に残しているのに対し、降海型のヤマメはパーマークがすっかりと消え、身体つきもヤマメに比較するとかなり巨大化するのです。
そしてその種がサクラの頃に川に戻ってくるものを“サクラマス”、五月になってから戻ってくるものを“サツキマス”と呼びます。
ピンクはサクラマスでした。

桜の咲く頃に生まれ故郷の川に戻ってきた元ヤマメのピンク。
彼は恋人のパールとともに山奥のふるさとを目指します。
ところが川はピンクやパールが知っていた頃とはずいぶんと様子が違っていました。
砂防ダムができていたのです。
行く手を遮られて諦めてしまう仲間たち。
ピンクとパールはそれでもふるさとの渓流を目指してダムを遡行して行きます。
このあたりを表現した絵本の絵の鳥瞰図が実にいい。
「がんばれ!ピンク!パール!」
と声を掛けてしまいました。
滝となって落ちてくる水を懸命に遡上する二人。いや、2匹。降りしきる桜の花びら。
そして…最上流部へ。彼らが生まれ育った渓谷へ。
やがて生まれ出てくる彼らの子供たちのことを夢見て。

だけど彼らには自分たちの子供の姿が見られないんですよね。産卵と射精行動が終わると彼らは静かに死んでゆく。ただし、彼らの骸が川の栄養分となる。それが彼らの子供たちを育てることになる。目に見えない親の保護を受けて子供たちはすくすくと育っていく。

人間だって同じことなんだろうな。目に見えない親の愛情を受けて育っている部分があるのだろうな。生物って哀しくて、素敵である。


この感想へのコメント

1.はもる (2008/06/30)
こんにちは。
「あ!ヤマメ!!」と思い感想を読ませていただきました。
恥ずかしながら私がヤマメを知ったのは5~6年前です。
その数年で数や大きさも激減しているのが淋しいです。
幸いウチの子供は年1回ヤマメを見る機会があるので、この絵本と共に記憶に残ったらいいなぁと思いました。ぜひ子供と一緒に読んでみたいと思います。
2.フィリップ・まろ (2008/06/30)
はもるさん、コメントをお寄せ頂きありがとうございます。
親子が共通の趣味、話題を持っている、というのはいいものですよ。僕の場合、もう15年くらいも前の話になりますが、幼い息子と娘を連れて、長良川河口堰建設反対運動に参加して一緒に戦い、一緒に学び、一緒に遊んできました。
お時間があれば僕の読書ノートの『童話が教えてくれたもの』もしくは『天才?ボク本』の中の『読書は心の翼』も読んでみてください。
 

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ピンクとスノーじいさん

著者 : 村上 康成

出版社:徳間書店

発売日:2000-09

評価 :

完了日 : 2008年06月26日

この春に山奥の渓流で生まれた、ひれが鮮やかな桃色であることが自慢のヤマメ“ピンク”。

夏にはさまざまの体験をして成長をした。
夏の出来事については『ピンク、ペッコン』を読んでください。

冬。
水がとても冷たく、餌の乏しい季節。
ここでも弱肉強食の食物連鎖は途切れることもなく続けられている。
この冬を乗り越えたものだけに許される命の継承がる。

やっと見つけた餌も大型の仲間に横取りされる。しかしそのヤマメもさらに大型のイワナに捕食される。イワナの名は“スノー”。
イタチに尻尾を噛まれ間一髪のところをスノーじいさんに助けられる。

イタチに襲い掛かるイワナって、いるんだろうか。いるんだろうな。村上康成がそのあたりのところを調査もしないで描くはずがないもの。
幻の大魚、イトウのことかな。

あの日以来、姿を消したスノーじいさん。
尻尾の傷も癒え、新しい春が来た。命の息吹が山間のそこここから聞こえてくる季節の到来だ。

ピンクはこの春に生まれたヤマメの稚魚の群れに混ざって上流を向いて泳いでいる。
目が輝いている。
一年を過ごして春を迎えたヤマメの自信に満ちた勇士である。

遅ればせながら、僕はここで開高健が名著と呼ぶ『鮭サラーの生涯』を思い出した。


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ピンク、ぺっこん

著者 : 村上 康成

出版社:徳間書店

発売日:2000-08

評価 :

完了日 : 2008年06月26日

「おなか ぺこぺこ、はら ぺっこん」

いつもいつのときでも、おなかをすかせている、ひれの色が桃色の“ピンク”はヤマメの稚魚。

夏の初めの山奥の渓流に生まれ育つ。

ピンクはいつも仲間たちやたくさんの兄弟たちと群れをなす。

ヤマメの稚魚の群れが壮観である。
見開き2ページにざっと60尾強(ビールをやっつけながら読み、書き込んでいるので正確な数字はわからない。悪しからず)が絵本のページ狭しと書き込まれている。
黒くぱっちりした目玉と、体側にきちんと並んだ幼魚のしるしであるパーマークが印象的だ。

ピンクは山奥の渓流でたくさんのことを経験する。
狙っていた餌をひとまわりもふたまわりも大きなヤマメに横取りされたり、イワナに追いかけられたり、ヤマセミに狙われたり。大好物のカゲロウと思って飛びつくとそれはフライフィッシングの疑似餌であったり。

夕方、大好物のカゲロウが川面に大発生する。ピンクたちヤマメは水面から躍り出てカゲロウを捕食しようと懸命である。
このページも見開き。約90匹(ビールをやっつけながら読み、書き込んでいるので正確な数字がわからない。悪しからず)のカゲロウが川面を飛び交う。

そして…。
さきほど推定60尾(ビールをやっつけながら読み、書き込んでいるので正確な数字がわからない。悪しからず)のヤマメの群れを紹介した折には、みんな上流をむいて整列していた。これを魚の“向流性”というが、今度はちがう。それぞれがカゲロウを追ってめいめいの方向を向いている。著者がヤマメの行動学をしっかりと学んだ上でこの絵本を描いたことが判る。
あっちこっち向いた小さなヤマメたちの姿勢が躍動的で川面の水が裂けるのがよくわかる。

山間の渓流に夜が来る。ピンクたちヤマメの稚魚はまた隊列を組んで、上流に向かって整列する。

こんな一日が地球上では何万年も続いてきたのだろうな。
皆さん、想像しようよ。
今、この時にも、人知れず生物たちの命がけの営みが繰り返されていることを。



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 1

ようこそ森へ

著者 : 村上 康成

出版社:徳間書店

発売日:2001-04

評価 :

完了日 : 2008年06月25日

15年前、僕は長良川河口堰の建設に反対するダム・ファイターであった。長良川で決起集会があると決まって最前列で横断幕を掲げてシュプレヒコールを連呼する運動家であった。
長良川には固有種のサツキマスが遡上する。桜の頃に遡上するマスがサクラマス。これに対し、さつきの頃に海から遡上してくる種が発見された。それがサツキマスである。
そして河口堰建設反対派の旗印がサツキマスであった。
そのイラストを描いていたのが村上康成である。
それまで知らなかった村上康成のイラスト。僕はサツキマスの絵を見ていっぺんにファンになってしまった。固体を可能な限りデフォルメしているにもかかわらず、しっかりと特徴が捉えられている。しかも躍動的である。
僕が村上康成の絵が気に入っている最大の要因はその視点にある。
今回紹介した『ようこそ森へ』でもその持ち味が遺憾なく発揮されている。
森にキャンプにやって来た家族をカケスの目で捉えているのだ。当然のことながら視点は鳥瞰図となる。カケスを見上げているキャンプの家族。まんまるな目がバードウォッチングを超えて森の仲間探しの期待と好奇心を物語っている。カケスめがけてビスケットを投げつける少年。おっとっと、とばかりに羽ばたいて身をかわすカケス。デフォルメされたイラストなのに迫真の瞬間を描ききっている。

この絵本も、我が不朽の名作『ウズラ絵日記』捜索中に押入れの沖積層から転げ出してきた一冊である。十数年ぶりに手にとってみて、これは是非とも紹介しておかねばならないと感想を書き込んだ次第である。


この感想へのコメント

16.パル2パパ (2008/06/30)
いずれ、両親二人か、それともどちらか一人が今のまろさんと同じシチュエーションを繰り返します。そん時になったらこんな余裕は無いでしょうね、きっと。
17.フィリップ・まろ (2008/07/01)
あのね。煮詰まるよ。驚く。我がことながら。万全の自信とまでは言わないものの、守備万端、と思っていた。しかし、予測不能な出来事が勃発する。まるで同時多発テロみたい。どこから片付ければいいのやら。認知症+難聴=コミュニケーション・ゼロ。意思の疎通が一切図れない。こんな要介護者との関わりをどう持てばいいのか。日々戦い。日々研究。この人を介護できれば僕は一人前になれると自身を鼓舞しています。

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山のいのち (えほんはともだち―立松和平・心と感動の絵本)

著者 : 立松 和平,伊勢 英子

出版社:ポプラ社

発売日:1990-09

評価 :

完了日 : 2008年06月23日

ryoukentさんのリクエストに応えようと、10年位前に書いた『ウズラ絵日記』を探して“書庫”と言う名前の押入れを引っ掻き回していた。
残念ながらあの不朽の名作『ウズラ絵日記』は見つけられずに本日の捜索は打ち切りとなった。
が、その余波を駆って懐かしい本が出てきた。それがこの『山のいのち』である。

30ページの絵本。
しかしその中にどれほどたくさんの命が書き込まれていることだろう。

主人公の静一は不登校の小学生。この夏、パパとママが外国に出張する。静一は父親の生まれ故郷の家に預けられる。そこで一人暮らしているのは軽度認知障害(たぶん)の祖父。祖父は静一を見るなり「良一かあ。かえってきたんかぁ」と父の名前を呼ぶ。その後、ずっと祖父は静一を良一と勘違いしたままに物語りは進行して行く。
祖父は静一を連れて、鶏の卵を食べたイタチを山奥の渓流に始末しに行く。ナイフで一思いにイタチを引き裂く。祖父はイタチの魂が山に帰っていったことを静一に教える。祖父はそのイタチの皮を巧みに操って、渓流のヤマベを網に追い込んでゆく。

とただそれだけの話なのだが、いろんなことが読み取れる作品だ。
土地と人との関係。一人暮らしの老人。自己表現をしない不登校児。風習としきたり。山のいのちの連関。魂の行方。

原稿用紙15枚程度の作品の中にこれだけの広がりをみせられるのは童話ならではだろう。

「山の中のものはなにもむだがなくて、ぜんぶがぐるぐるとまわっているんだよ」

祖父が孫に教える言葉が山のいのちの鎮魂歌となり、賛美歌となる。

この日本から失われつつある里山。あの里山の魂たちはどうなってしまうのだろう。


この感想へのコメント

7.KUMI (2008/06/30)
最近、激しく物忘れをするんですね・・・。(年かな?)
それを、無理やりポジティブに考えるとするなら・・・
嫌な事があった時は寝ます。
起きたときは、もう忘れているから~♪♪
(KUMI式☆激しい物忘れ活用法)

今日は、まろさん元気かな?
8.フィリップ・まろ (2008/06/30)
ここ3日ほど母親の認知症の具合がひどくて、めんどうみきれなくて…。こちらも一緒になって大声を上げたり、手を出したりしてしまって…。駄目な自分を再確認しているような事象に出くわすことが多いのです。いわゆる自己嫌悪ですね。
今日は非番です。ばあさまのめんどうみつつ、ビールをやっつけちゃいました。少しリラックスできました。ご心配をして下さりありがとう。いつも感謝しています。

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読書は心の翼―親と子とわたしの読書体験

著者 : 井上 路望,志茂田 景樹,折原 みと,那須 正幹

出版社:ポプラ社

発売日:2000-07

評価 :

完了日 : 2007年09月28日

そうか、この本が出版されてもう7年にもなるのだなあ。「2000年こども読書年記念出版」と帯びの表に記されている。
帯び裏には著名な作家たちのコメント。紹介しよう。
 
「読書という習慣が、世代から次の世代へ、大切なものを伝えてゆくための、有効な手段であることは確かだ」・・・・・折原みと

「読書とは、その人の一番よい時期に出会ってこそ名著となりうるし、それに出会えた私は、こよなく幸せだったとつくづく思う」・・・・・那須正幹

「『本』は知識をたくさん持っている人や、たくさんの経験をしている人と話すことと同じくらい、それ以上の『発見』『気づき』ができると思う」・・・・・井上路望

「メルヘンの世界には、世代差からくる価値観のちがいを超えて、等しく人間として生きていくうえでとても尊いメッセージがちりばめられている」・・・・・志茂田景樹

ううむ。皆さんはそう考えておられる。そして当時僕はこう考えていた。

「家の中でずっと本ばかり読んでいる日には、父親の権限を行使して、必ず一度は子供たちを外へ放り出す。……本と遊んだ後は、風に学んで来い」と。


この感想へのコメント

12.フィリップ・まろ (2008/03/15)
オヤオヤさん、ありがとう。
この欄への書き込み、5ヶ月ぶりです。
忘れていた大切なものを思い出したような。
それでもう一度最初からこの感想、コメントを全部読み返してみました。わりといい事言ってますね、僕って。
でも、それもこれも著作を読んで新しい触発を与えてくれる人が居るからこそです。
わざわざ図書館まで足を運んで自分の文章を読んで下さる人が居るという事実。こんな有難いことはありませんよ。
13.はもる (2008/06/30)
こちらにもお邪魔します。
残念ながら我が町の図書館にはこの本はなかったのですが、フィリップ・まろさんの素敵な言葉に出会えました♪
これらかも色んなお話を聞かせて下さい。

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