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ビタミンF
著者 : 重松 清
出版社:新潮社
発売日:2000-08
評価 :
完了日 : 2008年09月15日
『ビタミンF』とは実にうまいネーミングである。
『点滴』でも『カンフル』でも『頓服』でもない。かと言って『漢方』でもない。
ビタミン剤は特効薬のような効き目は無い。
とある疲弊部、もしくは脆弱化した箇所にのみズバッと効果を見せる。
ビタミンAじゃなく、B群じゃなく、Cとも違う。
『F』
Family,Father,Friend,Fight,Fragile,Fortune....
ビタミンFの定義は人それぞれ。そしてそれぞれの心の弱った部分を活性化する。
7編の短編集からなる。
収録されている第2編。『はずれくじ』の父である主人公の修一と息子勇樹少年の関わりに僕の息子が中学生だった頃を思い出した。また、僕が中学生でまだ若かった父親との関係をも考え合わせて読めた。
第4編『セッチャン』には胸が締め付けられた。
セッちゃんは学校で毎日クラスの子からいじめを受けている。それを逐一両親に話す加奈子。実はセッちゃんは架空の同級生。加奈子は自分が受けているいじめをセッちゃんに投影している。そのことが読み始めてすぐに読者にはピンとくる。しかし加奈子によるセッちゃんの描写が客観的であるから読者は胸が痛む。最後にはセッちゃんを転校させて自分の一つの時代にさよならをしようとする加奈子を思い切り抱きしめてあげたくなった。
『なぎさホテル』は離婚を間近に控えて家族旅行をする一家の話。設定はありきたりで、僕自身よく似た経験はしている。僕の場合がそうであったように物語もハッピーエンドで後味は良かった。
『かさぶたまぶた』は優秀な成績の娘がボランティアで行った聾学校でしくじったことに端を発する。自己評価していた自分と客観視した自分の違い。
完全主義で会社の部下や周囲から、この人こそ大人、と認識されて自分でもそれが己のアイデンテティと思い込んできた父である自分。すべてをかなぐり捨てて自分の欠点と恥ずかしいところを家族の前で曝け出した時、家族に新しい関係性が生まれた。
最後のオチはお約束の著者と読者の了解事項。でも読後感が良くてそれも、あり、だと思えた。
『ビタミンF』は大きな改善の認められにくい栄養剤ですが、精神疲労時の心の均衡を水平の位置に戻してくれる小説です。
この感想へのコメント
| 1.ベアandリーチェ (2008/09/15) |
重松作品の中ではワタクシ的に1、2位を争います。
どの年代の人が読んでもどこかに自分を見つけられそうで。 |
| 2.フィリップ・まろ (2008/09/15) |
そうですか、ベアさん的には重松清の代表作の一つなのですね。
今、『青い鳥』を読んでいます。「ハンカチ」にやられ、「おまもり」で涙腺をゆるゆるにされてしまいました。人が人を許すこと、許されること、重松の大変大きなテーマなのでしょうね。
村内先生、たくさんの人を許し、たくさんの人に許されて来た半生だったのだと思いました。 |
| 3.ベアandリーチェ (2008/09/16) |
重松作品は最近ちょっぴりあざとさが鼻につきますが。
「どうだ こう書いたら泣けるだろ」的な。
『青い鳥』にやられておられるのなら次は『きみの友だち』をどうぞ。
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| 4.フィリップ・まろ (2008/09/17) |
「どうだ こう書いたら泣けるだろ」的あざとさを求めている読者である僕にはピッタリではないですか。
『きみの友だち』ですね。
おーし、わかりましたあ。
泣かせてもらいましょう。
もうこうなったら、徳光和夫みたく、読書界の泣き職人、フィリップ・まろを目指しましょうぞ。 |
| 5.ベアandリーチェ (2008/09/18) |
そかそか あえてあざとい重松節を求める読者もいるってことを忘れてました(^^;)
重松「季節風」新刊出ましたね。最新刊は未読ですけど。 |
| 6.フィリップ・まろ (2008/09/18) |
さすが、時間的書店員43歳改め17歳さんだ。
消息通ですな。
この秋は『重松読書週間』と称して、突き進みます。
フィリップ・まろ15歳をさめざめと泣かせてやってください。 |
| 7.ベアandリーチェ (2008/09/18) |
| 季節風の前に『気をつけ!礼』ってのも出ますぜ 旦那。 |
| 8.ryoukent (2008/09/20) |
『季節風』既刊の二冊は読んだ。
『ミシシッピ・リバー』でちょっとツンとした。
三冊目はどうなのかなあ?
わたしも、あざとくてもツンとしてドライアイの解消になるような気がする方面の本がよろしいですので。 |
| 9.ryoukent (2008/09/21) |
『気をつけ、礼。』と『ブルー・ベリー』を手に入れたよ。グフフ
「礼」のあとの 。 がPoint! |
| 10.ryoukent (2008/09/24) |
『ブルーベリー』はもう読んだ。
『気をつけ・礼。』はこれから。うん楽しみだ。
どっちも短編私小説風でして、1.5時間くらいで読めてしまう。なんだかもったいないです。 |
| 11.フィリップ・まろ (2008/09/24) |
今更ですが、僕はまるで速読が効かないのです。
たぶん、たなぞう界でも一番の遅読だと思う。
90分で一冊なんて有り得ねえ~と申せます。
娘は生来の速読者。息子は小学生時代に進学塾で速読トレーニングを積んで習得。僕は小学生の頃から終始一貫した遅読者。
読むのが遅いくせに忘れるのは人一倍早い。
ですから、読了後すぐに感想を書かないと1週間も経つともうさっぱりです。 |
| 12.ryoukent (2008/09/25) |
まあ、わたしも一冊に集中できるのは1時間が限度ですね。よほど面白い場合で90分かな(こないだ読んだ『ワイルド・ソウル』垣根涼介 がそうだった。これは面白かった)
なので、最近は3冊ぐらいを同時に読んでます。
一冊目で限界がくると、Coffee & 煙草ブレイクのインターバルをとって、それから次の本に取り掛かる、という具合です。本が変わると結構いけるもんです。 |
| 13.フィリップ・まろ (2008/09/25) |
速読が効く人はやっぱり頭の回転が速いんだと思う。
口惜しいけどそれが事実だと思う。
でも口惜しがってたって、僕の読むスピードが上がるわけではないので、ここは「ちぇっ」と捨てゼリフを吐いてすごすごと引き下がるのであった。 |
| 14.ryoukent (2008/09/27) |
まろさん ここのところ重松作品多いね。
この『ビタミンF』も前出の『青い鳥』も大変に面白い感動物語です。
が、しかし最近出た重松の本達は少し変。
私小説風の短編作品集を三冊読んだけど、しまいには☆が3つに減っていた。
重松作品はいままでつ☆3つってことは無かった。
同じような物語ばかり書いてないで違うジャンルに挑戦しては、と生意気にも思った。 |
| 15.フィリップ・まろ (2008/09/29) |
確かにいくら大好きな食べ物でもそればかり食べていたら食傷することがあります。
『きみの友だち』も最初のうちはそうだった。でもうまく最後を締めくくった。一本の作品としてしっかりとしたポジションを得たと思いました。 |
| 16.ryoukent (2008/10/03) |
そうだね。同じ作家をあまりにも続けて読むとそういう傾向があるね。
わたしは読みたいシーナ本Stockがあるが、間を開けて読んでいる。
しかし、重松のLastの展開はホント うまい ね。 |
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