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フィリップ・まろさんの読書ノート

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 2

風の物語 Alaskan Dream 2 (Alaskan Dream 2)

著者 : 星野 道夫

出版社:阪急コミュニケーションズ

発売日:2002-12-20

評価 :

完了日 : 2007年10月07日

図書館でこの本を探し当てた。帰り道。自慢のリサイクル・チャリ『ブルー・インパルス』号を城跡の公園に停める。僕の大好きな“渚にて”の裸婦像の前の芝生の中のベンチに陣取る。

『Alaskan Dream 風の物語 Ⅱ』のページを開く。
なんとここでのっけから、僕が永らく捜し求めていた言葉と出会う。

「ぼくたちが毎日生きている同じ瞬間、もうひとつの時間が確実にゆったりと流れている。日々の暮らしの中で、心の片隅にそのことを意識できるかどうか、それは天と地の差ほど大きい」

ずっとそのことを考え続けていた僕の放浪時代だった。
今、居るここじゃない所で起きている何事かに憧れて旅を続けていた。
しかし、考えてみると、それは、何処の土地へ行っても留まることの無い、求不得苦の欲求でしかない。

ならば、自分の全身全霊を賭してイマージネーションを働かせて、もうひとつの時間の流れを探すことだ。

著者の言葉に力をもらって、僕は愛車ブルー・インパルスのペダルを力強くこいで家路についた。


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5.KUMI (2007/10/12)
そうなのだ。話し合いの道を選ぶべきなのだー!!
思わず、乗ってしまいました♪
そうですよね。私もそう、思いま~す!
人って、見た目じゃわかんない。話して初めてわかるんですよ。そして、そして、わかりあえる人とめぐり合えた時の感激ったら、ないですよね!おしゃべり好きも役にたってるのかも知れませんね。
6.フィリップ・まろ (2007/10/12)
上記の「それでも…」の一行詩は、神を唯一の存在とする異教徒の間の紛争が勃発したときに書いたものです。同時期に我が家では夫婦喧嘩が家庭内を焼き尽くすほどに炎上していました。暴力で他者をねじ伏せることの虚しさ。自分を解って欲しいのなら、話し合う努力を惜しんではいけない。説得に失敗しても何度でも試みる。一度席を外して深呼吸してもう一度。成功するまで何度でも。うまくいくことを信じて。これが僕のやり方。

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 7

もものかんづめ

著者 : さくら ももこ

出版社:集英社

発売日:1991-03

評価 :

完了日 : 2007年10月06日

幻しの名著『永沢君』を求めてヤフオク探索中、おまけのようにくっついてきた5冊のうちの一つです。
『いきもの図鑑』以来何年ぶりかに、さくらももこのエッセイを読みました。
面白いじゃないですか。
テレビの『ちびまる子ちゃん』が少女時代のエピソードの上澄みだとしたら、エッセイは底にへばりつくようにしてとごってしまった青春時代の残滓みたい。
あの頃、が事実なら、この頃、だって真実なのだろうな。
僕は好きです、こういうの。
ただ、どうも僕の中で、“さくらももこ”と“群ようこ”がごっちゃになっている。
どちらも好きだからまあいいけど、区別がつかないので困ってしまいます。


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17.KUMI (2007/10/17)
あー、それは私も同じです!(いや、まろさん年上なのに
敬語も使わず本当に失礼な奴で、申し訳ないと思っているのですが。)何かある度に(まろさんなら、どう思うかな?)
などと、思うことが多くて読書時間を減らしていないかなと
気にしつつも、ついついコメントいれてしまう私でした。
でも、まろさんがそうおっしゃって下さるなら、ますます遠慮無用でよろしいでしょうか?
18.フィリップ・まろ (2007/10/17)
ますます遠慮無用でよろしいですとも。
パニック障害以来、薬のせいか、ベッドに入って数ページ読むと活字がサーカスを始めるのです。しかし、あの白河夜船を漕ぐ舟人状態の心地の良いこと。
パニック障害が明らかになるまでは、眠れないわ、うとうとすると仕事の失敗の夢にうなされるわ、恐怖でさんざんでした。
それを思うと、友達がいて、お話ができて、好きな本を読みながら眠りに就く幸せ。有難いです。

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 1

LOVE in Alaska 星のような物語

著者 :

出版社:小学館

発売日:2006-08-03

評価 :

完了日 : 2007年09月23日

写真集の1ページ目を開くと、イヌイットかインディアンか解らないけれど、5人の子供たちが草原に寄り添っている写真。そのキャプションがいい。

「寒いことが、人の気持ちを暖めるんだ。離れていることが、人と人を近づけるんだ。」

ああ、もう、僕にはこの1ページを与えられただけで満足、って感じです。
しかし、写真家が力を込めて命懸けで撮影した作品集。最期までじっくり、ゆっくり、アラスカの大自然を満喫、堪能させてもらいました。

そして、気付いたこと。それは、人間であれ、ヒグマであれ、キツネもセイウチもシロクマも、親子が寄り添っている姿が最も美しくて感動的だということ。今夜、高校生の娘が帰ってきたら、「ごろにゃ~」と寄り添ってみようかな。「何だよ!オヤジ。キモイなぁ!」って言われるのは目に見えているか。

最終ページがまたいい。真の闇の中、焚き火に手をかざす著者。最期にオーロラと星と月明かり。地上には針葉樹林に囲まれた一軒の民家の明かり。

「日々生きているということは、あたりまえのことではなくて、実は奇跡的なことのような気がします。」


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8.あんこ (2007/10/03)
どうしてもまろさんのコメントに感想を入れたかったので、書きます♪ 私と父も、まろさんと娘さんと同じく仲がいいんです!しかも会話が似てますね~笑 私の父はどうしてか「アルバス・ダンブルドア」が覚えられません笑 まろさんはどうですか?^^
そういえば。。ハリポタ最終巻は名前と単語がすごいことになっていました!日本語訳が出たらぜひ娘さんのチェックを受けてくださいね!
9.フィリップ・まろ (2007/10/03)
どうしてもあんこさんのコメントに感想を入れたかったので、書きます♪
残念ですが、「アルバス・ダンブルドア」は、ただ一人、僕の得意な登場人物です!自分の言語趣味に合った言葉の並びってありますよね。昔、アレックス・ヘイリーの小説『ルーツ』に“クンタ・キンテ”という登場人物がいました。僕の友人は何べん教えても“キンタ・クンテ”って言うのです。だんだんと僕も訳が解らなくなってきたのを覚えています。

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 2

星の王子さま (岩波少年文庫 (001))

著者 : サン=テグジュペリ,内藤 濯

出版社:岩波書店

発売日:2000-06

評価 :

完了日 : 2007年09月13日

調子が悪くて、四日間会社を休ませてもらっています。よほど疲弊しきっていたのでしょう。毎日14時間くらい眠っています。長い長い眠りの合間に、読んだ本がこれです。あまり刺激的じゃないもの。頭が混乱しないもの。疲れないもの。読後感が胃もたれしないもの。これが選定基準でした。
少々哲学的な思索を展開する場面はありましたが、現実から一時降りていたい身には程よい命題ではありました。つまりもっかの解決し難い現実問題を忘却させて、隣の星のことを考えなさい、と、やさしい方の問題にすり替えてくれているようでした。キャパシティを遥に超えて、煮詰まって、メルトダウンしてしまった僕のひ弱な頭脳に『星の王子さま』が無邪気に漏斗から水を差してくれました。


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6.かつら (2007/09/15)
遅ればせながら、お体の調子はいかがでしょうか?ゆっくりのんびり、無理なさらずに。これからも楽しみにさせていただきます。
7.フィリップ・まろ (2007/09/15)
かつらさん、お気遣いありがとう御座います。
映画の『阿弥陀堂だより』『明日の記憶』『博士の愛した数式』(これは少し違うけど)を地で行くような危い夫婦ですが、どうにか支え合って暮らしています。
皆さんのあたたかい眼差しが僕ら夫婦に勇気と希望を与えてくれます。

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 21

国家の品格 (新潮新書)

著者 : 藤原 正彦

出版社:新潮社

発売日:2005-11

評価 :

完了日 : 2007年09月09日

図書館の貸し出しの順番がようやく巡ってきた。発売から2年近くもかかっての読書です。まあ、当初、大して興味も無かったし。熱くなりやすい僕にとって、ブームが過ぎてからの読書は冷静な判断を下す上では良かったかな。

まず、この本の優れているところは、何たってタイトルでしょう。『国家の品格』ですぞ。この本が発売された当時、いや、それからこっちも、ニュースのネタとして登場する人物たちの下品極まりないこと。「お金儲けは悪いことですか?」と反論していた人がいた。僕はお金儲けは悪いことではない、と判断する。ただその方法論の問題である。彼らは瞭かに見失ってはいけないものを百万光年彼方に置き去りにしていた。急速に台頭してきた若手起業家たち。日本中が、もうすこしで「企業経営はかくあらねば」なんて信じてしまいそうになった。彼ら若手の企業家たちに根本的に欠けていたのが『品格』であった。しかし、この品格の問題は彼ら若手企業家たちだけに欠けていたものではなかった。日本国家それ自体の品格が失われようとしていた。

もう一度タイトルを書こう。
『国家の品格』
新鮮だった。デフレ・スパイラル以降の日本経済。焦れども焦れども上昇気流に乗れず、泥沼の中の行軍が続いた。ヤケッパチになりそうな中小企業の社員のもやもやした胸の中にこのタイトルがストレートに飛び込んできた。とても新鮮な響きだった。

著者は、日本は本来「武士道」と「情緒と形」の国であった、と解く。同感である。また「もののあはれ」(著者は「もののあわれ」と表記している)が日本人の精神世界の中枢である、という。まったく同感である。

しかし、「主権在民には大前提として、国民が成熟した判断をすることができる」と言う辺りから、少し様子が違ってくる。成熟した判断をすることのできる真のエリートを育てるのが急務、とする。そして、これは恐らく筆が滑っちゃったのだと思うけど「はっきり言えば、一万人の殺人犯がいても、先進国家はなんともない。しかし、一万人のエリートがいなかったら潰れる」と言い切る。
おやおや、である。
文化論においては賛同するところが多いのだけれど、国家観となると頷けない部分が多いな。

ナショナリズム(愛国心)とパトリオティズム(祖国愛)の違いを打ち出すことで、国家主義に、さらには国粋主義に偏向しない自己の立場を書いておられるが、どうも暴走してしまうきらいが感じられる。

読むべきところはたくさんある。間違いなく。
しかし、ちょっと距離を置いて読んだ方が良いところもあるように思った。


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 81

一瞬の風になれ 第二部

著者 : 佐藤 多佳子

出版社:講談社

発売日:2006-09-22

評価 :

完了日 : 2007年09月08日

いやいや大した新人である。陸上競技、とりわけスプリントの楽しみ方を、いつの間にか読者に教えながら、物語を展開してゆくこの手腕。競技のルールや見所についてもう随分と前から僕は知っていたかのように錯覚する。しかも自分自身がトラックの上を走っているような感覚さえ与えてくれる。僕はスプリンターの繊細な肉体的変化や心的状況まで読み取っていた。
すごいぞ、と思ったのは、谷口若菜が短距離から中長距離に転向して漏らした言葉。「私、今年は手で触らなかったよ」。そうなのだ。青いタータンのトラックは夏場焼きついて手で触れるとやけどしそうに熱いのである。僕も初めて知ったことだけど。種目を転向すると言うことは、つまりそういうことなのである。新たに受ける感覚と失ってゆく感覚。このあたり、よくぞ作者は書き込んだものだ。それもさりげなく。
100分の1秒を短縮するためのスプリンターたちの努力もよく描けていた。
それぞれの選手たちの家族が登場することで、さらにストーリーに厚みを増す第二部「ヨーイ」。
残念なのは、兄の身に起こった出来事。そうきちゃったか、と言う感じです。「序・破・急」の破。「起承転結」の転。これにちょっと疑問を持ってしまいました。なんか、もったいない、という気がしました。第3コーナーで突っ込みすぎたかな。
でもまだまだ勝負はこれから。最終コーナーをうまく切り抜け、ホームストレートで一気に加速してくれるものと信じて第三部「ドン」に入っていきましょう。


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 21

アサッテの人

著者 : 諏訪 哲史

出版社:講談社

発売日:2007-07-21

評価 :

完了日 : 2007年08月15日

本日(8/15)の中日新聞(東京新聞系)の“週刊読書かいわい”の清水良典が書いた書評に出ていた。
風変わりな叔父をモデルに小説を書こうとしている小説だそうな。
何よりも興味深いのは、その小説の主人公となる叔父がかなりの変わり者なのである。「ポンパッ」とか「チリパッハ」「タポンテュー」とか意味不明の言葉を発するらしい。これには驚かされた。実は、僕がそうなのである。自分でも「頭がオカシイのでは」と心配になることしばしば。そんな心配をしていたことをさらりと忘れてしまうこと常々。
「『意味』から脱走する自由な精神、これが『アサッテ』だと叔父は悟る」ことになる。
あ~、読んでみてぇ~。
自分の謎を解く小説になるやも知れぬ。

さて、月日は流れ季節は巡り、神無月も半ばを過ぎ漸く読みました『アサッテの人』

街の図書館じゃあ借り出すのに何十人待ちとかで一向に埒が明かない。そこで僕は、髪は薄い(無い、が正しい)が、中身は濃い我が頭で次なる入手経路を確保。娘の高校の図書館からの入手を敢行。予約から10日程度で借り出しに成功しました。

しかし、なんで芥川賞は何時も何時もこうもわけのわからない、、感動を呼ばない作品にばかり与えられるのだろう。選考基準の中に、「一般人が呼んで『オモシロイ』と感じさせないこと」とかの条文でもあるのかね。まるで『現代詩』みたいだなあ。一般読者を拒絶して、できるだけ少数のワカル人々とだけで表現世界を共有すること、これが現代の高尚な文学なのだろうかなあ。

『アサッテの人』にはとても興味深いことが書かれていたし、僕の中から突然飛び出してくるスリジャヤワルダナブラコッテやノヴァヤゼムリアなんて地名、おんあぼきゃべいろしゃのうまかぼだらまにはんどまじんばらはらはりたやうん、とか、なあまくさあまんだあばあさらなんせんだんまあかろしゃあなあそわたやうんたらたかんまん、と言った真言が突発的に口をつく秘密を明かしてくれるものと思っていた。いや、さらに深く「チャドマニー」と意味不明の言葉を発する僕の心の深部を垣間見せてくれるものと期待していた。
また、般若心経の最期の一節。「ギャーテイ ギャーテイ ハーラーギャーテイ ハラソウギャーテイ ボージーソワカ」は翻訳不可能な言葉であるそうだが、ここらへんまで『アサッテの人』でそれなりの見解を示して欲しかったね。

残念ながら僕の期待には答えられる内容ではなかった。っていうかあ、このプロットがあればもっと面白い小説が書けたんじゃないの。
社会の暗部に隠れ潜む“チューリップ男”を探し出し『アサッテ』の意味するところを人類の存亡に関る問題にまで発展させるとか。
発想と着眼点が面白いだけに、つまんない芥川賞にしてしまうのはもったいなかったね。


この感想へのコメント

5.KUMI (2008/09/26)
じゃじゃじゃ~ん♪
他の人のとこで、この本の書評読んでたら、まろさんの名前みつけたんで、嬉しくなって思わず寄り道です♪
(えーと、つまりそれだけ)

そうかー。昨年の芥川賞作品であったかー。
了解!本の概要もわかりました♪
やっぱり、まろさんとこが一番だなー♪
6.フィリップ・まろ (2008/09/26)
おやまあ。
こんなところでお目にかかろうとは。
コメントも1年ぶりじゃないですか。
でも意外なところで出会うとなんだかトキメキますね。

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 9

きよしこ

著者 : 重松 清

出版社:新潮社

発売日:2002-11

評価 :

完了日 : 2007年08月14日

吃音の少年のビルドゥングス・ロマンス、と言ってしまっては、実際に障害をかかえて今を生きている少年にしてみたら、「成長物語だって!?」と怒られるかもしれない。しかし、確かにこの少年は各章で、さらに言うならば、行を追うごとになにがしかの成長を遂げている。

『きよしこ』
何やら尻の落ち着かない変なタイトルである。『きよし、この夜』を『きよしこ の夜』と勘違いしていた幼い日の少年に由来する。『きよし』は少年の名前でもあり、また少年が発声するときに決まって詰まってしまう「カ」行の言葉。少年は自分の名前を紹介するときに自分の最大の弱点を晒さなければならないのである。つまり、自分こそが言葉としての最悪の恐怖の対象なのである。それと「きよしこ」は発声上の吃音と同様に、文節上の吃音であると言えるかもしれない。
しかし、考えてみたら、思考的吃音者は僕を含めて少なからずいると思う。その証拠に、ここぞ、と言うときになると決まって言葉が出てこない。自己を表現し切れずに、もやもやした思いに苛まれることしばしばである。「自分の思っていることがもっと素直に的確に言葉にできたら」といつも思う。つっかえつっかえ、どうにか最後まで言い切ってみると、また別の誤解を招いていたり。それでも、人は他者と何らかの方法でコミュニケーションを取らねばならないのである。理解しあわなければならないのである。相互理解の道への努力は決して絶やしてはならないのである。


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 31

オロロ畑でつかまえて (集英社文庫)

著者 : 荻原 浩

出版社:集英社

発売日:2001-10

評価 :

完了日 : 2007年07月16日

読むのに1週間以上もかかってしまった。一気に読めればもう少し面白く読めたのかも。やれ営業、集金、ISO、接待交際
、苦情処理とうるさくてかなわないのであるよ、お父さんは。
荻原浩の作品は『明日の記憶』がかわきりだったので、『オロロ…』の筆致と展開は意外だった。引き出し、持ってる人だね。各章のタイトルが広告業界の常用語になっている。もっか自分が生業としている仕事じゃない世界を疑似体験するのは楽しいものである。タイトルと内容がリンクする章もあれば、遠ざかってしまう章もあるが。
超過疎化にあえぐ牛穴村の村興しに立ち上がった青年会とタッグを組んだのは弱小零細倒産寸前の広告代理店。マスコミを巻き込んだスラップスティック、ドタバタ喜劇の始まりだ。
巻末の解説文によると、井上ひさしがえらく褒めていたとのこと。さもあらん。若い頃集中的に50冊ばかり井上ひさしを読んだけど、うーん、プロットが似ている。だから、決して嫌いじゃないけど、これ前に読んだような、って感じてしまうところが出てくる。
なんのかんの言いながら、ユーモアお笑い小説には救われています。実生活、実業の世界でお父さんたちはぺちゃんこにされながら家族のために頑張っているのです。逃げ場所を創ってくれる小説家には感謝しております。


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 81

流星ワゴン (講談社文庫)

著者 : 重松 清

出版社:講談社

発売日:2005-02

評価 :

完了日 : 2007年07月15日

みんなの感想を読んでいたら、読みたくなってきた。四十前後のサラリーマンなら同じような経験をしたことのある人が少なからず居るはず。『天国までの百マイル』に続く回復の物語なのだろうか。


8月5日読了。
人生がうまくいっている人、或いは、最高とは言わないまでも自分の思い描いた通りの人生を送ってきた人にはちょっと理解しがたい部分があるかも知れない。

妻はテレクラにはまり浮気。息子は私立中学受験の挫折からいじめに合い引きこもり、家庭内暴力も。自分は永年勤続の会社をリストラされる。
逃げ道を失い、行くも地獄なら戻るも地獄の38歳のサラリーマン。「今夜死んでしまいたい」とまで思い詰めた主人公の目の前に現れたのがワインカラーのオデッセイ。そして深夜のドライブが始まる。人生の岐路となる重大な地点目指して。果たして人生のやり直しはできるのか…。

人生の真相や家族の絆をより鮮明に描くために抉り出された過去への悔恨が辛過ぎた。『カズにやり直させてやってくれ』チュウさん同様に、章を追うごとにボクもその気持ちが強くなる。それはもしかすると自分の半生をカズに投影していたからかもしれない。
しかし、流星ワゴンの運転手も同乗者の少年も、著者の思惑を堅く守って聴き入れてはくれない。過去に積み上げてきた一つ一つの原因が今、結果となって実体化いている。「それだけのことをしてきたのはあなたでしょう。そう、やすやすと取り返せるわけが無いじゃないですか」とでも言うかように。
しかし、救われなくてはいけない。救いの手が無くてはボクが浮かばれない!
文学的にはここで人間の諦念や人生の断念が生じ、昇華されて云々となるのだろうが、そんなこと知ったこっちゃ無い。救われてこそ、読み物じゃないか。実人生の辛酸を嘗め尽くしてきた人々に勇気と希望、安らぎと慰謝を提供してこそ小説じゃないか!

熱くなってしまった。
開け放たれたパンドラの匣の底からよれよれになった小さな希望が出てきた、そんな最後だったが、再生の道は開かれた。



この感想へのコメント

1.でこぼこハムスター (2008/11/07)
まろさ~ん
ようやく私もこの本読みました!!
感想は自分のとこに書きますが、今この年齢でこの本に出会えてよかったな~って思いました。
もっと若かったらまだ理解出来ない部分が多かったかも。
2.フィリップ・まろ (2008/11/07)
でこハムちゃ~ん
やっと君もこの本を読んでくれたね!!
僕が重松清に初めて出会った作品です。
その後、重松巡礼の道が続いています。
 

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 5

介護入門

著者 : モブ・ノリオ

出版社:文藝春秋

発売日:2004-08-26

評価 :

完了日 : 2007年07月15日

古本屋で見つけたけど、荻原浩の本2冊を優先して購入してしまった。でも、登録のホームヘルパーであるボクにはやっぱり、とっても気になる作品。寄せられていた感想は一つきり。それもあまり思わしくない様子。それでも介護現場に身を置く活字中毒者としては、どうしても捨てて置けない。だれも面倒を見るものの無い作品であれば、ボクがケア致しましょう。


上記の読書前の感想を書いて2週間。本日(7/28)読了。明日、図書館に返却予定。

この本、やはりプロのホームヘルパー(『登録』つまりパートだけどね)であるボクがケアしないと、世の読書人の誰にも顧みられないと思った。作者と思しき主人公が大麻中毒なのである。文章自体がかなりラリっていて、何が言いたいんだかわけがわからない。仕事はしないわ、大麻中毒であるわの主人公が、然るに介護だけは真剣に致すのである。取り合わせとしては面白い。そのことのみに勇気付けられて読み進めた。
つい最近の芥川賞受賞作品にも拘らず、この本に対する感想は1件のみ。しかも星ひとつの評価点。ほんの100ページ程度の作品の先が長く感じたこと。だってゆってることがさっぱり理解不能なのですぞ!でも我慢して読んだよボクは。そして中盤過ぎから俄然興味が湧き出した。著者の介護に対する姿勢が判然としてきたせいだ。
ボクは先程、大麻中毒と介護の取り合わせの興味深さを解いた。『オカマと介護』でも、『懲役と介護』でも『老人と海と介護』でもいいのだ。とにかく介護の現状を、筆の立つ者によってしっかりと作品化して欲しかったのだ。そういう意味で荻原浩の『明日の記憶』は実に優れた作品だと絶賛できる。
でも在宅介護の実態は語り尽くされてはいない。
いつ終わるともしれない在宅介護。果てしない先に見えるゴールとはつまり要介護者の死なのである。家族でありながら時として要介護者の死を願ってしまう自分がいる。その立場に立てば必ず一度はそれを思う、きっと。ボク自身、父の最期の時にはそうした感情に支配されていた。
誰が介護するのか。どんなつながりで介護するのか。家族、肉親、親戚…誰でもいい。要介護者が自立していたときに、介護者がどんな関係を築き上げていたかが詰まるところ全てを決定することになる。そのあたりがよく描けていたと思う。
この作品がもし、モブ・ノリオの実体験であるとすれば、時々わけのわからんことを口走る男だがボクは彼を大いに認めたい。欠点の多い、理解しがたい表現や描写のある作品だけど介護の世界の現実をさらけ出してくれたことに敬意を表して星4つを差し上げましょう。

2007年8月14日 修正



この感想へのコメント

1.タママ (2008/04/16)
この作品を最後まで読んだフィリップ・まろさん すごい・・・。私は4ページほどで挫折でした。
2.フィリップ・まろ (2008/04/17)
タママさんの評価も低かった!ラリった青年の介護物語なんて、読者があらん限りの想像力を駆使して汲み取って上げないと、何を言ってんだか、何が言いたいんだかサッパリ。未だに「こんな本が何で芥川賞?」と疑問符が付く。しかし、最後までめんどうを見てやってください。ラリった言葉の向こう側に家庭介護の本質が見えてくる、きっと。モブ・ノリオを介護するつもりで、気長に、根気良く話を聞いてやってください。
 

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 4

不都合な真実

著者 : アル・ゴア

出版社:ランダムハウス講談社

発売日:2007-01-06

評価 :

完了日 : 2007年07月08日

少なからず環境問題に携わる者としては『沈黙の春』と同様に避けては通れない本。しかし定価2800円はどうしても避けて通りたくなる金額だ。古書店で探しても半額がいいところ。こちらも迂回したい。地元の図書館の在庫数と順番待ちを調べた。7月8日現在、在庫数1冊。予約順位7番、とのこと。8番目として登録すべきか、でも何時になるかわかんないし。借りに行くのはめんどくさいし。まして本というものには瞭かに“旬”があって、読みたい時期と読める時期が見事に重なってこそ読書は快楽をもたらしてくれる。今この時なら読む気満々なのに。


上記から既に半年が過ぎた。
未だに本編を読めてはいない。
しかし、もう一度ここに感想を書くことにした。
と言うのも、ついさっき僕は映画の『不都合な真実』を観てきたからだ。
地元の法人会が主催。入場無料。やるではないか我が街の中小企業のオジサンたち。そう聞きつけては万難を排して出掛けなければならぬ。

映画の冒頭部分で月から写された地球の写真が映し出された。息を呑むほどに綺麗な星だよ、地球は。しかし、今この星が温室効果ガスによって蝕まれようとしている…。
と言うところから始まり、地球温暖化の現状を示すデータが次々に登場。万難を排して駆けつけたくせに、僕はコックリコックリうとうとしてしまった。数字やグラフに弱いたちだから仕方がない。

アル・ゴアの生い立ち、つまり、煙草の生産工場を経営する家の子供として生まれ育ち「10歳はなれたお姉さんが保護者であり、遊び相手であった」との下りから話は急展開を見せる。お姉さんは家業の煙草によって肺ガンで早逝する。アル・ゴアはこの因果関係に地球と人類の将来を見てしまったのだった。

そして連邦議会での様子や、経済と環境の優先順位を政治が決めてしまう現状を炙り出していた。

このまま地球温暖化が進めば近い将来世界地図がこう変わる、とのシュミレーションには背筋がぞっとした。僕とて環境管理責任者であり、ISO内部環境監査員。頭では知り尽くしているつもりの情報も、ここまで論理的に且つ、体系的、情緒的に積み上げられると僕の持っている情報とは現実味が違いすぎる。美しすぎるくらいのアル・ゴアの訴追力には圧倒されてしまった。

映画の最後に、冒頭の地球の映像がまた映し出された。涙ぐんで見ている僕がいた。ほんの2時間足らずの映像体験の間に地球に対する僕の思いがこんなにも劇的に変化していた。地球への愛おしさがこの映画によって格段に高まったことを実感した。


さて上記を記録してからまた幾日かが経過した。
そして2008年2月17日読了。

常に世界のリーダーを自認し標榜するアメリカが何故、環境問題、特に地球温暖化防止に遅れを取り、京都議定書に批准しないかのか、のからくりが判然とした。あまりにもアホ臭く、我ままな大国の為政者の導き出した結論。地球環境と自国の経済を天秤にかけているのだ。それも多額の政治献金を用意している企業のための。つまり、温室効果ガスとなる二酸化炭素を大量に排出する化石燃料を主たる商品として販売する企業集団の圧力に屈してきたわけであった。そして当時のアメリカ大統領は市場原理主義の信望者である己のその地位を守ることと引き換えに地球環境を犠牲にしたのだった。「地球温暖化はCO2の排出が主たる原因ではない」などと、御用学者お得意の出鱈目な意見書を大々的に印刷、配布して「我々は豊かな暮らしを謳歌していいのです」とキャンペーンを張った。

アホらしくて、何をかをいわんや、である。
学生時代、環境問題を学んできたアル・ゴアはもはや、自分が政治の世界に身をやつしている場合ではない、と判断した。アメリカ人に、いや世界中の人々にもっかの地球の窮状を訴え、その元となる温室効果ガスの削減を地球人一人一人に呼びかけなければならないと、立ち上がった。

アル・ゴアの研究力、リサーチ力、判断力、説得力は抜群である。心ある地球人であるならば、彼の話に耳を傾けなければならない。そして、一刻も早く、持続可能な開発と地球環境の保護の両立する世の中をつくる努力をしなければならない。


この感想へのコメント

5.KUMI (2008/02/05)
歩くのも、もちろん大好きですが一番好きな移動手段はやっぱり自転車。(ブルー・インパルス調子悪そうだね・・。)
いろんな場所まで風と一緒に私を運んでくれる頼もしい相棒です!そういえば、この前友人に「自転車と、コーヒーを
発明した人には、kumiから、ノーベル賞をあげちゃうよ」
なんて、おバカな発言してました。どちらも私を元気にさせてくれますのでな♪
6.フィリップ・まろ (2008/02/05)
ハローワークに通っていると様々な問題点に疑問を抱くね。
たとえば求人票の交通費手当。あれって間違いなくガソリン代を指しているよね。
なぜ自転車通勤者に高い配慮をしないのか。
環境配慮型通勤者をもっと厚遇しないのか。
卑しくも環境立国を標榜する日本がなぜ世界で最初に『チャリ通勤者高額手当制度』の導入を推進しないのか。
ブルー・インパルス点検整備費の無償化を実施しないのか。

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夜は短し歩けよ乙女

著者 : 森見 登美彦

出版社:角川書店

発売日:2006-11-29

評価 :

完了日 : 2007年07月01日

とうとう古本屋で見つけた!すかさず、すばやく、さっそく、購入。一気に読破、と言いたい所だったが…なんて書くと、あまり面白くなくて…と続きそうなものだが、さにあらず。わが社の決算期に突入し、また、新しい仕事の見積り依頼がどっと押し寄せ、さらに悲劇なのはISO14001の文書改訂に追われ、或いは追い越され、さらにまた追い抜き返し、の日々であった。(結局、どれもこれも中途半端なまま現在に至るダメ社員なのだよ、ワシは!)3週間掛けて漸く読了。オモチロイ小説でした。『太陽の塔』『四畳半神話大系』と読み継ぎ、やっと、ここに至る感激。しかし、この手の本はやはり一気に読み終えてしまうべきだね。面白さってのはノリの問題だ。どんなに優れたオワライ芸人でも、笑う準備の出来ていない人を笑わせることは出来ない。棚卸しも、見積りも、ISOも気にしなくていい時に読んでおけばさらに面白さが読後感として残っただろうに。もったいないことをした。さて、まじめな感想としては、第1章が衝撃的に愉快だった。登場人物たちのズバリその登場の仕方の妙。黒髪の乙女が夜の京都・先斗町を歩くほどに、出会うフシギな人々。謎の老人、李白さんのところへみんなが終結して行く。行きがかり上、李白さんと酒の呑み比べをすることとなった乙女。そして勝利した乙女に李白さん曰く「夜は短し歩けよ乙女」そう、この物語は、乙女が歩き回ることでストーリーが展開する。物語を重層的にしているのが、歩き回る乙女の後頭部ばかりを追い掛け回す先輩くん。ぐるぐるぐるぐる巡り巡って、大団円に向かうプロットは森見登美彦の独壇場である。


この感想へのコメント

3.ちょこ (2007/07/18)
でもやはりこの本は男性視点の話だと思います。どこまでも頑固ですみません。どこがどうと詳しく書くと、お前は田嶋女史か!と怒鳴られそうなのでやめておきますが。すみません。変なコメントを書いてしまって。でもフィリップ・まろさんのコメントは面白くて嬉しかったです。気にいったのでこちらからもコメント書かせていただきました。では!
4.フィリップ・まろ (2007/07/18)
書き込みの3連発、有難う御座いました。素直にうれしいっス。ちょこさんの書評もどーしてどーして。読ませるものがありましたよ。で、あんな酔い酔い状態でレスしてしまいました。飲んだ後はいつも自転車をぶっとばして帰宅します。これ、回りますよ。さてさて、李白さんと乙女のようにちょこさんと飲みっくら、したいですね。

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 1

慟哭の巡礼者 白石実三

著者 : 及川 郁郎

出版社:碧天舎

発売日:2003-12

評価 :

完了日 : 2007年06月24日

著者はメジャーな書き手ではない。また主題となっている白石実三その人さえ、もはや知っている人などいないと思う。実は僕も知らなかった。田山花袋の弟子だそうである。著書に『武蔵野巡礼』『返らぬ過去』『姉妹』がある。そこまで説明されても、一向に僕の頭の中の文学史の検索データには引っかかって来なかった。無名な著者が研究した今はもう忘れ去られた作家。ではどうして僕がこの本を手にしたかというと、全くの偶然だ。とある訪問介護利用者のお宅で著者と知り合いになったのである。あっ、そう。僕は非常勤のホームヘルパーでありますから。現在82歳の著者の4年前の作品だ。著者は博学で、周りの人々から“博士”と呼ばれている。頭脳明晰なおじいちゃんの文体は硬質そのものであった。武蔵野へのレクイエムはやがて日本の風土に対する鎮魂歌になる。そして終盤に至っては世界を巡り歩く哲学の人となる。この本にまとまりを求めてはいけない。自然に対する思想の書としては読ませるものがある。


この感想へのコメント

1.船橋胡同 (2007/07/05)
「たなぞう」は広告が無くて好かった。コミュも仲間を募って
楽しむべき。勝手に入って、コラボだ!このサイト入れ!と
我がノートで宣伝を手伝わされる。慟哭のWEBか?!
2.フィリップ・まろ (2007/07/06)
ありゃりゃ?!こんなレアな書物の感想にコメントが来るなんて。と思ったら、異端読書家・胡同大兄ではござらぬか。
今、ふと思ったのですが、“慟哭の博士”と“異端読書家”の対談なんて面白い企画かも知れませぬ。都こんぶと緑茶のような絶妙の取り合わせになるやも知れませぬ。
 

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 108

鹿男あをによし

著者 : 万城目 学

出版社:幻冬舎

発売日:2007-04

評価 :

完了日 : 2007年06月16日

或るモニターで図書カード1000円ゲットしたので「『鹿男…』と『夜は短し…』どっちにするか?」と高2の娘に強く激しく詰問したところ前者だった。で、購入。
京都もそうだけど、奈良も不思議な街だよねぇ。日本プータロー学会会長を務めていた頃、永らく奈良に潜伏していた。或る晩、一人で石舞台古墳に行ったことがある。月夜と石舞台の取り合わせはあまりにもはまり過ぎて。僕は思わず時代感覚を忘れ去ってしまいました。失見当識状態。と、そこへどこからともなく全身タイツ姿の人物(?)が10名ほど現れたかと思うと、いきなり石舞台の上で奇妙な踊りを始めた。前衛的舞踊とでもいうのだろうか。僕はホントのホントに自分の目を疑ったね。「これって、今実際に起きている出来事?」と。僕は舞踊が終わるまですっかり見入ってしまった。ふと気付くと彼らは闇に紛れて何処へとも無く掻き消えてしまった。実に全くもうフシギな体験でした。
つまりですね、あの奈良でなら鹿がしゃべったり、狐と鼠と組んで、日本を天災から守っていたとしてもおかしくは無いんですよ。まだお疑いの方は一度夕暮れから夜の奈良公園を歩いてみるといい。転害門の下で猫に話しかけられるかもね。
それと、奈良の鹿はおじぎをします!まぎれもなく。


この感想へのコメント

1.ちょこ (2007/07/22)
うおっ!そうかあ。奈良ってそんな不思議な土地だったのですね。確かにこの本を読むと本当に奈良の鹿は喋るのか!?と有り得ないことを確認したくなりました。ちなみに宮島の鹿は喋りませんでしたが。
2.フィリップ・まろ (2007/07/23)
元気なコメントをありがとう。
京都の街は歴史が重層的で、時代をじわじわと平安京まで遡ってゆく心持ち。奈良は一気にストンと万葉まで落っこちてゆく感じです。奈良公園とともに、不思議世界へと導いてくれるのが伏見稲荷。連立する朱色の鳥居の参道を幾つもくぐって行くうちにふと次元の壁を越えてしまうことがあります。本当です!本当なんです!!
 

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 46

四畳半神話大系

著者 : 森見 登美彦

出版社:太田出版

発売日:2004-12

評価 :

完了日 : 2007年06月16日

家族で外食に行きます。まず妻のオーダーしたさっぱりとしていてこってりとした和風みぞれハンガーグが届きます。息子のキリリと引き締まった上にボリュームを感じさせる特性スパイシーカツカレーが続きます。次に娘の肉汁とろ~りなサイコロステーキが運ばれてきます。最後に僕の日替わり定食が、健康だけには気を使ってます的にやってきます。しっかし、何でオレってこんなの注文しちゃったのかなぁ、って後悔すること、ありますよねぇ。僕の場合、ひどくって、毎度毎度この繰り返し。
「何でいっつも自分のもの以外のお皿は美味しそうに見えるのだ!」
と言うわけで、もし別のメニューを選んでいたらどうだろうかって言うのが、表題作の主題です。
登場人物たちも魅力的です。
僕も京都で下宿していたけど、樋口師匠のように仙人みたいな人、居ましたよ。何章かある青春のクライマックスシーンになるとシャシャリ出てきてはぶち壊してしまう小津くんのような奴も。下宿に出没してはその魅力と匂いを撒き散らし、われわれ罪の無い下級生を挑発する女性もいたいた。「いつか隙あらば押し倒してやる!」なんて黒ーい妄想を膨らませていたものです。
ネタばれすると魅力が半減するので、さーて、お後は本編でお楽しみください。


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 109

太陽の塔 (新潮文庫)

著者 : 森見 登美彦

出版社:新潮社

発売日:2006-05

評価 :

完了日 : 2007年05月26日

誰かの感想に「京都の学生群像を描いた作品では『鴨川ホルモー』より『太陽の塔』の方が出来がいい」みたいな文章を読んだ。『鴨川ホルモー』を大いに楽しんだ身としては、これは捨て置けぬ感想であり、作品である、と判断し、さっそく図書館へ走った。ページを開くといきなり「何かしらの点で、彼らは基本的に間違っている。なぜなら、私が間違っているはずがないからだ」うぉぉぉぉお。ゆってくれるではないか。超個性的な発言。友達いないだろうなぁ、って思ったら、案の定。いるにはいたが、これがまた、超弩級の個性派たち。彼ら“男汁”の面々の会合での会話は不毛だ。不毛だが、ある距離を置いて眺めているととても豊穣にも思えてくる。親戚のプータロー叔父さんは厄介者で関わりたくないが、映画の中の寅さんなら許せるし、むしろ好きだ、みたいなそれとよく似た感覚と言う意味で。ともかく、京都の街と大学生というのは実によく似合うよなぁ。僕も学生時代、加茂川と高野川の間を毎日走り回っていた。マス・オーヤマになる!とある日突然決意して、空手うすらバカ一代の道に突入したものだった。我が京都青春プレイバックシリーズ第3弾として著者の近刊『夜は短し歩けよ乙女』を求めヤフオクを彷徨中です。


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5.NYPD (2008/01/11)
38度の発熱ですか。せっかくの有休が台無しですな。まあ、熱が出るということは治癒能力が働いて体内に侵入したウィルスを焼き殺そうしているわけですから、燃えろ燃えろと念じてコタツで丸くなっていてください。お大事に。
6.フィリップ・まろ (2008/01/14)
二日酔いが三日ぶっ続けにやってきたみたいな日々でした。高熱と嘔吐。1キロ減です。
明日には完全復活する予定です。ご心配をお掛けしました。

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 140

鴨川ホルモー

著者 : 万城目 学

出版社:産業編集センター

発売日:2006-04

評価 :

完了日 : 2007年05月26日

評価点を5点にしようかと思ったけど、1点控えておいた。こういう荒唐無稽、変幻自在、無碍闊達、奇妙奇天烈、小野篁的な発想、好きです。好きだから満点は出さないことにします!(強い決意の感嘆符)。しかし憧れの女性を“鼻”呼ばわりするかね。そいで鼻が相貌の美的象徴たる素敵な女なんて存在するかね。オニや式神は千二百年の歴史ある京都になら今でも居てもオカシクナイ!(強い確信の感嘆符)。でも“美鼻”はなぁ。おっと待った。いるいる!(発見の喜びの感嘆符)。香椎由宇かぁ。そうだ、あの鼻なら頷ける。顔の真ん中に聳え立つ美の象徴。『東京タワー』の鼻は『京都タワー』でもあったのか!(発見と完敗の感嘆符)。話は、京都にある4大学による不思議サークルの対抗戦をど真ん中に、古都での学生群像が描かれている。京大青竜会、立命館白虎隊、竜谷大フェニックス、京産大玄武会。実在する大学を並べてサークルの存在感を示したのは大手柄だと思う。ましてや僕なんぞOBともなると、物語の進行とは別のところで京産大玄武会を応援してしまっていた!(まんまと著者の術中にはまった自分を哀れむ感嘆符)。『鴨川ホルモー』シリーズ化すりゃ、『ハリー・ポッター』みたいになったかも。


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 113

夜のピクニック (新潮文庫)

著者 : 恩田 陸

出版社:新潮社

発売日:2006-09

評価 :

完了日 : 2007年05月20日

 ここ数年、仕事が忙しくて長いこと本を読んでいなかったからこのところ読み溜めをしている。中でも本屋大賞のノミネート作品を重点的に漁っている。
 高校2年生のうちの娘はこの作品を「中学んときに読んだっけ」と言っていた。長いこと読み聞かせをしてあげてきた娘がいつか父親をリードしていた。これからも『人生のピクニック』で僕と娘は追い越したり越されたりしながら長い道程を歩いてゆくのだろうか。 
 『夜のピクニック』は西脇融と甲田貴子のもつれた運命の糸、いわゆる“普通でない関係”を学校行事である“歩行祭”を機に解き明かそうとする青春小説だ。主な登場人物である級友たちの性格着けの見事なこと。彼らの個性が2人のもつれた糸を少しずつ解いてゆく役割を担っている。ときに「こいつ嫌な奴だなぁ」と思う登場人物が出てきたりするが、最後には「そうだ、この子も仲間だったんだ」と許せてしまう。作者の登場人物たちへの優しいまなざしがそうさせるのだろう。高校生諸君に是非読んでもらいたい作品である。


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 7

鈍感力

著者 : 渡辺 淳一

出版社:集英社

発売日:2007-02

評価 :

完了日 : 2007年05月13日

中高年のリーダー的存在と言うことに敬意を表してこの評価です。しかし渡辺先生、これはいけませんぜ。先生が目撃してきた鈍感力を発揮していたとおっしゃる人物、どうも存在感が薄過ぎる。ひょっとしてこれらのエピソードって先生得意の創作?って疑ってしまいます。斬れば血の出る生身の人間の感じがしない。いやいや、そんなことが言いたいんじゃない。読者が知りたいのは、鈍感力がどんなにすごいパワーを発揮するのかとかじゃなくて、どうすればその鈍感力が養成できるのか、なんです。それがまるで書いてない。これは読者に対する裏切り、と言うか、詐欺行為ですよ。これだったら、赤瀬川原平長老の『老人力』の方がうんと参考になります。だってほっといても年齢とともに勝手に身についてくるんですから。世話なくていいや。


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