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フィリップ・まろさんの読書ノート

天、我を救いたもう本
奈落の底へまっさかさま堕ちて行く途中、この本が天より僕の元に舞い降りてきました。もがき苦しみ藁をも掴む思いで握り締めた一冊の本。それは天空の城より使わされた飛行石のように僕の体を救い上げ、地上へと連れ戻してくれたのでした。
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恢復する家族

著者 : 大江 健三郎,大江 ゆかり

出版社:講談社

発売日:1995-02

評価 :

完了日 : 2007年09月20日

あの頃、何もかもが思い通りに運び、調子着いていた僕。その調子の波がひとつ砕け散ると、僕の足元には自分を支えるものなど何も無かった。実体も無ければ根拠も無い自信という幻想の大波の上で僕はその高さとスピードに酔い痴れていただけだった。
たいして上手でもない僕の泳法ではもがけばもがくほど、潮の流れに翻弄されるばかり。やがてこの哀れなボーダーは家族まで巻き込んでしまう。家庭は破壊された。東西南北どちらを見ようとも島影ひとつ無し。力尽きたボーダーは決意した。「もういいや……」そして静かにゆっくりと深い深い海の底へ沈んでいった。
が、ここで奇跡が起きる。ボーダーはその右手に一冊の本を捕らえていた。

それが 『恢復する家族』

ボーダーは体を反転させ、頭を水面に向けると漂う光の導きに向かって思いっきり泳ぎ始めた。とんでもなく不細工な泳ぎであることを承知していた。「でも僕は初めて自分の泳ぎをしている」そう実感した。

「もう一度、やりなおそう」
妻と子供たちの温もりが愛しく、儚く切なかった。
「きっと家族を恢復させる」

『恢復する家族』には恢復させなくてはならない家族の強い思いが込められている。


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