たなぞう

WEB本の雑誌

K9さん > 読書ノート

K9さんの読書ノート

すこし昔に読んだ本
2001年くらいまでの少し昔に読んだ本です。
<前のページ 1  次のページ>

 

みんなの感想を読む
 5

その名にちなんで (新潮クレスト・ブックス)

著者 : ジュンパ・ラヒリ

出版社:新潮社

発売日:2004-07-31

評価 :

完了日 : 2004年10月04日

 アメリカに渡ったカルカッタ出身のベンガル人夫婦に男の子が生まれる。アショケ・ガングリーは、若き日に死を免れたときに手にしていた本にちなんで、異国で生まれた息子をゴーゴリと名づける。成長したゴーゴリは、しだいにじぶんの名を恥じるようになり、大学進学を機に改名。生家を離れた彼は、大学の寮でルームメイト2人に新しい名を告げる。
 描かれているのは1968年から2000年の32年間。風変わりな名前を持つ男の子の成長と生活を描いた作品だが、その親世代、つまり異国に渡ったベンガル人夫婦アショケとアシマの物語でもある。
 作中にABCD(=American-bone confused deshi アメリカ生まれで、わけがわからなくなっているインド系の人間)という言葉が出てくる。母はサリーを着ていて晩ご飯はチキンカレーでも、ハンバーガーが好きでベンガル語より英語が得意なゴーゴリ少年。この無自覚なわからなさが、成長につれ、居心地のわるさにつながって行く。これは彼が二つの名を持つようになった複雑な事情と重なる。
 18歳の夏、改名の手続きで行った家庭裁判所で、理由を尋ねる裁判官にゴーゴリはついに言う。

 「ゴーゴリという名前が嫌いなのです。ずっと嫌い続けていました」(p124)

 移民の親と、その二世である子の二世代間で、それぞれが抱える思いや悩みは語られない。お互いの現実にのみ知るのである。このガングリー家の「察しの文化」ともいうべきたたずまいがとくに印象に残った。繊細だが、力強く、揺るぎない。
 デビュー短篇集『停電の夜に』でピュリツァー賞ほか文学賞を独占したラヒリ第2作にして初の長篇。おすすめ。
 ああ、それにしても、ラヒリの作品を読むと、インド料理屋に走って行って、あつあつのタンドリーチキンにかぶりつきたくなるから困る。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 7

熱帯魚 (文春文庫)

著者 : 吉田 修一

出版社:文藝春秋

発売日:2003-06

評価 :

完了日 : 2004年09月12日

 大工の大輔と子連れの真実が同棲するマンションに、毎日熱帯魚ばかりを眺めて暮らす引きこもりの義弟、光男が加わる。奇妙な共同生活のなか、大輔と真美の間に微妙な温度差が生じ——いいやつが空回りする様を描く表題作ほか全3篇収録。
 表題作の主人公は例によってガテン系なわけだが、ほか2篇の主人公は都会で暮らす若サラリーマン。ひとりはフィアットのバルケッタに乗ったりしている。今回はオール標準語ということで。
 久しぶりに取れた長期休暇を九十九里の民宿でアルバイトをして過ごす、体温低そうな新田くんの物語『突風』がとくに印象に残った。448円はお買い得!


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 19

手紙

著者 : 東野 圭吾

出版社:毎日新聞社

発売日:2003-03

評価 :

完了日 : 2003年04月02日

 初出「毎日新聞日曜版」連載2001.7〜2002.10。
 両親を亡くし高校を中退して働く武島剛志の願いは、できのいい弟を大学に行かせること。しかし無理がたたって身体を壊し、職を失う。八方ふさがりの剛志が思い浮かべたのは前に仕事で行った資産家宅だった。住んでいるのは老婦人ひとり。捕まりっこない——だが、盗みに入った剛志はドライバーで老婦人を刺し殺してしまう。その日から弟の直貴は「殺人犯の弟」として生きることを余儀なくされる。自力で高校を卒業し、就職した直貴のもとに月に一度、兄からの手紙が届き始める。
 せつない話である。たったひとりの弟に獄中から手紙を書き続ける兄と、その存在に苛まれる弟。15年という歳月を丁寧に描くことで成功している。とくに『白夜行』(集英社刊)ファンにおすすめ。


この感想へのコメント

<前のページ 1  次のページ>

Copyright c 2006 WEB本の雑誌 All rights reserved.