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しらはさんの読書ノート

日本人/2007年
2007年1月1日~2007年12月31日までに読了した日本人作家の本を一括してまとめます。
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 1

寺田寅彦随筆集 (第2巻) (岩波文庫)

著者 : 寺田 寅彦,小宮 豊隆

出版社:岩波書店

発売日:1964-01

評価 :

完了日 : 2007年08月15日

「私は猫に対して感ずるような純粋なあたたかい愛情を人間に対していだく事のできないことを残念に思う。そういうことが可能になるためには私は人間より一段高い存在になる必要があるかもしれない」

上の一節は「子猫」。全体的に第一巻よりもセレクトが科学寄りになっている。もし意図して組まれた構成ならば、ここで科学者寅彦の再認識といったところ。

寅彦は物理学者の鑑だと思う。


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 1

寺田寅彦随筆集 (第1巻) (岩波文庫)

著者 : 寺田 寅彦,小宮 豊隆

出版社:岩波書店

発売日:1963-01

評価 :

完了日 : 2007年08月09日

漱石先生つながりで寺田寅彦の随筆に手を出してみる。
物理学者がこういう素敵な随筆を書いてくれているというだけで、私のような生まれてこの方混じり気のない理系人間はなんとなく嬉しくなってしまう。
どちらかというと感動するとか名句が光るとかそういう印象ではなく、妙に愛着の湧く感触だ。人間味が饒かといってもいいかもしれない。加えてそこに上手に織り込まれた科学者的センスが、やっぱり同類にはたまらないのである。

欠点、如何せん文字が小さすぎる。一ページに19行も詰め込むのはあんまりじゃないか。目の悪い人のことを少しばかり考えて、せめてあと1ポイントくらい大きくして欲しかった。文庫そのものの評価として星ひとつ引いておくことにする。

続けて二巻に進む。できる限りゆっくり読みたい、普段にも増してさらにスピードを落とすことにする。


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3.くうふう (2007/08/17)
既に検索済みかもしれませんが、一応。
・ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上・下〉(岩波現代文庫)
・困ります、ファインマンさん (岩波現代文庫)
半自叙伝であり、ほんわかエッセイです。
4.しらは (2007/08/18)
ご冗談でしょう、ファインマンさん。なるほど確かにどこかで見かけたことのある名前のような……。ご親切にありがとうございます。書店でめくってみます。

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 3

二百十日・野分 (新潮文庫)

著者 : 夏目 漱石

出版社:新潮社

発売日:1976-07

評価 :

完了日 : 2007年08月04日

『野分』を読み終えて思う。自分はどれくらい理想を追い続けられるだろうか。自分はどれくらい白井道也だろうか。

道也の兄という人物が出てきたとき、こうはなりたくないと思った。「いくら一人でえらがったって、人に相手にされなくっちゃ仕様がない」と兄は言う。感情的に道也に味方している読者はきっと反感を催す。私も反感を催した。けれど一体どれくらいの人がこの言葉を心の芯から否定できるだろう。道也の内面生活が如何に見事であれ、その生活は家族も巻き込み困窮である、悲惨である。妻は死に際まで報われないに違いない、道也もバカンスには旅行などという呑気で贅沢な生活は一生涯送れまい。無論彼本人はそれをよしとする。私はまだそれをよしとできない。

使い古された手の議論ではあるが、白井道也という一人の人格を通して、この深いジレンマを垣間見させてくれる作品。


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 2

文章の話 (岩波文庫)

著者 : 里見 トン

出版社:岩波書店

発売日:1993-01

評価 :

完了日 : 2007年08月02日

子供のために書かれた「文章の話」。文章の話という題でありながら、文章そのものにあたっていくのは頁を半分以上繰ったあとであって、内容のほとんどは「人の話」。里見さんの人生感がやさしくやさしく述べられている。

しかし文章の話にカコ付けて人生訓を披露しているのとは違う。文章と人格とが相切り離せないものであるという、単純だが忘れられがちな文章の本質を考えれば、いわば当然の処置なのだ。文章は小手先にあらず、などとただ言ってみても安っぽい格言にもならないが、この本はそれをとくと思い出させてくれる。


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 1

文学論〈下〉 (岩波文庫)

著者 : 夏目 漱石

出版社:岩波書店

発売日:2007-04

評価 :

完了日 : 2007年07月30日

のっけから公式(F+f)などと強面の文学講義、などと言われるものの、解説で言われるほど難解とは思わない。文学を読むことと書くこと、のエッセンスが極めて好く分類・解説されている。

ただし第五篇は漱石が多く原稿を担ったからか(他篇の原稿は漱石の講義録をもとに中川芳太郎が編集している)やや冗長になっている。いや余分なユーモアが増えたことは結構なのだが、それを差し引いても語られている内容に対して割いているページ数が圧倒的に多い。そこまで繰り返さなくてもわかるといえばわかる内容である。よって、出し渋るわけではないが星四つに留めた次第。

夏目漱石の書いた「文学論」である。著者とタイトルが内容の全てを物語っている。英文学を引き合いにだしながら文学の本質を探る本である、といったところであまり当を得ているとも思えないが、少なからず書くことに興味があれば、一読の価値はあると思う。


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 1

文学論〈上〉 (岩波文庫)

著者 : 夏目 漱石

出版社:岩波書店

発売日:2007-02

評価 :

完了日 : 2007年07月14日

まだ上巻であるが、早くも名著と認定したい。漱石自身はあまり高くは評価していなかったようだけれど、内容のレベルは巷の新書によく見る「文学論もどき」とは比べ物にならない。英文学について若干の予備知識を要するとはいえ、シェークスピアをはじめとして、ディケンズ、サッカレー、テニソン等、引用元は揃いも揃って有名どころであるから、『文学論』が著された当時はどうか知らないが、現代では邦訳の存在するものも多く、さほど問題にはならない。

むしろその引用がコンテンツの主であるため、英語が読めなければ面白さが半減する(と思われる)のが、読者を限定する可能性あり。ただ原著にいっさい拘りがないのなら、訳がついているので、それを見て済ますという割り切った態度でもよいのかもしれない。

下巻の感想には全体としての感想・コメントを附す予定。今回は例外的に上下別々の感想を設けた。


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 1

漱石文明論集 (岩波文庫)

著者 : 夏目 漱石

出版社:岩波書店

発売日:1986-10

評価 :

完了日 : 2007年07月12日

漱石先生の『文明論』に関係の深い講義録の外、日記、書簡などから一部を精選したもの。主な講義としては「現代日本の開花」「中身と形式」「文芸と道徳」「私の個人主義」などが収録されている。

「中身と形式」の如きは現代にも猶通じるところがある――というより、現代の方がここで問題視されているテーマについては関連が深いように思われる。「勝ち組」「負け組」などという単語がちらほら現れはじめた昨今、紐解かれるべき講義録のひとつであると思う。

最後に、愚見教則より気に入った一節。
――人の毀誉にて変化するものは相場なり、値打ちにあらず。


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 2

硝子戸の中 (新潮文庫)

著者 : 夏目 漱石

出版社:新潮社

発売日:1952-07

評価 :

完了日 : 2007年07月10日

自分がこういう境地に達するには、年齢に最低でも二か三を乗じなければなるまい。どんな天才がどれほど技巧を凝らしても、若年者には決して醸すことのできない雰囲気が漂っている。

話として何が面白いというわけでもなく、ただ硝子戸の中に篭る晩年の漱石の姿を一寸覗いてみるというだけである。文学的な価値が高いかどうか、私は知らない。正直に言えばこの作品が漱石先生の作品群の中でどのような扱いを受けているのかについてもまるで知らない。それでもいいなぁと思ってしまうのだから仕方がない。何がよいかを語るのが感想の役目とすると、義務を放棄したことになるけれど……。

ただ三十三節にぽっと現れた人間観は、それ自体は月並みなものでありながら、突然そこに現れたというだけで興味を惹かれた。あとは散歩道をだらだらと歩くような趣であった。


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 9

文鳥・夢十夜 (新潮文庫)

著者 : 夏目 漱石

出版社:新潮社

発売日:1976-07

評価 :

完了日 : 2007年07月07日

表題他、『永日小品』『思い出す事など』『ケーベル先生』『変な音』『手紙』の計七編を収録。岩波文庫がこのあたりをばらばらにしているのと比較すると、全部あわせて僅かに四百円なので、宣伝するわけではないが金銭的にはこちらの方がお薦めできる。

病床の記憶を綴った『思い出すことなど』はとても貴重な一編だと思う。絶えず胃の腑を襲う肉体的な苦しみ。かと思えば俗世を離れた別乾坤にあって、心はこの上なく安らう。病院のベッドに横たわっているときの、あのなんとも言えない気持ちが、漱石先生の筆致で書かれているというのはどこかうれしいものがある。
夢十夜は隠さず言えばよくわからない。雰囲気は伝わってくるものの……結局、疑問符を浮かべたまま通り過ぎた。とく理解するためには、もう少し漱石先生のことを知らなければならないと思った。


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 7

陰翳礼讃 (中公文庫)

著者 : 谷崎 潤一郎

出版社:中央公論社

発売日:1995-09

評価 :

完了日 : 2007年06月28日

そうか、日本人は陰が好きだったのか。言われてみれば自分にもそんな気質がまとわりついているのを感じないでもない。何かとピカピカ光る過剰に明るい場所よりは、もっと落ち着いた、目にも柔らかい色合いの暗い場所の方がよい。照明が一般的になるずっと以前の日本座敷の奥の方はさぞかし居心地がよかったのだろう……。

エッセイの書き方という点では並外れて上手だと思った。『文章読本』でも再三注意されていたように、やっぱり日本語の選択が上手なのだろう。読みやすさは言葉のやさしさではなく、適切さによるということが改めて感じられた。


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 5

草枕 (新潮文庫)

著者 : 夏目 漱石

出版社:新潮社

発売日:1968-03

評価 :

完了日 : 2007年06月01日

珍しく読むべきものを無くしたので、ここはひとつ漱石先生からランダムピック――と引いたのが『草枕』。大どんでん返しがあるわけでもない、ちょっぴり不思議なだけの淡々とした物語だけれど、その分、漱石先生の筆をゆっくり味わえる「無難作」だと思う。

出だしの「智に働けば角が立つ、情に棹させば流される~」のくだりはあまりにも有名だけれど、こういうフレーズを一度読んだだけですっと覚えさせてしまう力量には感服せざるを得ない。


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 1

武蔵野 (新潮文庫)

著者 : 国木田 独歩

出版社:新潮社

発売日:1949-05

評価 :

完了日 : 2007年05月30日

独歩の文章が「素人臭い」とは私には思えないのだけれど、解説を見る限り、文学的にはそういう扱いなのだろうか。私はこの人、日本人では漱石先生に勝るとも劣らないくらい好きである。表現の端々にまで表情があるというか、淡白でいて心に残るというか。

「眼をこすりこすり起きて見ると直ぐ僕の眼についたのは鎌のような月であった」

短編のいくつかは文語調でかかれているのも嬉しい。


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 33

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

著者 : 村上 春樹

出版社:新潮社

発売日:2005-02-28

評価 :

完了日 : 2007年05月29日

はじめてのハルキワールド。
どこどこの表現がどうとか、そういうミクロな感想の抱きにくい、全体として「よくできた」小説だと思う。指を挟んだページをちょっとした合間にも覗きたくなる引き込み力は流石だ。

もう少し若いうちに読めば、主人公が身近に感じられたかもしれない。しかし15歳で読んでも意味はさっぱりわからなかっただろう。難しいところ。


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 46

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

著者 : 村上 春樹

出版社:新潮社

発売日:2005-02-28

評価 :

完了日 : 2007年05月28日

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 1

牛肉と馬鈴薯・酒中日記 (新潮文庫 (く-1-2))

著者 : 国木田 独歩

出版社:新潮社

発売日:1970-05

評価 :

完了日 : 2007年05月01日

新潮のもう一冊『武蔵野』のついでに読んだもの。短編集なのでモノによって当たりもあればハズレもある。この場合、星四つはどちらかというと独歩という作家その人にあげたものということになる。

「少年の悲哀」「酒中日記」が好み。ただし「酒中日記」に登場する母親は許しがたい……。


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 6

小僧の神様・城の崎にて (新潮文庫)

著者 : 志賀 直哉

出版社:新潮社

発売日:2000

評価 :

完了日 : 2007年04月30日

「小説の神様」と呼ばれた志賀さんの短編集。一昔前はこの人の作品を原稿用紙に写しているだけで作家になれるなんて言われて、本当にそれで作家になってしまった人もいるとかいないとか。そういう話を聞くとたしかに、模範的な文章に見えなくもない。

「雪の日」「焚き火」が好み。


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1.フィリップ・まろ (2007/07/07)
むむむっ!
恥ずかしながら、小生も若い頃、文庫本『小僧の神様』を全文原稿用紙に書き写したものです。
あの短い文章の中に、恐るべき緊張感を刻印してしまう技術。そいつを見習おうと、句読点の置き方にも気を使ったなぁ。でもね。あんまり面白くない。完成度が高ければ高いほど文章って人間味に欠けるきらいがあるような。
2.しらは (2007/07/07)
経験者にコメントをいただけるとは、嬉しい予想外です。ありがとうございます。

漱石先生も志賀の文章は志賀にしか書けぬと仰ったそうですが、その独特の呼吸がスキルとして求められていた時代も過去にはあったんですね。人間味に欠けた文章を果たして完成度が高いと呼ぶかどうかも、なんとも逆説的な難問ですが……。

ちなみに私は志賀さんの文章はそこまで惚れこみはしないのです。
 

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 1

漢詩の作り方 改訂版 (作法叢書)

著者 : 新田 大作

出版社:明治書院

発売日:1975-12

評価 :

完了日 : 2007年04月03日

漢詩の種類、韻の分類、平仄といった漢詩に関する基本的なことを丁寧に解説。初心者が漢詩を嗜むための第一歩は先ず「ことば集め」にあるとして、その修練を促す「詩語篇」を後半に収録している。ちょっと七言絶句でも作って遊んでみようかと思うときには、門外漢にはこれがなかなか役に立つ。平仄を意識して言葉を選んでいるだけで、一句も出来ずに日が暮れるのも、たまには悪くない。


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 3

文章読本 (中公文庫)

著者 : 谷崎 潤一郎

出版社:中央公論社

発売日:1996-02

評価 :

完了日 : 2007年02月27日

文章の「味」というくらいだから、その本質は料理の味とさほど変わらない。味わうのに学問や理屈がさほど役に立たないわけである。といって生まれつきの「感性」とやらにすべて依るわけではなく、持ち合わせは鈍感な人でも、心がけと修養次第で感覚を磨くことができるそうだ。その「修練」の方法を、時に原理的に、時に噛み砕いて具体的に、こうするのがよかろうと示してくれる。

同じ中公文庫の『文章読本』では、私は三島氏のものよりこちらの方が好み。


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 4

文章読本 (中公文庫)

著者 : 三島 由紀夫

出版社:中央公論社

発売日:1995-12

評価 :

完了日 : 2007年02月23日

文章とは小説の唯一の実質である。

それではその肝心要、文章の「よさ」とは一体何なのか。一昔前は非常に味わいあると称えられた文章も、今や一般の民衆の好みがますます隔たって、無価値のごとく扱われる。かと思って何がうけているかと見れば、大衆的な飾りにまみれた愚にもつかぬ悪文……。

そんなことがままある。それは仕方ないこと、それでも自分なりに「これはいい文章だ」と思うところがある。それをひとつゆっくり吟味してみようじゃないか、という書。これは明晰でいいね、これは透明感があるね、こっちはスピード感が爽快だ、と三島氏がとくとく解説してくれる。


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