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パートママさんの読書ノート

忘れん坊の読書録
本プロと言うサイトに記録していた本
読書感想文を書く楽しさと、そこでいろんな方の感想を知ることが出来た本
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 47

アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア)

著者 : 伊坂 幸太郎

出版社:東京創元社

発売日:2003-11-20

評価 :

完了日 : 2007年11月05日

 これは恋愛小説だ。
 最初細切れに交互に綴られる現在の物語と過去の物語に少し混乱するのだが、中盤ですべての謎がなんとなく解けたような気がする。後半その通りというように謎解きがあるのだが、一気に読めるのは、これが恋愛小説だから。
 ただ、琴美の死の真相、犯人側の二人が死んでとちょっと簡単に済ませてるなって感じ。あと残された男ふたりのその後も簡単すぎるように思うけど、過去と現在がバランスとれなくなっちゃって、って感じかな。
 まあ恋愛小説なんだし、これで良いか。
05・3・20


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 13

さまよう刃

著者 : 東野 圭吾

出版社:朝日新聞社

発売日:2004-12

評価 :

完了日 : 2007年11月05日

ミステリーの評価は難しい。
 一気に読んでしまったが、読後になんだかやりきれなさが残る。勧善懲悪のミステリーなんていまどきお目にかかることもないけれど、せめて死んでしまうなら思いを遂げてから死なせてやりたかった気がする。
 現在の少年法や司法の問題点を優柔不断に悩んでしまう。
 
 なんだか書き足りない。
 「親」は生まれた時から「親」ではない。子供ができて、生まれて、育てて、そうやってだんだんと「親」になっていくのだという。誰もがよい父親、母親になりたいと思って子供を生む。戸惑い悩み、いろんなことに疲れたり思うようにいかず子供に当たってしまったり、時には開放されたいと思うこともある。だけどそれ以上に子供は素晴らしい。うまく表現できないが、いろいろな喜びを与えてくれる。私の人生は本当に豊かになっている。
 子供と一緒に「親」も成長していくのだ。
 被害者の親の気持ちになると「無念」という言葉しか思いつかない。たぶんもっともっと複雑なのだろうが。では、加害者の親の気持ちはどうなのだろう。やはり親なのだ。こんなはずでは、どうしてこんなことに。すべてが子育てに問題があるというのなら、そんな子育てしかできない「親」になってしまったのはその「親」もまだ十分に育ってなかったから。では、そんな「親」を育てたのは。
 
 ミステリーは好きだけれど、必ず誰かが死んで、事件が悲惨であればあるほど簡単に面白かったといって良いのかと、またわからなくなってしまう。
05・3・18


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 2

流れる (新潮文庫)

著者 : 幸田 文

出版社:新潮社

発売日:1957-12

評価 :

完了日 : 2007年11月05日

いい!絶対いい!
 たぶん3回目くらいに読むのだが何回読んでも良いと思う。これは少し語りたい。読むたびに発見するものがあるのだ。
 最初読んだのは高校生のとき。「おとうと」から始まって文庫を何冊か続けて呼んだ。そのときは文体のリズム感とかそんなのがよかったんだと思う。
 2回目は古い映画を見た後。梨花は田中絹代、染香が杉村春子、ななこは岡田真理子(こんな字だっけ?)、勝代はえーとほらあの日と灯台守の映画に出てた人、24の瞳の人。主人が誰だったか忘れちゃったけど。佐伯は中谷何とかって人だった。30代のときだったかな。そのときは、「なんどり」が朝起きる場面にやられたのだ。

 横になったまま細い手を出して赤い友禅の掛蒲団を一枚一枚はねておいて、片手を力にすっと半身を起すと同時に膝が縮んできて、それなり横坐りに起きかえる。蒲団からからだを引きぬくように、あとの蒲団に寝皺も残らないししっとりとした起きあがりかたをする。藤紫に白くしだれ桜と青く柳とを置いた長襦袢に銀ねずの襟がかかって、ふところが少し崩れ、青竹に白の一本独鈷の伊達じめをゆるく巻いている。紅い色はどこにもないのに花やかである。若くつくっていてももう老婆というはずのひとの夜を考えさせられるのである。なんと云ってもひとといっしょにいる夜、いたい夜ではなかろうと思うが、それはしろうとの推察である。この紅より色の深い紫の襦袢を着なした本体というものには、およそ燃えるだけのものはすでに尽きていると見るのである。過去の燃えた記憶しかあるまいけれど、いまもこうした風情のある寝起きなのである。・・・(略)・・・高速度写真のようにスロー・モーションでなよやかに起き上がって、少しも急いた気持ちなどなく手鏡に髪をそろえる。
 
 梨花は自分の「ざっぱくない起きかた」を思い「ふたりの床からしなやかにからだを引き抜」いた日を遠く思う。赤いものがもう何回あるかという年になってそれよりもずっと年いった女の過去の情事を垣間見たような気持ち。
 やられた、これなんだな。梨花の気持ちが30すぎてなんとなくわかったのだ。高校生ではわからなかった情景が見えたって云うか。

・・・現在のことはたしかに主人のうちのしみじみとする年の瀬である。自分の世帯のうえならしみじみなどという余裕はなかった、ただ迫られることの恐ろしさでがじがじするのである。

 「しみじみ」のなんという心もとなさ。「がじがじ」のなんと言う歯軋りのような切なさ。

 今回、ふと他のひとの感想も読んでみようと途中で検索してみました。
 ハイジさんの「梨花=市原悦子、家政婦は見た的負け犬ストーリー」なるほど、そういえば「聞くまいとする耳が勝手にあちらに延びて行く。」だの好奇心からなな子のノートを見ちゃったり、佐伯をめぐる女たちの思惑や佐伯の反応を探ったり。みんな頼るもののない一人で生きていく女。なるほど。
 スミスさんのスリルとサスペンスというのもなんとなく納得。
 そして今回気がついたこと、結局私の理解力では以下の2点がどうなったのかはっきりわからないということ。
 第1点、なな子が云った「2階に行ってはいけない」の疑問。いくらかわかったって云うけど「器量と芸の2本立てのやきもち」よりもっと複雑なことってなに?掃除やお茶は持って行っているんだから親子の中に関係するなってことかな。そんな抽象的なことなな子が云う?鈍感な読者だからよっぽっどこうでこうでと書いてないとわからない。
 第2点、作者本人はこのあと病院の付添婦みたいな仕事に変わったけどこの後梨花さんはどうしたの。「一つは主人、露を光らせて咲き崩れようとする花のようなあでやかな笑顔、それがいまはなんとさびしい顔なことか。一つは佐伯、この男に感心しながらも年長者の優越で優しくしてやりたいと思ったこと。その二つが自分の心のめど」、ってどうなったの。読解力ないんです。どっちにも取れるような気がして。なんどりとのやり取りが伏線で佐伯を取ったと思うんだけど。
05・3・15


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 14

天国の本屋 (新潮文庫)

著者 : 松久 淳,田中 渉

出版社:新潮社

発売日:2004-04

評価 :

完了日 : 2007年11月05日

 気持ちが凹んでるときとか、なんだかガサガサささくれ立っている時こんなお話がちょうど良い。ホンワカとしていてちょっと優しい気分になれる。
 100歳が人間の寿命で途中で死んだら残りの時間を天国で過ごし100歳になったらまた新しく生まれる。そんな天国にある本屋にバイトとして現世からスカウトされたさとし。さとしの本の朗読は決して上手ではないけれどとても評判が良い。
 聞く人の心をとらえる朗読ってどんなのかな。声が良いとか感情がこもっているとかじゃなくって、本に書かれていることを正確に読むことかな。書き手の気持ちをそのまま聞き手に伝えることかな。違うな、読んであげたいという読み手の気持ちだよ。
 「ナルニア国ものがたり」は読んだことがないけれど、今度探して読んでみようかと思ったし、「泣いた赤鬼」は懐かしかった。そうだ私も声に出して読んでみよう。違って感じるかもしれない。
 なんていろいろ思っているうちに、なんだかへこみも直っていったみたいです。
05・3・5


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 1

お母さん、ぼくが生まれてごめんなさい

著者 : 向野 幾世

出版社:産経新聞ニュースサービス

発売日:2002-06

評価 :

完了日 : 2007年11月05日

 少し古い本だけど、障害を持って生まれたやっちゃんと家族の話はとても感動する。

 ごめんなさいね、おかあさん
 ごめんなさいね、おかあさん
 ぼくが生まれて ごめんなさい
 ぼくを背負う かあさんの
 細いうなじに ぼくはいう
 ぼくさえ 生まれなかったら
 かあさんの しらがもなかったろうね
 大きくなった このぼくを
 背負って歩く 悲しさも
 「かたわな子だね」とふりかえる
 つめたい視線に 泣くことも
 ぼくさえ 生まれなかったら
(以下省略)

 最初この詩を見て、うわ、お泪頂戴は嫌だなと思った自分が恥ずかしい。今児童虐待とかいっぱいあるけど、こんなに家族がみんなで障害に立ち向かい、支えあい、障害を持ったことを後ろ向きだけにとらえず生きていこうとしたやっちゃん一家のような人たちはいっぱいいる。
 でも、私はこの本の人たちのようになれるだろうか。
05/3/5


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 18

雪屋のロッスさん (ダ・ヴィンチブックス)

著者 : いしい しんじ

出版社:メディアファクトリー

発売日:2006-02

評価 :

完了日 : 2007年10月31日

しゅんと胸にしみたりシニカルにくすりとしたり、物書きのいしいさんの書くお話はおとなのための絵のない絵本のよう。
それぞれの話はみな掌編というほどの長さだが余韻のある話。
神主の白木さん、それは大変、緊張し続けの毎日で寿命が縮まりそう。
大泥棒の前田さん、ものじゃなく心を盗んでみたら。
象使いのアミタラさん、不条理ってこういうのを言うのかな。
旧街道のトマー、生涯を道路として全うしてよかった。
そんなふうに一つ読む度ほっとしたりふっとおもったり・・・
もっとこの人の本を読んで見たいと思う。
06・11・27


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 9

プラネタリウムのふたご

著者 : いしい しんじ

出版社:講談社

発売日:2003-04

評価 :

完了日 : 2007年10月31日

まだ読んでいない方はこの感想を読まないで下さい。

涙が出た。澱のように溜まったものを洗い流すそんな涙が出た。

たしかにかなしい出来事だけど、そのかなしさのせいでエリダヌス座の輝きが、まるで水しぶきみたいに光って見えてくる。・・・・・どんなかなしいつらいななしのなかにも、光の粒が、救いのかけらが、ほんのわずかにせよ含まれているものなんだよ。それをけして見のがしちゃならない。

読み終わってまずこの泣き男の言葉を思い出した。
物語の始まりから、何かかなしい出来事が起こる予感がした。それはだんだんと確実に起こる事として予測されていた。この泣き男の言葉もその伏線の一つなのだろう。
四六時中灰白色のもやを出す馬鹿でかい工場の煙突、その3本の煙突のてっぺんについた強力なライトで一年中白夜の中にいる村、白夜のほの白い夜空よりも偽者でも砂をまいたように光るプラネタリウムの夜空。その夜空と静かに響く泣き男の解説に心を癒されていく村人や工員たち。北の山という聖域、熊送りの儀式、盲目の魔女のような老女、そしてやってきた手品師の一座。物語の舞台は不思議な静けさと神秘さと胡散臭さを持っている。
小熊のパイプの名前の由来や、氷山の話や「ゆがんでいる」といわれたことが物語の後半にだんだんと意味を持ってくる。

だまされることは、だいたいにおいて間抜けだ。ただしかし、だまされる才覚が人にないと、この世はかさっかさの、笑いも何もないどんづまりの世界になってしまう。

客は気持ちよくだまされたいから手品を見にやってくる。いろんな現実がどでかい雪玉みたいに追っかけてくる。手品の舞台ってそんな雪玉からの避難小屋なんだよ。

だまされる側にいたタットルとだます側になったテンペル。
老犬の死、老女の死、そして最後に訪れる死。それらが涙を誘う。
北の山で始めて本当の夜空を見た人々、そして遠く離れた土地で同じ夜空を見上げる人々。住んでいるところは様変わりしていっても夜空は同じ輝きで頭上にある。
外に出て夜空の星をながめたくなるようなラストだった。
07・2・4




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 27

ぶらんこ乗り (新潮文庫)

著者 : いしい しんじ

出版社:新潮社

発売日:2004-07

評価 :

完了日 : 2007年10月31日

まだ読んでない方はこの感想を読まないで下さい。

図書館に返したくない本。
始まりからこの物語はいなくなった弟の話だとわかっているのに、先が知りたくて一気に読んでしまう。
全体にある物悲しい雰囲気、でもそれは懐かしさというか昔味わった事のある物語の雰囲気できゅっと何か胸に迫る。
急ぎすぎてよく解らなくなってしまったので、もう一度最初のほうから読み返してみる。
天才の弟はブランコがあの世とこの世を行き来していると感じる。あの世に引っ張られそうになったときおねえちゃんがこの世に引きとめるロープを引っ張ってくれていると感じる。なのにあの子はあちらにいってしまった。
いつあの子はあの世に行くことになったのだろう。お姉ちゃんが壊れそうになったとき必死でこの世に繋ぎとめたのはあの子だった。そしてあの子はいってしまう。
そう決めたのか、決まっていたのか、それとも何かと引き換えにしたのか。
木の上のあの子が動物たちのふるえを聞いていると知ったとき、おばあちゃんは何故あんなに取り乱したのか。おばあちゃんはあの子があの世に引っ張られていると感じたのか。
最後にあの子が帰ってくるのをブランコにのり待っているシーンは絵の様に浮かぶ。
弟の書いた話の中で「歌う郵便配達」はとてもいい話。
一番最初の話のひねくれ男は弟自信の悲しみなのかと思う。
いしいしんじの世界はとても懐かしい雰囲気で、それは多分昔読んだ童話と共通のかなしさがあるようでもっと読みたくなり、この本を手元においておきたいと思う。
07・2・27


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2.パートママ (2007/11/02)
最後のブランコに乗っているところですよね。胸にきゅっと来ますねえ。最初の弟の作った話はいしいさんが子どもの頃作った話だって知ってました?いしいさんも天才かも。
3.まりりん (2007/11/05)
そうだったんですか!さすがいしいさんですね。
この人の本は読みきるのがもったいないっていう感覚を味合わせてくれますよね☆

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 7

ポーの話

著者 : いしい しんじ

出版社:新潮社

発売日:2005-05-28

評価 :

完了日 : 2007年10月31日

まだ読んでいない方はこの感想を読まないで下さい。

シュールないしいしんじの世界。スフスフ、スフスフ。泥の中の気泡が湧き上がるようにいしいしんじの世界は胸の奥に入り込んでくる。
第一部
混沌とした泥の川に棲むうなぎ女から生まれたポー。純粋な母の愛に包まれて育ったポーは無垢の存在。うなぎ女たちの言葉にならない言葉から川での暮らし方を学んだポー。ただ母親たちの言葉のなかにも解らないものがある。手に触れず、見えも聞こえもしないもの、「たいせつなもの」
成長したポーは下流に出かけそこでメリーゴーランドやその妹ひまし油と出会い、川の外、陸の生活を知る。「罪悪感」を知り、「つぐない」を知る。
500年に一度の大洪水に町は泥の川の中に飲み込まれる。ポーは母親たちと別れ下流へと旅立っていく。洪水でおぼれた人々を助けこの世のバランスを守ったうなぎ女たちは上流へと帰っていく。この泥川はポーに繋がっている。同じ空を見ている。ポーの幸せを願いながら去っていく母親たち。何か象徴的。そこには成長していく子どもが親離れしていくのを見送る母親がいる。
ああ、メリーゴーランド、昼間は女たらしの電車運転手、夜は泥棒のメリーゴーランド。彼が盗むものは一度限りベットを共にした女たちの記憶がカラーから白黒に変るころその女たちが大切にしている思い出の品を一つ。これも何か象徴しているよう。メリーゴーランドの記憶が消えていくときにそれまで大切にしてきた記憶をとどめる品物を盗んでいくなんて。彼は淋しがり屋で優しい男、「こんばんわ奥さん」私の耳元でもささやいて言ったらしい。
第二部
天気売りと一緒に下流に流されてきたポーは犬じじと出会う。「ひとがなにかをつぐなおうって頭で思うとき、それはだいたい、自分のこころを慰めるためにやっているんじゃないか。・・・つぐないようのないことがこの世にはいくらでもある。」そんな猟師の犬じじは黒犬子どもの目で猟をする。犬じじの孫の少年はどの鳥にもそれぞれぴったりのその鳥らしい巣箱を作っている。罪悪感の塊のような女ぬすっと、その死から死者を大切に扱うことをポーは教えられる。犬じじと女ぬすっとと孫の間にある過去が想像されその死を乗り越えた少年の成長が感じられる。
さらに川を下り出会う埋め屋の夫婦、天気売りの才能が生かされる。天気売りはここではそれぞれの頭の上にある空はばらばらだと感じる。おなじ空を分かち合っているからこそ空を通じ繋がっていたはずなのにばらばらの空の下では何が間違って何が正しいのかもわからなくなってくる。
火事の中天気売りは「たいせつなもの」をとりに火の中に入っていく。そして投げたのはポーの女人形。天気売りのたいせつなものはポーだったという事か。
第三部
とうとう海に流れ出たポー。老人たちの暮らす浜辺にたどり着く。老婆もまた母であり、老人たちが海の息子と娘たちであることを知る。ことを知る。毒の吹き出る洞窟に棲むウミウシ娘たち。ポーの辛い選択。一番こころが震える。
ポーはずっと奥の深いところにもぐりこの世とあの世の境を知ったのか。大うなぎはポーの内側に入ることでポーを救ったのか、失ったのか。「たいせつなもの」それはポーにとってなんだったのか。かなしくてたいせつなものをしったポー。だがもう手に触れず、見えも聞こえもしない大切なものが何なのかポーにはわかっている。

三部のどれものクライマックスにキュンとなる。それはひまし油の大切なもの(人)だったり天気売りのたいせつなものだったりポーのたいせつなものだったり。
そして最後にそれぞれのその後とうなぎ女たちが返って来た泥の川に新たなポーが生まれ、新たな物語が始まる予感で終わる辺り、川の水は流れ海にたどり着きやがて空に上り雨となってまた戻ってくるそんな循環を思い出させる。
ストーリーに惹かれ大急ぎで読んでしまい、しまったと思いもう一度読み返してしまった。なのに2度目も新鮮という事は以下にあわてて読んでいるかという事か。反省。
07・4・26


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 25

トリツカレ男 (新潮文庫)

著者 : いしい しんじ

出版社:新潮社

発売日:2006-03

評価 :

完了日 : 2007年10月31日

読み始め、これも哀しい予感がもうすぐ出てくるのではないかと不安になったが、ホンワカと楽しめる恋の話だった。
恋、すとんと落ちるものといった作家もいるが、いしいしんじはトリツカレタ。

優しい作家の書いた優しい恋の物語、それを見守る優しい人たち。優しい気分になれる本だった。
07・5・6


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 9

麦ふみクーツェ

著者 : いしい しんじ

出版社:理論社

発売日:2002-06

評価 :

完了日 : 2007年10月31日

まだ読んでない人はこの感想を読まないで下さい。

とん たたん とん
とん たたん とん
7歳のとき始めて聞いたクーツェの足音。物語のなかでずっとその足音が聞こえるような気がする。

いしいしんじの物語は読み終わると何か悲しくなる。もっと読み続けていたい物語が終わってしまい、その世界から引き戻されてしまう。ずっと浸っていたい気分にさせる世界。

吹奏楽の王様のティンパニー奏者のおじいちゃん
素数に取り付かれたような数学者のお父さん、彼は後に鼠男と呼ばれる
元船乗りの用務員さん、彼は楽団の打楽器奏者であると共に作曲もしている
けんかばかりしている子どもたち、でも用務員さんの鳴らす鐘でさっとやめる。さながらボクサーがゴングと同時に離れるように
楽団の指揮者の郵便局長、ちょうちょおじさん、郵便局長の妹のおばさん、チェロ奏者、緑色、3000年分の記憶を持つ男、それからそれから
出てくる人物のだれもがみな何かいとおしくそのだれもが各々そっと抱えている悲しみがいとおしく、主人公を取り巻く世界がいとおしい。
その世界に癒される。

楽しみなのは用務員さんが集めてたスクラップ記事、ゴシップ雑誌から集められたその記事はどれもうそ臭い話ばかり。誰かが作って送った作り話なのか、記者が作ったのか。記者の名前は「イシイ」というのだろう。
物語りすべてが作り話なのだ。とてもよくできた作り話、こころを震わす物語。プラネタリウムのふたごの中で船乗りからの手紙に書かれた話もそうだった。おとうとの作った物語もそうだった。

いしいしんじの作品のなかには、変った擬音が出てくる。
とん たたん とん  クーツェの麦ふみの足音
スフスフ スフスフ  ボーの話の泥から生まれる泡の音 
ぶらんこのりの中のブランコの揺れる音
どれも読み終わった後に耳の奥で余韻のように残っているような気がする。

長い長編のなかに実は良く計算された短い話がちりばめられ、そして効果的に聞こえる音、いしいしんじは素晴らしい構成力を持った作家だ。

いいことも、わるいことも、みんなおなじさ、麦ふみだもの
07・6・17


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 7

白の鳥と黒の鳥

著者 : いしい しんじ

出版社:角川書店

発売日:2005-02

評価 :

完了日 : 2007年10月31日

いよいよ不思議ないしいワールド。どの短編もちょっともの哀しい雰囲気とちょっとグロい感じと奇妙な展開でそれは今まで読んだ物語の中に出てきた船乗りの話やスクラップブックの中の話のようで一度読んだだけでは理解不能な感じもする。

肉屋オウム
この話が一番好き。不器用な優しさ、命が続いていくことへの感謝の気持ち。
ラーが「むだじにじゃないぞ」と父親に語る場面、確かに父親の思いは息子に引き継がれ息子の思いは父親に届いている。

カラタチとブルーベル  姉妹の悲しい愛情の物語
オールド・ブラック・フォスター  オースザンナが聞きたくなる
魔法のリコーダー ちょっと心温まる
緑春  落ちがいい、思わず笑ってしまう。
太った人ばかりが住んでいる村  不思議

しろねずみ
せみ子の黄色い傘
紅葉狩り顛末
すげ替えられた顔色
ボウリングピンの立つ所
透明に関する四つの小話
私の千食一夜ー第百二十三回

なんか難しい

赤と青の双子
薄桃色の猫たち

なんだか気持ちわるい話

このほかに4話の短編

近くにおいて時々その気分に合わせて読み返してみたい。
そしたらまたいろんなこと思うかもと思う本。
07・7・13


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 106

容疑者Xの献身

著者 : 東野 圭吾

出版社:文藝春秋

発売日:2005-08-25

評価 :

完了日 : 2007年10月19日

ノッテル作家のノッテイル作品という感じ。
名探偵が犯人を追い詰めていくのだが、犯人側がその名探偵の追求にその敗北を認めたときの切なさ。エンターティメントだなあと思う。
作品自体については多くの人が語るとおりなのだろうが、この人の作品は優柔不断に最後で結末を悩むのだ。その結果読み手もどちらを選択しようか悩むのだ。そしてやはりこうなるのかという結末に落ち着く。そこがうまいと思う。
2006・10・5


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 52

ガール

著者 : 奥田 英朗

出版社:講談社

発売日:2006-01-21

評価 :

完了日 : 2007年10月19日

ちょっと元気が出る。
この中のワーキングガールたちはみな「ガール」を卒業しかけている年代。ある意味女が一番充実している時期の女。体力、気力、経験、若すぎず、まだまだ老けてもいない。
良いなあ、と思ってしまう。自分に自身が持てる職がある女って。今のパート、毎日後何分で終わるかななんて思いながら仕事して、毎日いつ辞めよう、辞めた後どうしようと思いながら仕事してる。でもどこ行っても同じなんだろうななんて思いながら毎日時間が過ぎるのを待っている。
また、ここに出てくるのはどちらかというとエリート企業の総合職のバリバリの女性ばかりだけど、なんか元気があっていいんだよね。
「ヒロくん」の奥さん、そんな貴重な旦那はいないんだからいっぱい愛情を注いだほうが良いよ。
「マンション」の彼女、30過ぎると何故かみんなマンションを買おうか、って言い出すんだよね。結構スパーッと買っちゃった人ほどあっけなく結婚したりして。
「ガール」のお光だって一人で部屋でブルーになる日だってあるよ。服装とかお化粧とかで自分で自分を奮い立たせるその強さ、健気さ、何か偉い。
「ワーキング・マザー」のお母さん、ホントにいい環境。彼女が一生懸命だから周りも認めてくれるんだろうなあ。
「ひと回り」のお姉さん、ドキドキできるってことはいいことだよ。いい年してなんて思わずにいつも誰かにドキドキしていたいな。
2006・10・2


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1.船橋胡同 (2007/10/22)
今日の新聞にこれからの時代は「ネットスーパー」になる。
年よりが買い物に行かずに、温かいもの温かく、冷たいものは冷たく、新鮮な物が30分ほどで手に入るとの事。
妻はテレビショッピングファンで、気にいらないのはすぐ
無料で返品。時代は変わった。IT革命は、倫理・常識も変え
辛くも楽しくも自分の考え・知識次第になりそうですね。

 

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 100

死神の精度

著者 : 伊坂 幸太郎

出版社:文藝春秋

発売日:2005-06-28

評価 :

完了日 : 2007年10月19日

伊坂幸太郎らしい。
死神は淡々と「死」すべきものと「可」の調査結果を下す。最初に例外があったからちょっと期待させたのに実に淡々と「可」の判断を下し見届ける。
雨男の死神が最後に晴れを見て終わる。
読んでいてほっとするというと変だけれど、何も考えずに楽しめた。
「旅路を死神」が一番好きだが、途中でであった落書きをする男、彼もまた淡々と事実を受け入れる。彼って何者?
「死神対老女」もいいが、あの彼女がこんなおばあさんになっていたなんてオチ、やるな。
2006・10・2


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1.みちは (2007/11/24)
『彼』は、重力ピエロに出てきますよ
2.パートママ (2007/11/25)
そうでした、彼の出てくる本も読んだのでそのうちアップします。
 

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 2

青山娼館

著者 : 小池 真理子

出版社:角川書店

発売日:2006-01-31

評価 :

完了日 : 2007年10月19日

面白かったといえば面白かったのだが、この手の小説の感想というと難しい。
読んで特に何か感動とか共感とか、これといってない。こういった愛情の形、生き方、それはそれで物語なのだと思うし・・・。

"女の友情は時として残酷だ。・・・・・たとえ何年会わずにいても、互いの不幸指数が一致すれば、それだけで無二の親友同士に戻ることが出来る。"

これってあるなあと思う。同窓会に行って感じること。
でもだからこそ語り合いたいと思うこともあるんだよね。
という事で、☆3つ。
2006・9・28


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 24

ベルカ、吠えないのか?

著者 : 古川 日出男

出版社:文藝春秋

発売日:2005-04-22

評価 :

完了日 : 2007年10月19日

イヌよ、イヌよ、お前たちはどこにいる。

語りかけるような文体、長い詩の様だ。太平洋戦争から始まる4頭の犬たちから始まる系統樹が、ソ連の英雄犬ベルカとストレイカが、その長い歴史の中で絡み合い離れ新しいベルカへと続く壮大な犬の叙事詩。
そしてひとりの老人の狂気と、一人の少女の狂気が産む物語。
魅力的なのはその少女だ。犬になることを選んだ少女。決して美しくない少女は桐野夏生の「グロテスク」の主人公の正義を思い出させる。欲望と本能のままに生きる。
犬たちは常に「生きろ」と何かに命令される。そして生きる。その系統樹を絶えさせる事のないように。そしてその血は遠くはなれるが、老人によってまた巡り会う。それは運命付けられていたと感じてしまう。
物語の最後、生き残ったベルカとストレイカは新しいベルカとストレイカへと続くのだろう。少女はストレイカとしてその系統樹を作っていくのだろう。

古川日出男は「アラビアの夜の種族」をその始まりの何ページかで断念してその後何かを読もうと思ったがそれも断念した。「アラビア・・・」を読まなかったことを後悔して少し短めのをと今回これを読んだのだが、この文体に惹かれてしまった。
「犬よ、お前は・・・」と語りかける。「・・した。」「・・・する。」と断定的な表現。魅力的だ。ああそうだ、思い出した。三好達治の詩「乳母車」の感じだ。あの「母よ、私の乳母車を押せ」あの感じだ。
やはりこれは長い長い詩なのだと思う。
2006・9・24


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 36

となり町戦争

著者 : 三崎 亜記

出版社:集英社

発売日:2004-12

評価 :

完了日 : 2007年10月19日

中盤で中だるみしてしまった。リアリティの無い戦争がお役所言葉でその理由も意味も実情のわからないまま進行していくことと同じように物語にも飽きてきてしまった。途中断念しようと思った矢先戦争が身近に影を迫らせる。そして確かに戦争はあるのだと一瞬のリアリティを感じさせ終結する。
物悲しさというか虚しさが全体に漂っている。

僕たちの世代というのは、戦争というものの実体験もないまま、自己の中に戦争に対する明確な主義主張を確立する必然性もないまま、教わるままに戦争=絶対悪として、思考停止に陥りがちだ。・・・・その反面、いわゆる≪世間≫では、「正義のために、愛する人のために」という大義名分をうけて戦うことを正当化する、という図式がまかりとおっている。子供向けのヒーロー番組しかり、勧善懲悪方の時代劇しかり。・・・・もちろん僕たちは戦争を『否定』することが出来るし、否定しなければならないものだと感じている。ただしその「否定」は、「あってはならないもの」「ありえないもの」としての消極的な否定であり、「してはならないもの」としての積極性を伴った否定にはつながりえないようだ。

意味のあることを言っているようでいてその問題の本質を覆い隠すお役所言葉の虚しさのように、この物語全体に漂ううっすらと肌寒いような淋しさ。それはきっと作者の言う思考停止状態の中の消極的な否定のリアリティのなさなのだろうか。
2006・9・20


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 36

バスジャック

著者 : 三崎 亜記

出版社:集英社

発売日:2005-11-26

評価 :

完了日 : 2007年10月19日

初めて読んだ作家だった。最初の「二回扉をつけてください」を読んだとき、懐かしいジャンルの本だと思った。昔の星新一とか筒井康隆とかのSFの様な感じ。
しかし、「しあわせな光」「二人の記憶」「雨の降る夜に」は女性の感性が感じられる。何か心優しい野田かちょっと中途半端な感じもする。
「バスジャック」は「二階・・・」系の話だが、オチがなんだか読めてる気がする。
「動物園」と「送りの夏」は展開がなんともまだるっこしい感じがして読みながらなかなか終わらないなあなんて思ってしまった。
まだこれからの作家なのだろう。わりとこういう雰囲気の話しは好きなので今後に期待したい。
なんてえらそうな感想だろう。でも、最近老眼も進んできたしもっと読みたい本やもう一度読み返したい本がいっぱいある。ちょっと物足りない本を読んでいると時間がもったいない気がする。せっかちなんだろうなあ。
2006・8・12


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 21

震度0

著者 : 横山 秀夫

出版社:朝日新聞社

発売日:2005-07-15

評価 :

完了日 : 2007年10月19日

面白かった。☆5にしようかとも思うがもっとすごいのに出会ったときのために取っておこう。
誠実で他からの信頼も厚いひとりの警察幹部が阪神淡路大震災の朝失踪する。その失踪によって危うい均衡の上に成り立っていた県警警察幹部たちのバランスが崩れていく。徐々に明らかになる地震の被害と同じように誠実な人間のとった不可解な行動によってそれに係わる警察幹部たちとその妻たちの隠れた野心や欲望や思惑が明らかになっていく。
これは「半落ち」のときと同じようにその失踪の謎を明かす物語とともに周りの人間たちの話なのだ。
最初人物がすんなり把握できなくて、これってどんな人だったけ、どんな家族がいたんだっけと戸惑うのだが、だんだんそれが判ってくると警察内部だけではなく社宅の人間関係というか損のものが重要な位置を占めていることがわかりどんどん引き込まれる。
そして圧巻は最後のオチに在る。ああこれはもしやと推理していた人も多いかもしれないが、その失踪の謎が解けたとき警察幹部たちが選んだ道。それぞれがそれぞれに思い十字架を背負い込んでしまった。最後に堀川が電話したとき本部長が電話で話していたのは誰だろう。誰からかけたのだろう。
そうこの物語の鍵は電話だ。電話が重要な効果を上げている。特に警電が。
みんなにオススメしたい本です。
2006・8・5


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