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Tetchyさんの読書ノート

ムック・ガイドブック系
ミステリから読書一般まで、興味のある分野におけるガイドブック。
本屋でこういうのを見つけるとついつい買ってしまいます。
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 3

この文庫がすごい! 2007年版 (2007)

著者 :

出版社:宝島社

発売日:2007-07

評価 :

完了日 : 2008年10月29日

昨年、内容に幻滅した本ムックですが、今年も例に漏れず購入。
その理由は後に述べるとして、今年も懲りずに「文庫・オブ・ザ・イヤー」が本書の目玉になっています。

そしてその結果が森見登美彦氏の『太陽の塔』が第1位という結果になりました。
確かに昨年は森見氏の年だったと云えるでしょう。

ミステリプロパーではない彼の名は、『ダ・ヴィンチ』始め、各雑誌、新聞でも高評価を得ていたので、原点回帰としてデビュー作である本書に焦点が当るのも無理もないと思います。
むしろ昨年の結果(『博士の愛した数式』)に比べると、単行本発売当初話題にならなかった本書が逆に話題になったという文庫という形での再刊で評価されることで、この企画もどうにか面目躍如といった感じがしました。

しかし、各投票者の意見を見てみると、やはり『このミス』に付和雷同した意見が多いのです。
つまり、初刊行された時点で評価の高かった作品を再度高く評価して、票を投じています。

確かに面白いのは素直に面白いと評価する姿勢は間違っていないと思います。
本書にも「今年、最高に面白かった文庫」と謳われていますから。

しかし、私はこのアンケートでは、初刊行時に正当に評価されなかった幻の名作、埋もれた名作を文庫化という機会にもう一度評価してみてはどうだろうか?というのが真の意味であると読み取っています。
文庫という単価の低い媒体にて初刊行時にさほど売れなかった作品を敢えて再刊行する各出版社の姿勢、商売を超えた文化活動への賞賛という意味を込めて、こういうムックで評価したい、そういう意味がこのアンケートには込められているのだと思っています。

だから各投票者には『このミス』とは違った視点で、このアンケートには臨んでほしいと強く願っています。
それが本ムックの重要な目的であることは『このミス』で過去20年間にてベスト20に選ばれた作品を紹介していることからも如実に現れています。

書店の書棚という有限のスペースという制約の中、絶版される作品は少なくありません。
名作といえども商業ベースに乗らなければ即絶版です。

しかし、やはりいい作品は末永く読んでもらいたいのです。
だからこそ、こういう形で紹介し、作品の延命化、復刊の促進を図っているのでしょう。

私がこのムックに期待するのは、真の本好きを応援する文庫活性化の年に一度のムーヴメントだという位置付けです。
今一度、各投票者にはこのムックの意義という物を考え直してもらいたいですね。

そして復活して3年目の本ムック。
復活した時のフォーマットに則って作っている感が拭えません。

もちろん書店員たちの座談会や、文庫書下ろし作家のインタビューなど、いい企画があるのは認めますが、以前はもっと自由度が高かったはずです。
例えば、コンビニでしか売っていない文庫の特集、実用文庫は本当に実用的なのか?などなど実験的な企画があったのですが、最近は定型を脱しないために質は安定しているものの、飛び抜けたものがないなというのが正直な印象です。

唯一、巻末に掲載された官能小説大賞がその名残で、これが非常に自由度が高く、面白いですが。
今年も刊行されるでしょうから、もっと文庫という切り口で自由闊達な記事、企画があることを大いに期待してます。


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 1

本格ミステリー・ワールド 2007 (2007)

著者 :

出版社:南雲堂

発売日:2007-02

評価 :

完了日 : 2008年09月29日

島田荘司氏監修ということで大いに期待し、飛びつきましたが、結果的には無難に纏まったなというのが感想。
島田氏が携わるということで期待の新人達との対談や第一期新本格作家達との対談などミステリ論が展開されるかと期待しましたが、さにあらず、島田氏が出てくるのは巻頭言のみでその後は2006年に新人賞を受賞した作家達と二階堂黎人氏との鼎談、2006年黄金本格ミステリー選出、各作者達の今後の予定やその他鼎談など、どこかで見たような内容ばかりで、島田色が出ているというよりもなぜか二階堂氏の影がちらつくような内容でした。

唯一このムックの特色が出ているのは黄金本格ミステリー選出でしょうか。
有識者たちによる2006年に発行されたミステリーの中で今後歴史に残すべき黄金本格ミステリーなるものをしかも10作とか20作とかいう縛りを無くして選出しようというこの企画、私的にはかなり血湧き肉躍りました。

島田氏が提案したこの企画はなかなかに素晴らしく、こういうのはもっとやってほしいと思いました。
しかし、やはりここにも二階堂氏が絡んでいるのです。

現在光文社で随時募られている『新・本格推理』シリーズ。
鮎川氏より二階堂氏へ引き継がれた当初は、いきなりレベルが向上し、二階堂氏の手腕に感心しましたが、近年どうも二階堂氏の悪い面が露出し、ついていけなくなり読むのを止めてしまいました。

このムックにもそのシリーズで述べられた二階堂氏が求めるミステリについての文章(彼曰く、「檄文」だそうです)が掲載されていますが、これが明らかに独善的です。
自分の趣味を他人に押し付けているだけなのです。

選者の俺はこういう話が読みたいの、普通の本格は面白くないの、もうわがまま云い放題です。
しかも自分が本格だと認めるものしか選ばないのだから困ったものです。

そういう選者が参加する黄金本格ミステリーだから、もし2005年の同様のイベントがあったら、万人に迎えられた東野氏の『容疑者Xの献身』は彼の猛抗議にあって選ばれなかったでしょう。
彼の作品は読んだことありませんが、彼の求める本格については否定しません。

それを自身で書き、発行するのも問題ありませんし、私も読んではいませんが文庫は全部持っています。
しかし、自分の好みを他人に強要するのはやはりいただけません。

彼のような本格もあれば、北村薫氏のような本格もあり、我孫子武丸氏のような本格もあるし、東野圭吾氏のような本格もあるのですから。
タイトルに「2007」と謳われているということは恐らくシリーズ化するのでしょう。

しかし私は選者に二階堂氏がいることに懸念を抱きます。
彼がアンソロジーを組む企画ならば問題ありませんが、こと「黄金本格ミステリー」を選ぶとなると、他に相応しい選者を招くべきです。

それは選定会議における彼の発言からも推し量れます。
来年も刊行されるならば更なる成熟を求めます。

今のままでは『本格ミステリ・ベスト10』とあまり変りません。
もっと独自性を出してほしいものです。


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 2

このミステリーがすごい!2007年版

著者 :

出版社:宝島社

発売日:2006-12-08

評価 :

完了日 : 2008年09月14日

昨年から海外赴任したため、その情報が入ってくるのが遅くなるのは止むを得ませんが、やはり自分のところに届いたのが昨年の4月では時期を失した感は否めませんね。

パッと見て表紙の雰囲気や全体の紙質の変化にまず驚きました。
ちょっと見、本屋で並んでも『このミス』だとは気付かないかもしれません。

しかし、内容は全く以って例年通り。
一年のミステリを総括する本書、敢えて新しい趣向を凝らさず、マンネリ化を以って安定感を与えようとしているのでしょうか。
とはいえ、このマンネリが一ファンとしては年に一度の祭りが今年も来たなぁと思わせるのですが。

さて今回のランキングは前に読んだ『本格ミステリ・ベスト10』とは結構違った印象を受け、非常に興味深かったです。
あちらで評価の高い有栖川氏は下位に属し、2作がランキングした三津田信三氏なんかは蚊帳の外です。

共通して評価が高かったのは道尾秀介氏でしょうか。
こうして並べると一昨年は『本格ミステリ~』がミステリど真ん中のランキングであり、『このミス』が広い範囲でのランキングだという両者の特色が色濃く出た年でした。

あとやはり『このミス』では警察小説が強いという感じが。
佐々木譲久々のヒット作『制服捜査』の2位を筆頭に、9作めにして4位という高位にランクインした『狼花 新宿鮫Ⅸ』、東野圭吾氏の『赤い指』や香納諒一氏の2作などがランクインしています。
また常連の宮部みゆき氏も健在です。

一方海外に眼を通すと、一昨年巷間で話題になった『あなたに不利な証拠として』が堅実に1位を獲得。ディーヴァー、コナリー、クックの常連作家も健在で、さらに昔からの作家ハイアセンも登場と往年の『このミス』を見ているかのようです。
近年の物故作家の隠れた名品の刊行もランクインしていることから海外ランキングはとても21世紀の2006年のミステリシーンを伝えるものとは思えないほどヴァラエティに富んでいます。

今年もちびりちびりと読んだ本書。
読んでみた感想は、昨年もいい年であったという感慨と、やはりミステリは面白いと再認識できた事が素直に楽しかったです。

以前感じた、作家の使い捨て感がようやく払拭されつつあるのもよいと思いました。
やはり素直に面白い物は面白いと評価しているのが一番いいですね。

しかし一方で『本格ミステリ~』の方で感じた新しい作家の力の躍進も馬鹿に出来ません。
個人的には今年のように各ランキングで全く違う結果が出て、それぞれのフィールドで評価が違うのが一番読者として面白いし、また興味も尽きません。

海外赴任している今は、海の彼方から日本のミステリシーンの現在を傍観するしかないのが悔しいのですが。
はあ~。


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 1

本格ミステリ・ベスト10〈2007〉

著者 : 探偵小説研究会

出版社:原書房

発売日:2006-12

評価 :

完了日 : 2008年08月25日

本書でも述べられていますがここ数年、『本ミス』と『このミス』のランキングは似通っているところがあり、しかもここ3年間は1位が同じと、あまり特徴的な差別化が無かったように思いましたが、今年は全く趣きが違い、それぞれの特徴が出て、非常に面白い結果でした。
本ムックの中でも述べられていますが、ここ数年の両者のランキングの類似性はいわば、本格推理小説の充実振りを示しているのであって、二階堂氏が苦言を呈しているような推理小説研究会の怠惰振りを批判する物ではありません(というよりも何故このようなコメントを公の場でするのか、二階堂氏の非常識ぶりに唖然とします)。

そして今回二者のランキングが異なったのは、日本ミステリ・エンタテインメント小説界の充実振りを示す証左に他ならないでしょう。
二階堂氏のコメントに戻りますが、彼の論は単純にジャンルの偏愛から述べたものでなく、自分のお気に入りの作品、作家がなぜ本格ミステリランキングに載っていないのかとか、上位にランキングされないのか?といった非常に個人的な憤激であり、自分を何様だと思っているのかと、斯界の大御所ぶった横柄ぶりを露見しただけに過ぎません。
全く自分の評価を下げたものです。

しかし1位が有栖川有栖の『乱鴉の島』というのは正直意外でした。
このムックでも投票者のコメントを見ると複数、作品を上梓し、本格ファンの琴線に触れた道尾秀介氏と三津田信三氏が目立つのみで、この作品が1位にもかかわらず、全く目立っていないのも面白いです。

そして2006年はやはり道尾秀介の年だったのでしょう。
現在でも続々と注目が集まっています。
斯く云う私も彼の作品を読みたい一心です。

そしてランキングに島田作品が2作もランキングしたことも個人的に嬉しいです。
2006年は『吉敷竹史の肖像』の文庫改訂版ともいうべき『光る鶴』を加え、6作も新作を出し大御所健在振りを発揮しましたが、健在というよりも島田氏が未だに本格ミステリ好きのマインドをくすぐる作品を続々と紡ぎだしているという事実に心からの賞賛を送りたいと思います。

そしてこの回で早くも10年目となったんですねぇ。
節目節目に行われるオールタイムベストランキングも過去10年分となると、全然古めかしさが感じられず、つい最近の作品ばかりだと思うようになりました。

私の今読んでいる本たちが80年代後半から90年代前半にかけての物が多いから、ますます時代との格差が広がるばかりである事を痛感しました。
あれも読んでいない、これも読んでいないと愕然とした次第です。

ホント、島田作品しか読んでなかったですからねぇ。
しかしこの年もいい本がいっぱい出たことが解りました。

今年も沢山の素晴らしい作品が出版されますように。
海外では読めませんけどね・・・。


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 1

推理日記 (1) (講談社文庫)

著者 : 佐野 洋

出版社:講談社

発売日:1984-09

評価 :

完了日 : 2008年07月30日

佐野洋氏の『推理日記』シリーズの第1巻が海外赴任地の片隅で見つかるとは思いませんでした。
現在も『小説推理』誌上で続く長寿連載の第1回目とはいかなるものだったのかと興味津々で読んでみました。

まず面白かったのは『推理日記』の名の下、当初は○月×日なる日付が付いていた事。
しかしこの趣向もたった5回で終わっており、作者自身もあまり必要も無いので止めたと述べています。

そして本作は佐野洋氏の推理小説界に一迅の風を起こそうとかなり張り切っている様子が伺えます。
というのも思いっきり各作家の力作、乱歩賞受賞作、好評な作品に噛み付いているからです。
終いには当時の人気ドラマ『太陽にほえろ!』までにも噛み付く始末。

これがなるほど、さすが佐野氏だと唸らせるものならばまだいいですが、この頃は若気の至り(とは云ってももう四十路を迎えているのでしょうが)が先行して、自分の云いたい事をいいながらも、論理が成立しにくくなると逃げる傾向が強く見られます。
例えば各作家の作品を褒めつつも、実は1つ―2,3の場合も多々ありますが―気になるところがあると開陳し、それが何もそこまで・・・といったような具合です。

特に視点に関しては敏感で、
「私は文中、誰某の主観が入ったので、ははあん、ここがミスリードなのだなと注意深く読んだが、果たして真相は予想に反して普通に展開し、○○については全く触れられなかった」
という文章の多い事、多い事。
議論を吹っかけますが、なかなか抗議も来ず、他の作者の意見と佐野氏の考えが違う事もしばしばなのも興味深かったです(まあ、そういうことを正直に書いている事もこの人らしいのですが)。

特に西村京太郎のベストセラー『消える巨人軍』に対する重箱の隅の突きようはちょっとベストセラーに対する嫉妬すらも伺えました(他人の作品を作品の質に関係のないところで粗探しをするのは自分を貶める事になると思いますが)。
特に生島次郎氏が
「佐野洋は一見論理的に見えるんだけど、その論理が非常に独善的なんだよなぁ。特に私怨が混じると」
という風な事を云った件は一番傑作でした(よく書きましたね、佐野さん)。

以上のように、推理小説の厳しさを感じさせてくれたⅣやⅤに比べると、独善的な我の強さが目立ったエッセイでした。
この連載が始まったのが1973年で私は当時△歳ですか。
これだけ暴れまくって平成の今までよく続いているなぁと、驚いた次第です。


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3.take9296 (2008/07/31)
いえ、さすがに「小説推理」誌は、小学生の頃は読んでいません。私が、日本の推理小説にはまったのは、中学生になってからで、スタートは、小峰元、松本清張、森村誠一あたりでした。西村京太郎は中学二年生ぐらいからだったと思います。
「推理日記」の単行本は、何年か前に図書館で借りて読んだのが最後ですが、まだまだ続いているのですね。
4.Tetchy (2008/08/01)
やっぱさすがに小学生で『小説推理』はハードル高すぎですね。私も小学生の頃はまだ「~入門」という学習本を読んでいました。
私も中学生の時に図書館でポプラ社の江戸川乱歩の少年探偵団シリーズと出逢ったのが本格的にミステリを読む原初体験だったように思います。
でも中学生で松本清張、森村誠一、西村京太郎とはやはりtakeさん、早熟ですよ~(^^)b

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 1

この文庫がすごい!〈2006年版〉

著者 : 『このミステリーがすごい!』編集部

出版社:宝島社

発売日:2006-07

評価 :

完了日 : 2006年08月22日

昨年、復活ののろしを挙げたこのムック。
その内容は衰えていたかつての勢いを見事に誌面で甦らせてくれました。

その余勢を駆って、本年も発刊と相成ったのですが、その内容に斬新さは見られませんでした。
昨年、『この文』の花形企画として打ち出した「文庫・オブ・ザ・イヤー」の結果からしてがっかりです。

なんせ1位は映画にもなったベストセラー『博士の愛した数式』だからです。
この失望は私が単純にミステリ・エンタテインメント系が好きだからという理由ではなく、数多く文庫を読む読書子が勧めたい文庫という結果としてはあまりにもお座なりだからです。

前年の1位、岡嶋二人氏の『99%の誘拐』は正にムーヴメントを引き起こしました。
これは恐らく普通、本を読まない人たちに知られていない本が1位になったからです。

でも今回はこれ、有名すぎるじゃないですか!!
この年の本屋さん大賞がリリー・フランキーの『東京タワー』だったと同じくらい白けました。

宝島社が放つムックなだけに、読書のプロがあまり世間に知られていない面白文庫を紹介する指南書であってほしいのです。
それを皮切りに続く企画、インタビューも有名どころばかりで、もうすでに「ダ・ヴィンチ」で読んでますって感じがして、何のために800円以上も払って買ったのか、解りません。

普通に本を読む人たちに阿るぐらいならば、もはや『この文庫がすごい!』なんて冠を掲げるのはやめて欲しいです。
もっと文庫ならではの企画があるはずです。

例えば絶版文庫の復刊希望ベスト10とか、芥川・直木賞作品で現在文庫で手に入るのは何冊か?なんて出版社サイドを突っつく企画があってほしいです。

文庫は文芸作品残存の最後の砦なのです。
売れてる文庫は黙っていても本屋の棚には並んでいます。

『この文』がやらなければならないのは、絶滅しそうな不朽の名作の保存、復刻ではないでしょうか?
今のままではムックとしての存在意義がありません。
今回は強くそう思いました。


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 1

本格ミステリ・ベスト10 (2006)

著者 :

出版社:原書房

発売日:2005-12

評価 :

完了日 : 2006年05月12日

例年年末に刊行される本格ミステリ限定のベスト10ムック。
昨年の物と比べてどうかと問われれば、さして変化もなく、可もなく不可もなくといったところ。

前年のムックを見比べてみたところ、ほとんど構成・内容に変化がないのに驚きました。
新企画の1つや2つあってもいいと思うのですが、徹頭徹尾同じ構成を貫くこの姿勢は実はこの数年のデータの蓄積(ミステリサイトやコミケ、ミステリゲームに関する)を目指しているのかもしれません。

本格ミステリに絞り込んでいるゆえに、座談会の内容の充実さは『このミス』よりも高いと思います。
全くおふざけがないのも生真面目すぎる感じがします。

そしてやっぱり今回も海外ミステリに関しては以前よりもページを割いているものの、まだ蚊帳の外だという感が否めません。
論創社という海外古典ミステリを続々と刊行する出版社が登場し、その充実振りは目を見張るものがあるというのに、まだまだ扱いは少なすぎます。
昨今は海外ミステリが売れないと云われているというのに、こういうミステリムックで盛り上げていくべきだと思います。

毎年のミステリシーンを把握するのにはこういうムックは貴重ですし、今後も買い続けるのは間違いありません。
そこに付加価値を求めるか否か、それは私個人の問題かな。


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 2

このミステリーがすごい!―2005年のミステリー&エンターテインメントベスト10 (2006年版)

著者 :

出版社:宝島社

発売日:2005-12

評価 :

完了日 : 2006年02月23日

読むのが勿体無いという面白さは変わらないものの、目新しさがないのもまた事実。
昨年に引き続き、ランキングを制したのはベテラン作家であったのは素直に嬉しいです。

その他佐々木譲氏の復活、久々の原尞作品が当然の如くランキングされているのもまた嬉しいです。
北村薫氏、我孫子武丸氏のランクインも健在ぶりの証左となって嬉しかったです。

しかしやはりこの20位までというランキングで淘汰された作品があるのも気になります。
特に伊坂作品や恩田作品など世評が高くなるにつれて『このミス』読者が離れていっているような気がし、マニアのためのミステリ本の域を脱していない感が強いのです。
また島田荘司氏の復活があまり評価されていないのも腑に落ちませんでした。

翻って海外ミステリのランキングに目を向けると、この分野はどんどん拡散している気がします。
特に顕著なのはミステリから乖離して行っているのではないかという事。

1位のジャック・リッチーやシオドア・スタージョン、アヴラム・デイヴィットスンなどはもろSF作家のようですし、これらの作家を高く評価するよりもウェストレイクやランキンやヒル作品が例年通り訳出している事を喜び、評価すべきだと思います。
個人的には2位にランクインしたコナリーに1位を取ってほしかったですが。

あと国内ランキングで目に付いたのはライトノベル作家の進出が以前にも増して顕著になったこと。
ここらへんはライトノベルというよりも通常のミステリとして評価しているのだからまあ、そんなには気になりません。

『このミス』は今後も読むでしょうし、また出版された時は嬉々としながら読むだろう事は間違いありません。
しかしやはり最近感じる違和感は拭えません。
これはこの先ずっと続くんでしょうね。


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 1

世界ミステリ作家事典 本格派篇

著者 : 森 英俊

出版社:国書刊行会

発売日:1998-01

評価 :

完了日 : 2006年01月30日

まさに全てのミステリファン必携の書。
こういう仕事は誰かがやらねばなりませんでした。

日本のミステリ史の編纂でさえ、あの中島河太郎氏をもってしても成し遂げずに道半ばにして他界しました。
しかし森氏はさらに広範な世界ミステリの作家事典を編むことを成し遂げました。

しかも当時40歳という若さで。
まさに驚嘆に値します。
日本ミステリ界に森英俊氏を得た事は途轍もない幸運だと思うし、また至宝として扱うべきです。

恐らく本人はものすごい苦労をかけたでしょう。
しかしそれが苦労であるとは感じなかったはずです。

半ば嬉々としながら作業をしていたはずです。
それはその続きの[ハードボイルド・警察小説・サスペンス篇]が数年後に編まれた事からも明らかです。

本作の功績は刊行後国書刊行会が、そして8年後、論創社を筆頭に各出版社がミステリ叢書シリーズとしてこの森氏が掲げたまだ見ぬ傑作群を続々と訳出している事からも証明されています。
そして森氏の掲げた作家にはまだまだ紹介されていない作家が山ほどいるのです。

特に'97年当時に名前さえ知られていない作家達を積極的に物量的にもかなり多く紹介している事が世のミステリ読者の触手を動かして止みません。
恐らく日本ミステリ一辺倒の方々には何の興味も持たない1冊かもしれません。

しかしミステリを愛する者、特に海外ミステリをこよなく愛する者にとっては垂涎の書であるのは間違いありません。
なぜなら私がそうだからです。

7,000円は正直安いと思います。
正に森氏でなければ成し遂げられなかった仕事。

今後この事典がせめて10年に一度は改訂される事を期待します。
そしていずれは彼の衣鉢を継ぐ者が現れんことを心の底から祈らずにいられません。


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 2

この文庫がすごい!2005年版

著者 : 『このミステリーがすごい!』編集部

出版社:宝島社

発売日:2005-07-04

評価 :

完了日 : 2005年09月17日

何年ぶりかに購入し、店先ではあっという間に売り切れていたのでここ数年間は買いそびれていたのかと思っていましたが、なんと4年ぶりに復刊したとの事。
確かに最後の方は方向性を見失っていてなんか味気なかったですかねぇ。

で、復刊したら2005年文庫オブ・ザ・イヤーなんていう企画が始まっていました。
これってほとんど『このミス』ですね。

ジャンル別にランキングを分けているのはいいですが、『ダ・ヴィンチ』や『IN・POCKET』などの二番煎じの感は拭えません。
まあその年に文庫として出版された作品が全て対象であるから復刊作品も同列に論じられる辺りは特徴的ですが、ミステリー&エンタテインメント部門1位が『99%の誘拐』というのは情けないかな。

他にいい企画は書店員座談会。
これは本を売る側の熱意、現場の大変さが伝わり非常に良かったです。
これは続けて欲しい好企画です。

逆に不要なのは官能文庫大賞。
岩井志麻子が嫌いだし、内容が無いしで最悪。

復刊したとはいえ、強力な企画、オリジナリティ溢れる企画が無いのは確か。
このままだと以前の二の舞です。

あえて毎年文庫を語る意義があるのかという危うさを大いに感じます。
しかし文庫愛好家にとっては文庫運動を後押しするいいムックではあるのかもしれません。


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 1

おすすめ文庫王国 (2004年度版)

著者 : 本の雑誌編集部

出版社:本の雑誌社

発売日:2004-12

評価 :

完了日 : 2005年05月21日

どうも毎年年末に発行されているムックらしいですが、その存在を知ったのは初めて。
宝島社の『この文庫がすごい!』シリーズが絶版(2005年当時)した今、その代替として読んでみました。

文庫に対する愛情がこもったムック、一言で云えばそれに尽きます。
『この文』と決定的に違うのは実際の書店の店員がコラムを書いている事。

書店員の生の声が聞けて非常に楽しいです。
書店員の売りたい本がどんなものなのかが直截に判り、興味深かったです。
岩波文庫とかちくま文庫とか売りたいのが意外でした。

また各出版社の営業の特徴も遠慮なく書いており、これも無類に面白いのです。
新興の幻冬舎が早くも老舗のような横暴ぶりを発揮している事や新潮社がその文庫のように実に丁寧な仕事ぶりだというのも肯けます。

来年も出たら買うでしょう。
もしかしたら同じような内容かもしれないが1年に一度の祭りだと思えば、気になりません。


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 1

本格ミステリ・ベスト10 (2005)

著者 :

出版社:原書房

発売日:2004-12

評価 :

完了日 : 2005年04月22日

『このミス』が常に変化しているのに対し、このムックは毎年同じ企画・コラムが掲載され、変わり映えがしません。
尤も、変化した企画・コラムが『このミス』で大当たりしているのかといえば、そうとも云い切れないのですが、このマンネリズムには正直物足りなさを感じます。

国内本格の内容の充実振りに対して海外本格のまるで添え物のような扱いも気になります。
アンケートの分母となる絶対数自体が少ないのです。
ミステリを論じる以上、国内も海外も同等に扱うべきです。

コラムもミステリを軸に漫画・ゲーム・映画・コミケとあまりにマニア中心の内容はうすら寒ささえ覚えてしまいます。
中身が白黒の単色での構成もこの時代では結構厳しいものがあります。

これではオタク本に過ぎないではありませんか。
座談会も、おいおいこんなことをこんな言葉で本当に話してんのかよ!?と突っ込みたくなるほど高度ですし、全体的にマニアのための知的娯楽でしか表現されていないのが非常に気になりました。

このままでは本格はある一部の人にしか受け入れらない限定された世界での展開しか繰り広げられません。
もっと多方面の読者を引き込み、初めて本格ミステリを読む方々が手に取りやすい装丁・内容・文章にしてほしいものです。

最後の編集後記の内容もオタクコメントの羅列ですし。
何か情けなくなってきますね。

しかし上ではこのような批判をしていても、結構のめり込んで読む自分がいるのも情けないのかもしれません。


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 1

このミステリーがすごい!2005年版

著者 :

出版社:宝島社

発売日:2004-12-09

評価 :

完了日 : 2005年02月13日

今年も堪能しました、年末の大イベント、「このミス」。
法月綸太郎氏が1位だったのは意外だったのと、伊坂氏の3作全てランクインもびっくりしました。
またサラ・ウォーターズの連続1位も驚きました。

自分の評価では中くらいだったトレヴェニアンの久々の新作『ワイオミングの惨劇』がなんと3位にランクインしていたのも予想外。
恐らく久々の新作ということから10位以内には入るだろうと思ってはいたがまさか3位とは。

ミステリのランキングもミステリのジャンル自体が肥大し、拡散していきつつあるのを受けて、他のジャンル、特にSFやファンタジーの作品のランクインが目立ちました。
特に海外はランキング作家の顔ぶれが古今混在しているのにも関わらず、他ジャンルの作家が散見されたのが最初残念でした。

国内は昨年の歌野氏の初登場1位を受けて今度も新本格1期生の法月氏が1位と個人的には非常にうれしい結果となりました。
ただこの後に読む「本格ミステリ・ベスト10」も1位は同じであり、これも昨年同様であるのが気になります。

本格ミステリに特化したランキングである後者が全てのミステリを対象にした「このミス」とかなり似通っているのです。
ハードボイルド、冒険小説が衰退してきているというのが憶測ではなく、正に現実として突きつけられてしまった感が強いですね。

それぞれのランキングでそれぞれ1位が違う世の中が早く来ないものでしょうか。
本格のみが隆盛を極めるのではなくやはり全てのジャンルが拮抗していく出版界が待ち遠しいです。

また今回特筆すべき点は、昨年のライトノベルランクインで「このミス」自体の方向性が嫌な方向になるのではないかと思いましたが、「このライトノベルがすごい!」というムックを出すことで見事に区分したこと。
混乱を避けた編集部の素早い対応は評価に値します。

こんなことを行ってはならないのでしょうが、聖域は救われたという感じです。
特集・コラムも例年通り充実しており、特にミステリー相談所が面白かったです。

まだまだ拡がるミステリムックのアイデア。
斬新な着眼点からミステリを解体・解読するコラム・特集も今後も期待します。

ともあれ今回も非常に愉しめました。
有難う。


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 1

島田荘司読本 (講談社文庫)

著者 : 島田 荘司

出版社:講談社

発売日:2000-07

評価 :

完了日 : 2004年09月28日

ガイドブックを「読本」と日本語で云うのか知りませんが、本書は島田氏の2000年までの全作品の解説と島田氏を取巻く周囲の作家(とはいっても井上夢人氏と歌野晶午氏しかいませんが)の島田荘司氏の印象、それと書き下ろしの創作・エッセイで纏められたムックみたいなもの。
島田全作品解題・解説はこういった本ならば定番ですが、読者の知らない島田氏の素顔、横顔をもっと色んな作家に語って欲しかったです。

また本書に書き下ろされた創作やエッセイはやはり島田氏の日本人論が展開され、最近これらを読まされてきた自分にとってはちょっと食傷気味でした。
しかし、この本が出た頃というのは充電期間というか迷走期間というか、島田氏本来の本格推理作家というスタンスが世に知らしめされなかった時期ですから忸怩たる思いがしたものです。

ここ数年の新作発表ラッシュを考えるとまさに本書は作者としての1つの区切りであり、新生・島田荘司誕生の序曲であった、そう読み取れるのです。


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1億人のためのミステリー!

著者 : 友清 哲

出版社:ランダムハウス講談社

発売日:2004-04

評価 :

完了日 : 2004年09月11日

日本文学界においてミステリーの隆盛は留まる所を知らず、90年初頭から今日に至るまでセールスランキングの上位に位置したり、また続々と新人が―実力については玉石混交ですが―出ています。
そのため、ガイドブックの類いもその例に漏れず、ミステリ初心者に向けての指南書として3ヶ月に1冊の割合で出版されていますが、これもまた玉石混交の感があり、値段は張るにもかかわらず、内容は首を傾げるものも多くありません。

本書に関しても当初はそんなガイドブックの1つと思い、買い控えていましたが、前に読んだ『ミステリー迷宮読本』と同時になぜか惹かれ買ってしまいました。
しかし、これが当たりでした。

わずか100ページ余りのヴォリュームに今日におけるミステリーシーンの現状から押さえておきたい名作などの紹介も怠っておらず、非常に好感を持てました。
また伊坂幸太郎を中心としたミステリ新進作家のインタビューもいいです。

色んな角度からミステリをカテゴライズして紹介しているのも飽きさせず、全く以って秀逸の一品です。


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推理日記〈6〉 (講談社文庫)

著者 : 佐野 洋

出版社:講談社

発売日:2002-04

評価 :

完了日 : 2004年08月27日

相変わらず厳しい論調で各作家を3枚にも4枚にも下ろしてしまいます。
失われる日本語を平成の世に正しく伝える最後の長老かのような微に入り細を穿つ、その選文眼は今回も健在です。

やはりこういうのは非常に勉強になりますし、編集者や校正の方々にとっても身が締まる思いがしているのではないでしょうか。
しかしこれだけ色んな作家の慣用句や副詞の使い方を徹底的に取り上げ、論破しているのに対し、髙村薫氏の使い方に対してはあまり強い口調で間違いを正さなかったのは何故なんでしょうか?

寧ろ新しい日本語を作ろうとしているのかといった表現で好評している傾向にあります。
佐野氏自身が彼女の文に惚れたのか、扱うテーマや小説観に惹かれたのかもしれませんが、ちょっとこれは公正さを欠きます。

しかし、佐野氏も年を取ったせいか、いつもなら感嘆を上げるその論調にいささか年寄りの説教めいた雰囲気を感じたのも事実。
特に明らかに作家のミスであろう事を無理矢理好意的に解釈する所はちょっと物知り年寄りの皮肉のように受取れ、いやらしいと思いました。

しかし、昔はどこにも近所に口うるさい頑固親父がいたものです。
佐野氏には命続く限り、文壇の頑固親父であって欲しいです。


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ミステリー迷宮読本―絶対お薦めエンターテインメント228作品! (洋泉社MOOK―ムックy)

著者 :

出版社:洋泉社

発売日:2003-11

評価 :

完了日 : 2004年08月03日

2004年の夏、相変わらずミステリガイドブック(ムック)は発行されていました。
その内容はどれも帯に短し、襷に流しで広く浅くミステリと云うジャンルを撫でただけの代物で、ミステリ初心者のためならばまだしも、本読みを満足させる内容はありませんでした。

このムックも発行当初はそんな凡百のミステリガイドブックと変わらないだろうと思い、発行された年末には買わずそのままにしていたのですが、二階堂黎人氏がHPでこのムックを褒めていたのを見てGWに購入。
そしてその賞賛は間違っていませんでした。

これは本当にミステリを愛する者が作ったムックです。
ミステリをカテゴリー別に論じ、新旧織り交ぜて論じています。

その内容の出来に個人差はあれ、なかなか読ませます。
通常出てくるタイトルとは違う隠れ傑作本も続出だし、本読みの本読みによる本読みのためのムックになっています。

原書房の『本格ミステリベスト10』が何年も発行されているのマニア臭さから脱却できていないのに対し、これは本当にミステリ好きの痒い所に手が届く面白さです。
表紙のイラストのいかがわしさは褒められたものではありませんが、それを差し引いても星5ツに値します。

掘り出し物とは正にこの事を云います。
名も無き出版社にしては最上の出来です。
天晴れ、洋泉社!!


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本格ミステリ・ベスト10 (2004)

著者 :

出版社:原書房

発売日:2003-12

評価 :

完了日 : 2004年04月24日

この年は『このミス』と同じく『葉桜の季節に君を想うということ』が1位となり、記念すべき年となりました。
それ以外では石持浅海氏の『月の扉』、大倉崇裕氏の『七度狐』、京極夏彦氏の『陰摩羅鬼の瑕』、小野不由美氏の『くらのかみ』、横山秀夫氏の『第三の時効』、東野圭吾氏の『ゲームの名は誘拐』が『このミス』と重なっており、有栖川氏、島田氏、西澤氏、芦辺氏、貫井氏、二階堂氏といった本格作家の名前がベスト20に見られるのがやはり特徴的。

私がこのランキングを好むのは最近の『このミス』に顕著に見られる、新人作家の過大評価とベテラン作家の使い捨て傾向というのがなく、どれも正当に評価していることが素直に嬉しいからです。
ベテランがまだ精力的に魅力ある作品を送り出している事をあまり評価せず、青田買いのように新しい作家を紹介し、そしてやがて3、4年後にはランキングに相手もしないような使い捨て傾向にある『このミス』よりも遥かに良いと思います。

しかしこの年は1位にベテランの歌野晶午氏がランクインされた事。
ここに『このミス』がまだ大丈夫だというのを確認しました。

話をこのムックの感想に戻します。
今までよりもベスト20内に入った作品の解説がマニアックでなくなり、非常に理解しやすくなってきたのは良いと思います。

また海外作品も多く取り上げるようになったのも良いですね(解説がベスト5までなのがまだ不満)。
国内復刊ミステリの動向のレポート、装幀大賞の企画はまだまだ続けて欲しいくらい良いが同人誌・映画・ジュヴナイルなどのレポートはあっても良いがこれほど長くなくてもいいです。
出来れば見開き2ページで完結して欲しい。
ここら辺がマニアの域を脱しない枷になっています。

でも翌年以降も買いたいと思わせる紙面作りになってきたのは純粋に嬉しい。
頑張れ、原書房!


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このミステリーがすごい!〈2004年版〉

著者 : 別冊宝島編集部

出版社:宝島社

発売日:2003-12

評価 :

完了日 : 2004年02月14日

『このミス』も10年以上経て、かなり権威がついてきているせいか、当初のマイナーリーグ故の思いっきりの良さ、怖い物知らずの勢いが成りを潜め、かなりオーソドックス路線へと変貌を遂げつつあることが暗示されました。
というのもアンケートの回答に「マニアックなものは避けて下さい」というような主旨の但し書きがあったとの意見が散見されたからです。

今回の『このミス』は国内編では歌野晶午が第1位という予想外の結果だったことがまず嬉しかった。
ぽっと出の新人ではなく新本格第1期生のキャリア16年(2003年当時)の作家が初登場でしかも1位だったというのが純粋に嬉しかった。

また他にも昨年に引き続いて連城三紀彦がランクインと以前見られた作家の使い捨て傾向がやや改善されてきているのも嬉しいです。
海外編もマキャモン、ウェストレイク、ヒル、フォレットとかつての『このミス』を席巻していた作家がランクインしていたのも嬉しい。

つまりこれは以前のように奇を衒った回答ではなく純粋に面白い作品を回答してくれた事の1つの証左であると思います。
だから真保裕一氏や島田荘司氏がランクインしなかったのも彼らの作品よりももっと面白かった作品があったのだと納得できます。

今後、ミステリ界はどんどん新人が出て、またジャンルの括りが難しくなるぐらい混沌としていくでしょう。
その大きな流れにきちんと自分を見失わず、面白いものは本当に面白いんだと正当に評価する冊子になって欲しいですね。


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ミステリを書く! (小学館文庫)

著者 : 綾辻 行人,法月 綸太郎,山口 雅也,大沢 在昌,笠井 潔,柴田 よしき,馳 星周,井上 夢人,恩田 陸,京極 夏彦,千街 晶之

出版社:小学館

発売日:2002-02

評価 :

完了日 : 2004年02月13日

本書は当代を代表する作家たちに小さい頃からの読書遍歴、ミステリを書くきっかけ、デビューのこと、また作家なり始めの頃の話、趣味やスケジュール管理、体調管理、そしてミステリを書く事の意義とそれに対する姿勢について行ったインタヴューを纏めたもの。
ここに上げられているのはどちらかと云えば本格系の作家が多いですが、エンタテインメント系の作家に比べるとその誰もが、本格という特殊な制約に対してとことん突き詰めた考えを持ち、また混沌とした本格推理界が今後どのような展開を見せるのかに期待と憂慮を覚えているのが共通項として見受けられます。

それに対してエンタテインメント系作家と云えば、寧ろ本格作家に見られるような求道心的な真摯さというよりもやはりその作品性ゆえか、いかに読者に楽しんでもらえるかに腐心している傾向にあります。
しかし、特徴的なのはこれが必ずしも必要条件ではなく十分条件であり、どちらかと云えば自分が読みたい作品、楽しんで書ける作品を書いているのが底流としてある辺りに余裕が感じられました。
正に陰と陽といった感じ。

しかもエンタテインメント系の作家の原体験として黄金期の本格物を読んでいたという共通項があり、食わず嫌いではなく、何事も取り込んでいこうというおおらかさを感じました。
特に本格系の作家は評論を充実させるというのが共通意識としてあるようで、推理小説研究会というのもあるように、本格系は文化系、エンタテインメント系は体育会系という色分けが如実に表れたように思います。

どちらが正しい、間違っている、良い、悪いということではなく、それぞれがそれぞれの道を進んでいくことでミステリ界を今後も盛り上げていって欲しいですね。
そしてその中に自分も参加できたら、なんて思った次第です。


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