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小梅さんの読書ノート

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 8

鬼平犯科帳〈1〉 (文春文庫)

著者 : 池波 正太郎

出版社:文藝春秋

発売日:2000-04

評価 :

完了日 : 2007年12月02日

『鬼平犯科帳シリーズ』の第1作。

ここに登録しようと思って、数年振りに植草甚一さんの解説やらを読み、大衆文学研究会編の『歴史・時代小説ベスト113』(中公文庫)なんぞを読んでいたら、不思議なことに気づいた。

植草氏の解説に次のような文章がある。『・・・「唖の十蔵」は昭和四十三年一月号の「オール讀物」から開始された「鬼平犯科帳」の第一話である。』という一節。私もまたこの第1作の冒頭に収められた『唖の十蔵』がシリーズの嚆矢なんだろうとずっと思っていたんですが、『歴史~』の菊池良生氏の解説を読むと『第一話「浅草・御厩河岸」が「オール讀物」に登場したのが、昭和四二年一二月。』とある。

ん?と思って改めて文庫の「初出一覧」を見たら、やはりいちばん最初の作品は『オール讀物』昭和四十二年十二月号に載った『浅草・御厩河岸』なんですね。私もすっかり『唖の十蔵』が第一話だと勘違いしてました。

というのも、それほど『唖の十蔵』というのは巧いんですよ。よくできているというか。ま、話の流れでいえば、この一件の話の中で長谷川平蔵が初めて火付盗賊改方の長官として赴任してくる訳ですから、これが第一話と考えてもおかしくはない。でもまあこの十蔵のキャラがいいんですよ。読んでもらえば判るけど。

この『鬼平』に限らず、池波正太郎氏の作品の魅力として料理や酒の美味しそうな、というのがよく語られますが、胃弱で美食家とは言えぬ私としては、「会話の妙」がいちばんの魅力かな、と思います。この「伝法」ともゆうのか、語り口がね。これにはやはり小倉出身の佐伯泰英も敵わない。

また「火付盗賊改方」というのは「町奉行」とも違う別組織なんですね。いわば特別警察。奉行所の役人でさえ「この不浄役人めが」と蔑まれるのに、ましてや「火盗改め」の3Kぶりは想像を絶するものがあったようです。

シリーズ第1作と書きましたが、最初の単行本はここに収められている第八話までではなく、第十二話までですから、厳密には違いますね。まあ、これから読む人は文庫で読むでしょうから、これでもいいのかな。


この感想へのコメント

2.小梅 (2007/12/02)
パートママさん、コメ感謝。
「鬼平ノート」凄いですね。植草甚一氏もこの文庫解説を書くにあたって「復習」をしたそうです。彼の場合は「盗賊ノート」を作ったのかなあ。とにかく全133話でしたっけ?凄い長さ(多さ?)だから、盗賊の数も多い。密偵になった者もいるしね。私はドラマは観ないようにしてたんで、中村吉右衛門のイメージに拘泥されずにすみました。
3.パートママ (2007/12/02)
最初は盗賊の名前だけだったのですが、火盗同心から密偵からその関係を書いておくと後であああの時のと思い出しやすくなりました。

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 1

憎悪の果実―私立探偵ジョン・タナー (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

著者 : スティーヴン グリーンリーフ

出版社:早川書房

発売日:2001-03

評価 :

完了日 : 2007年11月28日

『私立探偵ジョン・タナー・シリーズ』の第13作。

前作『過去の傷口』の続編というか、一続きの物語として読まないと、楽しめないかもしれません。一番いいのは第1作から順に読んでいただくことですが。

私立探偵小説というのは、その構造上、まず依頼人がいてその依頼を受けて、探偵が調査を始めるというパターンが一般的です。しかしながら、依頼人がいない、という場合もあります。例えば本作のように。

前作の悲しむべき「事件」のあと、ジョンは瀕死の重傷を負って病院に入院しています。つまり依頼を受けて仕事を始める状況にはない訳ですが、そこでのリハビリの途中で、ジョンはリタという若い女性と知り合うことになります。

やっとタナーも退院して、再会を約束したリタに電話をかけますが、電話に出た男に「リタは死んだ」と告げられます。ショックを受けたジョンは、リタの故郷を訪ね、リタの母親や婚約者に彼女が殺された状況を聞きますが、調査を依頼されるまでにはいたりません。やむを得ず、ジョンは依頼人のないまま、リタの死の真相を探り始めます・・・。

この作品の原題は、"STRAWBERRY SUNDAY"というものですが、苺農場で働く不法移民労働者の劣悪な待遇を象徴する、いい邦題だと思います。


この感想へのコメント

2.小梅 (2007/12/11)
take9296さん、初めまして。コメ感謝です。
このシリーズを最初に読んだのは、「深夜の囁き」だったかな?その辺りから第1作まで遡って第14作の「最終章」までずっと読んできました。ハヤカワのポケミスには、他にも好きな私立探偵がたくさんいます。アルバート・サムスンとかジョン・フランシス・カディとか。
3.take9296 (2007/12/11)
ジョン・カディものも好きですね。でも、「湖畔の四人」以来出ていないように思います。余談ですが、訳者の菊地よしみ氏の性別を、最近まで勘違いしていました。アルバート・サムスンは去年久しぶりに「目を開く」を読みましたが、ピンと来なかったです。あと、ジョナサン・ヴェイリンのハリィ・ストーナー・シリーズも好きでしたね。

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 2

イエスタデイをうたって (Vol.1) (ヤングジャンプ・コミックスBJ)

著者 : 冬目 景

出版社:集英社

発売日:1999-03

評価 :

完了日 : 2007年11月23日

 まだ「ニート」という概念が英国でのみ認識され「フリーター」という言葉が漸く人口に膾炙し始めた頃、この物語の連載が開始されたことを予めお断りしながらもなお、敢えて貴方に問うてみたい。就職しないで生きることを夢見たことはないか、と。

 大学は出たが「就活」を拒み、コンビニでのバイトの日常に明け暮れる主人公のリクオ。彼が思いを寄せる大学の同級生のシナコは例え臨時教員であっても定職につくことを選び、逆にリクオに思いを寄せるハルは、シナコが勤める高校を中退してバー兼喫茶店で働いている。

 この3人の生き方がこの物語の通奏低音を響かせる構造上、担当編集者ですらこの作品をただの「恋愛もの」だと誤読し、錯覚してしまうという過ちを犯しているが、当然のことながら、この作品の本質は恋愛にはなく、働くこと=就職することの意義を問い続けることにあるのだ。

 何をしたいのか判らない、というリクオの呟きは「モラトリアム」の古めかしい揺籃から溢れて、現代の「格差社会」の下層の若者の象徴的雑音として継承されて行く。

 「イエスタデイをうたって」は月2回刊ビジネスジャンプ本日発売号から連載再開。単行本は集英社から、現在第4巻まで発売中。
(※2006年5月15日号に掲載)


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 2

見番―吉原裏同心〈3〉 (光文社時代小説文庫)

著者 : 佐伯 泰英

出版社:光文社

発売日:2004-01

評価 :

完了日 : 2007年11月22日

「吉原裏同心シリーズ」第3弾。

吉原という場所はいわば「御免色里」ですから、ある意味一種の利権の構造があった訳です。ただその上に胡座をかくのではなく、官許遊里としての格式を備えるために、吉原四郎兵衛会所があれこれ管理運営に意を砕いている訳ですが、そこに時の支配者の意志が働き、政治的な圧力が加えられることもああります。

『見番』というのは、長崎の丸山でいえば「検番」というのがありますが、簡単にいえば吉原の花魁衆を盛り立てるための芸者や幇間などを派遣する業者のことです。その吉原に見番処が設けられ、初代頭取についた男が、幕閣の有力者の後ろ盾を得て、吉原の利権を独占しようと暗躍を始めたため、吉原裏同心、神守幹次郎の豪剣が吉原の闇の中で活躍をします。


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 1

過去の傷口―私立探偵ジョン・タナー (ハヤカワ・ポケット・ミステリー)

著者 : スティーヴン グリーンリーフ

出版社:早川書房

発売日:1999-01

評価 :

完了日 : 2007年11月21日

『私立探偵ジョン・タナー・シリーズ』の第12作。

私立探偵小説には、その相棒的な存在として、現職の警察官(刑事)がよく登場します。このシリーズでいえば第2作の『感傷の終わり』で初登場したチャーリー・スリート警部補がそれに当たります。

恐らくは探偵小説というジャンルの作品は、それだけでは完全には成立しえない部分があるのでしょうか。当然、犯罪者の逮捕とかそういう場面では、司直の手を借りる必要がある訳ですし。

このシリーズでのジョン(探偵)とチャーリー(刑事)との関係は、極めて親密なものです。それだけにチャーリーが、法廷で無抵抗の被告を射殺して逮捕されたという信じられない知らせは、小説の導入部としては、インパクトに満ちています。

いったいチャーリーに何が起こったのか?ジョンは親友の汚名を晴らすため行動を起こしますが、事件は次第に悲劇的な方向へと進んで行きます・・・。

『過去の傷口』というタイトルは、ベタといえばベタですが、まあ内容に最も相応しいものだと思えます。


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 1

龍神町龍神一三番地

著者 : 船戸 与一

出版社:徳間書店

発売日:1999-12

評価 :

完了日 : 2007年11月20日

舞台は長崎県の五島列島。船戸与一が日本を舞台にした物語を書いたのは『蝦夷地別件』が初めてであり、それ以降いくつかの作品はあるもののけして多くはない。

それだけに、いやまた私自身が長崎県の出身ということもあって極めて興味深く読み始めた。

しかし、なんというか・・・。今でこそ五島列島は、市町村合併が進んで、五島市と新上五島町のふたつの自治体によって構成されているが、この物語が執筆された当時は、まだ福江市と10くらいの町が集まっていた。

ただ他の町は全て実在の町名が使われているのだが、ある町だけは「龍神町」として描かれており、その意図さえ不明な訳だが、なんにしても船戸の作品である。暴力と殺戮の描写を免れることはできない。

離島振興法の幾度もの延長によって、日本の離島は生き永らえてきた。そのダークサイドを船戸は白昼の光の中に引きずり出す。日本の警察の常識を超えた長期にわたって島を牛耳る龍神派出所の所長、隠れキリシタンの末裔、謎の吸血蝙蝠・・・。

映画化もされているが、よくもまあ名誉毀損で訴えらえなかったとも思えるギリギリの物語。

ただ私はいまだに覚えているが、この五島列島のある町で就任したばかりの町長がふたり続けて変死を遂げた事件。遺された教会群を世界遺産に登録しようという動き。船戸はあの事件を知っていたのか。またこの登録の動きを予見していたのか。

船戸与一、恐るべし。


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 2

足抜―吉原裏同心〈2〉 (光文社時代小説文庫)

著者 : 佐伯 泰英

出版社:光文社

発売日:2003-09

評価 :

完了日 : 2007年11月18日

「吉原裏同心シリーズ」第2弾。

20年近く前になるのかなぁ。東京出張の際に、冷やかし半分(つまり半分は本気)で、吉原の風俗店に電話をしたときのこと。

もちろん事前に風俗情報誌を買ってから電話をしている訳だから、ソープだと判って電話しているのだけど、料金が他店よりかなり安い。で、思い切って聞いてみた。

「あの、おたくヘルスじゃあないですよね?」
「は?お客さま?もしや吉原へは初めて?」
「あ、いやそのあの(汗)」
「お客さま!お客さまは失礼ながら吉原をご存じない!吉原は全店、ソープでございます!」

・・・という話はどうでもいいんだが、あの頃にあっても吉原はまだ「御免色里」としての矜持を持っていたのかなぁ、と考えたのでした。

天明6年(1786年)ですから、江戸幕府の開府以来、200年近くが過ぎ、商人が武士にとってかわるような力を蓄えていた時代です。

吉原も「御免色里」ですから、表向きは町奉行の支配下にあり、隠密同心の面番所もある訳ですが、実際の吉原の管理監督は吉原の四郎兵衛会所の仕事。

だからこそ、「裏同心」としての神守幹次郎の仕事が成立する訳であるし、その妻である汀女の手習い塾も華やかさを競う花魁たちの教養を高めるという意味で必要(実は花魁たちのふだんの言動から事件を未然に防ぐという密偵の役目も果たす)であるという設定な訳です。

『足抜』というタイトルは、花魁や女郎が身請けされるでもなく、年季が明けるでもないうちに、吉原を脱走するという行為をさしています。

このシリーズは、例えばこの第2弾ならば「足抜」という大きなテーマがひとつあり、そのサイドストーリィとしてもっと小さなエピソードがいくつかあって、その都度、幹次郎の示現流や眼志流居合が大活躍するというのがひとつのパターンとなっています。


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 1

忍び寄る牙 (Hayakawa Novels)

著者 : ロバート・B. パーカー

出版社:早川書房

発売日:1999-04

評価 :

完了日 : 2007年11月12日

ジェッシイ・ストーン署長シリーズ第2作。

パラダイスの町を牛耳っていた行政委員長を追放して、ジェッシイは次第に警察署長として町の住人たちの信頼を得て行きます。

そんな或る日、刑務所を出所したばかりの悪党マクリンがパラダイス湾の中にあるスタイルズ島の金持ち住民たちに目をつけ、島ごと分捕ろうと計画をたて、仲間を集めます。

ジェッシイは、またしても彼を解雇しようとする動きや、前妻、女弁護士などとの葛藤の中で、マクリンたちの企てを阻止しなければなりません・・・。

悪党の仲間にアメリカ先住民族のクロウ(ウィルソン・クロマティ)という男がいるのですが、この男はマクリンよりも不気味な男です。しかし女性を人質にすることを潔しとせず、現場を離脱します。ある意味でジェッシイに似た部分を持っていて、今後の作品で重要なキャラクターになりそうです。

『忍び寄る牙』とはもちろん悪党マクリン一派のことでしょうが、原題は『Trouble in Paradise』という極めてシンプルなもの。ひょっとしてこのクロウのことを指しているのかも?


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 1

欲望の爪痕―私立探偵ジョン・タナー (A HAYAKAWA POCKET MYSTERY BOOK)

著者 : スティーヴン グリーンリーフ

出版社:早川書房

発売日:1998-04

評価 :

完了日 : 2007年11月11日

『私立探偵ジョン・タナー・シリーズ』の第11作。

このシリーズは第1作から読んでいただきたいと考えていますが、特にこの作品は第6作の『深夜の囁き』で重要な役割を果たしたタナーの秘書ペギーが、再び登場する作品なので、少なくとも『深夜の囁き』だけでも先に読んでおいてください。

6年ぶりにタナーの元へ電話をかけてきた元秘書のペギー。タナーはいまだに彼女のことを断ち切れずにいたのですが、ペギーはもうすぐ他の実業家の男性と結婚する予定。ところが、その男性の連れ子(娘)が行方不明になってしまって、タナーに協力を求めてきたという次第です。

ところがこの娘というのが、ヌード写真のモデルをしていたのですが、彼女の失踪と時を同じくして、彼女をモデルにしていた有名写真家が殺されてしまいます。果たしてこの失踪と殺人はなんらかの関係があるのか・・・。

もちろん、タナーとペギーの関係も大事な読みどころです。タイトルの『欲望の爪痕』も、この失踪したヌード・モデルの娘の肉体につけられた傷(ただし深い傷ではない)と考えると、いい邦題だなと思ってしまいます。


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 1

偽りの契り―私立探偵ジョン・タナー (ハヤカワ ポケット ミステリ)

著者 : スティーヴン グリーンリーフ

出版社:早川書房

発売日:1996-10

評価 :

完了日 : 2007年11月11日

スティーヴン・グリーンリーフの『私立探偵ジョン・マーシャル・タナー・シリーズ』の第10作です。このシリーズは全部読んでいるし、評価もしているのですが、なんでこの作品から取り上げるのかといえば、本作品以前の本の画像が見つからなかったのです(絶版か?)。まあ、画像のない本を取り上げるのも寂しいので、本作から紹介したと思ってください。ただし、もちろん第1作の『致命傷』から読んでいただくことをお薦めしますが。

このシリーズの主人公であるジョン・タナーはサンフランシスコの私立探偵。あちこちで指摘されているように、私自身もそう思うのですが、レイモンド・チャンドラーやロス・マクドナルドなどの影響を少なからず受けていると思っていただいても構いません。ただ、それによってこのシリーズの魅力が失われるとは露ほども考えていないので。

本作品のテーマは「代理出産」。シスコを中心に高級服飾店を何軒も経営するセレブな夫妻は子供ができないことを悩んでおり、「代理出産」という方法で子宝を得ようとして、ある女性に依頼して子供を産んでもらおうと考えます。その女性が「代理母」として相応しいかどうかを判断して欲しいと依頼されたのが、ジョン・タナー。

この女性は見事、妊娠に成功しますが、突如として行方不明になってしまいます。彼女は身代金目的で胎児を誘拐したのか?それとも他の誰かが、彼女を胎児もろとも誘拐したのか?それとも・・・?

『偽りの契り』というのは、ほぼ原題に近いタイトルですが、うまいタイトルだと思います。


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 1

暗夜を渉る (Hayakawa novels)

著者 : ロバート・B. パーカー

出版社:早川書房

発売日:1998-05

評価 :

完了日 : 2007年11月11日

私の読書ノート「孤高の探偵小説」でまず最初に取り上げたのは、ロバート・B.パーカーのサニー・ランドル・シリーズでした。なぜスペンサー・シリーズではないのかと言えば、本自体を実家の第1書庫に置いてあっておいそれとは取りに行けないのですが、そのうち書きます。でまあ、この両シリーズの間に書かれたのが、このジェッシイ・ストーン・シリーズです。

元ロサンゼルス市警殺人課刑事のジェッシイ・ストーンは、妻と別れた後、酒浸りになっていますが、人生をやり直すために、アメリカ大陸を横断してマサチュウセッツ州のパラダイスという田舎町の警察署長の職を得ます。

実はこの「パラダイス」という町を牛耳っているのは、町の行政委員長とその腹心である警察署のナンバー2の二人なのですが、実は彼らがジェッシイを面接して新しい署長として採用したのです。この男は無害であると考えて。

しかし、ジェッシイは初めての町で新しい人生をやり直したいと考え、警察署長としての本来の任務を全うしようとします。当然ながら町を牛耳る黒幕たちとは対立を余儀なくされます・・・。

これってホントにR.B.パーカーの小説世界だね。

『暗夜を渉る』というタイトルはアメリカ大陸を横断しながら、酒を飲み、別れた妻とその新しい愛人がファックしているところばかりを想像しているジェッシイが、見知らぬ町で生きていくために「再生」しようとしていく、その過程を表わしていると思われます。


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 1

三都物語

著者 : 船戸 与一

出版社:新潮社

発売日:2003-09-23

評価 :

完了日 : 2007年11月10日

物語は1998年の横浜に始まり、99年の台中、00年の横浜、01年の光州、そして02年の横浜で幕を閉じる連作短編集である。『三都物語』の三都は要するに、日本の横浜市、台湾の台中市、韓国の光州市ということである。

表向きのテーマとなっているのは、この3つの国でも人気のあるプロ野球。しかし、もちろん船戸与一の作品であるから、単純な野球小説集などではない。野球賭博、八百長、ドラフトを巡る裏切り、球団経営の闇、メジャーへの選手流出・・・。プロ野球のダークサイドを船戸は昼光のもとへ引き擦り出す。

さらに船戸が紡ぎ出す物語は、台湾独立運動や光州事件などの内戦問題へと繋がって行く。登場するプロ野球選手たちは丁寧に描き分けられているが、中でも台湾の少数民族出身の投手と在日韓国人の投手の二人はこの物語の中核をなしている。

不満とまでは言わないが、光州事件を扱った一編『驟雨の夜』は、船戸の筆力をもってすれば、これだけで軽く千枚程度の長編にもできた筈。ただそれを敢えてしないのが船戸与一という作家だ。船戸作品の舞台は、世界のどこにでも存在し得るがいまだ朝鮮半島や台湾島は長編の舞台とはなっていないと思う。それだけに船戸の作品として読んでみたいのだ。

極めて個人的なことであるが、高校時代のクラスメートに在日韓国人の女の子がいた。背の高い、綺麗な娘だった。大学時代に光州事件が起こり、私は岩波書店の『世界』という雑誌に、「T生」というペンネームで寄稿されてくる光州レポートを貪るように読んだ記憶がある。それから判断するに韓国の大学へ行った彼女は、あの光州事件の犠牲になった可能性がある。そんな話を思い出してしまったのだ。


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1.ラッキーママ (2007/11/28)
この欄をお借りして、はじめましてのご挨拶を・・・。このたびはお友達になってくださり、ありがとうございました。
私は1984年に結婚し、ずーっと専業主婦です。読むのは大変遅いうえ、まともな感想は述べられませんが、どうぞよろしくお願いします。
2.小梅 (2007/11/28)
ラッキーママさん、はじめまして。お気に入りマークとコメントありがとうございます。プロフにも書いていますが、私も結婚したのは同じ頃(85年)ですね。これからもよろしくお願いします。

でも船戸与一の『三都物語』のところにナゼ?
 

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 1

緋色の時代 下

著者 : 船戸 与一

出版社:小学館

発売日:2001-12

評価 :

完了日 : 2007年11月06日

感想は上巻をご覧ください。


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 1

緋色の時代 上

著者 : 船戸 与一

出版社:小学館

発売日:2001-12

評価 :

完了日 : 2007年11月06日

物語の発端は1986年の4月。アフガニスタンの東部、パンジシール渓谷。ソ連軍のアフガン侵攻がもはや泥沼に陥ってしまっていることを誰もが認めざるを得ない状況の中で、奇妙な繋がりによって結ばれた4人、いや7人の男たち。

そして舞台は2000年のエカテリンブルグ。マフィア化した「アフガンツィ(アフガンからの帰還軍人)」として、抗争に巻き込まれて行く、かつての盟友たち。この抗争に知らず関わって行く日本の警視庁対組織犯罪監視委員会捜査官とロシア内務省対組織犯罪局捜査官。そして果てしのない暴力と殺戮の嵐・・・。

『緋色の時代』の緋色とは、共産党の象徴たる赤い旗の色のみならず、ソ連共産党の内部粛清の血の色、そしてドン・コサックの自由を示す赤い色といった様々な意味合いを持っている。この呪われた緋色の時代の中で生まれ、そして死んで行く男たち。

なお余談ながら、この物語には、「アフガンツィ」の他にも「アフガーニ(CIAの委嘱を受けてムジャヒディンを支援したアラブ人)」の反米化の象徴としてオサマ・ビンラディンの名前も登場する。しかしこの物語の週刊誌連載が終わったのは、2001年9月のアメリカ同時多発テロ事件よりもひと月前のことであった。船戸与一の慧眼恐るべし。


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 1

SIDOOH-士道 1 (1) (ヤングジャンプコミックス)

著者 : 高橋 ツトム

出版社:集英社

発売日:2005-06-17

評価 :

完了日 : 2007年11月05日

時は幕末、求むるは士道。しかしこの物語はけして、新撰組や土方歳三の物語などではない。高橋ツトムの壮大な物語の構築力は、凡庸な我々の卑小な想像力を完膚なきまでに打ち砕いてみせる。

安政の大地震とこれに続く狐狼狸(コロリ=コレラ)の蔓延という天変地異のさなかに放り出されようとしている幼い兄弟、雪村翔太郎と源太郎。臨終の床で、母は兄弟に「この世は理不尽だ。弱ければ死んで逝く」と言い残して果てる。即ち強くなって(サムライになって)「生きること」が、この物語の主題であり、「死への憧憬」ではなく「生への執着」が、この物語の原動力となる。「死ぬ」ことではなく「生きる」ことが彼らの「士道」であるのだ。

現代社会が混沌に陥る時と同じようにして、この幕末動乱の時代に生まれたカルト教団による「異人および開国論者の廃滅」という密命を帯びた精鋭テロリスト集団に身を投じ、攘夷・倒幕への道を歩む雪村兄弟は、どのように己の「士道」を貫き、そして彼らの「生き方」は「生きることに執着できない」現代の若者たちにどう映るのか。

「SIDOOH/士道」は週刊ヤングジャンプに毎週連載中。単行本は集英社から、3月中旬に最新巻第4巻が発売予定。
(※2006年3月20日号掲載)


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 11

働きマン (1) (モーニングKC (999))

著者 : 安野 モヨコ

出版社:講談社

発売日:2004-11-22

評価 :

完了日 : 2007年11月04日

男性向け総合誌という設定の『週刊JIDAI』随一の仕事中毒編集者、松方弘子@28歳独身に奉られた渾名である表題の『働きマン』は、校了前に次の企画を何本も出して、それが会議で通る頃にはすでに現場で動いているというヒロインの猛者ぶりを端的に表わした言葉でもある。

これまでの安野モヨコの作風とはガラリと趣を異にしており「人はなぜ働くのか」という重い命題をテーマに据えて、敢えて真っ向から切り込んだ極めて意欲的な作品ともなっている。

この編集部に棲息している様々な『働きマン』の群像描写は、そのまま我々が生きる現実社会の縮図ともなっている訳だが、就中この一節、常套的ながらも、ヒロインの生き方の対極に用意されるキャラ(若い男性編集者)が吐く「オレは『仕事しかない人生だった』そんな風に思って死ぬのはごめんですね」という台詞を承け、それを一部で肯定しながらも、ヒロインは敢えて「あたしは『仕事したなー』って思って死にたい」と呟くシーンが共感を呼ぶ。

さて、振り返って我が身に問い直してみようか、「なんのために働くのか?」と。

『働きマン』は週刊モーニングに随時連載中。単行本は講談社から、現在第2巻まで発売中。
(※2006年2月6日号掲載)


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2.Tetchy (2007/11/09)
小梅さん、お邪魔します。
忙しさに紛れると、なんで仕事してんだろ?ってふと思うときがあります。
この本はそんな疑問に対していろんな答えを提示してくれているように私は思います。
今、一番新刊が待ち遠しい本の1つです。
3.小梅 (2007/11/09)
madiさん、Tetchyさん、コメ感謝。私はこの4月の異動で、滅茶苦茶忙しいところから滅茶苦茶暇なところへ移りました。上の原稿を書いた頃は、ホントに忙しい頃に連載を始めてしまったんだけど、暇なときってなんか「自分の立ち位置」というのかな?あるべき場所?を見失いそうですごく怖いです。結局、私もワーカホリックなのかな?

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 3

流離 吉原裏同心 (光文社文庫)

著者 : 佐伯 泰英

出版社:光文社

発売日:2003-03-12

評価 :

完了日 : 2007年11月04日

佐伯泰英の「吉原裏同心」シリーズ第1弾。

別に流行に乗せられて読んでいる訳ではない。佐伯泰英を初めて読んだのは1981年の『闘牛士エル・コルドベス1969年の叛乱』。その後3冊ほどの冒険小説を読んだが、特筆に価するものではない。そう思っていた。

あれから四半世紀が経ち、いまや佐伯泰英は売れっ子作家である。私の読み方が間違っていたのか?そういう思いで本当に久し振りに佐伯泰英を読むことにした。

結論から言おう。この本は面白い。時代小説といえば、池波正太郎の『鬼平犯科帳シリーズ』、『剣客商売シリーズ』、『仕掛人梅安シリーズ』は全て読んでいるものの、藤沢周平はまだ読んだことがない。その程度の読み手ではあるが、この本が面白いという程度のことは判る。

本書はシリーズの第1巻ということもあってか、主人公の神守幹次郎と、その幼なじみで今は意に染まぬ結婚をさせられ、他人の妻となっている汀女とともに藩を出奔し、妻仇討ちの追っ手を討ち果たしながらの逃避行を中心に描かれています。そして遊里吉原の四郎兵衛会所に拾われるところで、このシリーズの設定の役割を果たしているとも言えます。

なお、この作家を「時代考証がなっていない」だの「売れればなんでもいいのか」という風に批判される方がおられます。まあ、それはその方の自由ですが、私は綿密な時代考証が必須のものであるとは考えておりません。小説に必要なものは、それよりも作品自体が持つ活力やダイナミズムであると考えています。それが失われた時代小説は、いくら時代考証が綿密であっても、読むには値しないと考えています。


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 1

片隅の二人 (集英社文庫 そ 1-2)

著者 : 曾野 綾子

出版社:集英社

発売日:1977-10

評価 :

完了日 : 2007年11月03日

まずこの作品が、本書が出版された30年前と変わらぬ装丁で、今もなお出版されていることに素直に驚き、そしてまた敬意を表します。

曾野綾子のこの傑作を「恋愛小説」として読むのは、ひょっとしたら間違っているのかもしれません。テーマはまず「不条理」であると読む人が多いのかもしれません。しかし私にとってはこの作品は紛れもない「恋愛小説」なのです。

真柄千歳という平凡な若者と、千田澄子という平凡な人妻は、交通死亡事故の加害者と被害者の妻という形で出逢います。

当然ながらこの出逢いは考え得る限り、最悪の出逢いです。それでもこの二人は示談などの手続きでそれぞれの感情に関わりなく逢わざるを得ない。しかし何度も逢っているうちに、二人の心はいつしか最初の出逢いの時点から変質して行きます。

これに気づいた二人の周囲の人間が黙って見ている筈はありません。夫の忌明けも済まないうちに、と激しく世間は二人を糾弾します。そして二人は、ある決断をします・・・。

余談ですが、この作品は、まだ若かった高橋洋子と、丹波義隆の主演によってNHKの銀河ドラマ小説で、ドラマ化されています。


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女薫の旅 (講談社文庫)

著者 : 神崎 京介

出版社:講談社

発売日:2000-01

評価 :

完了日 : 2007年11月01日

神崎京介という作家は、当時の官能小説界の中で非常に先鋭的な書き手としてデビューしました(いま考えれば「イケメン」の部類に入っていたかも)。

そんな彼が「週刊現代」で、この小説の連載を始めたときには、口に出しては言わないまでも、誰もが冨島健夫へのオマージュか?と思ったのではないでしょうか(誰も思ってなかったりして)。

主人公の山神大地は15歳の中学3年生です。1974年という時代設定ですから、まさに作家自身や私とタメ年齢です。

伊豆の修善寺を舞台に、性に興味と関心を抱き始めた主人公が、25歳の臨時の英語教師に手ほどきを受けて、童貞を喪失します。そこから彼の女性遍歴=『女薫の旅』が始まります。


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二度目の破滅―サニー・ランドル・シリーズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

著者 : ロバート・B. パーカー

出版社:早川書房

発売日:2001-09

評価 :

完了日 : 2007年10月30日

女性私立探偵サニー・ランドル・シリーズの第2弾。

サニーは女性の依頼人からストーカー対策のボディガードの仕事を引き受けますが、突然、解雇されてしまいます。納得の行かないサニーは真実を追ううちに知らぬ間に暗黒社会の中に足を踏み入れて・・・。

タイトルの『二度目の破滅』は、アメリカの国民的詩人、ロバート・フロストの『炎と氷』から採られています。要するにこの世が二度破滅するならば、最初は「欲望の激しさ=炎」によって破滅し、二度目は「憎悪の冷酷さ=氷」によって破滅するという訳です。


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