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小梅さんの読書ノート

刹那の青春小説
美しく、儚く、そしてあまりに脆い、一瞬の輝きを放つ青春小説が好きな方にお薦めしたい刹那の名作の数々をご紹介していきます。
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 3

スプートニクの恋人

著者 : 村上 春樹

出版社:講談社

発売日:1999-04

評価 :

完了日 : 2008年07月15日

実に不思議な小説です。

青春小説のようであり、恋愛小説のようにもなってきたかと思うと、恐怖小説のようにもなり、不条理小説であるとも言えます。

主人公はいちおう「僕」なのですが、25歳の「僕」がおそらくは愛していて性欲も感じている「すみれ」という22歳の女性。そして「すみれ」が22歳にして初めて恋に落ちた在日韓国人の「ミュウ」という美しい39歳の既婚女性が登場します。

この3人の視点を通して、物語が紡がれていくのですが、「僕」は「すみれ」を愛していると思われるのに、「すみれ」は「僕」を唯一信頼しているようですが男性=性の対象としてはみていない。

そのうち「すみれ」は従姉の結婚式で「ミュウ」に出逢い、すぐに恋に落ちます。そしてそれには同性愛的感覚も含まれています。

元々作家志望だったはずの「すみれ」は「ミュウ」のもとで働くようになり、それまで書いていた小説も書かなくなりますが、あいかわらず夜中に「僕」に電話をかけてきたりします。

そんなある日、「すみれ」と「ミュウ」は仕事でイタリアからフランスへ行くのですが、知り合った英国人紳士からギリシアのある小さな島にある別荘に滞在して欲しいと頼まれ、そこで「事件」が起こります・・・。

このあたりから話がどこへ向かうのか全く判らなくなりますが、そこで語られているのは「彼岸」であり、ピンク・フロイドの「The Dark Side Of The Moon」のような世界観でもあります。


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 18

ねじまき鳥クロニクル〈第3部〉鳥刺し男編 (新潮文庫)

著者 : 村上 春樹

出版社:新潮社

発売日:1997-09

評価 :

完了日 : 2008年03月27日

「ねじまき鳥クロニクル」の第3部であり、完結篇でもあります。

といってもこの作品については、第1部と第2部が同時刊行され、それで完結と思われていたのに、その約1年後に第3部が発表されて、われわれは困惑し、いま様々な文献を読むと評論家の間でもこの点が議論の対象になったということです。

ということで、私はこの第3部を購入後、13年もの間、放置しておいたことになります。ホントは読まなくちゃならないと思いながら、数年前からはあの半透明なカヴァーを外して「次に読む本」の位置をずっと占めていたのですが。

つまり村上春樹を読むのは14年ぶりになる訳です。第2部を読むまでは、私は村上春樹のかなり「よい読者」であったと思うのです。最初期の数作品以外は、すべてハードカヴァー(ソフトカヴァーもあったけど)で読んでいたくらいですから。

でもこの第3部を読んで判ったのは、第2部までのストーリィを全く思い出せなかったことです。登場人物の名前すらもです。

でも不思議なことに、この第3部は独立した作品として読むことができました。まあ村上春樹本人は第2部までをひとつの作品、あるいは第3部までをひとつの作品として読んでもらってもいい、という考えでしたけど。

手元にはあと「スプートニクの恋人」と「海辺のカフカ」があります。ただ、この「ねじまき鳥クロニクル」という作品が、村上春樹のターニング・ポイントになったことは疑いようもなく、その後の作品は、明らかにそれまでとは異質な方向へ向かって行った(それで読まなくなった?)ような気がします。

私が読んだのはハードカヴァーですが、画像がないので、文庫本の画像を載せておきます。


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 16

クワイエットルームにようこそ (文春文庫 ま 17-3)

著者 : 松尾 スズキ

出版社:文藝春秋

発売日:2007-08

評価 :

完了日 : 2008年01月05日

この手の作品を読むのには、ぶっちゃけしんどいものがある。これを書く前に、あくまで「参考までに」現在の新刊採点員のみなさんの書評を読ませていただいたのだが、なんとまあ皆さん揃いも揃って「健康的な」対岸からのお言葉だろう。この作品はホントに「精神的に健康な」ヒトが読むべきものであって、<わたし>と同じようなクスリを、20年以上も服用し続けている私自身が読むにはやはり辛すぎるのかもしれない。

この作品は芥川賞の候補作で、舞台が精神病院の女性専用閉鎖病棟、もちろん<わたし>も女性なのだが、作者である松尾スズキはれっきとした男性だ。男性でありながら、ここまで女性の視点で作品が描けるとは、という評価もされているようだが、私自身の眼からみるならば、この閉鎖病棟の女性患者たちの姿は、いわゆる「カリカチュアライズされた精神病患者」としての存在以上のものではなかったような気がするのだ。その意味において、この作品が芥川賞候補作になったときの山田詠美の選評である「映画『17歳のカルテ』の日本版ノヴェライズとしては上出来」という言葉に込められた深い意味を感じとってしまったのは、ちとヤバイのかも。


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 12

逃亡くそたわけ (講談社文庫)

著者 : 絲山 秋子

出版社:講談社

発売日:2007-08-11

評価 :

完了日 : 2008年01月05日

「ロードノベル」と呼ぶほどかっこよくはないし、「オデッセイ」と呼ぶほど大仰なものでもない。かといって「道行物」と呼ぶほど暗くて悲惨なものでもない。ただ<あたし>と<なごやん>はひたすら逃げる。目的地がある訳じゃない。とにかく南の方へ行ってみたい。精神病院からの逃亡劇なら、もう少し悲壮感に見舞われそうな気もするが、読み手にとってはなにやら『国境の南』めいたラテン的な明るさまでが伝わってきてしまう。

その理由は、必死の逃亡劇のはずが「組織からの執拗な追撃」みたいなものもないし、滑稽とも思える騒動には巻き込まれるけど、本当に追われているのか(いや探されているのかどうかすらも)判らないという微妙な彼我の温度差(あるいは錯覚)からきているのは明らかだ。

追われているから(あるいはそう思い込んでいるから)<わたし>と<なごやん>の宿は車の中も多い。久し振りに飛び込んだ旅館での夜に<わたし>が<なごやん>にふともらす「してもよかよ」という台詞。別に恋愛感情がある訳じゃない。ただ「幾晩も一緒にいて、させてあげないのは可哀想」という気持ちで男に抱かれようとするイマドキの女の子の気持ちが実にリアルな佳作だ。


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 1

カナリアが囁く街―警察庁が震撼した7日間

著者 : 大石 英司

出版社:講談社

発売日:1987-08

評価 :

完了日 : 2007年10月25日

大石英司といえば、数多くの新書判ノベルスとして刊行されたハイテク軍事スリラーや、最近ではドラマ化(!)までされた『神はサイコロを振らない』とかで有名だと思いますが、意外に知られていないのが最初期のこの作品(デビュー第2作?)。

ここでいう「カナリア」はもちろん「炭鉱のカナリア」という意味で、「社会に警鐘を鳴らす者」となるのでしょうが、ある国家を揺るがす機密をめぐって警察庁と大蔵省(当時)、そして外務省だったかな?3人の若い官僚(まだ20代か)たち、まだ流されていない、まだ汚れていない、青臭いまでの正義感を備えている若いエリートたちが必死に、あるいは職を賭してまで巨悪と闘おうとする姿に、青春の煌きを感じました。

大石英司はどの凡百の作品よりも、ただこの一冊を残したことのみによって評価されるべきであると考えています。


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 1

マイク・ハマーへの伝言―長編小説 (1978年)

著者 : 矢作 俊彦

出版社:光文社

発売日:1978-01

評価 :

完了日 : 1987年01月23日

青春小説の傑作は何か?と問われたら、初めて読んだ20年前(1987年1月)からずっと変わることなく、この本を推し続けています。神奈川県警の改造パトカーに追跡された挙句の仲間の死。主人公の若者たちはその弔い合戦を誓い、その改造パトカーをおびき出して・・・。

ラストシーンの壮絶な美しさは、何ものにも例えようのないものですが、強いて言うなら。ジャン=リュック・ゴダールの映画かな。『勝手にしやがれ』や『気狂いピエロ』という傑作の数々に見られる独特の映像美(色彩感と言い換えてもいい)に通ずるものがあります。

なお正確なタイトルは『マイク・ハマーへ伝言』です。現在は角川文庫で入手できるようです。


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