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小梅さんの読書ノート

市井の時代小説
江戸の町に日々を暮らす、歴史に残る訳でもない普通の人々を描いた時代小説が好きな方にお薦めしたい市井の名作の数々をご紹介していきます。
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 6

用心棒日月抄 (新潮文庫)

著者 : 藤沢 周平

出版社:新潮社

発売日:1981-03

評価 :

完了日 : 2008年06月25日


初・藤沢周平です。

池波正太郎の「鬼平」、「剣客」、「梅安」は全部読んでいるのに、藤沢周平は「なんか暗そう・・・」と思いこんで積読状態でしたが。

国許である秘密に関わってしまい、許嫁の父を斬り、脱藩して江戸で用心棒の日々・・・。これって後に佐伯泰英が多用するパターンではないですか。

青江又八郎という人物もさることながら、口入屋の相模屋吉蔵(狸)、用心棒仲間の細谷源太夫(髯)というキャラクターが最高にイイです。

又八郎は、この作品の中でいろんな用心棒の仕事をするのですが、犬の番とか小娘の警護とか結構な一刀流の遣い手としては、少々恥ずかしい仕事も背に腹はかえられずと、渋々とお勤めをこなします。

そのなかで又八郎は、望むと望まざるに関わらず、世にいう「赤穂事件」の当事者たちと関わっていくことになります。

ここでの又八郎のとる行動は、予想に反して現実主義的です。そりゃあ心情的には浅野浪人たちへの尊敬の念はありますが、用心棒稼業が金で雇われるものである限りは、大石内蔵助の警護をするかと思えば、吉良邸の警護もします。

ひとつには大石の述懐シーンにも見られるように、藤沢周平自身の「赤穂事件」そのものに対する認識が極めて冷静であることも関係しているのかもしれません。

そして女たち。許嫁の由亀はもちろん、夜鷹のおさき、密偵のおりん、女刺客の佐知と、印象に残るホントにいい女たちばかりです。藤沢周平は女を描かせて巧いのでしょうか。


この感想へのコメント

3.美玲 (2008/07/05)
初めまして。美玲です。いつもありがとうございます。
いつも遊びに来てくださるのに、なかなか来れなくてすみませんでした。

藤沢周平の作品は私も好きです。特に市井ものが。
昔、喜多川歌麿を題材にした小説を読んだことがありました。そこに出てくる女性は皆魅力的でしたよ。

久しぶりに何か、藤沢作品を読んでみたくなりました。
4.小梅 (2008/07/06)
美玲さん、コメありがとうございます。
藤沢周平をこれまで読んでなかったのが悔やまれますが、いまから頑張って読みたいと思います。
新潮文庫と文春文庫でかなり出てますね。
このところこの「たなぞう」で積読本の整理をして、次に何読むかを決めています。

これからもよろしく。

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 2

初花 吉原裏同心(五)

著者 : 佐伯 泰英

出版社:光文社

発売日:2005-01-12

評価 :

完了日 : 2008年01月05日

「吉原裏同心」シリーズ第5弾。

あいもかわらず(そこがシリーズものの安心感ではあるが)御免色里・吉原の四郎兵衛会所の用心棒稼業で生計をたてる神守幹次郎と、花魁らに手習いを教えながら情報収集工作に勤しむ妻の汀女。

旧田沼派の残党との暗闘もありますが、この作品から重要なキャラクターも登場します。「身代わりの佐吉」という「けちな野郎」(自称)ですが、幹次郎のよき相談役として、吉原の四郎兵衛会所とは一歩距離を置いたところで、幹次郎を助けていきます。


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 2

清掻―吉原裏同心〈4〉 (光文社時代小説文庫)

著者 : 佐伯 泰英

出版社:光文社

発売日:2004-07

評価 :

完了日 : 2007年12月09日

「吉原裏同心シリーズ」第4弾。

前作「見番」で、吉原の後ろ楯であった、老中田沼意次が失脚し、十一代将軍家斉が就任すると、その父である一橋治済が旧田沼派を一掃し、吉原の利権を我が物にしようと暗躍を始めます。

しかし吉原会所も早々に旧田沼派に見切りをつけ、老中首座に就任した松平定信に接近し(この経緯はこの後の巻でも詳しく語られます)、一橋治済の野望に対抗しようとします。

このように幕閣の有力者らと権謀術数を巡らし合う吉原会所との間で、神守幹次郎の戦いは続きますが、そのような中にタイトルの「清掻」のようなエピソードが巧みに織り込まれて、吉原に生きる人々の風雅な趣が伝わってくるという仕掛けになっています。


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 8

鬼平犯科帳〈1〉 (文春文庫)

著者 : 池波 正太郎

出版社:文藝春秋

発売日:2000-04

評価 :

完了日 : 2007年12月02日

『鬼平犯科帳シリーズ』の第1作。

ここに登録しようと思って、数年振りに植草甚一さんの解説やらを読み、大衆文学研究会編の『歴史・時代小説ベスト113』(中公文庫)なんぞを読んでいたら、不思議なことに気づいた。

植草氏の解説に次のような文章がある。『・・・「唖の十蔵」は昭和四十三年一月号の「オール讀物」から開始された「鬼平犯科帳」の第一話である。』という一節。私もまたこの第1作の冒頭に収められた『唖の十蔵』がシリーズの嚆矢なんだろうとずっと思っていたんですが、『歴史~』の菊池良生氏の解説を読むと『第一話「浅草・御厩河岸」が「オール讀物」に登場したのが、昭和四二年一二月。』とある。

ん?と思って改めて文庫の「初出一覧」を見たら、やはりいちばん最初の作品は『オール讀物』昭和四十二年十二月号に載った『浅草・御厩河岸』なんですね。私もすっかり『唖の十蔵』が第一話だと勘違いしてました。

というのも、それほど『唖の十蔵』というのは巧いんですよ。よくできているというか。ま、話の流れでいえば、この一件の話の中で長谷川平蔵が初めて火付盗賊改方の長官として赴任してくる訳ですから、これが第一話と考えてもおかしくはない。でもまあこの十蔵のキャラがいいんですよ。読んでもらえば判るけど。

この『鬼平』に限らず、池波正太郎氏の作品の魅力として料理や酒の美味しそうな、というのがよく語られますが、胃弱で美食家とは言えぬ私としては、「会話の妙」がいちばんの魅力かな、と思います。この「伝法」ともゆうのか、語り口がね。これにはやはり小倉出身の佐伯泰英も敵わない。

また「火付盗賊改方」というのは「町奉行」とも違う別組織なんですね。いわば特別警察。奉行所の役人でさえ「この不浄役人めが」と蔑まれるのに、ましてや「火盗改め」の3Kぶりは想像を絶するものがあったようです。

シリーズ第1作と書きましたが、最初の単行本はここに収められている第八話までではなく、第十二話までですから、厳密には違いますね。まあ、これから読む人は文庫で読むでしょうから、これでもいいのかな。


この感想へのコメント

2.小梅 (2007/12/02)
パートママさん、コメ感謝。
「鬼平ノート」凄いですね。植草甚一氏もこの文庫解説を書くにあたって「復習」をしたそうです。彼の場合は「盗賊ノート」を作ったのかなあ。とにかく全133話でしたっけ?凄い長さ(多さ?)だから、盗賊の数も多い。密偵になった者もいるしね。私はドラマは観ないようにしてたんで、中村吉右衛門のイメージに拘泥されずにすみました。
3.パートママ (2007/12/02)
最初は盗賊の名前だけだったのですが、火盗同心から密偵からその関係を書いておくと後であああの時のと思い出しやすくなりました。

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 2

見番―吉原裏同心〈3〉 (光文社時代小説文庫)

著者 : 佐伯 泰英

出版社:光文社

発売日:2004-01

評価 :

完了日 : 2007年11月22日

「吉原裏同心シリーズ」第3弾。

吉原という場所はいわば「御免色里」ですから、ある意味一種の利権の構造があった訳です。ただその上に胡座をかくのではなく、官許遊里としての格式を備えるために、吉原四郎兵衛会所があれこれ管理運営に意を砕いている訳ですが、そこに時の支配者の意志が働き、政治的な圧力が加えられることもああります。

『見番』というのは、長崎の丸山でいえば「検番」というのがありますが、簡単にいえば吉原の花魁衆を盛り立てるための芸者や幇間などを派遣する業者のことです。その吉原に見番処が設けられ、初代頭取についた男が、幕閣の有力者の後ろ盾を得て、吉原の利権を独占しようと暗躍を始めたため、吉原裏同心、神守幹次郎の豪剣が吉原の闇の中で活躍をします。


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 2

足抜―吉原裏同心〈2〉 (光文社時代小説文庫)

著者 : 佐伯 泰英

出版社:光文社

発売日:2003-09

評価 :

完了日 : 2007年11月18日

「吉原裏同心シリーズ」第2弾。

20年近く前になるのかなぁ。東京出張の際に、冷やかし半分(つまり半分は本気)で、吉原の風俗店に電話をしたときのこと。

もちろん事前に風俗情報誌を買ってから電話をしている訳だから、ソープだと判って電話しているのだけど、料金が他店よりかなり安い。で、思い切って聞いてみた。

「あの、おたくヘルスじゃあないですよね?」
「は?お客さま?もしや吉原へは初めて?」
「あ、いやそのあの(汗)」
「お客さま!お客さまは失礼ながら吉原をご存じない!吉原は全店、ソープでございます!」

・・・という話はどうでもいいんだが、あの頃にあっても吉原はまだ「御免色里」としての矜持を持っていたのかなぁ、と考えたのでした。

天明6年(1786年)ですから、江戸幕府の開府以来、200年近くが過ぎ、商人が武士にとってかわるような力を蓄えていた時代です。

吉原も「御免色里」ですから、表向きは町奉行の支配下にあり、隠密同心の面番所もある訳ですが、実際の吉原の管理監督は吉原の四郎兵衛会所の仕事。

だからこそ、「裏同心」としての神守幹次郎の仕事が成立する訳であるし、その妻である汀女の手習い塾も華やかさを競う花魁たちの教養を高めるという意味で必要(実は花魁たちのふだんの言動から事件を未然に防ぐという密偵の役目も果たす)であるという設定な訳です。

『足抜』というタイトルは、花魁や女郎が身請けされるでもなく、年季が明けるでもないうちに、吉原を脱走するという行為をさしています。

このシリーズは、例えばこの第2弾ならば「足抜」という大きなテーマがひとつあり、そのサイドストーリィとしてもっと小さなエピソードがいくつかあって、その都度、幹次郎の示現流や眼志流居合が大活躍するというのがひとつのパターンとなっています。


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 3

流離 吉原裏同心 (光文社文庫)

著者 : 佐伯 泰英

出版社:光文社

発売日:2003-03-12

評価 :

完了日 : 2007年11月04日

佐伯泰英の「吉原裏同心」シリーズ第1弾。

別に流行に乗せられて読んでいる訳ではない。佐伯泰英を初めて読んだのは1981年の『闘牛士エル・コルドベス1969年の叛乱』。その後3冊ほどの冒険小説を読んだが、特筆に価するものではない。そう思っていた。

あれから四半世紀が経ち、いまや佐伯泰英は売れっ子作家である。私の読み方が間違っていたのか?そういう思いで本当に久し振りに佐伯泰英を読むことにした。

結論から言おう。この本は面白い。時代小説といえば、池波正太郎の『鬼平犯科帳シリーズ』、『剣客商売シリーズ』、『仕掛人梅安シリーズ』は全て読んでいるものの、藤沢周平はまだ読んだことがない。その程度の読み手ではあるが、この本が面白いという程度のことは判る。

本書はシリーズの第1巻ということもあってか、主人公の神守幹次郎と、その幼なじみで今は意に染まぬ結婚をさせられ、他人の妻となっている汀女とともに藩を出奔し、妻仇討ちの追っ手を討ち果たしながらの逃避行を中心に描かれています。そして遊里吉原の四郎兵衛会所に拾われるところで、このシリーズの設定の役割を果たしているとも言えます。

なお、この作家を「時代考証がなっていない」だの「売れればなんでもいいのか」という風に批判される方がおられます。まあ、それはその方の自由ですが、私は綿密な時代考証が必須のものであるとは考えておりません。小説に必要なものは、それよりも作品自体が持つ活力やダイナミズムであると考えています。それが失われた時代小説は、いくら時代考証が綿密であっても、読むには値しないと考えています。


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