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小梅さんの読書ノート

船戸与一の世界
船戸与一の作品群は、「小説」というより「物語」という方が相応しいかもしれません。果てしのない暴力の描写の向こうに、世界中の宗教・民族・政治の矛盾と葛藤と対立。そしてこれらに翻弄される人間の生き方や死にざま・・・。
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金門島流離譚 (Asia noir)

著者 : 船戸 与一

出版社:毎日新聞社

発売日:2004-03

評価 :

完了日 : 2008年05月29日

「三都物語」の紹介の中で、船戸与一に、台湾や朝鮮半島の話を書いて欲しいと書きましたが、少なくとも台湾については、この本で書いてくれました。

しかしねぇ・・・欲を言えば、2篇の小説(長編と中編)が入っているのですが、こんな行間スカスカじゃなくて2段組500ページの上下2巻くらいで書いて欲しかったな。

この本でまず驚いたのは、福建省から数kmの位置にある金門島という島がなんと台湾の領土だとゆうことでした。しかも日本による統治時代から中国共産党による革命から国民党との内戦を経ての現在までの複雑な経緯から、大陸からも台湾からもある種の制約から解放されているという事実。

併録された短編の方は、台湾北部の鉱山跡地を舞台にしたものだけれども、これを読むと日本統治時代の台湾の状況やその影響が現在にまで残っているということが読み取れます。

世界のいかなる場所を舞台にしても小説が描ける船戸与一ですが、ここ数年は「満州国演義」(なんと8巻まで出るらしい)に専念するのでしょうか。少々寂しい気もします。


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龍神町龍神一三番地

著者 : 船戸 与一

出版社:徳間書店

発売日:1999-12

評価 :

完了日 : 2007年11月20日

舞台は長崎県の五島列島。船戸与一が日本を舞台にした物語を書いたのは『蝦夷地別件』が初めてであり、それ以降いくつかの作品はあるもののけして多くはない。

それだけに、いやまた私自身が長崎県の出身ということもあって極めて興味深く読み始めた。

しかし、なんというか・・・。今でこそ五島列島は、市町村合併が進んで、五島市と新上五島町のふたつの自治体によって構成されているが、この物語が執筆された当時は、まだ福江市と10くらいの町が集まっていた。

ただ他の町は全て実在の町名が使われているのだが、ある町だけは「龍神町」として描かれており、その意図さえ不明な訳だが、なんにしても船戸の作品である。暴力と殺戮の描写を免れることはできない。

離島振興法の幾度もの延長によって、日本の離島は生き永らえてきた。そのダークサイドを船戸は白昼の光の中に引きずり出す。日本の警察の常識を超えた長期にわたって島を牛耳る龍神派出所の所長、隠れキリシタンの末裔、謎の吸血蝙蝠・・・。

映画化もされているが、よくもまあ名誉毀損で訴えらえなかったとも思えるギリギリの物語。

ただ私はいまだに覚えているが、この五島列島のある町で就任したばかりの町長がふたり続けて変死を遂げた事件。遺された教会群を世界遺産に登録しようという動き。船戸はあの事件を知っていたのか。またこの登録の動きを予見していたのか。

船戸与一、恐るべし。


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三都物語

著者 : 船戸 与一

出版社:新潮社

発売日:2003-09-23

評価 :

完了日 : 2007年11月10日

物語は1998年の横浜に始まり、99年の台中、00年の横浜、01年の光州、そして02年の横浜で幕を閉じる連作短編集である。『三都物語』の三都は要するに、日本の横浜市、台湾の台中市、韓国の光州市ということである。

表向きのテーマとなっているのは、この3つの国でも人気のあるプロ野球。しかし、もちろん船戸与一の作品であるから、単純な野球小説集などではない。野球賭博、八百長、ドラフトを巡る裏切り、球団経営の闇、メジャーへの選手流出・・・。プロ野球のダークサイドを船戸は昼光のもとへ引き擦り出す。

さらに船戸が紡ぎ出す物語は、台湾独立運動や光州事件などの内戦問題へと繋がって行く。登場するプロ野球選手たちは丁寧に描き分けられているが、中でも台湾の少数民族出身の投手と在日韓国人の投手の二人はこの物語の中核をなしている。

不満とまでは言わないが、光州事件を扱った一編『驟雨の夜』は、船戸の筆力をもってすれば、これだけで軽く千枚程度の長編にもできた筈。ただそれを敢えてしないのが船戸与一という作家だ。船戸作品の舞台は、世界のどこにでも存在し得るがいまだ朝鮮半島や台湾島は長編の舞台とはなっていないと思う。それだけに船戸の作品として読んでみたいのだ。

極めて個人的なことであるが、高校時代のクラスメートに在日韓国人の女の子がいた。背の高い、綺麗な娘だった。大学時代に光州事件が起こり、私は岩波書店の『世界』という雑誌に、「T生」というペンネームで寄稿されてくる光州レポートを貪るように読んだ記憶がある。それから判断するに韓国の大学へ行った彼女は、あの光州事件の犠牲になった可能性がある。そんな話を思い出してしまったのだ。


この感想へのコメント

1.ラッキーママ (2007/11/28)
この欄をお借りして、はじめましてのご挨拶を・・・。このたびはお友達になってくださり、ありがとうございました。
私は1984年に結婚し、ずーっと専業主婦です。読むのは大変遅いうえ、まともな感想は述べられませんが、どうぞよろしくお願いします。
2.小梅 (2007/11/28)
ラッキーママさん、はじめまして。お気に入りマークとコメントありがとうございます。プロフにも書いていますが、私も結婚したのは同じ頃(85年)ですね。これからもよろしくお願いします。

でも船戸与一の『三都物語』のところにナゼ?
 

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緋色の時代 下

著者 : 船戸 与一

出版社:小学館

発売日:2001-12

評価 :

完了日 : 2007年11月06日

感想は上巻をご覧ください。


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緋色の時代 上

著者 : 船戸 与一

出版社:小学館

発売日:2001-12

評価 :

完了日 : 2007年11月06日

物語の発端は1986年の4月。アフガニスタンの東部、パンジシール渓谷。ソ連軍のアフガン侵攻がもはや泥沼に陥ってしまっていることを誰もが認めざるを得ない状況の中で、奇妙な繋がりによって結ばれた4人、いや7人の男たち。

そして舞台は2000年のエカテリンブルグ。マフィア化した「アフガンツィ(アフガンからの帰還軍人)」として、抗争に巻き込まれて行く、かつての盟友たち。この抗争に知らず関わって行く日本の警視庁対組織犯罪監視委員会捜査官とロシア内務省対組織犯罪局捜査官。そして果てしのない暴力と殺戮の嵐・・・。

『緋色の時代』の緋色とは、共産党の象徴たる赤い旗の色のみならず、ソ連共産党の内部粛清の血の色、そしてドン・コサックの自由を示す赤い色といった様々な意味合いを持っている。この呪われた緋色の時代の中で生まれ、そして死んで行く男たち。

なお余談ながら、この物語には、「アフガンツィ」の他にも「アフガーニ(CIAの委嘱を受けてムジャヒディンを支援したアラブ人)」の反米化の象徴としてオサマ・ビンラディンの名前も登場する。しかしこの物語の週刊誌連載が終わったのは、2001年9月のアメリカ同時多発テロ事件よりもひと月前のことであった。船戸与一の慧眼恐るべし。


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夢は荒れ地を

著者 : 船戸 与一

出版社:文藝春秋

発売日:2003-06-15

評価 :

完了日 : 2007年10月24日

この物語の舞台は、2001年。クメール・ルージュ(ポル・ポト派)やベトナムの後押しを受けたヘン・サムリン政権によって蹂躙され、国連暫定統治機構の支配下にあるカンボジアの大地。

このカンボジアという荒れ地に消息を絶った友人を探しにきた日本の現役自衛隊員。元クメール・ルージュのゲリラでいまはカンボジア王国陸軍大尉。カンボジアの子供たちを相手に学校を運営する脱キリスト者。そしてPKO活動でカンボジアに入り、そのまま消息を絶ったあと、地雷撤去や村落づくりの活動を続けている謎の日本人・・・。

誰もがこのカンボジアの荒れ地で儚い夢をみる。そして繰り広げられる暴力と狂熱の宴。綿密な現地取材と参考文献の読み込みによって描破する、ジャーナリズムが伝えないカンボジアの現実。


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