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ハローbreezeさんの読書ノート

2008年に読んだ本
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 3

エンプティー・チェア〈下〉 (文春文庫)

著者 : ジェフリー ディーヴァー

出版社:文藝春秋

発売日:2006-11

評価 :

完了日 : 2008年09月07日


言葉を失う面白さ。想像を絶する衝撃。驚愕の波状攻撃。
とても星5つでは足りない、最高最強のエンターテインメント小説。
まさにジェットコースター・サスペンスの面目躍如。

本書は大人気の<リンカーン・ライム>シリーズの第3弾。
四肢麻痺の障害を持つ犯罪学者のライムが、誘拐容疑の少年とともに逃げたパートナーのサックスの行方を探る。

よく「大どんでん返し」なんて言葉が使われることがあるが、この作品はそんなもんじゃない。
二転三転? それでも足りない。
五転六転と、これでもか、これでもかと一気に畳み掛けてくる。そして、最後の最後に絶体絶命のピンチ。どうなる? 起死回生の策はあるのか?

ドキドキ、ハラハラをただただ味わいたくなったら、迷わずジェフリー・ディヴァーを選ぶ。はずれの心配は無用。ただぐんぐんと読み進め、その筆力に圧倒されればいい。ライムの頭脳に敬意を抱き、スピーディーな展開に目をまわし、随所にちりばめられた罠に唖然とすることになる。ラストを迎えたとき、茫然自失の状態、間違いなし。


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 4

エンプティー・チェア〈上〉 (文春文庫)

著者 : ジェフリー ディーヴァー

出版社:文藝春秋

発売日:2006-11

評価 :

完了日 : 2008年09月06日


<リンカーン・ライム>シリーズ第3弾。

リンカーン・ライムが最先端の脊髄再生復元手術を受けるために、ノースカロライナ州を訪れた。
手術は2日後。
そんなとき、地元警察から、女性を誘拐して逃走中の少年を探す捜査の協力を要請された。

ライムが手術! 興味津々の幕開けに驚いたら、
この上巻の終わりでは、アメリアが逮捕した少年を連れて逃げた。いつも通りの波乱の展開。


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 1

ターシャ・テューダーの世界―ニューイングランドの四季

著者 : ターシャ テューダー,リチャード ブラウン

出版社:文藝春秋

発売日:1996-11

評価 :

完了日 : 2008年09月05日


ターシャ・テューダーは1914年ボストン生まれ。
残念ながら、2008年6月18日に自宅で家族、友人に囲まれて逝去、92歳ことだった。
絵本画家・挿絵画家・園芸家(ガーデナー)・人形作家。ご本人は主婦という。
9歳のときに両親が離婚。両親の友人のボヘミアン的な家庭に預けられた。ここで絵の才能を伸ばしたそうだ。
23歳で結婚し4人の子供に恵まれるが、1961年46歳で離婚。挿絵や絵本の仕事をしながら4人の子供を育てた。
やがて、物心がつくころから憧れていた1830年代の生活様式を実践し始めた。息子に手作りで18世紀の農家を模した家を建てさせ、「この世の楽園」と自称する美しい庭を作り上げた。

この美しい写真集はそんなターシャの70代後半のころの生活を見せてくれる。美しい花々、かわいい動物たち、孫たち?に囲まれた、とても穏やかな生活が見られる。
奥付に、2008年2月15日 第23刷、とある。23刷とは、多くの人の共感を得ているのだろう。

浮かんできた感想は、なぜかあこがれ。
「なぜか」と書いたのは、同じような生活は自分にはできないとわかっているから。
9ヶ月間は冬という土地柄。雪が積もる。
電気・ガスを使っていない?
テレビはおろか電気製品が写っていない。 
明かりはろうそく。糸を紡ぎ、布を織る。
ターシャはそれらすべてが楽しくて仕方ないらしい。

現代人では暮らせないだろう生活様式。
でも、やすらぎや豊かさを感じ、あこがれる。

ターシャはいう。
「世間の人はバラ色のレンズを通してわたしを見ています。わたしも人間であることに気づかない。本物のわたしを見ていません」
わたしも見ていないのかもしれないが……

ターシャは冗談で、スティルウォーター教という宗教を作った。納屋でパーティを開くために。
みんなで心ゆくまで踊ったり、おいしいものをどっさり食べて、楽しく過ごしたそうだ。
「この世の悲しみは幻にすぎません。その後ろに、しかもわたしたちの手の届くところに喜びがあります。喜びを受け入れましょう」これがスティルウォーター教の最も重要な戒律。喜びはすぐ手に入るところにある。生まれつき悲観的な人もいれば、楽観的な人もいる。ターシャはだんぜん楽天主義者だそうだ。

スティルウォーター=動かない水
日本にも似た言葉がある。
「明鏡止水」 心にわだかまりや、くもりがないこと。

毎日ストレスの溜まる仕事をしているなら、休日にはお茶を用意して、こんな写真集をゆっくりと眺めるのもいいかもしれない。

ターシャのご冥福をお祈りします。 



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 5

ラ・パティスリー

著者 : 上田 早夕里

出版社:角川春樹事務所

発売日:2005-11

評価 :

完了日 : 2008年09月04日


主人公・森沢夏織が勤めはじめたパティスリー<ロワゾ・ドール>。駅から徒歩10分、坂の上にある、関西地方では名前の知られたフランス菓子店。喫茶部も併設されている。
そこに記憶喪失のパティシエ・市川恭也が突然現れる。彼の過去は? 
忙しい洋菓子店の日常、そこに集う客との交流やオーナー親子の確執などを織り交ぜ、夏織と恭也の淡い恋も描く。

洋菓子作りの工程が詳細に書かれている。
読んでいるだけで、口の中にケーキの甘さが拡がるような錯覚を覚えた。カロリーを気にしなくていい、新たな楽しみ方かな、とひとり笑ってしまった。

錯覚といえば、記憶に障害を負った恭也のセリフが心に残った。
「人間は脳を通して自分の外側を見ている。もともとの脳の認識が狂っていれば、その狂った基準に合わせた世界が、その人にとっての現実になる」

映画『マトリックス』でも、人間たちはバーチャルの世界で生活している現実を知らない。本当は眠らされているだけなのに。

話がちょっとオーバーになったが、パティシエが精魂込めた洋菓子にもそんな錯覚を起こさせる、魔法が潜んでいる。見て嬉しくなり、食べて幸せになる、そんな魔法。家族や気の合う仲間といっしょに食べている風景を想像するだけでも、明るい気持ちになる。洋菓子屋さんは夢も売っているんだなぁと感じた。

日本の洋菓子屋さんには、ほかにも夢のようなことがある。
たとえば、ティラミスとザッハトルテとクレーム・ド・ブリュレが仲良く並んで売っていたりする。今では不思議でもなんでもないかもしれないが、元をただせば、それぞれイタリア、オーストリア、フランスの菓子ではなかったか。
いろんな国の代表的なお菓子を1件の店で買える。しかも本場の味よりも美味しいかもしれない。

そういえば、さらにすごいのは昨年リニューアルした新宿高島屋。
11店のパティスリーからそれぞれ新宿高島屋オリジナルケーキ3種類と、定番のケーキからセレクトされた7種類が揃う。パティスリー1店につき10種類のスイーツ。それが11店舗なので、合計110種類のスイーツが一堂に並ぶ。だから、たとえば客はA店のモンブランとB店のオペラとC店のクレーム・アンジュをひとつずつあわせて買えるというわけだ。
店の垣根をも取り払ったサービスが嬉しい。
現在はさらに店舗数が増えたようだ。


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 16

桜宵 (講談社文庫)

著者 : 北森 鴻

出版社:講談社

発売日:2006-04-14

評価 :

完了日 : 2008年09月03日


ビア・バー「香菜里屋」のマスター・工藤哲也が探偵役を務める連作短編集。
日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門受賞の『花の下にて春死なむ』に続くシリーズ第2弾。

一見の客でも、居心地の良さと料理の旨さに感激するビア・バー「香菜里屋」。
そのマスターが安楽椅子探偵になるストーリーは、好奇心を刺激する。
読者は自分も香菜里屋のカウンターでグラスを傾けながら、客の持ち込む「謎」の会話に聞き耳を立てているような錯覚を覚えるかもしれない。

短編独特のキレとコクを持ったストーリー展開。
5編収録しているが、それぞれが独立した話でありながら、登場人物を重ねることにより連作感が高められている。


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3.鹿LOVE (2008/09/05)
はじめまして!
『香菜里屋』シリーズは私も大好きです。仕事帰りの電車で読んでいると、マスターの作ってくれる料理が食べたくて食べたくて・・・〈笑)
またアルコール度数の違うビールをセレクトして出してくれる・・・ビール好きの私にはたまりません!いつも行く呑み屋さんで一番度数の高いビールを飲んでいい気持ちに酔っ払ったこともありました。^^;
4.ハローbreeze (2008/09/05)
鹿LOVEさん、はじめまして♪
お気に入り登録ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。

そうですね、「香菜里屋」は店自体にも惹かれます。
でも、残念なことに私の肝臓にはアルコール分解酵素がないようです。
お酒が飲めないのは、人生の楽しみの一つを損しているようで寂しいです。
ですから、主としてお酒を飲む場所であるカウンターバーには行ったことがないんです。

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 43

食堂かたつむり

著者 : 小川 糸

出版社:ポプラ社

発売日:2008-01

評価 :

完了日 : 2008年09月01日


感激。とても良い小説に出会えた。私が今年読んだ本の中で、上位に入ること確実。
酸いも辛いも噛みしめた主人公の生き方を通して、生きるということの本質を考えさせられた。

主人公、倫子は、25歳。
中学の卒業式を終えた夜、家を出た。どうしても母を好きになれなかったのだ。その後10年間プロの料理人を目指し、都会のいろいろな飲食店で働いてきた。
いつか恋人と飲食店を開くのが夢で、コツコツと資金も貯めている。
しかし、ある晩、仕事から帰宅したらアパートの部屋はもぬけの殻。同棲していたインド人の恋人が、家財道具も貯めてきたお金もすべて持って逃げていた。いや、ただひとつ、祖母から受け継いだぬか床を残して。
ショックで倫子は声を失った。
やむなく10年ぶりの実家に戻った倫子は、そこで1日1組限定の食堂を開くことに……

読み始めたときは、若干メルヘンチックな甘口の小説かと勘違いした。淡々とした倫子の行動が、軽いドラマを連想させてしまうのだ。しかし、驚いたことに、恋人の裏切りで彼女は声を失う。読み進めれば、「食」を通じて「生きる」ことの意味を読者に問うような、重いテーマが潜んでいると気付く。
また、そこかしこに効果的にちりばめられた隠喩が、物語に奥行きを持たせている。そんな繊細なところを見つけ、意味を考えながら読むとより感慨深い。
たとえば、祖母が亡くなる寸前に作っておいてくれたドーナツ。眠っているような祖母と一晩を過ごす。大好きな祖母を亡くし、きっとドーナツの穴のように、ぽっかりと倫子の心には穴が開いたことだろう。祖母の記憶が頭の中を行ったり来たりしながら、倫子はドーナツを食べる。食べ終われば、存在していた穴もなくなった。

そんな繊細さだけでなく、大胆なストーリー展開もある。
一見残酷にうつるある場面の描写だが、ひょっとしたら母親が口にした理由とは別にもう一つの理由があるのではないか。
厳選した食材にこだわった店で、一人前の料理人を目指す娘にだからこそ、あえて試練を与えたのではないだろうか。無責任なやさしさに潜む何かを知っておかなければならないよと。
「母親のペットが豚」という設定にした作者の意図を探れば、その考えもあながち間違いではないだろう。
後半、母親の秘めていた愛情が明かされる場面では、大きな感動がこみ上げてきた。倫子は母親に抱きしめてもらいたかったと思っていたが、実はずっと大きな愛情に包まれ、抱きしめられていたんだなぁと……

世間では食育だとか、スローフード運動だとか、いろいろある。地球環境のためとか、豊かな人生のためにである。
しかし、それらをファッション・スタイルにしているだけでは、いっこうに心の胃袋は満たされない。
このような料理小説に登場する食堂なら、心の胃袋を満たすおいしい料理に出会えるかもしれない。


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6.ハローbreeze (2008/09/04)
けっして難しい物語ではないですよ。むしろ、やさしくてとても読みやすい小説です。
かわいらしい比喩表現も楽しかったです。たとえば、夕焼けをフラミンゴ色と書いたり。ちょっとメルヘンチックなんです。
「えっ」という場面がいくつかあって、そこに疑問を持つ人が多いみたいです。
7.ryoukent (2008/09/04)
いやー、Breezeさんうまいなあー。
「えっ」という場面がいくつかあったりしちゃうと、ますます読みたくなってしまうのです。

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 3

木野塚佐平の挑戦だ (創元推理文庫 M ひ 3-11)

著者 : 樋口 有介

出版社:東京創元社

発売日:2008-06

評価 :

完了日 : 2008年08月31日


ハチャメチャなナンセンス・ハードボイルド・ミステリ長編。

経理一筋で警視庁を定年退職した木野塚佐平、60歳。
海外ハードボイルド探偵を崇拝する氏は、裏新宿に探偵事務所を開設した。
本書はその『木野塚探偵事務所だ』に続くシリーズ第2弾。
前作でケニアに去った秘書兼助手の梅谷桃世が半年後に帰ってきた。

またまた、木野塚・桃世コンビに出会え、嬉しくなった。
さて、ストーリーはどうだろう。
冒頭、現職の総理大臣の死亡から始まる。
こんな大事件の依頼が来るのか? と訝しく思いながら読み始めた。
きっと木野塚は相変わらずの妄想ばかりで、事件のあらかたは桃世が解決するパターンだろうと思いきや、実はちょっと手の込んだミステリ仕立てで凝ったエンディングが待っていた。嬉しい勘違いだった。
そう、ラストには驚きの真相が明かされる。

ただし注意あり! この作品、一歩間違えれば「おバカミステリ」と言われかねない。否、ナンセンス小説が嫌いな方だとそう捉えるかもしれない。
面白いんだけど……

第3弾もあるらしい。楽しみに待とう。


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 9

ショコラティエの勲章 (ミステリ・フロンティア 44)

著者 : 上田 早夕里

出版社:東京創元社

発売日:2008-03

評価 :

完了日 : 2008年08月30日


スイーツ好きなので、ストーリーの良し悪しに関係なく、楽しめた。出てくるスイーツがどれも美味しそうで、どんな味だろうという想像が絶えなかった。
だから、甘い物嫌いの方には面白くないかもしれない。

この作品は、スイーツに関わるちょっとした事件の謎を解く、コージー・ミステリ。短編6話の連作。
ミステリ好きがうっかり手を出すと、がっかりするかもしれない。理路整然としたミステリではないからだ。
それでは人間ドラマに重点が置かれているのか、というとそうでもない。登場人物の描写にざらついたような、ちょっとちぐはぐした感じを受けた。

たとえば、主人公の絢部あかり。老舗和菓子店の売り子で、年齢20代半ば。年齢以上に落ち着きがあり、理性を感じさせ、常識もある。観察眼も鋭く、感受性豊か。そのように描写されている。
彼女が2軒先にオープンしたショコラトリーで、ある事件に遭遇したときのこと。チョコレートパフェの値段が1300円ときいて、
「たかがチョコレートパフェが、なんでそんなにするんですか」と驚きの声を上げる。
彼女がひとしきり店を観察してから、一粒200~700円のショコラ6個と3000円のセットを買ったあとの出来事。彼女の観察眼からすると、買ったショコラなどの値段からこの店のパフェの値段もおおよそ推測できたはず。「たかが」とか「なんで」という失礼な言い方は、それまでに書かれていた彼女の人物像にそぐわず違和感が残った。
これは一例で、ほかにも気になるところがいくつかあった。

そのようにこの作品はちょっと粗さを感じさせる出来ではあったが、それでもまた続きや関連作品を読んでみたくもある。
スイーツの誘惑には弱い。


この感想へのコメント

1.べる (2008/08/31)
私もヒロインのキャラにはあまり好感が持てなかったです。スイーツ、とりわけショコラ大好き人間としては、美味しいスイーツ描写だけでも楽しめましたが、ミステリとしては弱かったですね。実はちょうどこの方の本書の前身作『ラ・パティスリー』を読んだばかりなのですが、そちらも絶品スイーツ満載でしたよ(でも、こちらもキャラとストーリーには少々不満がありましたが^^;)。
2.ハローbreeze (2008/09/01)
べるさん、今晩は☆
私も『ラ・パティスリー』読んでみます。
重い社会派ミステリばかりで気持ちの沈んだとき、スイーツ満載のライトな話で口直しするとします。
 

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 1

平成お徒歩日記 新装版 (Miyuki Miyabe Early Collection)

著者 : 宮部 みゆき

出版社:新潮社

発売日:2008-05

評価 :

完了日 : 2008年08月29日


ミヤベミユキさんが江戸を歩きたいという希望を実現した膝栗毛エッセイ。

妙にハイテンションになったり、愚痴をこぼしたりと、作家の宮部みゆきさんとは別人のイメージ。
だからカタカナでミヤベミユキなのかも。

歩いた(タクシーも大いに利用した)コースは
其ノ壱 忠臣蔵 真夏の両国~高輪コース
其ノ弐 市中引廻しコース
其ノ参 箱根の関所破りコース
其ノ四 江戸城一周コース
其ノ伍 流人の島、八丈島バカンス・コース
其ノ六 本所七不思議めぐり
其ノ七 善光寺と伊勢神宮参りグルメの旅
そして読んだのが『新装版』だったのでおまけかもしれない2編あり。
1.剣客商売「浮沈」の深川を歩く
2.いかがわしくも愛しい町、深川

平成6年7月に発覚した宮部さんの「腎臓結石」は治ったんでしょうか?


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3.ようちん (2008/08/31)
ええ??写真1枚もないんですか???
それはさみしい・・・あ、でも、古地図はあるんですよね?
各章最後についていた、注釈・講釈・後日談は?
文庫版は、写真がふんだんに載っています。吉良邸、泉岳寺、小塚原、箱根旧街道、深川、善光寺、いろんな宮部さんが写っていましたが、文章だけでは、やはりさみしいですよ。
4.ハローbreeze (2008/08/31)
今日、本屋で前のを見ました。写真、けっこう載ってました。カットしちゃダメですよね。宮部さん若かったですね。
古地図や注釈・講釈・後日談はあります。
新装版の方がパワーダウンは残念でした。

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 11

魔球 (講談社文庫)

著者 : 東野 圭吾

出版社:講談社

発売日:1991-06

評価 :

完了日 : 2008年08月28日


東野さんの才能をまざまざと見せつける作品だった。
驚いたことにこの作品は『放課後』の前に書かれていたという。
江戸川乱歩賞用に『魔球』、『放課後』、『卒業』と書かれたそうだ。残念なことに、この作品はその魔球の正体に議論が集中して、受賞を逃した、とファンサイトをみてはじめて知った。
私の読んだこの文庫本は魔球の部分が改稿されているらしい。

この作品は本格ミステリ小説である。
ミステリは基本的にはエンターテインメントであると思う。
しかし、娯楽作品としてただ面白ければ優れたミステリといえるかといえば、そうではないだろう。
優れたミステリとは、謎解きの面白さと文学的な魅力を併せ持っているものだ。
論理的な謎解きの見事さで読者を唸らせ、人間の心情を浮き彫りにし読者の心を抉る。それが優れたミステリではないか。
この『魔球』はまさにそのような優れたミステリであった。

甲子園選抜大会に出場した、高校野球部員のキャッチャーとピッチャーがつづけて殺される事件を描いている。
この2つの殺人事件のほかに、ある大手企業に爆弾が仕掛けられるという事件も発生する。
複雑に張り巡らされた伏線が、ラストには見事に収束する。(謎解きの面白さ)

個性豊かな登場人物たち。犯人が殺人を犯してしまった、やむにやまれぬ事情。彼に関わる人々の辛さ。それぞれの心情を知り、悲しさ、虚しさを覚える。(文学的な魅力)

作品全体のトーンは暗い。死んだ2人の高校生野球部員があまりに一途なのだ。若すぎる2人だから仕方ないが……
ピッチャーだった武志は、バッターへの転向は考えたのだろうか。彼のずば抜けた運動神経を考えるとその選択肢はなかったのかと思わずにはいられない。


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 7

嘘をもうひとつだけ (講談社文庫)

著者 : 東野 圭吾

出版社:講談社

発売日:2003-02

評価 :

完了日 : 2008年08月27日


加賀恭一郎が手がけた5つの事件を収録。
軽い読み物としてのミステリ集に仕上がっている。

読後一番に浮かんだのは、昔観たTVドラマの『刑事コロンボ』。
本書の場合は、冒頭から完全に犯人がわかるわけではない。ただ、刑事の加賀がしつこくやって来るところから犯人を落とすまでの過程がよく似ているのだ。
しかし、コロンボに負けない、加賀の観察力、洞察力、そして推理力はさすがで、堪能できた。

ただ、表題作『嘘をもうひとつだけ』には問題がある。
犯人を詰め将棋のように追い込む加賀が、犯人の嘘を見破った場面である。
犯人は自分の証言を加賀に嘘と指摘されたとき、
「あらそうだったの。それじゃわたしの記憶違いだったのね」といったら、どうなっただろう?
さらには犯行に使った手袋を捨てずに持っていたことにも驚いた。

最終話に、交通事故を起こした加賀の友人の事件がある。
この友人は被害者でありながらも加害者を庇おうとする。
理詰めで犯人を指摘する加賀に対して、友人は
「人間というのは、それほど論理的じゃないんだ」と反論する。
無視して論理的推理を話し続ける加賀に、友人は再度
「だから人間というのは論理的じゃないといっているだろう」という。
「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される」
刑事である加賀が辛い心情をのぞかせ、帰っていく。
最終的に、この友人は犯人にある決意を持ってのぞむ。

犯人を庇う友と加賀の攻防場面に、ミステリ小説の真髄をかいま見た気がした。


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4.ハローbreeze (2008/08/30)
久しぶりにファンサイトを覗いたら、加賀刑事ものの映像作品ありました。
『眠りの森』のTVドラマで、山下真司が加賀を演じたようです。1993年のことです。
『太陽にほえろ!』のスニーカー、『富豪刑事』の鎌倉警部役の山下真司です。
加賀のイメージとはちょっと違いますね。

「御託を……」サイト、更新されてませんね。
5.ようちん (2008/08/31)
あははは、鎌倉警部ですか~ちょっとイメージではないですね。熱すぎる感じです。それにしても、「富豪刑事」といれて頂いてありがとうございます。わかりやすくて、思わず笑ってしまいました♪

サイト、更新されていませんか。しばし休憩中なのでしょうかね?

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 32

のぼうの城

著者 : 和田 竜

出版社:小学館

発売日:2007-11-28

評価 :

完了日 : 2008年08月26日


痛快娯楽歴史小説。
読後、しばし呆然。
戦を描きながらも、爽やかさを感じさせる。
従来の歴史小説とは違う面白さがある。
マンガのようでもある。

新聞に本書の宣伝広告があった。
「誰でも楽しめる、戦国エンターテインメント小説!」
まさしくその通りだと思う。



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 14

さよなら、そしてこんにちは

著者 : 荻原 浩

出版社:光文社

発売日:2007-10-20

評価 :

完了日 : 2008年08月25日


葬儀社の社員、登校拒否の中学生、スーパーの売場責任者、子供向けヒーロー番組の俳優に心を奪われた主婦、寿司屋の主人、スローフード研究家、寺の住職。それぞれが主人公の短編が7篇。

みんな、悩みを抱えながらも一生懸命に生きている。でも、一生懸命になるほどに、悩みは増える。
そんなときには、ちょっと肩の力を抜いてみれば、というような話。ホントにそうだと思う。

著者お得意の、軽妙洒脱なユーモア作品集。


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 3

傷だらけの天使 魔都に天使のハンマーを

著者 : 矢作 俊彦

出版社:講談社

発売日:2008-06-20

評価 :

完了日 : 2008年08月23日


この作品はなんと、30年前に放送されたTVドラマ『傷だらけの天使』の続編。
そうと知ったら読まずにはいられなかった。

『傷だらけの天使』は、萩原健一、水谷豊主演の、不器用な生き方しかできない若者を描いた、ふざけてて、下品で、やさしくて、感動的で、ハードボイルドな連続TVドラマだった。
思い出すと「アキラぁー!」「アニキぃ~」の声が聞こえる。
子供のころ、話題になったドラマだった。とにかくBIGIの服を着たショーケンがかっこよかった。表情がよかった。働くようになったら、ぜったいBIGIの服買うぞ、と思った。水谷豊も見事なはまり役だった。いい味出してた。
あれほどわくわくするドラマはなかった。

あれから30年。小暮修は55歳。ホームレスになっていた。いまだ、亨(アキラ)の死を引きずったまま。そんなある日、仲間のホームレスが何者かに襲われ死ぬ。どうやら、修と間違われたらしい。修は、自分の身代わりで殺された仲間の落とし前をつけるため、そして自分が狙われる理由を求めて、再び新宿の地を踏んだ。

ストーリーは現代社会を反映していた。修の頭ではついていけないIT世界を利用した犯罪。ちょっと違和感を持ったが、それでも修(萩原健一)が躍動する姿が目に浮かべば楽しく、嬉しくてたまらなかった。
修が、奪った1964年型の7リッターV8、425馬力のTバードを駆るシーンには痺れた。
残念だったのは、服。綾部貴子がみつくろったのは、ヒューゴ・ボスの白いピークド・ラペルのスーツに、タニノクリスティーの茶と白のコンビ靴、そしてボルサリーノ。上品過ぎる。修はタケオキクチの方がいいなぁと言ったのに、マルイに売っているような服なんてと却下された。ぜひとも青山の菊池武夫の店40CARATS&525で揃えてほしかったのに。

この作品にはサプライズというほどでもないが、ちょっと粋な演出がある。
捜査を続けていた修が新宿コマ劇場前に来たとき、向かいの映画館で『相棒』の舞台挨拶をやっていたのだ。看板にはアキラ、いや水谷豊、いや杉下右京の姿があっただろう。中学中退と東大卒、現実と虚構、過去と未来が一瞬溶け合う、嬉しい瞬間だった。
蛇足だが、私は『相棒』の水谷豊にはいまだに馴染めない。アキラが最高だったから。

総じて、この作品はあくまでかつてのTVドラマを毎週楽しみに観ていた人が対象になる。もちろん再放送を観て好きになった人も大丈夫。
知らない人はきっと面白くないだろうから、読まないほうがいい。


この感想へのコメント

1.フィリップ・まろ (2008/08/29)
懐かしいなあ。
そうそう、アキラは風邪で死んだんだたよね。ドラム缶のお風呂で湯灌をしている場面が目に浮かびます。
トマト丸齧りにコンビーフをガブ食いまで真似したもんだ。牛乳もか。
井上バンドのサントラ盤レコードも持ってたよなぁ。
2.ハローbreeze (2008/08/29)
フィリップ・まろさん、今晩は☆
懐かしかったです。それで夢中で読んでしまいました。
萩原健一も水谷豊も最高に可笑しくてかっこよかったです。
友達がよく2人の真似をしました。
オープニングのテーマ曲は、しっかりと記憶に染み付いてますよね。
井上堯之バンドのサントラ盤、いいですね。
 

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 11

邪馬台国はどこですか? (創元推理文庫)

著者 : 鯨 統一郎

出版社:東京創元社

発売日:1998-05

評価 :

完了日 : 2008年08月21日


著者デビュー作の新歴史ミステリー6篇。

1.悟りを開いたのはいつですか?
  ――ブッダは悟りを開いていない?
2.邪馬台国はどこですか?
  ――邪馬台国は東北?
3.聖徳太子はだれですか?
  ――聖徳太子は実在しなかった?
4.謀叛の動機はなんですか?
  ――本能寺の変は信長の自殺?
5.維新が起きたのはなぜですか?
  ――明治維新を起こしたのは勝海舟?
6.奇蹟はどのようになされたのですか?
  ――イエス復活の真相は?


この感想へのコメント

3.ようちん (2008/08/23)
そうそう「ダ・ヴィンチ・コード」、面白かったですね。
世界の宗教とか十字軍とかテンプル騎士団とか・・・奥が深すぎます。
私も、松永さん同様、山川出版の日本史の教科書は常備です。あと、山川の「日本史年表」、意外と役立つのは、国語の時間に使っていた中央図書の「新編国語便覧」!これらは、オトナになってからのほうが、随分とお世話になっています。
4.ハローbreeze (2008/08/23)
歴史小説を読んだりして、また日本史、勉強しようかな。

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 1

人生模様

著者 : 片岡 義男

出版社:東京書籍

発売日:1995-03

評価 :

完了日 : 2008年08月19日


片岡義男の小説は
「なにを言いたいのかがわからない」、「中身がない」
と学生時代のクラスメートに言われたことを今でも覚えている。
彼は私の読んでいた文庫本を手にとると、パラパラとめくり速読を始めた。
そして、ほんの数分後には、おおよそのストーリーを口にし
「ほら、こんなふうに片岡義男の小説は数分でストーリーがわかるくらい単純で、ほとんど中身なんてないんだ」というようなことを言ったと思う。

「ホントにそうだろうか?」

そう思いながらも、そのころの私は反論ができなかった。私が彼の作品を読んでいたのは、彼の描く世界がただただ心地良かったから。あくまでも感覚的なものであったため、クラスメートからの辛辣な批判に反論する言葉まで持っていなかった。
ただ、ファッションに無頓着だったそのクラスメートのポリエステル混のシャツだけが侘びしげで、記憶に残った。

あれから長い時間が流れたが、片岡義男の小説の良さというものを少しだけでも言葉にしておきたい。あくまで少しだけで、個人的な意見だけれども。
本書は13年前に発行された作品。読んでみると、自分の考えは答えからそう遠くないところにあるのではないか、と思えたから。

片岡義男の小説の良さとはなにか?

読者は、彼の描く登場人物たちの暮らす社会を現実の社会のつもり読んでしまう。ところが、このごく身近に感じるありふれた社会が、実は現実の社会ではないのである。
彼は、喜怒哀楽の激しい感情の起伏を書かない。大喜びしたり、激怒したり、哀しみに打ちひしがれたり、はたまた大爆笑したり、という表現を極力避けている。さらには、およそ人間の持つマイナスの感情である、恨んだり、羨んだり、妬んだり、憎んだり、蔑んだり、という表現も書かない。
片岡義男は、こういう感情のない社会を描いているのである。しかし、そんな社会はあるはずがない。つまり、彼の描く社会は現実の社会ではないのである。

それでは、人間を描くはずの小説で、敢えてこれらの感情表現を書かないというのはどういうわけだろう?

それは、たぶん、片岡義男自身が理想とする社会を描き、そこに暮らす理想の人々を描いているからだ。彼が理想とする社会には、極端な感情表現は存在しないということなのだろう。
簡単に言えば、争いのない社会で自分の意思に沿った生き方をする人々が、彼の理想なのである。
彼の描く主人公は、お金の心配がなく、満員電車に揺られるでもなく、仕事の悩みもない。人間関係に煩わされることもなく、もちろん恋愛に悩むこともない。ただ自分が心地よいと感じることを選択し、生きている。

私は彼の小説を読んでいる間
「こういう暮らしはいいなぁ」とか
「こういう感情を抑えられる人間になりたいなぁ」と思いながら、心穏やかな時を過ごし居心地の良さを感じていることができる。
この心地良さは、目的もなく走らせるバイクに乗っているときの楽しさに似ているかもしれない。波乗りやスキーも似ているかもしれない。好きな絵を眺めている感覚にも近いかもしれない。

片岡義男の小説の良さとは、そういうところにあるのではないだろうか。

「飲み打ち買う」を最高の悦楽とする人には理解できない小説かもしれない。
ポリエステル混のシャツを着ている人にも……


この感想へのコメント

4.ハローbreeze (2008/08/23)
もし読まれるのでしたら、過去の小説とはまったく異なる作品がいいかもしれません。
以前、ryoukentさんからもコメントいただいた
『自分と自分以外―戦後60年と今』NHKブックスは、片岡さんの現代社会論です。でも堅苦しい内容ではありません。エッセイ感覚で読め、片岡さんの新しい側面を見ることができます。
少年時代に片岡作品に触れた、現在は大人の読者には、こちらの方がむいていると思います。
5.ryoukent (2008/08/23)
これは良い本をあらためて紹介してもらった気がする。
Breezeさんありがとう。
さっそく探索に掛かってみます。

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 83

一瞬の風になれ 第三部 -ドン-

著者 : 佐藤 多佳子

出版社:講談社

発売日:2006-10-25

評価 :

完了日 : 2008年08月18日


最終巻のこの第3部は、あえて今読んだ。
オリンピックの時期に読んだらどうだろう、と前2巻を読んでいるときに思いついたからだ。
このところ、作中の季節と同じ季節に読むとどんなもんだろうか、としきりに試したりもしていた。

結果はまずまずだった。
オリンピック選手の走りが頭の中に映像として残っているうちにこの本を読んだら、登場人物たちの走りが見えるような錯覚が起きた。
予選通過確実な選手が最後のほうを流す姿。ボーダー・ラインにいる選手の必死の走り。足の運びや手の振り方など、現実とフィクションの世界がシンクロした。

陸上にかける青春を描いた爽快な小説。
最近この手の爽やかなスポーツ青春小説が流行りだしたようで嬉しい。
暴力シーンの多い、不良少年少女たちのドラマよりよっぽどいいと思うのだが……


この感想へのコメント

2.ハローbreeze (2008/08/21)
あくまで個人的な感覚ですよ♪
私は陸上競技で走る選手のフォームを真剣に見たことがありませんでした。だから、本書でフォームに触れられてもイメージできず残念だったので、オリンピックで見てみようと思ったわけです。
じっくりと見たら、美しさと力強さを実感できました。

「よさげ」は標準語かはわかりませんが、使いますよね。
「かわいげ」、「危なげ」の「げ」と同じですよね。
3.ryoukent (2008/08/23)
第三巻を読んでる途中で、男子400mリレーが銅メダルに輝きました。
「よさげ」なんてもんじゃないくらい感動しました。
大変よかったです。
Breezeさんありがとう!
『一瞬の・・・3 ドン』はまだ読んでる最中だけど。

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 1

不惑の手習い

著者 : 島田 雅彦

出版社:集英社

発売日:2008-05

評価 :

完了日 : 2008年08月16日


作家・島田雅彦さんが習い事に挑戦したエッセイ。
習い事は全部で20。

01 二胡          11 刀鍛冶
02 書道          12 天ぷら
03 カクテル        13 いけばな
04 礼法          14 蓄音機
05 手揉み茶       15 ウエスタンライディング
06 左官          16 スポーツ吹矢
07 フィギュア       17 舞踊
08 フリークライミング      18 ショコラ
09 トランポリン      19 フグ
10 ジャイロトニック    20 写真

内容は、習い事というより「一日体験記」だった。
それにしても、各界の大先生たちに直接手ほどきを受けられたというのは、羨ましい。いつまでも記憶に残る、貴重な体験になることだろう。

とくに私の記憶に残ったのは「手揉み茶」の作業工程。5~6時間もかけて、精魂こめて揉むのだ。大変な作業だ。お茶の持つ清楚なイメージとはかけ離れた、体力勝負の作業に驚かされた。
それだけに名人の手がけた「一葉入魂」の緑茶は、100g1万円以上の高級品になる。
作業工程を知った後では納得の価格。だが一生口にはできないだろう。せめてこの茶園の日常飲み用の緑茶を飲めたらいいなぁと思う。

そういえば、島田雅彦作品は読んだことがなく、本書がはじめてだった。


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 8

ヴァン・ショーをあなたに (創元クライム・クラブ)

著者 : 近藤 史恵

出版社:東京創元社

発売日:2008-06

評価 :

完了日 : 2008年08月15日


下町にあるビストロ・パ・マルのシェフ・三舟さんが「日常の謎」を解くシリーズの第2弾。7皿のコース。美味しい料理が供される。

三舟シェフの相変わらずの鋭い推理を今回も堪能した。ちょっと無理を感じる推理もあったが楽しかった。
「日常の謎」のテーマは、人の心の傷。ちょっとした会話の中に疑問を見出す三舟シェフが、思いやりある解決を試みるところが気に入っている。
後半2篇は、三舟シェフがフランスでの修行時代に出会った謎の話。ヴァン・ショーとの出会いもある。

「日常の謎」を解くという本書のような作品は、ミステリではない、といわれることもあるかもしれない。
日常会話の中に出てくる、ちょっと不思議な程度の出来事なら、私だったらきっと聞き流して終わり、に違いない。ところが、三舟シェフはその謎に気付き、推理を働かせる。そして、みんなにわかりやすく根拠をきちんと提示して、答えを導き出している。まさにミステリである。殺人事件や大事件がなくても、ミステリは成立することを知る。

もちろん本格的なミステリは好きだ。でも、本書のような日常のミステリも気に入っている。凄惨な事件の合い間に、ライトなミステリもいいものだ。推理の基本も学べる。殺人事件ばかりでは、気も滅入る。


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 2

ファイアー・フライ

著者 : 高嶋 哲夫

出版社:文藝春秋

発売日:2008-05

評価 :

完了日 : 2008年08月14日


誘拐事件を軸にしたエンターテインメント小説。リストラ、オーバーワークによる家庭崩壊、悪徳金融業者問題が事件に絡む。

セネックス工業開発部の主任研究員である木島優二が、社長と間違えられて、誘拐される。
山深い廃村に監禁された彼は、いつしか犯人たちと心の交流を持つようになる。しかし、この誘拐事件にはもう一つ裏があった。誘拐された木島が会社の研究費およそ5億円を横領していたと報道されたのだ。身に覚えのない罪を着せられた木島は真相究明のため、誘拐犯2人に協力し身代金奪取を狙うことに……

木島はただ忙しく働くだけの毎日を送っていた。そのため、かえって監禁生活でゆったりとした穏やかな気分になれたという場面があったが、そこに現代社会をあらわす皮肉を感じた。ただし、誘拐事件を扱っていながらも緊迫感は乏しい。
彼はさらにこの監禁生活により、家族(妻、娘、息子)が自分とは別のところで生きていることを実感する。世間ではよくあることだが、真面目一本の彼は誘拐されなければわからないままだった。
誘拐は、彼にとって殺されるかもしれないという、死を連想させるものだったはず。しかし、同時に生きるということの意味をあらためて考えさせるきっかけになった。

真相が解明されていくにつれ、木島はさらに辛い現実を知ることになる。仕事しか頭になかった木島が、初めて知る現実にどう対応するのか、再生はできるのか? というのがこの物語のテーマ。
主人公、木島優二は43歳。


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