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ハローbreezeさんの読書ノート

2008年に読んだ本
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 1

海燕ホテル・ブルー (徳間文庫)

著者 : 船戸 与一

出版社:徳間書店

発売日:2005-02

評価 :

完了日 : 2008年09月24日


復讐を心に、5年の刑期を終え出所した藤堂は、落とし前をつけに伊豆下田にやって来た。しかし、1人の女との出会いが藤堂の運命を狂わせる。

主人公・藤堂が破滅へと向かう姿には、唖然とした。自己破壊欲のあらわれかとも考えたが、女の情念に徐々に蝕まれていったようにも思える。
いずれにしても理性では理解し難い世界。

船戸さんの描く人間たちはしばしば常軌を逸した行動をとる。本人の理性も野望も、運命の波あるいは時代の波に飲み込まれていく。読者がそこに何を見るか、というのがポイントなのかもしれない。
私も考えてみたが、脳味噌が痒くなるばかり。

本書は船戸作品の中でもちょっと異色なものだと思う。


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 1

南の島の星の砂

著者 : Cocco

出版社:河出書房新社

発売日:2002-09-27

評価 :

完了日 : 2008年09月22日


著者のCoccoは言わずと知れたシンガーソングライター。1977年沖縄生まれだそうだ。

私がCoccoを知ったのは、FMラジオから流れた彼女の歌声がはじめだった。ずいぶんと前のことだ。その歌声が不思議なくらい印象に残った。爽やかなのに、どこか翳を感じた。後日CDを聴いたら、詞にも驚かされた。伸びやかな清涼感ある曲調にもかかわらず、かなり過激な詞もあり、びっくり。
勝手にCoccoの心の闇と理解してしまったが、脆く儚く、そして神秘的で幻視感のある世界に強く惹かれた。

本書はそんなCoccoの描いた絵本。ずっと読みたくて、やっと手に取れた。
Coccoは一時音楽活動を中止したことがある。1年半振りに再開した活動のはじまりが、この絵本の制作だったそうだ。

やはり、その絵には歌詞に感じたままのものが見える。計り知れない、奥深い悲しさが潜んでいる。
白い紙に色を載せ、黒で覆ってしまう。表面の黒色を削り取って絵を描き出している。
心を覆う黒いベールを削り取り、隠していた心情を浮き上がらせようとするように。掘り出された、明るい色には希望が見えるように感じたが……
ストーリーは自然のサイクルが見せる美しさを謳っている。魅せられた。

ちなみに私がはじめて聴いたCoccoの曲は「強く儚い者たち」
それ以外で好きな曲は「樹海の糸」、「ポロメリア」、「Raining」


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1.ようちん (2008/09/25)
私も「強く儚い者たち」からです。
次は「NEWS23」で筑紫くんのドキュメンタリー。そこにCoccoがいました。音楽活動をやめて沖縄に戻ったけど、愛しい海はゴミだらけ。彼女はひとり浜辺でゴミを拾う。愛しい海、沖縄。その気持ちを伝えるために歌を作り、地元の中学?高校生?と一緒に校庭で演奏、歌いきる。Coccoがこうした絵本にも携わっていたとは、驚きましたが、よく考えれば当然かも。曲はHeaven's Hell
2.ハローbreeze (2008/09/25)
今晩は☆ 
今、ようちんさんの『四重奏』にお邪魔したところでした。また脱線して映画の話書いちゃいました。

この絵本の感想を書いた後、Coccoのことを検索してみました。やはり悩み多き女性のようですね。リスト・カットという言葉もありました。
私も、彼女のゴミ拾い活動はTVで観ました。
音楽以外の活動を通し、彼女には何かが見えたでしょうか?
私が感じてしまった「心の闇」は芸術世界にのみ現れるものならばよいのですが……
 

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 6

ハナシがはずむ!―笑酔亭梅寿謎解噺〈3〉

著者 : 田中 啓文

出版社:集英社

発売日:2008-05

評価 :

完了日 : 2008年09月21日

落語ミステリというよりも、
笑酔亭梅駆こと星祭竜二の内弟子修行奮闘記。
とてもゆっくりではあるが、確実に芸の道を歩みだした竜二。竜二に気付かれぬように学ばせている師匠・梅寿。面白さに笑いながらも、知らず知らずのうちに応援していた。

本作は爆笑[笑酔亭梅寿謎解噺シリーズ]の第3弾。8つの連作短編集。

謎解噺と銘打っているが、お世辞にもうまいといえる謎解きはない。駄洒落クラスのサゲがちらほら。
ただし、師匠・梅寿が竜二に与える無茶苦茶な仕事が、実は彼に身をもって学んで欲しいことだったとわかるくだりには、良質な日常ミステリの趣を感じた。
前2作では、ハチャメチャすぎる師匠・梅寿に、本当に竜二を育てる気があるのか、と一抹の不安を覚えた。しかし、この3作目を読んで、育てたいという気持ちは本物だとわかり、コミカル小説なのになぜか胸に熱いものがこみ上げてきた。

本作で一番のミステリは、竜二の演じた「はてなの茶碗」だ。どんな出来だったのだろうか?
竜二が茫然自失の状態で演じたにもかかわらず、眼鏡屋乱視師匠に「さすが、笑酔亭の弟子だよ」と言わせている。
聴けるものなら聴いてみたい。


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 16

香菜里屋を知っていますか

著者 : 北森 鴻

出版社:講談社

発売日:2007-11-29

評価 :

完了日 : 2008年09月20日


『花の下にて春死なむ』『桜宵』『蛍坂』に続く、
[香菜里屋シリーズ]の完結編。5つの連作短編集。

これで終わってしまうとは信じられない。
真相をぼかした終わり方のためか、まだ続きがありそうにも感じさせる。いや、やはり終わってしまったのか。工藤の推理はいつも「真相はこういうことかもしれませんよ」とぼかして終わったのだから。
いずれにしても、このシリーズが終了するというのは、心乱される事件だった。

今回は、工藤や香月の過去、香菜里屋の店名の由来、そして工藤が店を開いていた理由、すべてが明らかになる。

工藤の持つ「翳」の理由はわかった。わかったからこそ、幸せを摑んで欲しい。
美味しい料理で多くの客を魅了し、数々の謎の真相をみごとに推理し、その慈愛に満ちた人柄で愛された工藤が、最も大切な人の心を捉えられないわけがない。そう信じている。

後半には、北森作品他シリーズの主人公たちが続々と登場する。
工藤のおいしい料理が味わえなくなるなら、今度はそれらのシリースに食指を伸ばすしかない。


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3.ナッツ太郎 (2008/09/22)
このシリーズが終わってしまうのは寂しいですよね。香菜里屋にはいつも工藤さんがいて、温かく迎えてくれるような気がしますから。私は最後に「香菜里屋レシピ集」を出して欲しいのですよ(笑)べるさんのコメントにも出てきた「メイン・ディッシュ」にも美味しそうなものが沢山出てきたし、北森さん自身が食への関心が高いのでしょうね。他のシリーズを開拓されましたら、また感想をお待ちしております。
4.ハローbreeze (2008/09/23)
ナッツ太郎さん、ありがとう!
『メイン・ディッシュ』は近いうちに読んでみますね。
べるさんのノートを見て、はじめて私は<北森鴻>さんという作家を知ったというのに、香菜里屋はすでにこんなにも人気があったとは、驚きました。
今後もまだまだ驚きの作家が発見できるかも。そう思うと、なんだかワクワクします。

レシピ本、いいですね♪
工藤さんの凝った作り方は大変でしょうから、できれば『簡単レシピ』でお願いしたいです。

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 8

ビート―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)

著者 : 今野 敏

出版社:新潮社

発売日:2008-04

評価 :

完了日 : 2008年09月19日


大人のための上質な警察小説。
警察官の倫理観、家族愛を考えさせる作品。

今年、『隠蔽捜査』2冊を読み、いたく感動した。
それでまた同じ感動を味わいたくなり、この[警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ]に手を伸ばした。

結果、[樋口シリーズ]第3弾のこの『ビート』は大当たり。
味わい深い人間ドラマに出会え、嬉しくなった。読み終えたときの、なんともいえない満ち足りた気分は、しばらく余韻を残したほどだ。

正直なところ、このシリーズの第1弾『リオ』、2弾『朱夏』には個人的に若干の粗さを感じていた。
しかし、この第3弾『ビート』は粗さが消え、正統的な警察小説に仕上がっている。
あえて複雑な推理を必要としない事件にしたことによって、人間ドラマ部分を強調した点が成功の秘訣だろう。

あとがきをみると、この作品は著者の警察小説の集大成的な力作であることがわかった。
その通りだと思う。


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3.かねのね (2008/09/21)
ハローbreezeさん、かねのねです。「ビート」の樋口顕係長もいいけれど、私はベイエリア分署の安積警部補のほうが人間的に親しみが持てるので、そのシリーズは結構読んでいます。その続きで読んだ「科学特捜班」の話になるとちょっとついていけません。「白夜街道」とか「曙光の街」などのロシアマフィアの話も全然分からないことながら小説としては面白かったように思います。
4.ハローbreeze (2008/09/22)
かねのねさん、今晩は☆
ありがとうございます。いいこと教えてもらいました。
今野作品、次は何を読もうか、ちょうど調べようと思っていたところだったんです。
[安積班シリーズ]長いシリーズなんですね。はじめから読んでみます。楽しみです。

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 14

逝年―Call boy〈2〉

著者 : 石田 衣良

出版社:集英社

発売日:2008-03

評価 :

完了日 : 2008年09月17日


残念ながら趣味に合わない作品だった。
石田さんの作品は5、6冊読んだだけだが、そのイメージでページを開いたら、まったく異なる世界が待っていた。

このタイプの石田作品は、どのような人が好むのだろうか? 
彼をテレビのコメンテーターなどで見かけることがある。
アラフォー世代の女性に人気があるのかもしれない。

私の場合は、小説の舞台が違っていれば、たとえ主題は同じでも、もう少し共感できたかもしれない。

ただ、さすが石田さん、いくつかの言葉は心に響いた。

「相手の幸福が自分にとって不可欠な状態を愛という」
「退屈を探せば退屈を、脅威を探せば脅威を見つける。世界はあまりに豊かな書物なので、必ず望むページにいきあたることになる」

もうひとつ、ファッション、インテリアの描写は良かった。石田さんのセンスを感じさせるところだ。
ファッションは男女ともによく研究されている。
インテリアは、メディアでよく紹介されている石田さん宅の地下の書斎を思い出させる、白が基調のイタリアン・モダン。代官山のイメージと相まって、とてもクールに映える。
オフィスにはB&Oのオーディオから静かなクラシックが流れる。ひたすらお洒落な演出。
いずれも彼らの生き方の象徴でもある。

この作品は『娼年』につづく、第2弾。
著者の冒険的実験的小説のようにも感じられた。


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1.カレン (2008/09/18)
あっbreezeさん、お好みじゃなかったですか。
たぶん「池袋・・シリーズ」を読んでいらっしゃったんですね。ずいぶん作風が違いますね。
でも合わないなりに、他に良いところを見つけて、読み終えるなんてえらいなぁ。
それにしても、作者の私生活にもお詳しいですね。
2.ハローbreeze (2008/09/18)
石田さんは実にいろんな作品を書きますね♪
ですから、好きになった代表作『池袋…』や『4TEEN』のイメージだけでほかを読んだら、面食らって当たり前でした。
でも、『眠れぬ真珠』は好きです。

石田衣良さんはメディアへの露出が多いです。
男性ファッション誌でもよく見かけます。
書斎はTVで紹介されました。真っ白です。最近、ミニストップの「白桃ピーチパフェ」のCMで、石田さんがその書斎で食べているシーンが映ります。
 

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 13

時が滲む朝

著者 : 楊 逸

出版社:文藝春秋

発売日:2008-07

評価 :

完了日 : 2008年09月16日


第139回芥川賞受賞作品。
天安門事件に翻弄された、2人の同郷の大学生。
中国人の心情にわずかながらも触れることができる作品。

共産主義から民主主義をみる。
自由諸国の情報が入ってくるようになると、中国の人々はどのように思うのだろうか。インターネットの発展で、よくそんなことを考える。
エネルギーに満ち溢れ、高い志を持った大学生たちだったら、描かれたような行動をした人が多かったというのも理解はできる。しかし、理解はできるが、青くさい若さを感じてしまった。
飲食店で、主人公の大学生らがそれを指摘され喧嘩をし、補導、退学という場面が描かれている。よく描かれる若気の至りといったところ。それだけ純真ということなのだろう。

時代小説作家の山本周五郎さんが語った言葉を思い出す。
「歴史小説とは、プロが書いた大人の小説であり、純文学とは素人が書いた大人になれない人間のための小説である」

この楊逸さんを素人とはもちろん考えもしない。
ただ、否定的な意味でなく「大人になれない人間のための小説」というところになにかが見えた気がした。
主人公らに共感を持ってもらうには、対象となる読者も大人になりきっていない必要があるのかもしれない。最近、青春小説に食指が動かない私は、急速に若さを失いつつあることに気付かされた。

日本でもかつて学生運動に参加していた人たちは多い。その人たちが今この小説を読むとどんな感想を持つのだろう。


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 14

禁断のパンダ

著者 : 拓未 司

出版社:宝島社

発売日:2008-01-11

評価 :

完了日 : 2008年09月14日


著者は大阪あべの辻調理師専門学校卒業後、フランス料理店で働いていた料理人。
この作品は「このミステリーがすごい!」大賞受賞のデビュー作。

美食ミステリに最近はまっている私としては、読まずにいられなかったのだが、いざ読んでみると、
「読まなくてもよかった作品」という感想が真っ先に出てきてしまった。不快感が残ったのだ。

ミステリ部分にトリックはない。謎解きの面白さを備えていない。サスペンスとしても盛り上がらない。事件の真相のおぞましさだけで、読者を驚かそうとしているに過ぎない。その真相も、ミステリ好きの方ならほぼ予想がつく。映画好きの方なら、アンソニー・ホプキンスが出演した、ホラー映画を思い出すかもしれない。
さらに、警察の捜査過程の描写も平板で、退屈。つまらない。

良かった点を上げれば、著者がフレンチ料理の経験者であるためか、料理描写が非常に優れている。調理法から味覚に至るまで、実に丁寧にリアルに描かれている。
最近読んだ美食ミステリの中でも秀逸だと思う。

それだけにこんなお粗末なミステリにしてしまったことが非常に惜しまれた。
ぜひ、今後は、<ビストロ・コウタ>の柴山幸太を主役にした、あと味の良い美食ミステリを書いてもらいたい。切に願う。


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3.鹿LOVE (2008/09/16)
この作品って 「このミス」本誌に1章ぶんくらい掲載されていたものでしたっけ?続きは単行本でね・・・みたいな。
ふ~む・・・でも料理描写はgood!なんですね!私も美食好きなんで図書館でその部分だけ読んでみようかしらん
4.ハローbreeze (2008/09/16)
鹿LOVEさん、こんにちは。
おいしい料理ですが、変な皿に盛られているという感じです。
ミステリ・ファンなら読んでみるのも一興かも。

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 29

東京奇譚集

著者 : 村上 春樹

出版社:新潮社

発売日:2005-09-15

評価 :

完了日 : 2008年09月12日


20年ぶりに読んだ村上春樹作品。
けっして嫌いな作家ではないのだが、最近は現実社会に則した小説に興味が移っていたため、ご無沙汰していた。
そんなわけで、実に久しぶりに、村上春樹ワールドを彷徨うことになった。そして、案の定、出口を見つけられない迷路に入り込んでしまった。

この作品は不思議な出来事を綴った、5つの短編を収録している。

簡潔な文章による、シンプルなストーリー展開。村上作品はいつもそうだ。一見わかりやすいストーリーなのだが、なぜそうなるのかを考えると大いに悩むことになる。大人向けの寓話なのか。そうであるなら、教訓はなんだろうと考えをめぐらせる。悩みを膨らますのは、ミステリではないので最後に謎解きもなく終わってしまうところだ。おおよそのことはわかるが、もやもやが残るのが事実。文学的な解釈を教えてもらいたいという好奇心と面倒臭いという気持ちが錯綜している。

特に5話目『品川猿』には、愕然とさせられた。猿が人間とまったく同じに喋るのだ。理性も備えている。どういうことだ?
深遠な教義が隠されているストーリーなのかもしれないが、猿に喋られては降参するしかなかった。

まあ、今回はタイトルも奇譚集となっているのだから、その名の通り「不思議な話だ」と思って読んでおけばよいのか……


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 2

とっておきの銀座

著者 : 嵐山 光三郎

出版社:新講社

発売日:2007-05

評価 :

完了日 : 2008年09月11日


還暦をすぎた嵐山さんは、月に一度は銀座を散歩しているそうだ。友人と待ち合わせ、お気に入りの店でランチ。和食・洋食・中華ありと優雅。食後は、老舗、名店で品定め。気ままに買い物を楽しんでいる。おやつには、スイーツ、コーヒーもしっかり。
友達と銀座を散歩する嵐山さんの嬉しそうな姿が目に浮かぶ。

昼の銀座を案内するエッセイ本。巻末には登場した店の場所がわかる地図もある。

ユーモアあふれる話に楽しくなり、読んでいるうちに銀座に出かけたくなる。どこでランチを取り、どの店をのぞこうか、休憩はどこでコーヒーを飲もうか、と頭の中は勝手にシミュレーションしている。
出てくるお店は知名度が非常に高い老舗・名店ばかりのため、あらたな発見がほとんどないのは寂しい。できれば銀座通の嵐山さん秘蔵の店を知りたかった。でも、老舗の歴史や特徴の簡潔な解説はうれしかった。中高年の方の散策に安心しておすすめできる店ばかりであるのは、間違いない。いや、若い方にも老舗の雰囲気は新鮮に感じてもらえるかもしれないから、若い方にもおすすめ。

銀座は文化・芸術・流行の集積地。
中高年の方が懐かしさを覚えるクラシックな面をしっかり残し、若い方には最新の情報を提供している。新旧が交じり合い、銀座特有の「匂い」を生んでいる。落ち着いた上品な香りが漂う。
銀ブラしているだけで、自分がちょっと上品になったように錯覚するのはそのためだろう。


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 1

新装版 さわりで覚えるクラシックの名曲50選 (楽書ブックス)

著者 :

出版社:中経出版

発売日:2006-03-17

評価 :

完了日 : 2008年09月10日


『のだめ…』の影響?


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 10

螢坂 (講談社文庫)

著者 : 北森 鴻

出版社:講談社

発売日:2007-09-14

評価 :

完了日 : 2008年09月10日


ビア・バー「香菜里屋」のマスター・工藤哲也が探偵役を務めるシリーズ第3弾。連作短編集。

おいしい料理と居心地の良い空間。そして、マスター・工藤の人柄。
寛ぎながら、ミステリの世界を覗く。
すると、マスターの供する料理と同じように、味わい深く余韻の残る出来事に遭遇できる。

ただし、この第3弾はちょっと謎解きに苦しいところも感じた。それでも、著者の筆力によってうまくまとめてはある。今回は力技できたか。

常連の客たちに加え、マスターの友人の香月もまた登場して、楽しいひと時を過ごせた。
第4弾は、工藤の過去や香菜里屋の名の由来も明かされるとのこと。楽しみだ。


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3.鹿LOVE (2008/09/13)
そうなんですよ~ 帯びや広告を見ていると「さよなら香菜里屋」なんてかいてありますよね・・・
終わってしまうのが寂しくてまだ読んでいないんですよ
うぅぅ~でも読みたい、でも寂しい と本屋の棚前で葛藤しております〈笑)
4.ハローbreeze (2008/09/14)
ホント葛藤しますね。終わってしまうと寂しいですから。
だから、読み終わっていないシリーズものが溜まっています。
ひとシリーズを一気に読んだ方がより楽しいような気もするのですが、どうもダメですね。

それでも、ラストの『香菜里屋を知っていますか』は来週には読むつもりです。
鹿LOVEさんも思い切って、一緒に読んじゃいませんか?

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 24

闇の底

著者 : 薬丸 岳

出版社:講談社

発売日:2006-09-08

評価 :

完了日 : 2008年09月09日

 
精神的にとても厳しい小説である。

幼女殺害事件発生のたびに、性犯罪の前歴者が首なし死体となって発見される。連続殺人犯の正体と真の狙いはなにか?
断ち切れない幼児性愛者の犯罪、そして救いのない被害者遺族の心の葛藤を描いた社会派ミステリ。
江戸川乱歩賞受賞後の第一作。

無くならない幼女殺し事件。読者が気持ちの整理をつけられずにいるうちに、物語は淡々と進んでいってしまう。置き去りにされるようだ。
「もし自分が被害者遺族だったらどうする?」
答えを出せないままに、物語は終焉にさしかかる。

かつて幼い妹を殺された刑事と犯人の対決。刑事が選んだ答えは?

彼の長年の苦悩を思うとき、その行動は感情的には理解できる。しかし、理解はできる行為であっても実際に行なわれたとすると、それはそれで引っかかるところがある。

この作品の優れたところは、被害者側からの視点のみで描くのではなく、加害者の側からも描いた点である。加害者の心理・精神状態は嫌悪感を伴うが、犯罪の根を断ち切るためには知る必要もあるということか。
わかりやすい文章と構成で、被害者、加害者両者の内面を読者に提供し、疑問を呈する。
読者の感情と理性は、激しくせめぎ合う。
そう、この作品は読者に熟考を促すのである。

扱った問題の性格上、読後感は悪いが仕方ないと思う。考えられうる対策のどれもが、どこかにひずみを伴うのだから。
このすっきりとしない読後感は、以前見た映画『セブン』を思い出させた。

最後に。理性的に書いてきたが、正直なところはやはり感情的になってしまう問題だと思う。激しい感情を理性で抑えることができるものだろうか。救いをなにに求めればよいのだろうか……


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 4

お部屋も心もすっきりする 持たない暮らし

著者 : 金子 由紀子

出版社:アスペクト

発売日:2006-12-01

評価 :

完了日 : 2008年09月08日


「もの」が好きなので、どうしても片付かない。
掃除がしにくい。
収納しきれないほどある服なのに、いざ出掛けようというときには「着ていく服がない」。
欲しくてほしくて買ったのに、買ってきたときのお持ち帰り状態のまま開けてもいないスニーカーがある。
清水の舞台からのバンジージャンプの覚悟で買った、自分にとってはちょっと値の張るものは、もったいなくて使えない。
あのCDどこ行った? とイライラしながらCDの山を1枚ずつ探す。

ものは使ってこそのもの。痛感。
そこで、この本を読んでみた。
「必要以上のものを持たない、すっきりとした生活はいいものですよ」という本。

「そんなこと言ったて……」と反論を試みながらも、シュンとなり反省しきり。
「人間とはホントに矛盾した生き物だなぁ」と実感したしだい。

年末くらいまでになんとか習慣づけ、部屋も気分もすっきりとした暮らしを始めたい。


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1.KUMI (2008/09/19)
あっ、今胸にきゅーんと来ましたっ♪
「必要以上のものを持たない、すっきりとした生活はいいものですよ」
う~ん。そうなんですよねぇ~。
私の場合は本棚!!
ぎっしり詰まってなかなか取り出せない~!

さっと、取り出せたらキモチいいかもね♪
(でも、またすぐ同じ状態に戻る確率はどう?)


2.ハローbreeze (2008/09/20)
KUMIさん、今晩は☆
本はかさ張るから困りますよね。
だから、面白いんだけどもう再読しないだろうという本は読書好きな人に思い切って差し上げました。面白くなかった本や超ベストセラー本はブックオフに売りました。
ベストセラー本は、もしまた読みたくなっても図書館にあるから。
絶版本や超お気に入り本だけを手元に置くようにしようと考えています。
この本でも、同じようなことが書いてありましたよ。
 

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 3

エンプティー・チェア〈下〉 (文春文庫)

著者 : ジェフリー ディーヴァー

出版社:文藝春秋

発売日:2006-11

評価 :

完了日 : 2008年09月07日


言葉を失う面白さ。想像を絶する衝撃。驚愕の波状攻撃。
とても星5つでは足りない、最高最強のエンターテインメント小説。
まさにジェットコースター・サスペンスの面目躍如。

本書は大人気の<リンカーン・ライム>シリーズの第3弾。
四肢麻痺の障害を持つ犯罪学者のライムが、誘拐容疑の少年とともに逃げたパートナーのサックスの行方を探る。

よく「大どんでん返し」なんて言葉が使われることがあるが、この作品はそんなもんじゃない。
二転三転? それでも足りない。
五転六転と、これでもか、これでもかと一気に畳み掛けてくる。そして、最後の最後に絶体絶命のピンチ。どうなる? 起死回生の策はあるのか?

ドキドキ、ハラハラをただただ味わいたくなったら、迷わずジェフリー・ディヴァーを選ぶ。はずれの心配は無用。ただぐんぐんと読み進め、その筆力に圧倒されればいい。ライムの頭脳に敬意を抱き、スピーディーな展開に目をまわし、随所にちりばめられた罠に唖然とすることになる。ラストを迎えたとき、茫然自失の状態、間違いなし。


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 4

エンプティー・チェア〈上〉 (文春文庫)

著者 : ジェフリー ディーヴァー

出版社:文藝春秋

発売日:2006-11

評価 :

完了日 : 2008年09月06日


<リンカーン・ライム>シリーズ第3弾。

リンカーン・ライムが最先端の脊髄再生復元手術を受けるために、ノースカロライナ州を訪れた。
手術は2日後。
そんなとき、地元警察から、女性を誘拐して逃走中の少年を探す捜査の協力を要請された。

ライムが手術! 興味津々の幕開けに驚いたら、
この上巻の終わりでは、アメリアが逮捕した少年を連れて逃げた。いつも通りの波乱の展開。


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 1

ターシャ・テューダーの世界―ニューイングランドの四季

著者 : ターシャ テューダー,リチャード ブラウン

出版社:文藝春秋

発売日:1996-11

評価 :

完了日 : 2008年09月05日


ターシャ・テューダーは1914年ボストン生まれ。
残念ながら、2008年6月18日に自宅で家族、友人に囲まれて逝去、92歳ことだった。
絵本画家・挿絵画家・園芸家(ガーデナー)・人形作家。ご本人は主婦という。
9歳のときに両親が離婚。両親の友人のボヘミアン的な家庭に預けられた。ここで絵の才能を伸ばしたそうだ。
23歳で結婚し4人の子供に恵まれるが、1961年46歳で離婚。挿絵や絵本の仕事をしながら4人の子供を育てた。
やがて、物心がつくころから憧れていた1830年代の生活様式を実践し始めた。息子に手作りで18世紀の農家を模した家を建てさせ、「この世の楽園」と自称する美しい庭を作り上げた。

この美しい写真集はそんなターシャの70代後半のころの生活を見せてくれる。美しい花々、かわいい動物たち、孫たち?に囲まれた、とても穏やかな生活が見られる。
奥付に、2008年2月15日 第23刷、とある。23刷とは、多くの人の共感を得ているのだろう。

浮かんできた感想は、なぜかあこがれ。
「なぜか」と書いたのは、同じような生活は自分にはできないとわかっているから。
9ヶ月間は冬という土地柄。雪が積もる。
電気・ガスを使っていない?
テレビはおろか電気製品が写っていない。 
明かりはろうそく。糸を紡ぎ、布を織る。
ターシャはそれらすべてが楽しくて仕方ないらしい。

現代人では暮らせないだろう生活様式。
でも、やすらぎや豊かさを感じ、あこがれる。

ターシャはいう。
「世間の人はバラ色のレンズを通してわたしを見ています。わたしも人間であることに気づかない。本物のわたしを見ていません」
わたしも見ていないのかもしれないが……

ターシャは冗談で、スティルウォーター教という宗教を作った。納屋でパーティを開くために。
みんなで心ゆくまで踊ったり、おいしいものをどっさり食べて、楽しく過ごしたそうだ。
「この世の悲しみは幻にすぎません。その後ろに、しかもわたしたちの手の届くところに喜びがあります。喜びを受け入れましょう」これがスティルウォーター教の最も重要な戒律。喜びはすぐ手に入るところにある。生まれつき悲観的な人もいれば、楽観的な人もいる。ターシャはだんぜん楽天主義者だそうだ。

スティルウォーター=動かない水
日本にも似た言葉がある。
「明鏡止水」 心にわだかまりや、くもりがないこと。

毎日ストレスの溜まる仕事をしているなら、休日にはお茶を用意して、こんな写真集をゆっくりと眺めるのもいいかもしれない。

ターシャのご冥福をお祈りします。 



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5.フユ (2008/09/15)
ハローbreezeさんこんにちは。
おじゃまします。
私もNHKの番組で、ターシャのことを知りました。
私よりも母が、その庭に憧れて!!
地元の本屋さんにコーナーができていたので、
彼女のために2冊買い求めました。
すてきですよねえ、花や木も、犬も、
ターシャもみんな幸せそうな暮らし!!
その訃報も、満たされた人生の終わり、という気持ちで
(悲しみつつ)納得して知りました。
6.ハローbreeze (2008/09/15)
フユさん、今晩は☆
ターシャは幸せな人だなぁ、と思いました。
絵が売れて、好きな生活様式を実現できたのですから。
でも、ご主人がこの生活様式に馴染めずに離婚したとのこと。それならば彼女だってとても辛かったはず。
あの楽園のような庭や住まいは、辛くても前向きに楽天的に頑張った彼女の努力の賜物だったのですね。
綺麗とかお洒落と、うわっ面だけで捉えたくない、彼女の深い愛情の棲家なんだと、崇高なものを感じました。

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ラ・パティスリー

著者 : 上田 早夕里

出版社:角川春樹事務所

発売日:2005-11

評価 :

完了日 : 2008年09月04日


主人公・森沢夏織が勤めはじめたパティスリー<ロワゾ・ドール>。駅から徒歩10分、坂の上にある、関西地方では名前の知られたフランス菓子店。喫茶部も併設されている。
そこに記憶喪失のパティシエ・市川恭也が突然現れる。彼の過去は? 
忙しい洋菓子店の日常、そこに集う客との交流やオーナー親子の確執などを織り交ぜ、夏織と恭也の淡い恋も描く。

洋菓子作りの工程が詳細に書かれている。
読んでいるだけで、口の中にケーキの甘さが拡がるような錯覚を覚えた。カロリーを気にしなくていい、新たな楽しみ方かな、とひとり笑ってしまった。

錯覚といえば、記憶に障害を負った恭也のセリフが心に残った。
「人間は脳を通して自分の外側を見ている。もともとの脳の認識が狂っていれば、その狂った基準に合わせた世界が、その人にとっての現実になる」

映画『マトリックス』でも、人間たちはバーチャルの世界で生活している現実を知らない。本当は眠らされているだけなのに。

話がちょっとオーバーになったが、パティシエが精魂込めた洋菓子にもそんな錯覚を起こさせる、魔法が潜んでいる。見て嬉しくなり、食べて幸せになる、そんな魔法。家族や気の合う仲間といっしょに食べている風景を想像するだけでも、明るい気持ちになる。洋菓子屋さんは夢も売っているんだなぁと感じた。

日本の洋菓子屋さんには、ほかにも夢のようなことがある。
たとえば、ティラミスとザッハトルテとクレーム・ド・ブリュレが仲良く並んで売っていたりする。今では不思議でもなんでもないかもしれないが、元をただせば、それぞれイタリア、オーストリア、フランスの菓子ではなかったか。
いろんな国の代表的なお菓子を1件の店で買える。しかも本場の味よりも美味しいかもしれない。

そういえば、さらにすごいのは昨年リニューアルした新宿高島屋。
11店のパティスリーからそれぞれ新宿高島屋オリジナルケーキ3種類と、定番のケーキからセレクトされた7種類が揃う。パティスリー1店につき10種類のスイーツ。それが11店舗なので、合計110種類のスイーツが一堂に並ぶ。だから、たとえば客はA店のモンブランとB店のオペラとC店のクレーム・アンジュをひとつずつあわせて買えるというわけだ。
店の垣根をも取り払ったサービスが嬉しい。
現在はさらに店舗数が増えたようだ。


この感想へのコメント

1.べる (2008/09/10)
あ、読まれたのですね。本のご感想がほとんどありませんが(笑)。スイーツ描写はさすがのものがありましたね。私はストーリー展開にはちょっと物足りないものを感じましたが^^;リニューアルしたタカシマヤ!行ってない!そんなシステムになったんですかー。バラエティに富んだチョイスができそうですね。行ってみたいです~。
2.ハローbreeze (2008/09/10)
ホント感想が書きにくいんです(笑)
物足りなくて、どこか中途半端なストーリーですが、だからといって嫌いではないんですよねぇ。
やっぱり人物造形に馴染めないところがあるなぁ。
スイーツ描写はいいのに残念ですよね。

デパ地下のスイーツ売場は最強ですね。どこも工夫を凝らしていて夢のようです。
 

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桜宵 (講談社文庫)

著者 : 北森 鴻

出版社:講談社

発売日:2006-04-14

評価 :

完了日 : 2008年09月03日


ビア・バー「香菜里屋」のマスター・工藤哲也が探偵役を務める連作短編集。
日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門受賞の『花の下にて春死なむ』に続くシリーズ第2弾。

一見の客でも、居心地の良さと料理の旨さに感激するビア・バー「香菜里屋」。
そのマスターが安楽椅子探偵になるストーリーは、好奇心を刺激する。
読者は自分も香菜里屋のカウンターでグラスを傾けながら、客の持ち込む「謎」の会話に聞き耳を立てているような錯覚を覚えるかもしれない。

短編独特のキレとコクを持ったストーリー展開。
5編収録しているが、それぞれが独立した話でありながら、登場人物を重ねることにより連作感が高められている。


この感想へのコメント

3.鹿LOVE (2008/09/05)
はじめまして!
『香菜里屋』シリーズは私も大好きです。仕事帰りの電車で読んでいると、マスターの作ってくれる料理が食べたくて食べたくて・・・〈笑)
またアルコール度数の違うビールをセレクトして出してくれる・・・ビール好きの私にはたまりません!いつも行く呑み屋さんで一番度数の高いビールを飲んでいい気持ちに酔っ払ったこともありました。^^;
4.ハローbreeze (2008/09/05)
鹿LOVEさん、はじめまして♪
お気に入り登録ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。

そうですね、「香菜里屋」は店自体にも惹かれます。
でも、残念なことに私の肝臓にはアルコール分解酵素がないようです。
お酒が飲めないのは、人生の楽しみの一つを損しているようで寂しいです。
ですから、主としてお酒を飲む場所であるカウンターバーには行ったことがないんです。

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食堂かたつむり

著者 : 小川 糸

出版社:ポプラ社

発売日:2008-01

評価 :

完了日 : 2008年09月01日


感激。とても良い小説に出会えた。私が今年読んだ本の中で、上位に入ること確実。
酸いも辛いも噛みしめた主人公の生き方を通して、生きるということの本質を考えさせられた。

主人公、倫子は、25歳。
中学の卒業式を終えた夜、家を出た。どうしても母を好きになれなかったのだ。その後10年間プロの料理人を目指し、都会のいろいろな飲食店で働いてきた。
いつか恋人と飲食店を開くのが夢で、コツコツと資金も貯めている。
しかし、ある晩、仕事から帰宅したらアパートの部屋はもぬけの殻。同棲していたインド人の恋人が、家財道具も貯めてきたお金もすべて持って逃げていた。いや、ただひとつ、祖母から受け継いだぬか床を残して。
ショックで倫子は声を失った。
やむなく10年ぶりの実家に戻った倫子は、そこで1日1組限定の食堂を開くことに……

読み始めたときは、若干メルヘンチックな甘口の小説かと勘違いした。淡々とした倫子の行動が、軽いドラマを連想させてしまうのだ。しかし、驚いたことに、恋人の裏切りで彼女は声を失う。読み進めれば、「食」を通じて「生きる」ことの意味を読者に問うような、重いテーマが潜んでいると気付く。
また、そこかしこに効果的にちりばめられた隠喩が、物語に奥行きを持たせている。そんな繊細なところを見つけ、意味を考えながら読むとより感慨深い。
たとえば、祖母が亡くなる寸前に作っておいてくれたドーナツ。眠っているような祖母と一晩を過ごす。大好きな祖母を亡くし、きっとドーナツの穴のように、ぽっかりと倫子の心には穴が開いたことだろう。祖母の記憶が頭の中を行ったり来たりしながら、倫子はドーナツを食べる。食べ終われば、存在していた穴もなくなった。

そんな繊細さだけでなく、大胆なストーリー展開もある。
一見残酷にうつるある場面の描写だが、ひょっとしたら母親が口にした理由とは別にもう一つの理由があるのではないか。
厳選した食材にこだわった店で、一人前の料理人を目指す娘にだからこそ、あえて試練を与えたのではないだろうか。無責任なやさしさに潜む何かを知っておかなければならないよと。
「母親のペットが豚」という設定にした作者の意図を探れば、その考えもあながち間違いではないだろう。
後半、母親の秘めていた愛情が明かされる場面では、大きな感動がこみ上げてきた。倫子は母親に抱きしめてもらいたかったと思っていたが、実はずっと大きな愛情に包まれ、抱きしめられていたんだなぁと……

世間では食育だとか、スローフード運動だとか、いろいろある。地球環境のためとか、豊かな人生のためにである。
しかし、それらをファッション・スタイルにしているだけでは、いっこうに心の胃袋は満たされない。
このような料理小説に登場する食堂なら、心の胃袋を満たすおいしい料理に出会えるかもしれない。


この感想へのコメント

6.ハローbreeze (2008/09/04)
けっして難しい物語ではないですよ。むしろ、やさしくてとても読みやすい小説です。
かわいらしい比喩表現も楽しかったです。たとえば、夕焼けをフラミンゴ色と書いたり。ちょっとメルヘンチックなんです。
「えっ」という場面がいくつかあって、そこに疑問を持つ人が多いみたいです。
7.ryoukent (2008/09/04)
いやー、Breezeさんうまいなあー。
「えっ」という場面がいくつかあったりしちゃうと、ますます読みたくなってしまうのです。

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