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ハローbreezeさんの読書ノート

2008年に読んだ本
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 14

花の下にて春死なむ (講談社文庫)

著者 : 北森 鴻

出版社:講談社

発売日:2001-12

評価 :

完了日 : 2008年08月03日


しっとりした、人生の悲哀をしみじみとおもう6短編の連作ミステリ。1話目と6話目のリンクは素晴らしい。短編でありながら、深みのある作品集。

嬉しい発見だった。この作品は「香菜里屋」ものとしてシリーズ化しているらしい。まだ続きが読めるのがわかり、嬉しくなった。

三軒茶屋駅にほど近い裏道、袋小路の奥にある、ビアバー「香菜里屋」。マスターの工藤が冴えた推理をみせる、一種の安楽椅子探偵もの。

常連の客たちが、各ストーリーに登場し、不可解な話をはじめる。
マスターの工藤はそんな事件や謎を見事に解明するが、ひけらかすことはない。その物腰はとても控えめで好感を持つ。
彼の明晰な頭脳が、常連客たちの心の嗜好までも読み取り、抑制の効いた接客をさせ、居心地の良い空間を作りだしているのだろう。
そして極めつけは料理。常連客の誰もが、マスターおすすめ料理が旨くなかったことがない、と口をそろえる。店に足を向けさせるわけだ。

この作品は第52回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門受賞作。
短編ミステリの真髄をみせる。


この感想へのコメント

3.べる (2008/08/07)
私も大好きなシリーズです。全4作出ていますが、二作目以降はリアルタイムで読んで来たので、今年の初めに最終巻を読んだ時は香菜里屋と工藤さんとのお別れにとても寂しい気持ちになりました。実は私もお酒飲めないのですが、こんなお店があったらお料理と工藤さん目当てに通いつめますね(笑)。
4.ハローbreeze (2008/08/07)
べるさん、こんにちは♪
この作品を読んだのは、
べるさんのノートで『香菜里屋を知っていますか』の感想をみたのがきっかけなんです。
調べたらシリーズものだったので、それじゃあ1作目から、となりました。短編で推理作家協会賞もとっていたので、なおさら興味がわきました。
香菜里屋に行って工藤さんと、ミステリ小説の話ができたら楽しいだろうなぁと思いました。

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 11

わが身世にふる、じじわかし (創元推理文庫)

著者 : 芦原すなお

出版社:東京創元社

発売日:2007-01-20

評価 :

完了日 : 2008年08月02日


「ミミズクとオリーブ」シリーズ第3弾。短編6つ。

おなじみの河田警部が現れて、事件の幕が下りる。
今回はニューヨークでおこった事件もある。

あいかわらず、旧友どうしの会話は笑わせるし、奥さんの郷土料理はおいしそう。

事件の真相は、わかってみればとてもシンプル。
ミステリ好きには物足りないが、奥さんの論理的思考は好ましい。ミステリの基礎を教えてもらっているように感じた。


この感想へのコメント

14.ハローbreeze (2008/10/10)
ようちんさん、ご紹介ありがとうございます♪
見事に私のストライクゾーンど真ん中を突く本みたいで嬉しいです。読んでみますね。
ちなみにこれは、ノンフィクションですか、それとも小説ですか? それとこういう本の情報はどこで仕入れるんですか?
15.ようちん (2008/10/10)
ハローbreezeさん、唐突なお知らせですみませんでした。
ベースはノンフィクションです。実際5年間の夏のクルージングを、1年間という設定で語っています。登場人物・船の名前など、プライバシーに関する部分は変えられていますが、体験したことは事実とのこと。
この本は日経新聞の(会社でとってる)おまけ雑誌「THE NIKKEI MAGAZINE」で紹介されていて、すぐに図書館に予約しました♪

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 145

風が強く吹いている

著者 : 三浦 しをん

出版社:新潮社

発売日:2006-09-21

評価 :

完了日 : 2008年08月01日


箱根駅伝に挑む、10人の大学生を描く。
清涼飲料水を飲んだような味わい。甘く、爽やか。
70年代の青春もののTVドラマをみるようだった。

そういえば、1980年ころだったか? たのきんトリオ主演の学園ドラマを思い出した。まさに、走っていた。陸上部だったのだろうか? 
この物語にはそのころのTVドラマの面影を感じた。
友情、努力。一生懸命に練習して、最後にその努力は実を結ぶか? たいていはハッピーエンド。
不良学生も今と比べるとかわいいものだった。凶悪でなく、暴力シーンも派手ではなかった。
この物語に登場する「悪役」も言葉による嫌がらせくらいで、犯罪まがいの行為はしない。

それから、青春ものといえば恋愛だが、これも淡く描かれているだけ。

爽やかで感動を呼ぶ話だったが、あえて難をいえば、苦味が足りないと感じた。


この感想へのコメント

4.ハローbreeze (2008/09/09)
『深夜プラス1』懐かしいですね。
内藤陳が『読まずに死ねるか!』というので、2回読みました。もう20年は前です。
でも、記憶は薄れています。
ご質問の件ですが、私の場合、古典的名作にはこだわらないことにしています。
つづく
5.ハローbreeze (2008/09/09)
日本人は几帳面な人が多すぎです。
ですから、あるジャンルに惹かれると、「その古典から読まなければいけない」と自分を律しがちです。
でも、それではつまらない。
学者じゃないんですから。学究的に取組みたいのなら別ですが……
畢竟、読みたければ読み、気分がのらなければ読まなくてもいいんです。
ハメットもチャンドラーもマクドナルドもスピレーンも知らない、ハードボイルド好きがいてもいいじゃないですか。

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 1

戻り川心中 (ハルキ文庫―連城三紀彦傑作推理コレクション)

著者 : 連城 三紀彦

出版社:角川春樹事務所

発売日:1998-05

評価 :

完了日 : 2008年07月30日


読後、茫然自失。情念に搦め取られ、翻弄され、勾(かどわ)かされる。

人間が隠し持つ妄執を花の姿に託して描いた8短編の連作。連作名「花葬」
著者・連城三紀彦氏は、この連作を「薄幸」と呼び、その理由を次のように述べている。

「花葬」の最初の狙いはミステリーと恋愛との結合だったのですが、書き進めるうちにどんどん二つが分離していき、八作目に至って遂に、その溝は作者の乏しい才能と意志では埋められなくなってしまったものです。

情緒纏綿たる世界。明治大正文学の匂いが漂う。
暗く閉鎖的な時間の中での男女の恋愛、時には命を賭けた道行きに、読者は引きずり込まれる。自己陶酔するように、勝手に古風な愛憎劇を頭の中に構築するはずである。
しかし、読者が認知するのは、錯覚の世界なのである。そのような愛憎劇は真実でありながらも、事件の核心ではない。事件の全貌が明かされたとき、強烈な衝撃を受けることになる。そして、一瞬のうちに登場人物らは別の顔を浮かび上がらせる。驚嘆させられることは間違いない。
純愛に胸掻き毟られ、同情し感傷的になった読者を、一気に別の場所に落とし込む。
この一種裏切り行為ともいえる仕打ちによってみせられる真実の場所もまた、人間の業の世界なのである。

私たちは、現実社会においても、無意識のうちに真実から目を逸らしていないだろうか。都合の悪いもの、見たくない知りたくないものに目を瞑りつづけるうちに、はじめから存在しないものにしてしまっていないか。
現実は虚構の世界。真実は他にあるかもしれない。

「戻り川心中」は、1981年 第34回 日本推理作家協会賞 短編賞 受賞。


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 23

医学のたまご (ミステリーYA!) (ミステリーYA!)

著者 : 海堂 尊

出版社:理論社

発売日:2008-01-17

評価 :

完了日 : 2008年07月28日


『日経メディカル』2007年2月~2008年1月に連載された作品。専門医が読む雑誌だそうだ。
しかし、物語は中高生向けに書いたとのこと。

ごくフツーの中学生・曾根崎 薫が、父親のちょっとしたいたずら? で「日本一の天才少年」になり、東城大学の医学部で研究することになる。
うまい話には裏があり、しまいには大学教授と対決することに……

アクティヴ・フェーズとパッシヴ・フェーズ。2つの基本戦術。教授との対決にあたり、父親が薫にアドバイスを与える。
これって、白鳥調査官が用いた戦術ではなかったか? 
できれば、もう少し詳しく書いてほしかった。勉強になる。

中高生向きに書いたというだけあって、コミカルでテンポのよい娯楽小説。


この感想へのコメント

4.ハローbreeze (2008/07/29)
わたしは海堂氏の作品はいまひとつです。
『チーム・バチスタ…』は悪くないのですが、その後の作品はミステリにせずに書けば良かったのではと思うものもありました。深みがないように感じます。
たとえば『螺鈿迷宮』 ryoukentさんのノート・コメント欄につづきを書きます。
5.ryoukent (2008/07/29)
そうですか
海堂作品は『バチスタ』が面白かったので其の後も読んでますが、同じくらい面白いかったのは『医学のたまご』だけです。いまのところ。
登場人物がやたらと多いのがわたしはきになりますね。憶えきれない。年なのかもね。

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 37

センセイの鞄 (文春文庫)

著者 : 川上 弘美

出版社:文藝春秋

発売日:2004-09-03

評価 :

完了日 : 2008年07月27日


37歳、独身、一人暮らしのツキコが、ひとり通う居酒屋で、高校時代の国語のセンセイに再会する。

心地よい絶妙な距離感を保った、静かな付き合いが始まった。この距離感が良かった。人間近すぎれば傷つけ合い、離れすぎれば寂しい。連絡を取って会うのではなく、たまたま同じ店で行き会う。清潔感のある、淡々とした時間進行。しみじみとはこんな感じか。

ツキコは自分の感性を大事にして生きる。現実社会の女性が付き合う男性に求める基準とはまったく違う。何事も居心地の良さが一番のようだ。
最大公約数的な楽しさや、型にはまったような喜びには違和感をもつ。知らぬうちにうたた寝し、気付けばぬるい風が身体の上を流れ、遠くでつくつくほうしが鳴いている。そんな感じが好きらしい。

センセイとの短いお付き合いが終わりをつげたときは確かに悲しい。しかし、ある種の清々しさをも感じた。

年配の男性を高揚させる小説。ツキコと同年輩の女性はどう感じるだろう。

谷崎潤一郎賞受賞作品。


この感想へのコメント

5.ハローbreeze (2008/08/17)
あっ、ホントだ。でも、字が違うだけなので、私も柄本明のつもりで書いていました(笑)
映画の配役は知っていたのですが、私の場合ツキコ役は夏川結衣をイメージしていました。センセイ役は浮かびませんでした。
2人で旅に出たとき、センセイの首に古いレンジファインダー・カメラがぶるさがっていると雰囲気が出るんですが……
しがない元高校教師だから、ライカはダメですね。ニコンのS2はどうでしょう?
6.ニティ (2008/08/23)
読み終わりました。映画もです。カメラはお好きですか?S2とはまた、しぶいところを。ヤシカのエレクトラ35ではチープすぎますよね。でも、物見遊山の旅ではなかったので、カメラはぶら下がってないほうがよいのでは。と。
本当に「いい本」でした。ありがとうございました。

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 4

菜種晴れ

著者 : 山本 一力

出版社:中央公論新社

発売日:2008-03

評価 :

完了日 : 2008年07月25日


江戸時代後期。波乱万丈の主人公・二三(ふみ)の半生を描く。

房州勝山の幸せな菜種農家から、遠縁にあたる江戸深川の油問屋の大店に養女としてもらわれてきた二三は5歳。
裕福な家庭に、素直で気丈で前向きな性格が相まって、二三は大店の跡取りとしても、大人の女性としてもぐんぐん成長していく。

両親、兄姉と別れた悲しさに泣きそうになるのをこらえ、養父母に笑顔をみせる。幼いのに気を使う。そんな二三の健気さに心を打たれた。そして、この子ならきっと店をもっと繁栄させるのだろうと楽しみになった。
しかし、5年、10年ごとに大きな災厄が容赦なく襲いかかる。
凡人なら立ち直ることができない大きな災い。愕然とさせられる。
それでも二三は、懸命におのれを奮い立たせて、前へ前へと歩む。なにが起きても前を見ることで、悲しさや辛さは癒せると信じているかのようだ。
しかも、行動を起こすときは自分のことは後回し。第一に周りの人を慮った行動を起こすところが颯爽としていて気持ちいい。
現実の世界でも地震などによって各地に被害が出ている。この作品はそんな私たちに対する励ましの物語でもあるのかもしれない。

この作品にはもうひとつお楽しみがある。
幼い二三が揚げる「てんぷら」だ。とにかく旨そうに描かれている。
母親直伝の技の上に、本職の料理人の指導も受け、二三は腕に磨きをかける。
みんなが旨い旨いと舌鼓を打ち、二三を賞賛する場面では、どんな読者も食べたいという気持ちでいっぱいになることだろう。

物語は二三が33歳のところで終わるが、その先はきっと喜びに満ちた人生だと信じたい。
春の朝日を浴び、風を受けた菜の花畑が、黄緑色の大海原のようにゆらゆらと揺れているから……


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 65

映画篇

著者 : 金城 一紀

出版社:集英社

発売日:2007-07

評価 :

完了日 : 2008年07月22日


映画をテーマにした5つの短編連作。

「映画」の魅力を再確認させてくれる1冊。
観たことのない作品はもちろん、観たことのある作品でさえもう一度観たくなった。

5篇それぞれが独立した物語だが、ところどころでリンクしている。そして、最終話の『ローマの休日』上映会には各話の登場人物が集まってくる。

一番印象に残ったこと。
文学部の教授が教えてくれたこと。
主人公が好きな映画として『ショーシャンクの空に』をあげたときだった。
ストーリーの背後に隠された意味、メタファーのいくつかを話したようだ。残念ながら、話の内容は一部しか書かれていない。
この映画は観たことがあるが、ただただ面白い映画だったと記憶しているだけ。
メタファーについて調べた上でもう一度見直してみたくなった。

ストーリーの背景に隠された意味を考える。その意義は、人を好きになったときにも当てはまる。教授の優しい言葉が記憶に残った。


この感想へのコメント

5.ハローbreeze (2008/07/26)
ようちんさん、こんにちは♪
映画好き読書好きという方にピッタリです!
旧友との再会、企業犯罪、高校生男女の家出、復讐、映画上映会、の話です。

『ショーシャンク…』は観て損はないです。昨日借りに行ったら、レンタル中。今ごろ変ですが、この本の影響かも?

『ラブ・アクチュアリー』楽しい映画でしたね。頼りないヒュー・グラントの首相がいい味出してました。
彼の『ノッティングヒルの恋人』が大好きです。
6.ハローbreeze (2008/07/26)
べるさん、こんにちは♪
好みに合った1作でした。
今年度本屋大賞のほかの作品で良かったのは『サクリファイス』『悪人』『八日目の蝉』『カシオペアの丘で』
好みに合わなかったのは『ゴールデンスランバー』『有頂天家族』『赤朽葉家の伝説』『私の男』 でした。
本屋大賞は順位をつけず、ジャンル別? か何か別に賞を設定した方がいいのでは、と思いました。

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 80

一瞬の風になれ 第二部

著者 : 佐藤 多佳子

出版社:講談社

発売日:2006-09-22

評価 :

完了日 : 2008年07月22日


『一瞬の風になれ』3部作の、第2部。

読む前に、ついストーリー展開を想像してしまった。なにかハプニングが起きるとしたらこの2冊目だろうと、余計なことを考えての読書スタート。

「獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす」
著者は主人公・新二を千尋の谷に突き落とすか。

透明な心の少年少女たちの、陸上にかける青春。
この第2部では人と人との繋がりがテーマか? 新二に淡い恋心も生まれ、微笑ましい。
しかし、やはり試練も……
瑞々しい彼らの成長に呼応して、物語も加速する。


この感想へのコメント

1.フィリップ・まろ (2008/08/01)
僕は今、第3部の前半の終盤辺りを読んでいます。信二がアスリートとしての自覚を持ちはじめました。でも走るということにもっと貪欲にならねば。恋にも相当悩んでいますよ。悩め悩め。♪み~んな悩んで大きくなった~と昔、野坂昭如が歌っておりました。
2.ハローbreeze (2008/08/02)
うわぁ~、楽しみです♪ 近いうちに読みます。
私は今、複数のシリーズものを並行して読んでいるんです。読み終わってしまうのがもったいなくて、いっぺんに読めない貧乏性なんです。

今日、三浦しをん著『風が強く吹いている』を読み終わりました。この物語も「走る」がテーマでした。
走る=人生、よくある喩えなんですが、引き込まれました。
 

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 32

ジーン・ワルツ

著者 : 海堂 尊

出版社:新潮社

発売日:2008-03

評価 :

完了日 : 2008年07月21日


まさに今問題視されている産婦人科医療をタイムリーに小説化。
生みたくても住む地域に産婦人科医がいないというニュースを何度も見た。少子化問題との矛盾する医療体制に愕然とした。

本書には産婦人科医の減少、不妊治療、人工授精、代理母出産、流産確率の高さなどの産婦人科医療問題が満載されている。そんな難解な問題も小説として読むとわかりやすいと実感した。そして、ベストセラー作家の海堂作品ならば多くの人が読むことは間違いない。そういう意味においては社会貢献度が高い作品といえる。

ただし、ストーリー展開においては残念ながら緻密さに欠けている。
せっかくの良い材料が生かしきれていない。
その理由を一部あげると、後継者がいなくなった産婦人科医院を引き継いだ主人公は、あの体制では身体が持たないのではないか。
人手不足解消のために、新たな産婦人科医を雇おうにも、厚労省、帝華大学を敵にまわした医院に来手はないのではないか。
もう少し違った解答はなかっただろうか。
それとも著者は理想の形をあえて示したかったのか。まさか、主人公の狂気を描いたわけでもないだろう。社会問題とミステリと両方を盛り込むには、それらのバランスだけでなく、ほかにも必要なものがあるのでは……

『チーム・バチスタの栄光』から次々に新作を書き上げている著者のパワーは素晴らしい。
さらには、その時々の医療問題を取り上げ、わかりやすく提示する筆力には恐れ入る。読まずにいられない。
ただし、最近の作品は深みがなくなってきているようで寂しい。
医療問題の根深さ、それに携わる人々の苦悩は、簡単に答えが出せるものではないだろう。だからこそ、もう少し深く掘り下げてもらいたい。


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3.ryoukent (2008/07/27)
わたしは やっと『螺鈿迷宮』を終わって『ジェネラル・ルージュの凱旋』に取り掛かろうとしているところ、を 夢枕やももこ先生や坂東真砂子姉御、そして御大 浅田次郎あにぃ にからめとられてしまって未着手。
どうも来週だな。
そして『ジーン・ワルツ』は葉月になっちまうだな。
4.ハローbreeze (2008/07/27)
ryoukentさん、今晩は☆
この作品はちょっと粗さを感じました。お馴染みの面々も出てきません。
ですから、ほかに読みたい本が溜まっているのでしたら、そちらを優先した方がいいと思います。
この作品よりも面白い本はたくさんありますから。

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 1

九月の雨 (偕成社コレクション―四季のピアニストたち)

著者 : 佐藤 多佳子,毬月 絵美

出版社:偕成社

発売日:1993-05

評価 :

完了日 : 2008年07月20日


1989年「第10回月間MOE童話大賞」受賞の『サマータイム』の続編。

広一、16歳の秋を描く『九月の雨』と
佳奈、14歳の冬を描く『ホワイト・ピアノ』の2編収録。

それぞれが新たな出会いをして、また少し大人の階段をのぼる。


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 2

サマータイム (偕成社コレクション―四季のピアニストたち)

著者 : 佐藤 多佳子,毬月 絵美

出版社:偕成社

発売日:1993-05

評価 :

完了日 : 2008年07月19日


著者の佐藤多佳子さんは、『一瞬の風になれ』で第4回「2007年本屋大賞」を受賞した大人気の作家。

本書は1989年MOE童話大賞受賞の、デビュー作。
ということは、この物語は童話?
瑞々しく、豊かな子供の感性がいっぱいに詰まっている作品だった。

主人公は小学6年生の姉・佳奈と5年生の弟・進。
喧嘩ばかりしている姉弟が、年上の少年・広一に出会う。
広一の母親はジャズ・ピアニスト。しかし、広一は事故で左腕を失っていた。

出会いと別れ。友情、初恋。ピアノ、自転車。
夏の終わりに、少しだけ大人になる子供たち。
夏の暑さに負けない子供たちの躍動感が伝わってくる。なんだか元気をもらえる。
そして、いつもジャズのスタンダード・ナンバー『サマータイム』が聴こえる。
気だるげで悲しげだけど、やさしさに満ちた曲が、この物語のタイトル。ピッタリ!

大人が読んでも十二分に楽しめる。


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 10

朱夏―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)

著者 : 今野 敏

出版社:新潮社

発売日:2007-09-28

評価 :

完了日 : 2008年07月17日


警視庁強行犯係・樋口警部補シリーズ第2弾。

樋口の妻・恵子が誘拐される。

今回のテーマは家族愛。
事件を通して、家族とは? 夫婦とは? 親子とは? と読み手に疑問を呈す。
主人公・樋口は、あらためて考えてみるが、答えられない。
著者は、登場人物たちにいくつかの答えを提示させる。
大学時代、心理学を専攻した氏家刑事の考え。
サウナで出会った銀行マンの考え。
家庭環境に問題があったかもしれない犯人の考え。
そして、樋口恵子に。

家族愛や人とのかかわり方に主眼を置く構成のためか、ストーリーはいたってシンプル。
ひねりもないのだが、緊張感を伴い一気に読み切っていた。

子供は大人になる過程で、人とのかかわり方を学んでいく。そこに家族のあり方は大きな影響力を持つ。
それらを再確認することに意義を感じるか、あるいはありきたりなテーマだと溜め息をつくか、意見が大きく分かれるかもしれない。

ありきたりな話だ、とがっかりする幸せな家庭に暮らす人ばかりだと世の中良いのだが……


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 16

虚夢

著者 : 薬丸 岳

出版社:講談社

発売日:2008-05-23

評価 :

完了日 : 2008年07月16日


また重いテーマに衝撃を受けた。

つい先日の秋葉原の事件が脳裏を掠めた。身近におこった凶悪な犯罪に思考が遮断させられた。途方に暮れ、やがて恐怖を覚えた。被害者遺族の無念さを想うと胸が痛む事件だった。

この小説のテーマは、刑法三十九条。
『心神喪失者の行為は、これを罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する』

12人を殺傷した男が、精神鑑定で心神喪失であったとされ、裁判にかけられることもなく、刑務所に行くこともなく、措置入院だけで数年後には社会に戻ってきた。3歳の娘を殺された母親がとった行動は……

被害者の遺族側の立場から読んでいる自分に気付いた。ぶつけ場所のない、怒り、悲しみ。その気持ちがよくわかる。読み進めるほどに、被害者遺族への感情移入が強まった。

しかし、著者は、精神を病んだ者の心の闇も、このミステリー小説の謎のひとつとして描く。加害者と被害者、両方の側を描写するところに、著者の真摯な姿勢が窺えた。
精神を病んだ人自身、またそういうお子さんを持った家族、彼らの苦悩も想像を絶するものに違いないと痛感させられた。

先日読んだ、高野 和明著『13階段』と同様、気持ちの整理がつけられない非常に難しい問題に戸惑う。


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2.ハローbreeze (2008/07/18)
べるさん、今晩は☆
お互いのコメントがクロスしましたね。

この作品を読んでいたとき、ある作品が頭に浮かびました。
道尾秀介著『シャドウ』です。
読書進行中ずっと、ひょっとしたら同じトリックか、と先入観をもっていました。
それでも、本書はデリケートな問題をわかりやすく届けてくれる優れた作品だと思いました。
3.べる (2008/07/20)
あ、わかります。私も『シャドウ』のアノ人を思い浮かべました。といっても、私は終盤部分を読んでそう感じただけですが。似たような先行作があるとどうしても驚きが半減してしまいますね^^;

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 18

愛しの座敷わらし

著者 : 荻原 浩

出版社:朝日新聞出版

発売日:2008-04-04

評価 :

完了日 : 2008年07月15日


田舎の営業所に左遷された、大手食品メーカー勤務の高橋晃一、47歳。
専業主婦の妻・史子、中学2年生の長女・梓美、小学4年生の長男・智也、母の澄代との5人暮らし。

晃一がリフォームされているとはいえ、築103年の古民家を気に入ってしまった。
駅もスーパーも学校も思いっきり遠い。もちろんコンビニもないのに。
それでもなんとか家族の反対を押し切って引っ越した。

ところが、この家にはおかっぱ頭で紺がすりの着物を着た、5歳くらいの「座敷わらし」が住みついていた!

一人ひとりが悩みを抱えている家族。ギクシャクした家族関係。
田舎暮らしの中、座敷わらしに出会ったことがきっかけになり、徐々に家族の絆を取り戻していく。

座敷わらしがとっても可愛らしい。
長男が座敷わらしと遊ぶ場面はなんとも微笑ましい。
都会とは違った時間の流れ方。スローライフ。
人が生活するには、本当はそういう場所がいいのだろうが……

都会で忙しく働き、家族サービスしていないお父さんというのはよくある設定だが、現実に多いのだからしかたないか。
お父さんの苦労は身につまされるが、家族関係の修復はそんな簡単なものじゃないぞ、とも感じた。


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 24

13階段 (講談社文庫)

著者 : 高野 和明

出版社:講談社

発売日:2004-08

評価 :

完了日 : 2008年07月13日


2001年、第47回江戸川乱歩賞受賞作品。

やられた。とても新人作家が書いたとは思えない、見事な作品。
大絶賛の評価を裏切らない、読み応えのある社会派ミステリである。
心憎い緻密な構成でありながらも、わかりやすく抑制のきいた文章。
重厚なテーマを掲げながらも、そこに潜む矛盾点を要領よくまとめ、読み手に問いかける。知的欲求を刺激してくる。

これほど素晴らしい作品でありながら、今まで読まずにいたのは失敗だった。
なぜ読まなかったかというと、その理由はタイトル『13階段』にある。
単純にホラー小説だと勘違いしていたのだ。
同じような方がいるといけないので、念を押しておこう。

この作品は、ホラー小説ではない。最高の社会派ミステリ小説だ!


この感想へのコメント

4.ハローbreeze (2008/08/25)
かねのねさん、はじめまして、こんにちは。
コメントありがとうございます。
社会問題を小説のかたちで読めるのはいいですよね。問題の焦点が浮き彫りになります。答えは出せないのですが…… 考えるだけでも大切なのだと思います。

薬丸 岳著『虚夢』も、この『13階段』と同様、気持ちの整理がつけられない難しいリアルな問題を扱った小説でした。
5.かねのね (2008/08/25)
ハローbreezeさん、お返事ありがとうございます。
薬丸 岳著『虚夢』知らない人と作品です。探してみますね。

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 2

きまぐれ砂絵―なめくじ長屋捕物さわぎ (光文社時代小説文庫)

著者 : 都筑 道夫

出版社:光文社

発売日:1996-04

評価 :

完了日 : 2008年07月11日


江戸は神田橋本町のなめくじ長屋に住む砂絵かきの「センセー」のもとに、岡っ引の常五郎が難事件に頭を抱えてやってくる。
センセーは長屋の大道芸人たちを手足に使い見事解決、礼金もせしめる。
センセーの推理が冴える佳作6篇。

全篇とも落語を材にしたライト・ミステリー。
 第一席 長屋の花見
 第二席 舟徳(ふなとく)
 第三席 高田の馬場
 第四席 野ざらし
 第五席 擬宝珠(ぎぼし)
 第六席 夢金(ゆめきん)

江戸の風物描写が楽しい。
浅草寺の五重塔にのぼるなんて、楽しかった。

『なめくじ長屋捕物さわぎ』はシリーズもの。
本書は第6弾だそうです。


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14.ハローbreeze (2008/08/15)
荒木絵里香はホントに凄いです。私も大ファンです。
彼女はメグ・カナと同期。かわいそうなことに大人気の2人の陰に隠れてました。
しかし、全日本からはずされたときでも、自分を生かす方法を前向きに考えたそうです。減量と筋力アップでスピードとパワーを増し、全日本に不可欠のセンタープレーヤーになりました。オリンピックでその勇姿が見られるなんて、応援せずにいられませんね。
15.ようちん (2008/08/15)
そうでしたか・・・
こんなに若くして、様々なことを経験しているのですね。私は、全くもってなんにも知らなくて、ただただ、その姿に感じ入っていました。ま、そーゆうこともふまえて、今夜も応援をいたします。いろいろと教えていただいて、ありがとうございました!がんばれエリカ!!

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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京(下)

著者 : 楡 周平

出版社:講談社

発売日:2008-02-29

評価 :

完了日 : 2008年07月10日


終章の文字に驚く。
物語の世界に引き摺り込まれ一気に読み進め、気付けば終章を迎えていた。
残りページの少なさを確認すると、名残惜しい気持ちが湧いた。
まだ終わらないでほしい、もっと読んでいたい、と願ったのは久しぶりだった。

国家最高権力の座を目指す者たちのドラマ。
権力の魔力に取りつかれて常軌を逸している世界を描く。
舞台は、1969年と1999年の東京。
東大安田講堂落城。権力に対抗するには、革命よりこの国の最高権力を手にすることだ、と悟った2人の学生がいた。1999年、2人はそれぞれに社会的地位を築いていた。そして、思わぬ再会が……

運命の糸を絡めに絡め、読み手の興味を捕らえる。
パワーゲーム。人間の持つ負の感情を存分に見せつけ終焉を迎える。
けっして流麗な文章ではないが、ある種の力を感じさせ読ませる。

希望を言えば、脇役にまわった人物たちに活躍の場を与えてほしかった。特に「和裕」を「大きな爆弾をかかえた人物」として書いてくれれば、さらに面白い作品になったかもしれない。学生のときと同じ気持ちをまだ密かに持ち続けていて、ラストに絡む設定での話も読んでみたい。

続編を願う。


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文房具さんぽ

著者 : 木下 綾乃

出版社:世界文化社

発売日:2007-10-12

評価 :

完了日 : 2008年07月09日


著者の木下 綾乃さんは、イラストレーター。
だから、この本にはかわいいイラストがいっぱい。
シンプルなイラスト。わたしもこんなふうに描けたらいいなぁ、と思いながら眺めた。

『文房具さんぽ』といっても、文房具の紹介は少ない。
「手づくりレッスン」と銘打った、小物づくりにいちばんページを割いている。
和紙を使ったブックカバーと栞。これならできるかな。

この本の中でいちばん興味をひかれたのは、著者お気に入りの文具店。
路地裏にある小さなお店がいい感じ。
行ってみたい。


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3.KUMI (2008/07/11)
じ~ん・・・。(感動中・・・)
そうでした♪
ブックカバーなら、綺麗な包装紙で十分ですよね。
いつも、持ち歩いていなくちゃいけないエコな思い。
ついつい、キュート♪なものを目の前にして忘れてきてしまいました。ダメですね~。
自称エコ大使の称号をハローbreezeさんにあげます♪
はい、どーぞ♪プレゼントです。
4.ハローbreeze (2008/07/11)
あ、ありがとうございます♪ 謹んでお受けいたします。
カレンダーの紙(欧州の街の写真)で作ったカバーをつけて、友達に借りた本を返したら喜ばれたことがあったものですから。

スーパーの買い物には「マイバッグ」を使っています。
持参するとスタンプ1つGet。20コたまると100円引いてくれます。年間で1000円以上になります。
ささやかながら環境に配慮すると、自分もちょっと得します。

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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京(上)

著者 : 楡 周平

出版社:講談社

発売日:2008-02-29

評価 :

完了日 : 2008年07月08日


東大法学部から大蔵省のキャリア、国費でハーバード大学ケネディ・スクールに2年間留学。官僚のエリート・コースを確実に歩む、有川崇。
全国に50余の病院を持つ有川家の長男。
だが、彼の野望は国家の頂点、最高権力を手にすることだった。

大蔵事務次官の仲介で持ち上がった、次の総裁候補とも言われる大物政治家の長女・尚子との縁談。
政界進出への確かな足掛かりを得たと思ったのも束の間……

捨てた女の報復、そして運命の糸がからまりだした。

ミステリー仕立てにすればさらに面白かっただろう。しかし、読者に対して、著者は直球勝負を選んだ。

下巻では、有川崇出生の秘密が語られるのか?
重要なポイント。もし、……だったら。

早く続きを読みたいという気持ちに駆り立てられる。 


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