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山やまさんの読書ノート

☆☆☆☆☆
お気に入りの本。
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 3

職業欄はエスパー (角川文庫)

著者 : 森 達也

出版社:角川書店

発売日:2002-09

評価 :

完了日 : 2008年10月20日

頁を捲る手が止まらず一気読みしてしまった。スプーン曲げの清田益章、UFOの秋山眞人、ダウジングの堤裕司という超能力者3者3様の在り方が非常に興味深い。そして森達也の著作に何度も出てくるメディアへの懐疑、ドキュメンタリーに対する姿勢、なにより物事へのアプローチの仕方というものが、地下鉄サリン事件をはさみ8年間にわたるこの取材過程(もちろんその間には『A』もある)の中で方向付けられたことがわかる。毎度ながらこの人の視点には共感できる。取材対象を撮りながら、自ら煩悶し続けるといういつものアレだが、ただ今回に関しては少し無理矢理拒否している部分が見えるようにも思える。文庫版あとがきの最後の最後の一言が結局は全てだったんじゃないかと思う。なのに「信じてませんよ」の一言が痛々しい。後々の著作を読めば、拒否反応の理由は今や森さん自身も分かってるんじゃないだろうか。

超能力やUFO、超常現象や奇跡とかスピリチュアルとかなんでもいいんだけど、こういう話って「有る無し論」になってしまう。要は信じるか信じないかという事なんだけれども。森さんはずっとその間を反芻しているわけだ。でもこの「有る無し論」自体が非常に演出的というかテレビ的というか、不毛な論議だよなと思う。特に否定する側の反応がとかく感情的になりすぎる。森さんが指摘する大槻教授のように、過剰にヒステリックで頑な拒否反応(大槻教授の場合はテレビ的な演出が多分に含まれているにせよ)が多いと思う。一言で言うと「騙されないぞ!」ということに尽きる。わたしは騙されないからね、みんなも騙されないように、と。

さて、ここで僕は思う。そもそも「騙される」ってどういうことなんだろうか。たとえばスプーン曲げの超能力がトリックだったとして、誰かが不幸になるだろうか。森さんの言うように、年端もいかない少年に対して目くじらを立てて怒るほどのことだろうか。「騙された」「騙されない」なんてのは本人の気持ち次第でしかない。全ての人に対応する絶対的な物差しなんて存在しないのだから。もっと言うと、例えばどっかの宗教団体で高価な壷を買ったとして本人がそれで幸せな気持ちになれるのならそれはそれでアリじゃないかと思う。その人の心はその人のものなのだから。外から他人が物差しで測る事は出来ない。

だから僕は、誰かに騙されることを恐れて窮屈に生きるぐらいなら、たとえ騙されていたとしても楽しく生きるほうを選ぶ。


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 9

さようなら、ギャングたち (講談社文芸文庫)

著者 : 高橋 源一郎

出版社:講談社

発売日:1997-04

評価 :

完了日 : 2008年02月08日

いやあ、おもしろかった。
高橋 源一郎 伝説のデビュー作。

内容や意味、メタファー云々を考察するには
一読しただけでは足りないだろうからそこには触れない。

意味が分からずとも、この小説には不思議な魅力が在る。
とにかく「読む」行為そのものを存分に楽しめた。
文学にふれるヨロコビ。とはこういう体験を言うのだろう。

詩的で軽快な言葉のリズム。
そのリズムに乗って、時間や空間から解き放たれたサイケデリックともいえる自由な世界。
町田康、村上春樹、サリンジャーの作品に近いものを感じた。

詩的で比喩的な文体であるから、何度も読み返したくなる。
そして、読む度にちがった感じ方が出来ると思う。


ところで高橋源一郎といえば、テレビでちらりと見かけるイメージから、競馬好きの下世話なおっさん、くらいの認識しかぼくは持っていなかったのだが、そういう先入観って大きいなというか、もちろんテレビでの姿もひとつの側面であるわけだけど、なんでもそうだけど人間は物事の一部分しか見えていないというか、でも全てを知るなんて事は不可能だからそれはそれで仕方がないんだけど、それで全てを知ったふうに判断してしまうのはちょっと勿体ないというか、自分で世界を狭めている事になってしまうんじゃないかと。
要は、読んでよかったなあと、そういうことです。


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 2

浄土

著者 : 町田 康

出版社:講談社

発売日:2005-06-06

評価 :

完了日 : 2008年02月02日

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 72

わたしを離さないで

著者 : カズオ イシグロ

出版社:早川書房

発売日:2006-04-22

評価 :

完了日 : 2008年02月02日

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 1

庭の旅

著者 : 白井 隆,白井 温紀,小林 庸浩

出版社:TOTO出版

発売日:2004-06

評価 :

完了日 : 2008年02月02日

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 13

小川未明童話集 (新潮文庫)

著者 : 小川 未明

出版社:新潮社

発売日:1961-11

評価 :

完了日 : 2008年02月02日

私はこの人の事を何も知らなかった。なにせ名前もはじめて聞いたのだから。

小川未明(オガワミメイ)。
戦前の日本児童文学界最大の存在だそうです。なぜ今まで知らなかったのか。珠玉の童話集である本作を読み、己の無知を嘆いたのであります。夏の文庫フェアとYonda?パンダに感謝。

「グリム、アンデルセンとも比肩する児童文学」という看板文句も大袈裟ではありませぬ。むしろ日本語の美しさを携えた小川未明の作品は、静謐で端整な輝きを持っております。これは日本の言語と文化を解する我々にしか味わえないものであり、なんと贅沢な事でしょう。


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 17

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

著者 : サイモン シン

出版社:新潮社

発売日:2006-05

評価 :

完了日 : 2008年02月02日

気になっていた本が文庫版になっていたのでさっそく購入。これはおもしろい!

『博士の愛した数式』以来、「数」の持つ神秘性・完全性に興味を持ち、数学というものに対する認識を改めさせられたワタシにとって、本書もまた数学のおもしろさを伝えてくれる格好の書となりました。

数学とはすなわち真理の探求、美の追求。宗教や哲学と同様に、数学もまた真実を探求しようとする人間の好奇心・執念だったのですね。そして言語を超えた「数」なるものの神秘性。数は人間が作り出した概念ではなく、世界が誕生する以前から「数」は存在していたという。この視点にわたしは目から鱗でしたよ。だから数は完全性を持つのですね。芸術や自然と同様にただただ美しいものだったのですね。すごいな〜この感性。

ピュタゴラスの時代から始まり、17世紀にフェルマ−が残した数学史上最大のなぞなぞは300年もの間、多くの数学者を悩ませてきたそうです。決して解かれる事のないその難問に、果敢に挑んでいった数学者たちの姿を追ったドキュメンタリー。

数学書というよりは歴史書ですねコレは。いたずら好きで偏屈だったというフェルマ−の人間像も興味深く描かれています。数々の数学者が挑んでいった軌跡とそこに生まれる人間ドラマ。

そう、この真理探究の道程には時代を超えた様々なドラマがあったようなのです。難しい数式を使わずに、数学者の内面にスポットを当てた著者の筆力は素晴らしいです。思わずグングン読んでしまいます。そして300年を経て遂に証明されるその瞬間。読者までもがその歴史の一部になったような感動と高揚感が迫ります。

文系理系を問わず必読の名著。


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 81

悪人

著者 : 吉田 修一

出版社:朝日新聞社

発売日:2007-04-06

評価 :

完了日 : 2008年01月26日

ずっと気になりつつも、内容がかなり重そうで躊躇していた一冊。
確かに重かったが、420頁を一気に読破させてしまう筆力であった。特に後半〜ラスト、頁を捲る手を止める事が出来なかった。
凄い。
この読後感は何なんだろうか・・・。

これまでの吉田修一のカラーであった、つかみどころの無さ。から一転。
圧倒的な生々しさを感じさせる小説。やるせない孤独感を抱えながら地方に在住する登場人物たちの行動が、セリフが、心象が、おそろしくなってしまうほどに生々しい。一件の殺人事件が軸になるのだが、犯人は前半で既に示唆されており、事件を回想するかのように事件に関わった人間たちの、それぞれの視点からの情景が淡々と描かれる。その視点(チャンネル)の切り替えの多さと、前半〜中盤まで漂う閉塞感に、途中で投げ出しそうになってしまったが、中盤以降の展開が怒濤。家族、親友、同僚、知人、メル友。誰もが相手の本当の気持ちを知る由も無い・・・。いつのまにか、祐一の気持ちを、行動の理由を知りたくて頁を捲る自分がおりました。タイトルの「悪人」が示唆するところは最後の最後の一文に表れている。そこに全てが集約されている。


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 3

スロー・イズ・ビューティフル―遅さとしての文化

著者 : 辻 信一

出版社:平凡社

発売日:2001-09

評価 :

完了日 : 2007年12月02日

このタイトルに全てが集約されていると思う。本書を読む前と後ではこの言葉の持つ意味がまるで違ったものに聞こえると言ったら大袈裟だろうか。少なくともぼくは、「スロー」という言葉が持つ大きな可能性、本来持っていたはずの悦びを読み取る事ができ、目から鱗が何枚も落ちた。本書は、既存の価値観への強烈なカウンターパンチでもある。


“100万人のキャンドルナイト”の発起人としても知られる文化人類学者、環境運動家の辻信一。

「環境運動」というと、昨年ノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア氏による「不都合な真実」に代表されるように、現代科学による地球破壊というシリアスな側面ばかりがクローズアップされる事が多い。今まで好き勝手に暮らしてきたわたしたちは地球を壊してしまった。だからわたしたちはこれ以上地球が壊れないように、地球を守らなければならない。全くもってその通りである。ただ、最近の異常なほどのエコ・ブームには少し違和感を感じる。エコをしているという自己満足で終わってしまう(そしてそれに気付かない)という罠に陥ってしまう可能性があるからだ。あるいは単なるマーケティングとして利用されているだけのものもあるだろう。エコな新製品を買って、本当にそれをずっと使い続けるのだろうか。ブームが去ればまた新たなものが欲しくなるのでは。今まで知らなかった事を知り、エコに関心を抱くのはとても意味のあることだと思うが、過度な流行は一抹の危険性を孕んでいることも頭に入れておきたい。

以前、TBS「情熱大陸」に出演しているのを見たが、辻信一という人は、ナマケモノを抱っこしたりして、のほほんとした印象のおじさんだ。「がんばらない」の提唱からも分かるが、確信的にそういう印象を与えているのだ。地球環境に関しては誰よりも危機感を抱いているはずなのに、いたずらに危機感を煽るようなことはしない。まずは自分たちが楽しまなければ、とうのが大前提にあるからだ。ここが大事なところで、実はとても本質的なことだと思う。

スロー・ライフというのは走り続けていると見逃してしまうような、些細なことなもしれないが生活の中のひとつひとつの小さな喜びを楽しむということにこそ、本質がある。他愛も無いことに思えるかもしれないが、ここにこそ価値観の大きな転換が隠されている。経済最優先で当たり前のように一律に沁み込んだ“幸福のイメージ”からちょっと目を離してみる。そうすると意外にもたくさん身の回りには楽しいことがあることに気付くはずだ。そしてそれは一律で測れるものではなく、個人個人の感性に委ねられるものであるはず。それは多様性を知り認める合うことにも繋がる。価値観にしろ常識にしろ、決まった正解があると思い込むことは、「〜するのが当たり前」となり「〜しなければならない」ことになる。他者に対しては排他性となる。義務感でするエコに発展性は無い。ぼくたち自身が喜びを感じながら、それが日常となり実生活に根付いていくことが、なにより重要なことだと思う。それは各々が考え、感じるものだと思う。


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 37

センセイの鞄 (文春文庫)

著者 : 川上 弘美

出版社:文藝春秋

発売日:2004-09-03

評価 :

完了日 : 2007年11月10日

もう。この空気感。
文学に触れるよろこびを感じました。

つかず離れず、という現代的な、でも冷たいわけではなくて、ほわっとあたたかい。毎日の生活、暮らしの中の些細な事物を慈しむ視点。それこそが日本文学の美しさだと思うのです。

決して饒舌ではないのですが、“行間から空気を感じることの出来る” 文章って、とても好きです。日本人であり、日本の文化が理解できることがとても嬉しくなる瞬間ですね。好きな作家がひとり増えました。


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 5

くっすん大黒 (文春文庫)

著者 : 町田 康

出版社:文藝春秋

発売日:2002-05

評価 :

完了日 : 2006年02月12日

幸福なことに、本書がぼくの町田康初体験だった。もし「きれぎれ」や「告白」だったら一冊読了することも果たせずに町田ワールドに引き込まれる事も無く終わっていたかもしれない。

文壇デビュー作となる本作がシーンに与えた衝撃は大きかっただろうなと思う。ぼくにとってもこの本は衝撃だった。ぶわっは。何じゃこりゃ。このようにブっとんでいてシュールで可笑しい小説があったなんて。狭い価値観がぐらぐら揺らぐのを感じた。

ただ単に荒唐無稽でおもしろ可笑しいだけではない。文章の端々に独自の美学を見いだす事が出来る。何と言ってもパンク歌手だけあって、リズムがすばらしい。その独特の言語感覚たるや。町田さんの作品は、文学でもあって、音楽でもある。文字でビートを刻むという作風はこの後も更に追究されていく。


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 5

スティル・ライフ (中公文庫)

著者 : 池澤 夏樹

出版社:中央公論社

発売日:1991-12

評価 :

完了日 : 2004年11月15日

「僕」と佐々井にまつわる出来事を描いた物語自体は、特に大きく盛り上がるわけではなく淡々と語られます。佐々井のちょっと他の人とは異なる言動や、次第に影響を受けていく「僕」の様子、その根底にはこの冒頭のエッセンスが間違い無くあります。それはもちろん池澤さんの基盤にあるものなのでしょう。

文中に雪が降るところの描写があるのですが、ここの美しい文章を読んだ時にものすごくゾクゾクしたのを覚えてます。まるで自分が「僕」になったかのような、気持ちの良い感覚でした。ラスト、えっという感じで飄々と終わります。読後感が爽やかで、サラリとした気持ちになれます。

池澤さんの文章は、とても透明感があり、理知的で、優しい。「しなやか」という表現がぴったりくる。とても好きな作家です。


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