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Pipoさんの読書ノート

文庫で楽しんでいます
やっぱり買ってしまうメインは文庫本です。単行本のときに迷った本、出会い頭に買った本など、あれこれを。
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 3

子午線を求めて (講談社文庫)

著者 : 堀江 敏幸

出版社:講談社

発売日:2008-10-15

評価 :

完了日 : 2008年11月02日

最近では新潮クレスト・ブックス『記憶に残っていること』の編者をなさった、堀江敏幸さんの読書エッセイ集です。柴田元幸さんのご本でその訳が「清新」と評されていることがうなずける装丁。

表題作はウチから電車で…の日本標準時ではなく、グリニッジ子午線の前に「世界標準」として使われていたパリ子午線にまつわるエッセイです。パリ市内に点在するこの標識(測量の標識のような小さいもの)を求めて、パリの街をさまようさまが、穏やかに、滑らかに描かれます。少し長めのセンテンスを流れるようにつないでいくさまが、フランス語の文章をそのまま訳したテキストのようで驚きました。堀江さんの仏文学者というキャリアがそのまま表れている、気品と教養のあふれた1編です。

全体を通して、内容は「フランス文学」からイメージするような華やかな恋愛物語を扱っているわけではなく、むしろ殺伐としたザラザラ感のある作品世界です。「ノワール」と称される、郊外の集合住宅に住む、低所得の移民2世の置かれた世界を扱った作品や、もともとある人種的な問題など、フランスのダークサイドを扱っていると感じました。このダークさが如実に表れている第Ⅲ部が印象に残りました。

本音のところでいって、現代フランス純文学をたくさん読んでいないと、ついていけない話題が大半だと思います。私も持ちダマが皆無に近く、第Ⅰ部を読み終わった時点でリタイヤ?の危機に遭遇(笑)。ですが、そういった不安点を補ってあまりある筆致の清々しい品のよさと、フランス文学とアメリカ文学との性格の違いを大いに楽しめる、知的なエッセイ集だと思いますので、この☆の数です。こんな文庫を出すなんて、講談社さん、ポイントアップです(笑)。


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 8

推定少女 (角川文庫)

著者 : 桜庭 一樹

出版社:角川グループパブリッシング

発売日:2008-10-25

評価 :

完了日 : 2008年10月28日

ダークなきらめきの表紙にひかれて購入しました。『私の男』と同じ、鈴木成一デザイン室の装丁。第一印象で目を奪うインパクトと、小説の世界観がぱっとわかる色彩感覚の鋭さはさすがです。

「ぼく」の似合う中3女子、巣籠カナが主人公。あることが原因で家にいられなくなった彼女と、彼女が偶然出会った少女、「白雪」とのランナウェイ物語です。記憶を持たず、大人でも扱えないような銃を手にする(ただし、自分仕様ではないらしい)白雪に振り回されぎみに、カナは住んでいた街を出、東京へと流れていきます。

日常に焦りと苛立ちを抱えたカナの語りで物語は進みます。この語りのテンポは見事で、ページをうまく繰らせます。ですが、物語の細部は…どうだろう(苦笑)。確かに、銃器とぶっ飛んだ女の子、バッドなストーリー展開、SFチックな単語(ややステレオタイプ)はキラキラとして、子供向きの本を卒業しかけている10代前半のかたにはたまらん道具立てだと思います。私も正直、小4くらいだったら陥落するかも(笑)。でも、話がただ「前へ前へ」持って行くだけで、「どうしてそうなのか」というディープな部分になると妙に軽くて、読み手としてはちょっと欲求不満になります。オトナはそういう濃ゆい部分がツボなのですが(私だけ?)。

それに、この物語の縦糸になっている、大人に対する15歳の苛立ちみたいなものが判断しづらかったです。私は「子供なんてつまらないから、早く大人になりたいなー」と思ってはいたものの、だからといってこんな閉塞感を持つことはありませんでした。のんき+クールに「中学生って期間限定だし♪」と割り切って過ごしていましたので(笑)、一定のラインでこの感覚を理解しながらも、少々ステレオタイプな感触を持ちました。結末については…RPG形式そのまま、またはハリウッド映画のアンケート方式とだけ記しておきます。

装丁◎、素材○、調理法△で、この☆の数としました。桜庭さん、貴女の持ちダマはこんなもんじゃないはず…コドモは手加減されるのがいちばん嫌だということは、聡明な貴女が一番おわかりでしょう(笑)。


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 1

ゼンダ城の虜 (創元推理文庫 F ホ 4-1 Sogen Classics)

著者 : アンソニー・ホープ

出版社:東京創元社

発売日:1970-02

評価 :

完了日 : 2008年10月24日

原題が"The Prisoner of Zenda"。そのままの邦題です。prisonerの訳がシンプルながらも「やっぱりこれしかないよなぁ」と見事。チェコとドイツの国境あたりに設定された王国、ルリタニアの王位をめぐる物語です。

主人公は英国の名門貴族の次男坊で無役。この青年がルリタニア国王の戴冠式に赴いたところから、物語が動き出します。彼と瓜二つの人物、その異母弟、美しく才知あふれる女性…もう活劇成分てんこ盛り(笑)。筆致は英国の作家らしく、こまごまと克明な印象を受けます。デュマ『ダルタニャン物語』のやたらめったらな疾走感(笑)とは異なりますが、この手堅い運びも捨てがたいです。読み進むうちに、タイトルが効いてくるというのがなかなか!

続編『ヘンツオ伯爵』は後日談。少しだけ視点を変えた語りが面白く読めました。ルリタニア王妃がちょっと『ダルタニャン-』のアンヌ・ドートリッシュのような側面を見せながら物語が進みます。結末は…やっぱりこれしかないなあと。

訳にはやや時代が出ている名詞もあって、改訳もアリかと思いましたが、これはこれで時代小説の許容範囲かと思います。装丁もシックで、小さな活字がまた創元文庫らしく(笑)、ひさびさにこのシリーズを手にした懐かしさも手伝って、次々とページを繰りました。そりゃあお約束の展開だけれども(笑)、それがどう見事にまとまっていくかを楽しむのもまた一興で、それを楽しく思い出させてくれた本です。それに、きゃろるさんとだまだまさんの応援で読むことができた1冊だとも思います。ありがとうございました。

-----[2008.9.30 未読リストアップ時のコメント]-----

野田秀樹さんの同名のお芝居で有名、でも原作は知らない(笑)ということで読んでみたい作品のひとつです。ヨーロッパの小国を舞台に、王位をめぐるそっくりさん+スリル満点の大活劇。創元社さんでかなり前に見つけており、そのままになっていますので。


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3.だまだま (2008/10/02)
こんばんは。お邪魔します。
『ゼンダ城の虜』、昔大好きだったので思わず反応して出てきてしまいました。マイナーな物語なんだと勝手に思い込んでいましたが、そんなに舞台化されていたんですね。ちなみに私がこの物語を知ったのは、藤子不二雄の『まんが道』ででした(笑)。
創元推理文庫の冒険小説には一時期ハマっていて、そればっかり読んでいた記憶があります。
4.Pipo (2008/10/03)
だまだまさん、こんにちは。お運びありがとうございます。

確かに、私も友人とお茶を飲みながら『ゼンダ城』の原作について話をしたといった経験はなく(笑)、今はあまり読まれない部類に入っているのかもしれません。でも、「たなぞう」ではこういった本のお話もできて嬉しく思っています。創元推理文庫の活劇ものも好きで、たまに手に取ります。

大甘でとぼけた感想ばかりですが、またお運びいただければ嬉しいです。

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 1

パンとワインとおしゃべりと (中公文庫)

著者 : 玉村 豊男

出版社:中央公論新社

発売日:2002-02

評価 :

完了日 : 2008年10月18日

もう、表紙のシャンピニオンがかわいすぎー!表題のとおり、パンとワインとおしゃべり満載の本です。玉村さんがヨーロッパで味わったお味と、日本に戻られて信州で暮らされてからのお味が、ちょっと気取った感じ(でも嫌みではない)の粋な文章で語られます。

もちろん、お酒もワインだけではありません。ヨーロッパはお酒が強くないと面白くないので、お酒の味は好きなのに量が飲めない私にはうらやましいかぎりです。グルジアの乾杯のあいさつ、「シャンパンのような元気を!」で乾杯してみたい!さまざまなお料理も紹介されており、楽しいことしきり。シュー皮にチーズを詰めたグージェールや、チーズフォンデュ代わりになる、ベルトゥーはとても美味しそう!イギリスのキュウリサンドイッチは、玉村さんいわく「渋い滋味があって病みつきになる」そうですが、どうだろう(笑)。イギリスの下宿で大家さんが作ってくれた、お世辞にも美味しいといえなかったジャガイモのサンドイッチにまつわる思い出など、味とは別に心にしみるお料理も紹介されています。あるキノコを食べる話にはちょっとびっくり、です。

1編1編がとてもコンパクトで巧みな筆致のエッセイで、本自体もとても薄い本ですが、決して物足りないとは感じません。「美味しい食べものと飲みものがあれば人生幸せだー」と思ってふふふと笑える本なので、この☆の数です。


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 1

鈴木亜久里の挫折―F1チーム破綻の真実 (文春文庫)

著者 : 赤井 邦彦

出版社:文藝春秋

発売日:2008-10-10

評価 :

完了日 : 2008年10月13日

文春文庫の10月新刊広告を見てすかさず購入(笑)。2006年にプライベートチームとしてF1参戦し、わずか2年で資金難のために撤退せざるをえなくなった、「スーパーアグリF1チーム」を追ったノンフィクションです。

鈴木亜久里さんの「F1チームのオーナーになる」という自分自身の夢と、「日本人ドライバーが羽ばたくためのシートを作る」という目的でこのプロジェクトはスタートします。もちろん、それは簡単なことではなく、ビジネスの側面を抜きには語れない。F1エントリーのための多額の供託金の調達法、技術のサポートを受けるメーカーとの関係など、ビジネスとしてのF1がどのようなものであるかがきちんと取材されており、興味深く読めました。

また、難しい状況の中でレースを成立させようとするドライバーやクルーの頑張りも熱く描かれており、現場は『プロジェクトX』な感じで熱血です(笑)。第1ドライバーの佐藤琢磨さんが非常にクールな大人の考えを持っており、彼の存在が大きかったのがよく分かります。第2ドライバーのライセンス剥奪や、立場の近いチームのコース内外のプレッシャーなど、F1のウラも見えて怖い(笑)。

こういうルポは判官びいきになりがちなのですが、擁護するべきところを擁護したのちに、鈴木さんサイドのビジネスセンスと読みの甘さを指摘しているというのもフェアで好感が持てました。うさんくさい「出資者」に振り回される様子、一時融資を申し出たソフトバンクのしたたかさ、技術協力したホンダの冷静な読みなど、さまざまな側面をコンパクトに理解できて面白く読めました。鈴木さん、外人のリップサービスをうのみにしちゃだめだよ(苦笑)。

ボリュームはそれほど大きくない本ですが、1つのプロジェクトが生まれてから破綻するまでを追ったスポーツノンフィクションとして、中身の濃い1冊だったのでこの☆の数です。


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 2

コドモノクニ (河出文庫)

著者 : 長野 まゆみ

出版社:河出書房新社

発売日:2008-08-04

評価 :

完了日 : 2008年10月11日

書店の棚に可愛くディスプレイされていたので購入しました。清楚な感じの装画も長野さんのものと知って驚き。東京近郊に住む女の子、マボちゃんの小学校から中学校時代がメインのお話です。

年代は1970年前後のこと。私に歳の離れた姉がいれば?という時代設定です。登場するアイテムにはちょっとわからないものもありますが、感覚はジャスト。カバー裏に「連作小説集」と銘打たれているものの、このリアルに細やかな記憶の数々は、どう考えても9割以上自伝でしょう(笑)。

読んでみて、細やかな描写力に驚きます。『小鳥の時間』に出てくるセキセイインコのピッピの話は、私もたくさんセキセイインコを飼ったこともあり、「そうそう!」と激しくうなずきながらも、幼い頃の記憶を細部まで再現される力にただただ驚きます。

他の2編も含めて、博学で美意識が高く、明治屋さんのアイテムが好きな女の子であるマボちゃんの身辺が克明に描かれています。彼女は好き嫌いがはっきりしていて、その毒づきっぷりもなかなか小気味よい(笑)。年齢的には木地雅映子さんの『氷の海のガレオン』と似た世界を扱っているように思いますが、『ガレオン』のほうがやや観念的かな…と思いながら読みました。中盤以降に登場する、旅芸人の子、セイちゃんのキャラクター造形が長野作品らしいのかなと思います(ほかに1冊しか読んでいないから断言できませんが)。セイちゃんの登場で、マボちゃんの目線が子供から大人へなめらかに変わっていくような印象を受けました。

第一印象は☆3つで、もう少しひねってもいいかも?と思ったのですが、やはりこの克明でなめらかな描写力に感心することしきりで、この☆の数です。


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 3

本に読まれて (中公文庫)

著者 : 須賀 敦子

出版社:中央公論新社

発売日:2001-11

評価 :

完了日 : 2008年10月07日

須賀敦子さんの書評集です。ウィリアム・モリスのテキスタイルを使った装丁が美しく、そのまま持って歩きたい1冊です。書店の書棚を見上げたら目にとまりました。

守備範囲はイタリア文学からフランス文学、ラテンアメリカ文学…といわゆるロマンス諸語の世界の文学が中心です。かといってそこに固執するわけではなく、現代アメリカ文学まで幅広く読まれているご様子です。ラインナップは古典から学術書、文芸まで幅広く紹介されています。日本の作家の作品では池澤夏樹さんのものが数篇取り上げられていることからみれば、骨太ながらも詩情豊かな作品がお好みのよう。私には池澤文学のルーツもわかるおまけとなりました。もちろん、ただお好きな本を並べてほめそやすわけではなく、ピリッとした批評眼も効かせておられ、しかもそれが嫌みではないんですよね。洗練、というのでしょうか。ヨーロッパ伝統の慇懃無礼さを感じないわけではないですけど(笑)。

見返しのプロフィールを見て、あの年代に特有の、良質の教育(何をもって「良質」とするかはきちんと説明できないので、あくまでもマイ感覚的に:苦笑)を受けられた女性文学者が持つ、香気を含んだ筆致に納得することしきりです。この筆致は田辺聖子さんの書評に通じるかな…とも思います。もっとも、田辺さんのほうは国文学がホームで、もう少しロマンチック転びの作品がお好みのようですが。男性であれば、この気品は間違いなく『背教者ユリアヌス』の辻邦生さんのものでしょう。

取り上げられている本にひるみながらも手を伸ばしたくなるのはもちろんのこと、須賀さんの書評をもっと読んでいたい気分にさせられるのか、ゆっくりページを繰りたくなる本ですので、この☆の数です。


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 2

ただマイヨ・ジョーヌのためでなく (講談社文庫)

著者 : ランス アームストロング

出版社:講談社

発売日:2008-06-13

評価 :

完了日 : 2008年10月03日

今年の夏に読み残していたものを今読みました。自転車界の「鉄人」、ランス・アームストロングの自伝です。ツール・ド・フランス7連覇の英雄。でも、私は山岳のスペシャリスト、ミゲル・インデュラインのほうが好きでした(笑)。

彼が自転車界で栄光の絶頂にありながら癌の宣告を受け、常人では耐えられないような治療の末に復帰を果たしたことはあまりにも有名。自転車に対する情熱、闘病の苦しさと不屈の闘志、家族への愛もよくわかるよ…と思うのですが、文章として読ませる力が低い(笑)。稀有な才能の持ち主が、さらに稀有な闘病生活を語るのに思わず力がはいるのは理解します。ですが、1人称語りでヒートアップする部分が鼻につき、冷静に情報を得たい読み手(それは私:笑)には重たいのです。

これはおそらく口述筆記なのでしょう。執筆当時のアームストロングは30代初めで、自分の体験を熱っぽく語るのは仕方ない年齢だと思いますが、彼は誰かにインタビューしてもらって、その記事を本にまとめてもらったほうがいいタイプの人物だと思います。アメリカには『PLAYBOY』誌のインタビューなど、驚くほど素晴らしいインタビュアーがあまた育っているお国柄なのだから、そちらを選択したほうが硬派で質の高い本ができたような気がします。ただ、ライダーしか表現し得ないであろう、はっとするほど的確で見事な表現もあったりして、小説だったらばちっとはまるように思う部分が多々あったのはさすが、と思いました。

訳はアームストロングの喋り口調を文章にするのに苦労されていることがよくわかります。「この人、訳ヘタなの?」と一瞬思ったのですが、訳者あとがきを読むと、巧みな文章を書かれるかただというのがよくわかったので、そこが少し惜しい気もします。

邦題も素敵だと思いますが、原題"It's Not About the Bike"のとおり、アームストロングの人となりを描く作品であり、ライダーとしての彼とレースとの位置づけを知りたかった私としては、ターゲットが違ったのでこの☆の数とします。ごめんなさい。


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11.ryoukent (2008/10/08)
年齢のこと。
あまり気になさらないのは結構なことだと思います。

おっしゃるとおり、たなぞうのみんなはそのあたりの年齢層がいちばん多い様ですね。
最高年齢のかたはどなたかなぁ、とか時々あちこち見てるのですが、会社を定年退職された男性はいらっしゃるみたいで、そうなるとわたしもまだまだ若輩者です(笑)
12.Pipo (2008/10/09)
ryoukentさん、おはようございます。

「たなぞう」メンバー、幅広いですよね。10代はじめから大先輩、趣味から研究系とそれぞれに特徴があって、面白く拝見しています。私は本のラインナップに結構クセがある(と思う)ので、ノートにコメントをつけていただくたびに、「コメントいただいて嬉しいけど、なぜにこの本なんでしょうか?」とおっかなびっくりで拝見しています(笑)。

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 2

マリコはたいへん! (小学館文庫)

著者 : 松久 淳

出版社:小学館

発売日:2008-09-05

評価 :

完了日 : 2008年09月28日

雑誌連載のときに「うまい企画だなー」と思いながら楽しんでいました。27人(+α)の「マリコさん」のお仕事と恋愛事情のインタビュー集です。インタビュアーは『天国の本屋』の松久淳さん(ただし未読)。

登場するマリコさんたちのお歳は、雑誌のターゲット年齢に近い幅(20代~30代)でのセレクト。お仕事は地味めのものもありますが、「目立つ憧れの職業」といえるものが多いように思います。このマリコさんたちに、インタビュアーの松久さんが気弱モードで立ち向かう姿がなんだか可笑しい(笑)。松久さんでなくても「はー!」と思ってしまうつわものマリコさんあり、「ちょっと考えようよ」と諭したくなる、すっとこどっこいマリコさんあり…と、マリコさんたちと松久さんのやりとりをツッコミながら、共感しながらすいすいと楽しめます。マリコさんたちが抱える、ちょっと困った事情が描かれていたりしてもいやみなく読めるのは、松久さんのお優しさと、筆致のやわらかさだろうなぁと思います。ガールズ・トーク全開で、ちょっとナマっぽくて、松久さんでなくとも男性(特に未婚の)は引くネタもあるでしょうけど、男子諸君、女子というのはそんなもんだ(笑)。

リリー・フランキーさんの装丁がキュート(帯のコピーは大泉洋さん)で、「ザ・女子本!」として気楽に楽しめる1冊です。ただ、欲をいうならば、章分けに使われているページが黒刷りなことに違和感があるのと、そこに書かれた英語が少し微妙だったので、出版社さん、ここを考えていただければなおよし、です。


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 2

パレオマニア―大英博物館からの13の旅 (集英社文庫)

著者 : 池澤 夏樹

出版社:集英社

発売日:2008-08

評価 :

完了日 : 2008年09月25日

「パレオマニア」とは聞きなれない響き…「古代(妄想)狂」という意味だそうです。池澤夏樹さんが、副題のとおり大英博物館の収蔵品にちなんだ旅を13の章立てで紹介した紀行文です。

最初はギリシャの女神の形の柱、「カリアティド」。博物館に収蔵されたとびきりの美女(「何人め」とか指定がある:笑)のふるさと、アテネへと舞台は移ります。続く舞台は四大文明からアジア、北中米など。取り上げられた収蔵品はうなるほどの通好みというほどではなく、意外とオーソドックス(手元の図録にほとんど掲載されていた)でした。まぁ、大英博物館の収蔵品はあまりにも有名なものばかりなので、既視感があるのは仕方ないかもしれませんが…。

スタイルは、収蔵品についてうんちくを傾けるというよりも、収蔵品がひきがねになっていろいろな考えが頭をよぎる…といった感じです。その土地の風土、食べ物の描き方がうまく、各地で旅の連れとなるかたがたがとても知的に素晴らしいかたばかりで、その物言いが池澤さんのひとり語りに深みを添えます。惜しむらくは、あまりに情緒的になりすぎてちょっとキザ(笑)。人称の使い方は減点です!

もう少し硬質な書きようだったら間違いなく☆5つだったのですが、タイトルを見ての第一印象と期待がちょっと上回ったかなとも思います…「内容○、筆致△」を冷静に考えてこの☆の数とします。ごめんなさい。

-----[2008.9.11 未読リストにアップ時のコメント]-----

ハードカバーで出版されたときに迷っていて、このたび文庫本で見つけました。

まず、「パレオマニア(paleomania:古代妄想狂)」という言葉があることに驚愕!私も古代ものは大好きですし、マニアではない(かもしれない)けれども、近くの展覧会には必ず足を運びます。金銀細工や陶磁器、その他いろいろ…の年月を過ごした美しさがたまりません。

この本は、「パレオマニア」を自称する池澤さんが大英博物館の収蔵品をヒントに、出土地をめぐる13の旅がつづられています。なんて贅沢な企画。装丁もシュメールの牡山羊(いいデザインのものを:笑)と、上品にまとめられています。

絶対読む鉄板本ですが、暫定的にこのノートへ。


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1.manu (2008/09/12)
こんにちは。
又しても…。(^.^)
私も古代もの大好きで、これもチェック入れておりました。
ここを拝見して、更に読みたくなってきたきたきた~(笑)
2.Pipo (2008/09/12)
manuさん、お運びありがとうございます。これ、私も文庫を見つけたときに「ヤバい!開いたら買っちゃう!」と思ってちょっとだけ避けました(笑)。

でも、ずっと前にAmazonで大英博物館の簡単な図録を買ってあり、「取り上げられている中にどれか載ってるものがあるのかな…」とすでに参照スタンバイ状態なんですけどね(笑)。
 

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 2

本当はちがうんだ日記 (集英社文庫)

著者 : 穂村 弘

出版社:集英社

発売日:2008-09

評価 :

完了日 : 2008年09月21日

『吉野朔実劇場』で吉野さんのお友達としてレギュラー出演中の歌人、穂村弘さんのエッセイ集です。文庫の表紙もちょっとポップでダークな感じが可愛いのですが、ハードカバーの表紙(もろ小動物系)のほうがよかった(笑)。

もう、最初からへなへなと笑いがこぼれます。『エスプレッソ』で語られる、「エスプレッソが好き→でも苦くて飲めない→でも頼む→理由は○○」って…。高校生がブラックコーヒー飲むのと同じじゃん!『結果的ハチミツパン』の、ハチミツパンを食す時間とスタイルがすごく、しかもそこから考えることが…なんか迷走している。「何とかしなさい、41歳総務課長(当時)!」と思わず教育的指導をしてしまいそうです(笑)。

全編へろへろと迷走していくさまが面白いのですが、自分の持つ弱さみたいなものを見つめる視点は鋭くてちょっと温かいです。『リセットマン』で穂村さんが「怖い」とおっしゃることは、川上弘美さん『ニシノユキヒコの恋と冒険』でニシノ氏がのたまう「怖い」の中身と(おそらく)同じものだと気づいてはっとしましたし、『硝子人間の頃』ではご自分の苦手ポイントをほんの少しずつクリアしていこうとする気持ちにじんわりきてしまいます。『嘘と裏切りの宝石』の峰不二子の描写、まさにそのとおりで美しゅうございますー。

解説は三浦しをんさん。いつものしをんさんトーンよりもちょっと抑えめのテンションがくすりと可笑しくて心地いいです。へらへらと楽しめるエッセイですが、このジャンルでは森見登美彦さんが激しく追い上げているようにも思うので(笑)、激励をこめてこの☆の数です。


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 25

ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

著者 : 川上 弘美

出版社:新潮社

発売日:2006-07

評価 :

完了日 : 2008年09月09日

『センセイの鞄』を書店に偵察に行き、なぜかこちらを(笑)。ファースト川上作品です。キュートな装丁に「軽やかなラブコメディーでしょう、これは!」と思って読み始めました。後で間違いに気づきますが…。

ニシノユキヒコ(漢字では「西野幸彦」)なる男性と、彼が恋愛をした女性(の一部)ごとのリレー短編集です。見た目まじめで清潔で男前、そこそこ堅い人生を送る男性。でも夕方の携帯は女性からの着信ばっかりで…と、実は軽い男?のニシノ氏。そんなオトコと付き合った女性たちの目線で、彼と、彼との恋愛が語られます。

各エピソードの並べかたが構成の妙だなぁ…と思いました。登場する女性とニシノ氏のお付き合いした時期が、微妙に他の女性とかぶったりして(笑)語られます。エピソードを機械的に時系列に並べちゃえば、ただニシノ氏を「ワルいやつだなー(笑)」と思って終わりでしょう。ですが、最初のエピソードで、それがすっと薄まっていく感じ…この構成はある意味卑怯かもしれませんが、ひとりの男性の面白哀しい、そしてちょっと切実なストーリーなんだ…と思える効果を出しています。

年齢はばらばらながら、ニシノ氏を語る女性たちがみなとても賢い印象を受けました。彼との出来事を厭うわけでもなく、懐かしさを含ませて淡々と静かに語ります。こういう女性たちを落とす彼は凄腕(笑)。それもみな、彼がときどき発する虚ろな台詞に、うわべだけではない何かを見てしまうからなのだろうと思います。もっとも、これも彼の手のひとつかもしれませんが…個人的にはバツイチ女性とニシノ氏と猫の微妙な三角関係のエピソード、「しんしん」をイチ押ししますが、年齢と恋愛観によっていろいろかと(笑)。

「こんな男性、お試しもアリ」と思うか、「即却下!」と思うかはすっぱり分かれる恋愛小説ですが、静かに熱を帯びて面白い作品だと思います。それに、こういう「主人公の出てこない」作品は私のツボ(確定:笑)なので、この☆の数です。


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 1

初級革命講座 飛龍伝 (角川文庫)

著者 : つか こうへい

出版社:角川グループパブリッシング

発売日:2008-07-25

評価 :

完了日 : 2008年09月06日

角川文庫60周年の記念イベントとして、人気作家さんが月替わりで「編集長」としてお気に入りを5冊ほどセレクトする企画が行われています。この本は8月担当、重松清編集長のセレクトから。

つか作品はコドモの頃に映画『蒲田行進曲』にガツンとやられ(本当はエンディングが原作と違う)、その後演劇での再演が増えた頃にガンガン観に行っていました。この『飛龍伝』は残念ながら観ていないので、早速手に取りました。

ストーリーは伝説のリーサル・ウェポン「飛龍」を操る主人公(微妙にヘタレた過去を持つ)を中心に、若かりし頃の学生運動を引きずる中年の闘士たちがもうスラップスティックにどたばた。デモ隊との衝突で再起不能となった機動隊員の療養施設に「全学連ショー」で慰問って…デモ隊と機動隊の激突ガチンコ生中継ショーとか、もうめちゃくちゃで笑うしかないです。本気で学生運動やってた人が読んだら怒るかも…とちょっとだけ思います(笑)が、台詞の運びは緩急自在で見事。ラストの主人公の長台詞はつか作品のお約束で、ここまでのどたばたを力技でまとめてしまうようでもありながら、大人物ではない人間の面白哀しさを描いていて、思わずしんみりさせられてしまいます(劇場では毎作品号泣者続出でスタンディング・オベーションへなだれ込む:笑)。

『熱海殺人事件』のどたばたっぷりと共通しているなと思いながら読んでいると、同時代の執筆だということで納得。本で読んでもいいですが、やっぱり劇場でね!と思うのでこの☆の数です。


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 2

百年の恋 (集英社文庫)

著者 : 篠田 節子

出版社:集英社

発売日:2007-01

評価 :

完了日 : 2008年09月03日

ずいぶん前にNHKでドラマ化されていて、楽しく見られた作品だったので「原作もぜひ!」と思いながら今です(笑)。実はファースト篠田本。「才色兼備」の女性(+年上で背も高い)に惚れて結婚したはいいが…という男性のどたばたを描く作品です。

ドラマではバリバリのバンカー、梨香子に川原亜矢子さん、女性に縁のなかった低所得フリーランスライター、真一に筒井道隆さんがキャスティングされていました。川原さんのいやみのなさと、筒井さんのボンクラっぷりが最高(笑)。原作のこちらは、梨香子さんのイメージはわりあいそのままに、真一さんがもっとモテない男性に描かれています。

序盤の2人の出会いのシーンは、インタビュー中のちょっと専門的(マニアックともいう)な話題から盛り上がって…という、まるで有川浩さんの作品のようなベタ甘展開(笑)。でも、「(戦闘機に乗って)ドッグファイトなんて一度でもできたら…」の台詞はヒット!その後の展開はこれもベタ甘でスピーディーなのですが、ドラマや有川作品よりも男女の仲の考察と描写がナマっぽくて、段落が落ち着くごとに「ぎゃはーっ」と笑ってしまうことしきりです。特に未婚男性、読んだら毒ですけど(笑)。

そうこうするうちに2人はお父さんとお母さんになるのですが、ここでもともとスパーク気味だった梨香子さんのキャラがエスカレートしてくるし、真一さんがずっと持っていた「それってどうよ?」感もどうしようもなく大きくふくらんでくる。このあたりがまたドラマより苦いです。妻の「何でも話せる男友達」の存在や、「よき妻、よき母、よき夫」っていうけど?という問題がバンバン突きつけられてきてちょっと辟易…でも真実。真一さんの親分、秋山女史の説教がまた迫力があって見事です(ドラマでは高畑淳子さんがハマり役)。

文中の真一さんの育児日誌を篠田さんの仕事場シェア仲間の作家さん、青山智樹さんが担当されており、これも男性側からリアル(笑)。全体的に、雑誌連載時の「男の子育て!」のかけ声が大きかった時代を反映して、ちょっとキツい感じの物言いもありますが、コメディーとしてよくできた作品ですし、「この2人、何やかんや言って結構いいよな」と素直に思ってしまうので、甘いかもしれませんがこの☆の数です。願わくば、表紙をもっとセンス良くしてください。


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1.manu (2008/09/03)
毎回、毎回、読んでいないものについてのコメントですみません。(汗)
ちなみにドラマも見ておりません。(知ってはいましたが)
ちょっとツボに入った文章がありまして。^_^;
>筒井道隆さんの”ボンクラっぷり”
素晴らしい表現です。(爆)
というか、ボンクラを演じ?させたら筒井道隆は日本の俳優で独走だと思います。(笑)そんな訳で?小説、次回図書館リストへと加えさせて頂きます。^_^;
2.Pipo (2008/09/03)
manuさん、お運びありがとうございます。

筒井さんの演技…は、浅野忠信さんの「ジ・アンタッチャブル(誰がなんと言おうと定冠詞つき)」さの対極で、他の追随を許しませんね。彼の輝く作品を見るたびに、もうへなへなと脱力してしまって(笑)。

この作品は、他の篠田作品の流麗な愛の描きかた(あらすじだけでそう思っている)とは少し違い、ドカンと甘くて面白おかしくて…ピリッと苦みが効いていて楽しいですよ♪
 

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ザ・ホテル―扉の向こうに隠された世界 (文春文庫)

著者 : ジェフリー ロビンソン

出版社:文藝春秋

発売日:1999-11

評価 :

完了日 : 2008年08月29日

原題は"The Hotel"。ロンドンのど真ん中、メイフェア地区にある名門ホテル「クラリッジ」で働く人々と彼らが扱う宿泊客を追ったノンフィクションです。

イギリスで最高の格式を誇るホテルの内幕が描かれます。とびきりの著名人・名士ばかりのお客のわがままともいえる注文ににこやかに答え、それをブリーフィングで共有し、しかも売り上げをにらみながら部屋を売る…ホテルの日常がきびきびとした筆致で克明に記されており、アメリカ式の「ガーッとやってしまう」よりも、「粛々とことを運ぶ」という感じが目立ちます。椅子だけの役員ミーティングで、女性役員に席をまず譲るというのがヨーロッパだなぁ(笑)。ロイヤルスイートの予約は電話じゃダメで、まず支配人あてに丁重なお手紙を…というルールも見事。スノッブ過ぎてイヤな方もいらっしゃるでしょうが、私はこういう敷居の高い世界をちらちらのぞくのは嫌いではないので、面白く読めました。

映画や他の本でいえば三谷幸喜「The有頂天ホテル」のとびきりシックな日常版…の雰囲気かなぁと思い、VIPの饗応などは西川恵「エリゼ宮の食卓」、スタッフの鷹揚で実は几帳面なイギリス的態度がヘレーン・ハンフ「チャリング・クロス街84番地」(ただし、クラリッジのスタッフはイギリス人ベースながらもコスモポリタン)…のエッセンスを感じる作品です。訳は英語のノンフィクションライティングによくあるぎこちない感じがそのまま出ているので、もう少しこなれたものでもいいかとも思いますが、許容範囲。

ホテルに泊まるときは備え付けのパジャマや、ちょこっとしたアメニティなどが使えるだけでハッピーになってしまう身なので(笑)、こんなところに泊まるチャンスは生涯ない(と思う)。もう、チェックインの瞬間に頭のてっぺんからつま先まで見られて「私どもでご満足いただけるのやら」とかチクッと言われてしまいそう…(笑)。

ホテルも巨大チェーン業界ですし、今のクラリッジでは、この本に描かれた当時のようなルールやサービスとも変わっているのかもしれません。でも、この微妙に時代のかった敷居の高い、豊かな雰囲気を感じるにはいい本です。実はかなり前に第1章だけ読んでおり、その間に、上に挙げたような、似た雰囲気の味わえるのものをいくつか読んでしまったもので、この☆です。ごめんなさい。


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 6

エレンディラ (ちくま文庫)

著者 : ガブリエル ガルシア・マルケス,G. ガルシア・マルケス

出版社:筑摩書房

発売日:1988-12

評価 :

完了日 : 2008年08月27日

以前からこのサボテンの表紙が気になっており、このたび手に取りました。それに、蜷川幸雄のミュージカル「エレンディラ」の原作になっているのも興味のモトで。マルケスの短編を5編まとめた短編集です。訳は鼓直さんと、木村榮一さんの大御所ツートップでの分担です。

「大人のための残酷な童話」と銘打たれている(カバー裏)とおり、マルケス独特の暑くて曇り空でどろっと何か出てきそうな感じ…それにファンタジー仕立てが加わります。「大人のための…」といえば、倉橋由美子「大人のための残酷童話(奇しくもそのまんまだ)」など、ブラックなオチへ持っていくものが多いのですが、これは意外とキレイにまとめられていて驚きました(笑)。それぞれの短編の邦題はほぼ直訳(スペイン語には明るくないので、単語の並びから判断)ですが、ふわりと優雅な感触が素晴らしく好みです(笑)。訳も実直ながら、柔らかく優美だと思います。

表題作の「エレンディラ」、正確には「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」は題名どおりの怒濤のごとき悲惨の物語ながらも、甘辛のバランスと幕切れが見事です。個人的には最初の「大きな翼のある、ひどく年取った男」が好み。題名のままのビジュアルを持つ男を拾ってしまった家と、彼をめぐる大騒動の話。ちょっと微妙に可笑しい話で、最後がマルケスなようでそうでないようなファンタジックさです。各短編をとびとびに読むのではなく、順番に読むのがおすすめです。

木村榮一さんによる解説も的確で、ラテンアメリカ文学とその背景について理解が進みます。マルケス以外の作家にも触れられているので、ラテンアメリカ文学にハマるもとにもなるかもしれません(笑)。しっかり読めて、ボリュームも適当な短編集だと思うのでこの☆の数です。

☆おまけ:先日、書店の「ラテンアメリカ文学」の棚の前にいたら、隣に来た大学生らしき集団が「あー、『ラベイ』の棚ってここかぁ」と言っていて仰天しました。「ラ米」ってすごい略…に感動。それに、そういう勉強をしてくれている人たちを見てハッピーになりました。


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 1

世の中で一番おいしいのはつまみ食いである (文春文庫)

著者 : 平松 洋子

出版社:文藝春秋

発売日:2008-08-05

評価 :

完了日 : 2008年08月23日

もう、タイトルを一瞥しただけで買い(笑)。おっしゃるとおりでございますー!フードジャーナリストの平松洋子さんが、ご自身のお料理、身の回りのあれこれについて語るエッセイです。

目次で一目瞭然なのですが、料理の中でも「手」で行うしぐさでまとめられています。まず、「手でちぎる」。これが動作そのものだけではなく、「ちぎる」という言葉の響きから切り込んでみたり、もちろん、その動作を主に使ったお料理を紹介してくださったり…これが…料理が不自由な私でも料理心をそそられる簡単レシピ(巻末にはカラー写真つき)。この項でも、紹介されているちぎりキャベツの炒めものの美味しそうなこと!ビールでもご飯でもオッケーです(笑)。ひとり暮らしのかた、もう1品作り足すのが苦痛なかた(男女問いません)、特におすすめです。読んでも味わっても楽しめますし、人生が豊かになります。

エッセイのコアである食べものの話題だけではなく、時にはドキッとするオトナの色気や哀しみを感じさせる部分もあって、なんだか森まゆみさんのエッセイを思い出してしまいます。全てがみごとなのですが、素晴らしさであと1篇挙げるとすれば「手で割る」の項。散文というより、詩の美しさの見事なこと!久しぶりに文の美しさにはっとしました。

ハードカバーからの改題がばちっとはまった見事さと、もの柔らかながらも芯はストロングな本で、この☆の数です。歌人、穂村弘さんの解説も可笑しくていいですよ。


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 1

Sports Graphic Numberベスト・セレクション〈1〉 (文春文庫PLUS)

著者 :

出版社:文藝春秋

発売日:2003-04

評価 :

完了日 : 2008年08月16日

書店で目当てのスポーツ本を立ち読みしたところ、いまいちだったので(笑)急遽こちらに…スポーツグラフィック誌「ナンバー」の記事の傑作選、第1巻です。

オープニングの「ナンバー」立ち上げの話からしてドラマチック(笑)。「優れた文筆家に毎週スポーツを見させて鍛えよう」とか…当時はスポーツ記事を書ける人といえば、大部分がスポーツ新聞の記者さんだったので、そういうライティングとは違ったものを育てようとする志を感じました。

オープニングは山際淳司さん「江夏の21球」。久しぶりにきちんと読んで、19球目から始まっていたのを忘れていた(笑)。もともとは山際さんサイドの企画ではなく、「ナンバー」からの企画だったとか。配球と攻撃の戦略描写は、「おおきく振りかぶって」の阿部くんのクールな戦略を思い出します。

力道山の朝鮮半島でのルーツを追った「追跡!力道山(井出耕也)」も、ある程度知っていた事実ながら新鮮に読めました。「普通の一日(沢木耕太郎)」は、ヱスビー食品陸上部監督となった瀬古利彦氏を追ったものですが、故中村清監督の存在の異様な重たさが印象的でした。F1ドライバー、アイルトン・セナの最期のレースをレポートした「伝説の完結(西山平夫)」は「彼の死は必然だった」と示唆する語り口が詩的ながらもちょっと強引?な印象。サッカーものなら、アトランタ五輪を描いた「断層(金子達仁)」よりも、日韓戦の重みを描いた「東京、ソウル、ドーハ(鈴木洋史)」が緻密でおすすめです。

ナンバー・スポーツノンフィクション新人賞の受賞作品も掲載されていますが、意外と完成度が高くて驚きました。収録された3本のうち、2本が自分のことを描いているので、当事者しか知りえない面白さもありますが、このスタイルは2本目以降辛いでしょうね。いろいろ読ませていただいて、この☆の数です。


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 4

オリンピア―ナチスの森で (集英社文庫)

著者 : 沢木 耕太郎

出版社:集英社

発売日:2007-07

評価 :

完了日 : 2008年08月07日

ハードカバーのときに「どうしようかな」と迷っていたものを、今年の「ナツイチ」の帯にひかれて購入。ベルリン・オリンピックの記録映画を撮影したレニ・リーフェンシュタール監督へのインタビューをメインに、ベルリン・オリンピック出場者へのインタビューをからめて当時を追うルポです。

まず、表紙が劇的。ブランデンブルク門の上の青銅の馬です。「この像を戴いた帝国は…」というエピソードが塩野七生さんの作品で何度かとりあげられていたので、余計に劇的だなぁと思ってしまいます。

リーフェンシュタール監督は、その代表作の製作時がナチス・ドイツの全盛期と重なっていることもあり、その才能の評価がものすごく分かれる人物。事前に「安直なインタビューには応じない」と申し渡されていたこともあり、沢木さんのインタビューもどこか尖った感触です。そんな中、「あの映画には…」との発言を引き出すところはお見事(当時、国際的にほぼ無視されていた事実らしい)。そこで沢木さんの手腕と筆力にまずガン、とやられる(笑)。そこからは当時の日本側出場者についてのインタビューを織り込みながら進み…開会式から時系列で進んでいきます。ものすごい情報量がうまくコントロールされて描かれており、飽きさせません。うまいところで遠景と近景が切り替わったりして、いい情報が出てくるんですよね。筆致は落ち着いているものの、「やばい、沢木マジックに乗せられてるぞ!」と思いながら、目が離せなくなる感触はいつものとおりです。

この作品は連作集になる予定…とずっと聞いていたので、いつ続きが出るのかと楽しみにしていたのですが、「あとがき」「文庫版あとがき」で衝撃が走る(笑)!ですが、この作品もベースが約30年前の作品に膨大な取材を加えて…ということですので、そこはそれでもオッケーかと。どうも沢木作品には甘くていけません。

この文庫を買ったときに、書店員さんがストラップをくれなかったので☆ひとつ引こうかと思ったのですが(目で訴えたのに:笑)、やっぱりそれとこれとは別で、この☆の数です。


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 13

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

著者 : G. ガルシア=マルケス

出版社:新潮社

発売日:1997-11

評価 :

完了日 : 2008年08月04日

セカンド・マルケス作品です。数か月前に読んだある小説に、ちょっとだけ出てきたもので(笑)。

サンティアゴ・ナサールという若者が、町を挙げての婚礼の翌朝に殺害されるまでのいきさつを、数十年後に彼の友人が周りの証言を集めてまとめた…という形式の物語です。彼は札付きのワルというわけでもなく、どうして殺害されねばならなかったのか、それに、彼が殺されるということは多くの人の知るところであったというのに…という筋立てです。もともとは実際に起こった殺人事件にインスパイアされたものだということです。訳者の野谷文昭さんによる解説(ネタバレ感がありますが)が詳しく、こちらを先に読んで物語に入っていくこともできます。

まず、その薄さに驚きます。名作の誉れ高いのにこの薄さかよ、と(笑)。ですが、読み進めていくうちに、その薄さに似つかわしくない物語の厚みに驚きます。サンティアゴと町の住民との関係、婚礼の主役となる男女との関係、手を下した者たちとの関係が、時間が錯綜しながらもたたみかけるように明らか(この度合いは克明なものから曖昧なものまでさまざま)にされてきます。このあたりは「百年の孤独」とよく似ていますが、混沌よりも端正さに磨きがかかったようで、私はこちらの作品のほうが好みです。

私は今そこにいない人物やできごとを外側から描いていくような話が好きなので、そこを突かれたということと、「薄いのに得したな」という思いも大きかった(笑)ので、この☆の数です。


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3.manu (2008/08/18)
又しても、Pipoさんに影響を受けまして読ませて頂きました。^_^;

いや凄い話ですねぇ。
中々、読み出す気力が出てこない(汗)「百年の孤独」にも挑戦する勇気が出てきたような…。

4.Pipo (2008/08/18)
manuさん、ありがとうございます。濃ゆい群像劇ですよね(笑)。バラバラの証言がまとまっていくというか、ひとつ水を向ければ集まった全員がダーッとしゃべり出すというか…お芝居向きだとも思います。「百年の孤独」は、途中でアタマが沸騰しそうになりました(笑)が、これは適当にクールでよかったです。

お気に入りブックマークを改めて、ノート全体に付けさせていただきました。これからもよろしくお願いいたします♪

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