たなぞう

WEB本の雑誌

Pipoさん > 読書ノート

Pipoさんの読書ノート

驚きとともに読んだ本
ファーストタッチ抜群、設定びっくり、筆致に感嘆、事実にガーン…いろいろ驚きまくった本たちです
<前のページ 1  2  3  次のページ>

 

みんなの感想を読む
 1

アイヌ神謡集 (岩波文庫)

著者 :

出版社:岩波書店

発売日:1978-08-16

評価 :

完了日 : 2008年11月24日

知里幸惠さんというアイヌ民族の女性が、民族の間に伝わるユーカラ(神・英雄などを歌った物語歌)をまとめ、記録し、日本語の翻訳をつけた本です。10代半ばに、『銀のしずく降る降るまわりに―知里幸恵の生涯』という本の書評を見て、すぐ手に取りたいと思ったものの、なぜか記憶が…先日、こちらを書店で見かけてレジへ。左側のページに原詩がローマ字で、右側に日本語訳が書かれているため、岩波文庫には珍しく、左側から開きます。

アイヌ語が分かるかたはともかくとして(笑)、素晴らしいのはその日本語訳!非常に知的で正確なうえに、詩情あふれる言葉づかいには目を見張ります。最初の「梟の神の自ら歌った謡『銀の滴降る降るまわりに』」からして、もう見事としかいえません。原語では確かに、「降る」にあたる(と思う)単語が繰り返されているので、ほぼ直訳であることが想像できるのですが、言葉の選びかたの妙でしょうか。ものすごくファンタジックで、金子みすずの詩を思い出してしまいます。

解説は金田一京助がさらりと数ページ、知里さんの弟さん(言語学者)が学問的な解説をつけておられるだけで、現代版の解説などはありません。とても薄い本です。不親切かとも思えるものの、なんだか潔い。民俗学者の柳田國男がこの記録のあまりの素晴らしさに、岩波書店の社長に出版を持ちかけたという逸話がある(らしい)とも聞きました。

アイヌ民族の歩んだ歴史についてはいろいろな考え方もあると思いますが、ひとつの言語を記録した文献として見事で、この☆の数です。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 7

ばかもの

著者 : 絲山 秋子

出版社:新潮社

発売日:2008-09

評価 :

完了日 : 2008年11月22日

新聞書評で見て気になっていたのと、直球のタイトルで手に取りました。初絲山作品です。病んでいるようなイラストの装丁(+くすんだ赤の帯)もただならぬ雰囲気ただよう1冊。

主人公は大学生になって早いうちに、年上のお姉さまにハマって学校へ行かなくなり…留年し、何とか就職できたものの、酒におぼれ…新聞書評を読んだ限りでは、ジェットコースターのような人生デフレスパイラル状態の描写を想像していましたが、そのあたりは本人のある種の鈍感さを表しているのか、すごくゆるやかに描かれている感じを受けました。「いつのまにやらこんなありさま…」みたいな。それでも、冷静に時系列を追って考えると、実に順調に人生の坂道を転げ落ちている(笑)。自分の置かれる状態に対して「想像上の人物」と評する存在との葛藤はあるものの、それは自分を止めるほどの力を持たず、水が低きに流れるように…。

主人公の「つぶしの利かない」ポジションや住む街の距離感が生む息苦しい状況と、そこから抜けられない苦しさが迫ってきます。まぁ、その原因は周りだけではなく、彼自身にも多少なりともあるのかな…友人が人生を重ねていくのとは別に、彼だけしゃべり口調や考えていることが、学生時代からほとんど変わらない。そこがやり切れないと感じながらページをめくりました。後半の流れはなかなかやわらかに持っていくなと感じ、結末は「なるほど、そう持っていくのね」と。でも、展開はともかく、どういったシチュエーションで締めるのか、途中でちょっと読めてしまうかもしれません…そこが減点です。

冒頭からなかなかすさまじく(そして微妙に滑稽で)もあり、ダメ男登場本としては今年の暫定トップ(もうちょっとダメ男度が高くてもいいけど:笑)。突き放して人物をとらえようとしながらも、優しい目線を注ぐ作品でしたので、この☆の数です。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 1

新吼えろペン 11 (11) (サンデーGXコミックス)

著者 : 島本 和彦

出版社:小学館

発売日:2008-09-19

評価 :

完了日 : 2008年11月12日

『燃えよペン』『吼えろペン』に続く、島本和彦先生の自伝…マンガ完結編です(笑)。いわゆるバックステージもの。島本さんがモデルであろう主人公が、日々の締め切りやネタ切れ?と格闘しながら話は進みます。

なんといいましょうか…もう主人公の名前が昭和といいますか、『巨人の星』世代でもありえない熱血バカなネーミング(笑)。同じく島本さんの名作『逆境ナイン』の主人公、不屈闘志(実写映画版では玉山鉄二さん主演)よりすごいかもしれません。キャラ設定やストーリーテリングも昭和ノリで、毎回毎回ムダに熱血で疲れもしますけれど(笑)、苦しい毎日に悶絶しながらも、やけくそ気味の名言が随所に飛び出すので、油断しちゃおれずについつい読んでしまいます。己を削って作品につぎ込む、まさに芸人魂というか、プロのサービス精神のすごみを感じることしきり。NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』よりもディープな世界がここにはあります(『プロ‐』で取り上げられていた浦沢直樹さんもすごかったけど:笑)。

お仕事ものマンガでは、男性なら弘兼憲史さん『○○島耕作』シリーズ、女性では安野モヨコさん『働きマン』なども読ませると思いますが、この本は誰にも応用が効かない世界なのに、何だか「私も明日から頑張ろう!」とちょっとヘンなツボを押されてエネルギーが充填できてしまうところが不思議な本です。私の☆はこの数ですが…まぁお気になさらず(笑)。島本さん、これからも熱血バカな作品をお待ちしております。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 4

それは私です

著者 : 柴田 元幸

出版社:新書館

発売日:2008-04

評価 :

完了日 : 2008年10月26日

現代アメリカ文学の翻訳といえばこの人を外せない、柴田元幸さんのエッセイ集です。ポップな装丁が楽しく、私にとってはファースト柴田エッセイ。

柴田さんのエッセイがどのようなものか、全く先入観なしに臨みました。立ち読みは数ページだけにとどめ、本気モードで読み始めると、そのぶっ飛び内容には気が遠くなりそうに!妄想と明晰さの混じり混じった文章がイタい世界をかもし出しており、わけのわからないままに柴田ワールドへ引きずりこまれていきます。このニオイは森見登美彦さんに微妙に通じる(彼に翻訳をやってほしいな、と今思った:笑)のですが、彼の筆致をおバカと評するならば、柴田さんのエッセイはクレイジーとしかいいようがありません。『自動翻訳機のあけぼの』、ちょっと引っかかってしまって悔しい(笑)です。『文法の時間』、イルカになるってどうよ(困)。それに、「自分の幽霊」の話がいくつか出てきており、「柴田さん、最高学府の教員ってそんなに辛いのー?」とツッコミを入れてしまいます。

まるっきりのおバカ炸裂というだけではなく、『タバコ休けい中』などの繊細な話も読ませます。また、やはり文学畑の人だけあり、本の話もとめどなく登場します。『微熱のときに読む本』など、書評ではなくても本について書かれた章も多いので、ブックガイドとしての側面も楽しめます。

イタさスパーク、でも嫌みがなくて楽しい本なので、この☆の数です。

-----[2008.10.17 未読リストアップ時のコメント]-----

書店で<柴田元幸責任編集>と銘打たれたナゾの文芸誌、『monkey business』の隣に転がっているところを発見。開いて驚き!もう、何が何だかよくわからん中身が怪しすぎ!森見登美彦さんの『美女と竹林』を上回るスパークっぷりに、棚の前でアタマがくらくらしました(笑)。早めに読もうっと。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 7

うろんな客

著者 : エドワード ゴーリー

出版社:河出書房新社

発売日:2000-11

評価 :

完了日 : 2008年08月10日

ファースト・ゴーリー本です。たしか出版時に「これ、何?」とすぐ手にしたのではないかと…

まず、タイトルが「ほー」という感触です。原題は"The Doubtful Guest"。doubtfulが「うろん(胡乱)」なんて、私の脳内辞書にはヒットしないし、日本語でも、生まれてこのかた人に言ったことない(笑)。

ある日、屋敷に闖入してきたくだんの「うろんな客」の行動が見事な訳でつづられます。こういう手があるのか、と。それに訳語のセレクトが見事すぎます!「白河夜船」なんか、どっから出てくるのかしら…凝りに凝った柴田訳に完敗です。ペン画と日本語のバランスもきちんと取られており、違和感なく仕上がっていると思います。薄い本ですが解説もきちんとしており、ただシュールな本だというだけでなく、その意図もきちんと汲み取れる設計になっています。

ゴーリーの他の作品よりはブラックさが薄く、ラブリーな面もあるので、絵本好きな大人のかたへの気軽なプレゼントにもできるように思います。ゴーリー作品のタイトルとしては「優雅に叱責する自転車」のほうが好きなのですが、凝りに凝った面白さを楽しめるのはこちらのほうかな、と思うのでこの☆の数です。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 14

百年の孤独 (Obra de Garc〓a M〓rquez (1967))

著者 : ガブリエル ガルシア=マルケス

出版社:新潮社

発売日:2006-12

評価 :

完了日 : 2008年08月04日

2年ほど前に読んだ、ファースト・マルケス作品です。タイトルは数多くのパロディで有名。「100年の孤独」ってありえるのか?と思わせる、しかもSFチックなタイトルが魅力的です。

ある開拓村を作った一族の栄枯盛衰の物語です。華々しいサクセスストーリーというよりは、貧乏くさくってほこりっぽい、陰鬱な印象を受けます。この開拓は壮大な目的のもとに…というより、男女の駆け落ちの果ての妥協点であり、世の中もこの村もそれなりに動いているのに、数多い一族の中に取り込まれるとぴたりと外界と遮断されるような、暑っ苦しい陰湿さが強烈でした。この一族の当主の信仰にも似た心情や土着の信仰と、キリスト教などがミックスされた雰囲気もそれに拍車をかけます。

装丁がなかなかアーティスティックで素敵(帯はえんじ色でこれがまたいい)ですが、個人的には99年版のお城の表紙のほうが、この一族の複雑で閉ざされた状態を表しているような気がします。もっとも、今回の版では他のマルケス作品と装丁が統一されているので、まとめ買いするにはこちらがよいと思いますが…。それに、巻頭の系図は不可欠ながらもややネタバレ?しおり兼用のカードにしてそっと後ろのほうに忍ばせておくとか、何か別の方法を(笑)…少し惜しい気もします。さらに巻末の解説によれば「42の矛盾と6つの重大な誤りがある」と著者が指摘を受けているらしく、作品としての緻密さには疑問も残りますが、「まぁ、この濃い物語は分かりにくくても」と思います。

消化不良といえば消化不良ですが、そんなに欲求不満にはなりませんでした。この作品を読んで、現在世界で起こっているあれこれを考えるというのではなく、1つの村に吹きだまった一族の隔絶感を感じる作品です。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 5

左近の桜

著者 : 長野 まゆみ

出版社:角川グループパブリッシング

発売日:2008-07-24

評価 :

完了日 : 2008年07月29日

ファースト長野作品です。雑誌の書評を見たときには気にとめなかったのですが、書店で見かけると、落ち着いた、抽象画の装丁がシックでしたので。それに、見返しと表題紙の色の美しいこと!

時代設定は現在より少し前かなと思います。主人公は「桜蔵」と書いて「さくら」と読む、高校生の男の子。家業は「わけありのお客さんを泊めるお宿」って(@_@)。番頭さんがお留守のときはお客さんを出迎えるなど、お宿の仕事を手伝うのですが、なんだか本来のお客さんとはちがう存在とコンタクトすることが多いようで…。

この「存在」というのが、京極夏彦さんの作品のようなポップな魑魅魍魎系ではなくて、もっと空気感のある、哀調を帯びた存在です。しかも、彼らにまとわりつかれる(というか口説かれてるぞ:笑)桜蔵くんの描写などはビジュアルにすれば(@_@)!だと思いますが、この色気を過剰じゃないタイミングで次につなぐワザが絶妙。それに、言葉運びが気品にあふれ、「牡丹灯籠」のような上品な色気を感じます。彼がそういった局面に遭遇しながらも意識はまっとうな高校生である(弟と彼女さんの存在が大きいと思う)ことと、周りの人物(父、母、居候、常連)それぞれが一癖持ちながらもあざとくないことが、物語に軽さを出していると思いました。それに、登場人物の動きが静かに描かれていて驚きます。まるで音が立たないような感じ。結構どたばたといろんなことが起こっているように思うんですが…。

桜で始まって桜で終わる、しっとりとした感触が幻想的な連作集です。それに、季節のお料理が見事な道具立てとなっている(個人的には、父の作るココアが実に優雅で美味しそうだと思う)のと、井伏鱒二の訳詞「勧酒」が効果的に使われているのが物語を下品にしない決め手でもあるのでしょう。最初、素材にちょっとひるんだ(笑)のですが、手腕で最後まで読まされた、という感じ。第一印象は☆が1つ少なかったのですが、あとからじんわりきた(笑)ので、この数です。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 2

GIANT KILLING 1 (1) (モーニングKC)

著者 : 綱本 将也

出版社:講談社

発売日:2007-04-23

評価 :

完了日 : 2008年07月16日

ちょっと重いものが続いたので、マンガです。タイトルが素晴らしくいいですね。イングランドへ姿を消した伝説のサッカー選手、達海猛が監督として古巣に戻り…導入編です。

私は「キャプテン翼」ど真ん中世代(ただし高橋洋一さんのストーリー運びは好きであっても画力は嫌い:笑)なもので、選手ベースの作品には食傷しているのですが、これは監督さんが主人公。しかもぱっと見、天然+オレ様。ですが、たぶん「思考のプロセスを見せない(「愚者と愚者」でほーっと思った表現:笑)」だけなんだろうと思います。突飛に見えて、的確。しかも、いつもドクターペッパーを飲んでるのがいい(笑)。元同僚らしきGMと元サポーターの広報さんなど、フロントも面白く描かれています。新監督に屈折した思いを抱くチームリーダーやタレントの片鱗を見せるルーキーなど、役者が揃う!という第1巻です。

コーチングの雰囲気は、絶好調の頃のジェフ千葉をデフォルメしてあるようにも思いますし、設定は東京都台東区なんだけど、サガン鳥栖+ヴィッセル神戸っぽい(あくまでもイメージ)。試合の描写もスピーディーで、読ませます。画風には好き嫌いがありますね…でも、予告編などはアメコミっぽいつくりで、作品のからっとした感じに合っており、結構好きです。

ジャイアント・キリング(大番狂わせ)は「ただ格上が崩れているだけ(だから周りが騒ぐほどのことじゃない)」というクールな台詞がひぐちアサさんの「おおきく振りかぶって」に出てくるのですが、やっぱり爽快感があります。うきうき感で、この☆の数。この週末で、残り全巻読んでしまいそうです。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 2

カラシニコフ II (朝日文庫)

著者 : 松本 仁一

出版社:朝日新聞出版

発売日:2008-07-04

評価 :

完了日 : 2008年07月11日

「悪魔の銃」、自動小銃カラシニコフ(通称AK)とその周囲をめぐるルポ、第2弾です。アフリカを中心として描いた第1弾とは場所を変え、今度は南北アメリカと、アフガンなどのアジア編。

南アメリカはご存じのとおり、「政府VS反政府ゲリラ」の構図で政情が不安定な国家が多い。それもコカインマネーが絡んですさまじいことになっているのは国際社会でも常識です。そこにAKと、AKに群がる人間がおびただしく存在します。AKに関わる大半は「(ゲリラ、私兵を含めて)兵隊しか職がないし、兵隊になりゃ飢えないから」という青少年です(結局、戦闘の弾除けに使われて最前線に立たされ、大半が命を落とす)。それに、純正品、コピー品を含めたAKが流入するルートも知ってしまえば、開いた口がふさがらない。国際的な著名人も飛び出すやら、もうスター・ウォーズじゃないけれど「フォースの暗黒面」を見ちゃった…ある程度知ってたはずなのに…と思わず下を向いてしまいます。アフガン、イラクもまたしかり。

これでもか、これでもかとキビシすぎる現実を突きつけられてしまいますし、具体的にどうしたらこの状態が打開できるのかという方策も見えないような絶望的な現実ですが、これは知っておかなければならない現実だと思います。「国際的な仕事に就きたいです!」と夢を持っている約U-22のみなさん(そうじゃないみなさんも)、ぜひお読みになって、かつその夢に向かってください…と思います。

解説は大御所、船戸与一さんの手になるもので、こちらも短編として読む価値大です。船戸さん、そんなとこまで行ってんのか!とちょっと驚き(笑)。

2冊続けて読んで少しダウンしてしまっているのですが、それはそれで読書の働きでもあるので、この☆の数です。ありがとうございました。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 2

カラシニコフ I (朝日文庫)

著者 : 松本 仁一

出版社:朝日新聞出版

発売日:2008-07-04

評価 :

完了日 : 2008年07月11日

旧ソ連製の自動小銃、カラシニコフ(通称AK)をめぐるノンフィクションです。今、感想を準備している小説の中で扱われている銃器がAKなので、「小説の設定はさておき、なぜにAKがセレクトされたのか」という背景をしっかりと知りたかったのと、小説の中でみるだけではなく、リアルな世界でAKがまき散らしているものを知っておくことは大切なのだろうと思ったからです。それと、書店の「新刊」の棚で目に飛び込んできた(笑)。

AKは「悪魔の銃」と呼ばれています。ダーティー・ハリーや次元大介のマグナムのような化け物じみた単発の破壊力ではなく、

①幅広い年齢層で扱いやすい
②お手入れいらず
③故障しない

ということで兵器としての評価は非常に高い。これが「人を殺せる層」の底辺を押し広げてしまい、世界の紛争地域という紛争地域にだーっと流れ出します。そのあたりの流れが、

アフリカの崩壊しかけた国家の少年兵ら
開発者、ミハイル・カラシニコフ氏
アフリカの軍事状況をよく知る作家、フレデリック・フォーサイス氏

のインタビューを通じてまとめ上げられています。読んでいると、あまりにキビシイ現実に言葉を失うこと数回。ある程度知識は持ってたはずなのに・・・ひさびさに「のんきに小説読んでる私って…」とネガティブモードにも(苦笑)。国家の運営に失敗した「国家」にAKが流れ込んでもう収拾がつかなくなる中、それでも生きていかなければならない人たちが山のようにいる現実をきちんと見つめなければいけないと思いました。日本も「アフリカ開発会議の議長だー」とか浮かれてないで、いろいろ本気で考えないとなぁ…といいハードパンチをいただいた本です。激痛走ってますけど(笑)。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 3

ほんたにちゃん (本人本 3) (本人本)

著者 : 本谷有希子

出版社:太田出版

発売日:2008-03-20

評価 :

完了日 : 2008年07月11日

昨年、NHK「トップランナー」で拝見して以来、気になりながらなぜかそっとしておいた(笑)、本谷有希子さん。その本谷さんの「本人本」です。

19歳の頃にお書きになった自伝のリミックス版のようです。当時、本谷さんは写真学校の専門学校生で、セルフイメージが「エヴァンゲリオンの綾波レイ(ご本人は本編を知らないらしい:私もだけど)」だったそうで(笑)。ちょっとイタいけどいいぞ、19歳ってそんなもんだ!それがその年齢の特権ですものー。

いろいろ考えながら専門学校の同級生と話すところなんかは、意外にも瀬尾まいこさんの「戸村飯店青春100連発」で描かれる、お兄ちゃんのわずか1か月の専門学校ライフと似通ったところがあって、居心地の微妙さをよく描いていらっしゃるなと思いました。自分の「影のある、安っぽくない女」というイメージ演出をうまく操れずに、周囲からドン引きされまくったり、意外にも自分の策が当たったにも関わらず、その後の展開をほとんど考えておらずにあたふたする姿が、何だか浅はかですごい(笑)。その「自意識過剰」な「イタさ」フルスロットルで最後まで進みます。爆笑というか、そのクレイジーでアウトオブコントロールなさまにへなへなと力が抜けます(笑)。

台詞より、状況と心理の描写で読ませます。抜群のスピード感での飛ばしっぷりが素晴らしいのですが、代表作の「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」など、他の作品と併せて読むほうが彼女の本質を見誤らないでいいな、と思う1冊です。私は他の本谷作品を読んでいないので、今はとりあえずこの☆の数です。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 2

聖戦ヴァンデ〈下〉

著者 : 藤本 ひとみ

出版社:角川書店

発売日:1997-03

評価 :

完了日 : 2008年07月10日

下巻は、内乱の鎮圧がいよいよ本格的になってきます。かつての上官、アンリ子爵掃討に向かう革命軍のラザール・オッシュに「追うのはやめなよ!」と念じることしきり(任務だから仕方ないのに:笑)。アンリ子爵の側でも、盟友が負傷したりして立場がどんどん上になっていき、ついにはこちらの指揮官になってしまったりしちゃうんですよね…がんばってほしいんだけど、情勢はどんどん不利になっていきます。要衝を奪われ、領地を追われ…と敗走の度合いも増してくるのが読んでいて辛いです。

衝撃だったのは、革命軍が捕虜を処刑する方法です。大河ロワールにボロ船を浮かべ、捕虜をぎっちり詰めて撃沈させるとは!死神以下だよ?といわんばかりの革命のダークサイドを見て戦慄しました。

史実では、ヴァンデ戦争はアンリ子爵が指揮官をつとめたのちも少し続くのですが、この作品ではアンリ子爵の代で終わっています。ちょっと終盤はどうかしら…と思う点があるので減点(笑)。ですが、次にはさまれる、この内乱を生き抜いた主な登場人物について簡潔に描かれる場面にぎくっとし、なんだか「革命っていってもなぁ…」と日本人の私としては一抹のむなしさも感じます。

フランス革命のアナザーストーリーとしてはよい出来の作品だと思いますので、この☆の数です。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 2

聖戦ヴァンデ〈上〉

著者 : 藤本 ひとみ

出版社:角川書店

発売日:1997-03

評価 :

完了日 : 2008年07月10日

藤本さんの「マリー・アントワネット」を読んだので、藤本作品で好きなものを(笑)。国王ルイ16世夫妻処刑後に、ロワール地方でものすごい王党派の反乱が起こります。その反乱、「ヴァンデ戦争」を扱った作品です。

2人の軍人が主人公です。1人は超名門貴族の若者、アンリ・ド・ラ・ロシュジャクラン子爵。王家のブルーの上着を着る、国王親衛隊の将校です(「ベルばら」のオスカルと同じ)。もう1人はその副官、ラザール・オッシュ。彼は平民出身の優秀な軍人。王家が崩壊した瞬間から、この2人が敵味方に分かれなければならなくなってしまいます。この別れがクールであってまた切ない!「我は王軍、友は叛軍(←講談社文庫「ダルタニャン物語」のシリーズより)」のテーマはやっぱりいいんだわー。

領地に帰ったアンリ子爵は革命をある程度認めながらも、やはり王に仕えた身として納得いくはずもなく、貴族有志とともにルイ17世擁立を目指して反乱勢力を(ややなしくずし的に)束ねることになり…と物語は進みます。

この反乱は本土でもあまり語られない傾向らしく、読んだときは衝撃でした。「それって内戦だよ!」という激烈さ。でも、よく考えたら、あんなにフランスは広いんだから、花のパリだけの問題で収まらないのは当然です。そういうことを見せてくれた点で、この☆の数です。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 1

王妃マリー・アントワネット 華やかな悲劇のすべて

著者 : 藤本 ひとみ

出版社:角川グループパブリッシング

発売日:2008-07-01

評価 :

完了日 : 2008年07月09日

雑誌連載で後半部分を読んでいたので、前半部分を埋めるのをどうしようか…と思っていたところなんですが…つい最近連載が終わったと思ったのに、出版、早っ!

1785~93年のフランス宮廷の動きを非常によく調べて描いてあります。いわゆる「首飾り事件」から王妃をめぐる革命への動きが大きくなっていくのですが、藤本さんが実際に細かな取材を行われたそうで、あまり取り立てられなかった事実もたくさん書かれており、非常に興味深く読めます。かといって、話の流れをおろそかにするわけではなく、ぐいっと引っぱりこまれながらページをめくることになりました。

目新しいのは、「政治家としての王妃」を描いた視点ではないかと思います。夫、ルイ16世がまったく側近や議会に対して影響力を示さないことを悟るや否や、彼女は兄のオーストリア皇帝、取り巻きの1人(というよりそれ以上なのは「ベルばら」と同じ:笑)フェルゼンなど、あらゆる手づるを頼って政財界・議会工作に乗り出します。最後には国王名の白紙の全権委任状まで利用しようとする。その姿は「さすがマリア・テレジアの娘!」と思ってしまうくらい男前な姿です。

国王夫妻は史実のとおりの運命をたどりますが、そこは意外とさらりと描かれています。王妃としての彼女の最後のきらめきを描く本なんだな…ということでこの☆の数です。彼女を扱ったツヴァイクや遠藤周作の作品と読み比べてみるのもいいかと思います。


この感想へのコメント

1.manu (2008/07/10)
藤本ひとみさんは、「ブルボンの封印」を読んだ事があるのですが、そのヒロインがちょーっと好みじゃなかったので(汗)、それ以来ご無沙汰しておりました。(汗)
男前なマリーアントワネットって面白そうですねぇ。
先日たまたま「怖い絵」を読みまして、マリーアントワネットが刑場へ連れていかれる時のスケッチを見まして、ツヴァイクを読んでみようかなぁ…と思ったんですよ。藤本ひとみも読んでみたくなりました。(^.^)
2.Pipo (2008/07/10)
manuさん、コメントありがとうございます。

私も藤本さんの作品は好き嫌いがあります。革命家の妻、テレジア・タリアンを描いた「令嬢テレジアと華麗なる愛人たち」なんか、(@_@)!な感じでのけぞります(笑)。

ご指摘の絵は、確かダヴィッドのデッサンですね。「絵描きとして最高、人として最低」といわれた画家ですが(笑)。「怖い絵」も読みたいと思いつつ、ウェイティングリスト入りしたままの1冊です。早く読もうっと。
 

みんなの感想を読む
 1

リリアンと悪党ども (角川文庫)

著者 : トニー ケンリック

出版社:角川書店

発売日:1998-09

評価 :

完了日 : 2008年06月23日

WEB本の雑誌中の企画「第4回酒飲み書店員大賞」候補作品ということで、嬉しくなって感想を書きました。初めて読んだのは「マイ・フェア・レディーズ」のちょっと前くらいですから、10代はじめ?といったところです。

主人公のバニーは本業のほかに、ちょっとうさんくさい人材斡旋ビジネスをやってる小悪党。そこに、テロリスト4人が資金調達のため、アメリカに入国したという情報が…この4人を一網打尽にするという計画のために、彼は赤の他人、エラとリリアンとチームを組み、一夜にしてセレブ家族に!そして、「愛娘」リリアンを誘拐させるのだー!って…すごいなぁ(笑)。

この3人のキャラクターがすごくヘンで面白く読みました。バニーはかっこ悪いし、エラははすっぱだし、リリアンにはまったく可愛げがない…お互いに愛着を抱くという展開はみられず、このプロジェクトはうまくいくの?と思わせておいて、スリリングでスピーディーな展開が素晴らしく巧いです。それにふるっているのが、ほぼラストに、エラが傷だらけのバニーに言う台詞。これが粋でいいんだなぁ、もう(コドモだったからいまひとつ意味不明:笑)!往年の名画のように上品に、しかも切れよく締められる手腕に「これがオトナの世界か!」と魅了されたものでした。

原題が"Stealing Lilian"で、この邦題。訳者の上田さんのセンスのよさと小気味のいい訳に、本当は☆5つオーバーなのですが、年月が過ぎて薄まっても、まだこの☆の数です。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 1

マイ・フェア・レディーズ (角川文庫)

著者 : トニー ケンリック

出版社:角川書店

発売日:1998-09

評価 :

完了日 : 2008年06月22日

ミステリは昔からあまり手にしませんが、ケンリックをめちゃくちゃ読んでいたときがありました(親の払い下げ)。その中でも、印象に残っている1冊です。

大きなクルミほどのエメラルドがついたネックレスをある高級娼婦に遺して、ある男が死にます。件の娼婦、ロイス・ピンクは行方不明。唯一の写真もピンぼけで、はっきり顔がわからない。それじゃあ、ロイスをでっち上げて宝石を巻き上げろ!というプロットが素敵(笑)。このでっち上げのプロットは、ちょっと三谷幸喜さんの「ザ・マジックアワー」に似ているかも?と思います。

才媛の誉れ高かったロイスのでっち上げに、主人公は四苦八苦。フツーの娼婦に教養高き高級娼婦をやらせてみたものの、あえなく撃沈。それならば、逆、行ってみよう!というこのあたりの展開をざっくりとらえての邦題「マイ・フェア・レディーズ」なんですよね。原題の"The Chicago Girl"では、雰囲気出ないし(笑)。もう、上田公子さんの翻訳センス、よすぎです!

読んでいたのはローティーンかなぁという時期(もちっと早かったかも)だったので、娼婦の何たるかもわからず読む、読む(笑)。軽やかなストーリーテリングと、上品な描写が往事の名画のようで印象的です。コドモでもオッケー(笑)。それに、不幸のどん底に沈む人間が出ないのがケンリック作品の魅力です。どんな局面でもなんだか笑っていられる。たぶん、私が「人がトリックで死ぬ作品」を好まないのはここから来ていると思います。最初に読んでずいぶん経ちますが、やっぱりこの☆の数で。

[2008.6.3にアップした感想を並べなおしました]


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 2

スープ・オペラ (新潮文庫)

著者 : 阿川 佐和子

出版社:新潮社

発売日:2008-05-28

評価 :

完了日 : 2008年06月16日

阿川さんは心地よく温かい描写が好きな作家さんのひとりです。この文庫版は宮沢りえ+A.ヘプバーンのような、透明感のある女性の描かれた表紙が素敵。

30代半ばの独身女性、ルイさんが主人公。叔母さまとの2人暮らしで特に不満もなかったある日、叔母さまが突如、恋に落ちて出奔!そこへ、「家が気に入った」と2人の男性が下宿人として暮らし始めます。ひとりは、「濃ゆい」自由なおじさん、トニーさん。もうひとりは、何事につけても「淡泊な」年下編集者、康介くん。大家さんのルイさんを含めた3人の距離が近くなったり、遠くなったり…と物語が進みます。

タイトルのとおり、お食事のシーンが多く描かれます。書き出しも「何のこと?」と思いつつ、そこへつながっていく仕掛けで読ませます。中には嬉しい食事も気まずい食事もありますが、どれもとても美味しそうで、「あーうまけりゃハッピーだ」と張りつめていた神経もゆるむ(笑)。おそらく、阿川さんご自身が楽天的なかたなんだと思います。そこが好き。トニーさんが元奥様からいただいた料理本のレシピがまたいいんです!近所のお肉屋さんのハムカツ(私の近所にはないメニュー)も美味しそう!

これとは別に好きなのが、3人が持つ、それぞれあまり触れられたくない点をふんわりと温かくいなしてしまう大人の「あいまいさ」。もちろん、男性のわがままや女性のイヤなところを見つけてしまう、なかなか手厳しい描写もあり、これも素晴らしく巧み。それでも、「ま、そこはいいからさ、とにかく食べよ」っていう優しさ、好きだわー。人の傷をこれでもかとえぐって、癒しのパテで後からぴっちりと埋めていくのは優しさではないと思うし、そういう小説の手ワザにはちょっと違和感を持ったりするんですよね。阿川さんのお考えはきれいすぎてリアルじゃないかもしれないけど、これもアリだと思います。

描かれる状況を「ありえないでしょ!」と一蹴されるかたもあるかと思いますが、「結婚かぁ、それもなぁ…」と揺れる女性を描かせると見事な手腕と、大なり小なり「いいな」と思ってしまう(笑)、3人の間の快適な空気が素敵なので、ちょっと甘いかもしれませんが(いつもだけど)この☆の数です。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 2

ヴォーグで見たヴォーグ (文春文庫)

著者 : グレース ミラベラ

出版社:文藝春秋

発売日:1997-03

評価 :

完了日 : 2008年06月16日

原題がずばり"In and Out of Vogue"。マイ・ベストギョーカイ内幕もの(笑)です。「プラダを着た悪魔」のモデルとして有名なアメリカン・ヴォーグの編集長、アナ・ウィンターの前の編集長、グレース・ミラベラによるヴォーグ時代の回顧録です。学生の頃はヴォーグの日本版がなく、読めもしないアメリカン・ヴォーグやらなんやらを買って家に置いてました(笑)。そんなファッション・ヴィクティム(ファッション狂い)の時代に読んでいました。

著者のイタリア系移民としての生い立ちから語られます。キャリア・ウーマンとして身を立てようと決意して百貨店に就職したものの、やはり男性社員とは差をつけられる。そしてコンデ・ナストへ転職し、憧れでもあったヴォーグの編集部へ。そこはどちらかというと、ガシガシ仕事をしていくというよりも、おとぎ話を追うようなセレブな世界でもあり(スタッフは雑誌編集者の「安月給」なんかどうでもいいようなお金持ちの子女だったりする)、彼女の暮らしていた世界とはちょっとどころではない違いです。そこで著者はファッション・エディターとして着実に足場を固めていきます。「リアル・クローズ」を仕掛け、タバコの広告を掲載しなくなったり…と流行+世論を作っていきます。このプロセスはなかなか激烈です。ちょうど、ベネトンが同じような社会的広告を打っていた時代ですね。ヴォーグに多くを貢献しながらも、あっという間に編集部を追われ、マードック・グループで新雑誌を立ち上げるくだりや、今までの仕事スタイルとマードック側のそれとのあつれきもピリピリした緊張感で読ませます。

おそらく、80年代のアメリカバブル映画よりもダイナミックな世界が描かれていると思います。ビジネスとしてのヴォーグでの生活だけではなく、そうそうたるデザイナーやモデル、カメラマンが登場しますので、ファッション誌の黄金時代の基礎知識を仕入れる本としても役立ちます。文句なく、この☆の数です。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 2

この人この世界 2008年2-3月 (2008) (NHK知るを楽しむ/月)

著者 : 亀山 郁夫

出版社:日本放送出版協会

発売日:2008-01

評価 :

完了日 : 2008年06月14日

今年(2008年)2/3月の、NHK教育「知るを楽しむ この人この世界」のテキストです。「カラマーゾフの兄弟」を読み通す根性が自分にはなさそうなことはうすうす感づいているので(笑)、「ドストエフスキーからショスターコヴィチへ」の副題にひかれて購入。テレビ放映は見たのですが、テキストを机の上に放っておいて数か月経ってしまったので、やっと読みました。

ロマノフ朝からソ連、今のロシアの政治をみるに、なんだか「ロシアの人はああいうのがいいのかなぁ?」と思っていました。そういう疑問が解けることはあまり期待せずに開いたところ…前書きが秀逸!ロシアの歴史観、国家観をこんなにコンパクトに言い尽くせることに深く感じ入りました。

前半はドストエフスキーの著作4本のガイド(もちろん「カラキョー」もあります)、後半はマヤコフスキー他の芸術家4人を紹介しています。大学の講義調ですが、脚注もうるさすぎず読みやすいボリュームです。コストパフォーマンス抜群!欲をいえば、テレビ放映ではドストエフスキーの著作はアニメでダイジェスト放映されていたので、そちらのカットも使ってほしかったと思います。レトロなモノクロの切り絵調で、これがまたいいんです!それがないから☆ひとつマイナス(笑)です。ごめんなさい。


この感想へのコメント


みんなの感想を読む
 5

黒猫/モルグ街の殺人 (光文社古典新訳文庫)

著者 : ポー

出版社:光文社

発売日:2006-10-12

評価 :

完了日 : 2008年06月12日

マイ・ファースト「死ぬほど怖く文章で描かれた話」(笑)。最初に知ったのは、小学生の頃の、少女マンガのストーリーだったと思います。

この本の中のラインナップでは、やはり表題作の「黒猫」だと思います。ある夫婦と、妻が溺愛している黒猫。ふとしたことで夫は妻を殺して死体を始末し、それを「見ていた」猫も同じ目に遭わせる。やれやれ…と思ったところ、その猫、プルートーとそっくりな猫が現れ、その首もとの模様が…とあまりにも有名なプロット。ビジュアルにするとなかなかグロテスクでキビシイものがありますが、なぜか文章表現では美しい。とはいっても、三島由紀夫の絢爛とした美しさとはまた違う、モノクロの静謐な美しさといった印象を受けます。今読んでも不思議な美しさを放っているので、嫌いとも好きともいえません。でも見事な話。

この短編集とは別に、ポーで怖い話のトップを争う(私の中で)のは異端審問の話、「落とし穴と振り子」。刃をつけた振り子が異端審問を受ける人物の胸めがけ、空を切ってゆっくりと下がってくるありさまがなんともいえず恐ろしかったものでした。今でも嫌だな(笑)。でも作品としてはいいです。


この感想へのコメント

1.ようちん (2008/06/12)
こんばんわ。お邪魔します。
うむむ・・・なんだか久々に読み返したくなりました。
こういった古典は、時間をあけて読み返すとまた、いいですよね。私は、江戸川乱歩の短編集を、いまでもたまに読み返してしまいます。共通いているのは、短くシンプルながらもひやっと怖かったりする不思議さ。何年も経ってもその世界は生きていますね。
2.Pipo (2008/06/12)
ようちんさん、初めまして。お運びいただき、ありがとうございます。

怖いのは嫌いですが、キケンな世界は時に好物です(笑)。乱歩もポーに心酔してそのペンネームに当てました(子どものとき、2人は同一人物だと思ってました:笑)が、やはりあの「ぐっと踏み込んでしまうとヤバいかも」という作品世界のきらめきを描くワザがどちらも見事だなぁと思います。

大甘ですっとぼけたノートですが、またお越しいただければ嬉しいです。
<前のページ 1  2  3  次のページ>

Copyright c 2006 WEB本の雑誌 All rights reserved.