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Pipoさんの読書ノート

思い出し書き: マイクラシックス
ずっと昔に読んだり、処分したけどやっぱり買いに走って手元においてある本たちです
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 3

人の砂漠 (新潮文庫)

著者 : 沢木 耕太郎

出版社:新潮社

発売日:1980-12

評価 :

完了日 : 2008年11月14日

おそらく、ファースト沢木本です。沢木さんが『深夜特急』やスポーツライティングの書き手としてドカンと位置づけられる以前の、社会問題を扱ったルポルタージュ集です。

社会の誰もにものすごいインパクトを与える事件ではなくても、深く知っていけばショックを受ける事件を扱っています。最初の1編「おばあさんが死んだ」では、今でいうところのゴミ屋敷で孤独死した老女の家からもう1体、それもミイラ化した死体が出てきたという事件を、老女の遺したノートを元に追いかけます。今ではこういった問題は貧困問題のひとつでしょうが、この女性の一生に別の角度で当てられた視点に目をみはります。「棄てられた女たちのユートピア」では、あるTV番組の企画に乗ったものの、この番組が失敗に終わりそうな予感も克明に記されています。

他には場立ちや仕切り場のルポが収められており、今は存在しないであろう現場の空気が手に取るように分かる手腕は見事です。史記の「刺客列伝」にひっかけた「不敬列伝」などもなかなか静かに攻撃的で面白く読めました。最後の「鏡の調書」は、寸借詐欺の老女を扱ったもので、最初の「おばあさんが死んだ」と対をなすように作られています。

素材としては数十年前のもので時代を感じるはずなのに、作品から感じる空気がリアルで鮮烈。難しい語彙は使っていないのに、イメージを鮮明に描き出し、人の感情を揺さぶる言葉の使い方が絶妙なのでしょう。重松清さんが「私小説的」と評するのもうなずけます。かといって叙情的なフィクション転びでもなく、やっぱり沢木マジックなんだろうな、と思う1冊です。タイトルも絶妙。読んだ当時は☆5つでしたが、年月分だけひいてこの数です。


この感想へのコメント

1.anokeno (2008/11/14)
古い本というのでちょっとひきますが
読んでも酔うと思いました。
ありがとう
2.Pipo (2008/11/14)
anokenoさん、初めまして。お運びいただき、ありがとうございます。

この本のネタにはさすがに時代がかったものがあると思いますが、それに関わった人物の輪郭を浮かび上がらせるワザというのは古びていないと思います。

☆も大甘ででたらめなノートですが、またお越しいただければ嬉しいです。
 

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 2

絵草紙 源氏物語 (角川文庫 (5594))

著者 : 田辺 聖子,岡田 嘉夫

出版社:角川書店

発売日:1984-01

評価 :

完了日 : 2008年10月19日

源氏物語の各帖(宇治十帖を除く)を、田辺さんの現代訳と岡田嘉夫さんの日本画でつづった本です。実は、この大型本(しかもお2人のサイン入り)がかなり前からうちにあります。入手経路不明ですが、時期はおそらく中~高校生くらいのときではないかと。

物語自体は高校の古典でも勉強するくらいのポピュラーなものですので、細かいことを考えずに、田辺さんの滑らかな現代訳と岡田さんの美しい絵を楽しめばよい本です。岡田さんの選ばれる構図は表紙のとおり、気品を保ちながらもセクスィーなものが多く(本当は、むしろ風景描写の帖が多いんですけど気分的に:笑)、この本がうちに来た当時は結構ドキドキして開いたものでした。セクシー感は別にしても、女性の髪の描き方が大和絵風でキレイです。六条御息所が思い悩む構図が抜群。おまけにこの場面の彼女の着物の柄が蜘蛛の巣で、画家さんのイマジネーションとセンスはすごいなーと思います。

「大人の絵本」というのがふさわしい作品なのでこの☆の数です。あと、ヒジョーに言いにくく、また意地悪な見方なのですが、この本の絵と、「名作」の誉れ高い某マンガには同じ構図が複数あるので、双方がお手元にあればちらちら見比べて楽しむのもアリか、と思います。どちらがどう、ということについてはオトナだからコメントしませんけど(お互いの寛容やrespectであるとか、権利関係が整理されているのならもちろんノープロブレムなので:笑)。


この感想へのコメント

1.ようちん (2008/10/20)
こんにちは、Pipoさん。
今ちょうど、「某マンガ」を読み返していたところです。
昔から何回も何回も読んでいるので、結構隅々まで覚えているのです。で、六条御息所の「蜘蛛の巣」柄の着物、まさしく、マンガの中にも描かれています。仰るとおり、ちらちらと見比べてみたいですね。是非手にしてみたい1冊ですが、図書館とかにあるのかなぁ?
2.Pipo (2008/10/20)
ようちんさん、こんにちは。お運びありがとうございます。私はマンガを手放してしまって手元にないんですけど、気づきだすと気になって困った記憶があります(笑)。

ためしに近畿地方(ウチが関西だから)の図書館横断検索で調べると、文庫か大型本のどちらかがほとんどの図書館(中央図書館的なところですが)にあったので、他所でも大丈夫かと。文庫本は多少トリミングがしてあると思うので、できれば大型本をおすすめします。
 

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 4

ローマ人の物語〈2〉― ハンニバル戦記

著者 : 塩野 七生

出版社:新潮社

発売日:1993-08

評価 :

完了日 : 2008年10月15日

まだ割合若者だったころ、毎年1冊ハードカバーで出版される『ローマ人の物語』を買うのが楽しみでした。途中で興味が薄れ(笑)、半分ほどで読まなくなりましたが、その中でも出色の1冊。「地中海の女王」、カルタゴとの戦争であるポエニ戦争を描いた巻です。

象部隊のアルプス越えで有名なカルタゴの知将、ハンニバルとそれを迎え撃つローマの名将、スキピオ(通称アフリカヌス)とその副官レリウス。ヨーロッパの各地で今も「悪いことをしたらハンニバルが来ますよ」という言い回しを残すくらいに恐れられた将軍と、ローマ帝国のぶつかり合いが豊富なデータと華麗な言い回しで語られます。全てが激戦であったかというとそうでもなく、籠城戦、ゲリラ戦の様相を呈する局面も多く、新鮮に読めました。世界史で有名な「カンネーの戦い」「ザマの戦い」の陣形図も掲載されているので、好奇心も十分に満たしてくれます。

スキピオの描写はもちろんのこと、副官のレリウスが意外にいいんです。軍師はこうあらねば、という感じ。それに、スキピオに戦力を約束した騎兵の産地、ヌミディアの王子が、とある事情から1人で現れるところが素晴らしく見事!史実には大して影響ないエピソードかもしれないのですが、このりりしくも哀しい物語にやられる(笑)。

『ローマ人の物語』を1冊だけ読み直せと言われれば、これを迷いなく挙げられるほどの濃い密度の巻です。いい男しか出てこないのがお約束の(笑)、塩野さんの戦記ものの醍醐味が堪能できる1冊です。


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 2

神の代理人 (中公文庫)

著者 : 塩野 七生

出版社:中央公論社

発売日:1996-03

評価 :

完了日 : 2008年09月18日

もともとハードカバーの頃に読みました。塩野作品としては比較的初期のものです。ルネサンス期に選ばれたローマ法王のうち、4人を取りあげた作品です。

どのローマ法王も、「これが天国の鍵を預かる人物?」と思ってしまうほどの俗物っぷり(笑)。それほどに、塩野さんの筆致は容赦ないです。これは彼らをおとしめているわけではなく、「彼らも結局『人間』である」という視点に立った描写をしているからであり、信仰自体にケチをつけているわけではないのは、最初の数ページを繰れば一目瞭然です。

構成からいえば、『アレッサンドロ6世とサヴォナローラ』が面白いと思います。聖職者どうしといえばそうだし、明らかに「俗物 vs. 清貧の行者(ただ、サヴォナローラが本当にそうかということについて、私は詳しくないので深くは触れられませんけど)」の構図ですし…それに加えて、微妙な近親憎悪のような感触が面白いです。また、『最後の十字軍』では、十字軍に幕を引こうとするよりも、「十字軍の栄光再び!」と奔走する、妄執としかいいようのない法王の熱意が強烈に迫ってきます。

月日を過ぎても、読むとワクワクしてしまうので、この☆の数です。それに、学生時代に読んでいたときに、表紙を一瞥して「ローマ法王の本ね」とさらっと言った友人に感動した思い出の本でもあります(笑)。


この感想へのコメント

1.manu (2008/09/19)
お友達紹介して下さい、惚れました。(大汗)というのは冗談ですが、私なんか未だに表紙イコールローマ法王とは結びつかないと思います。(自称歴史好きなんですが…(ーー;))
学生時代にサラリと言ったお友達、素晴らしいです。
個人的に古代ローマ辺りが苦手というのがありまして、中々塩野さんには手が出なかったんですが、これ面白そうですね。リストに入れさせて頂きます。<m(__)m>
2.Pipo (2008/09/19)
manuさん、お運びありがとうございます。この発言には私も「ボーナスポイント1億点!」でした(笑)。

この作品は、時代背景なんかをあんまり考えなくても人間ドラマとして濃くて楽しめますよ。個人的にはアレッサンドロ6世の身内のことだけ予備知識を仕入れておく(少しでオッケー)と、面白みがプラスされるような気もしますが、お好みでお楽しみいただければ、と思います。
 

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 1

少女レベッカ (1979年) (ポプラ社文庫)

著者 : 関 七美

出版社:ポプラ社

発売日:1979-01

評価 :

完了日 : 2008年08月12日

私の読書人生最大の失策(笑)は子ども時代に「赤毛のアン」を読まずにきてしまったことかも…と思うのですが、これは自分にとって、「-アン」にあたる本でしょう。当時、アメリカ製のドラマ(吹き替え)にいたく感動し、すぐさま手にした本。

プロットは微妙に「赤毛のアン(笑)」。「レンガ屋敷」と呼ばれるお邸に預かられることになる、そばかすでダークな目と髪の女の子、レベッカ。レンガ屋敷の主はお母さんのお姉さん2人。上の伯母、ミランダは実はレベッカの姉のハンナに来てもらいたかったので…とても厳しい。屋敷の厳格な女あるじとして、ひっつめ髪でレベッカにこまごまと注意をする毎日です。下の伯母、ジェーンはミランダとは違い、おっとりタイプ。勉強(特に詩)はできるけど、家事はてんでだめのレベッカにお裁縫などを根気よく教えてくれる、やさしい伯母さまです。

大好きなのは、レベッカがジェーンにお裁縫を習い、とびっきりのピンクのドレスを作る場面でした。汚れも目立たない茶色のギンガムをまとめて買ってきたミランダにがっかりするレベッカに、ジェーンが「1着それで作って、あとは生地を取り替えてもらって、とびっきりのドレスを作りましょう」という台詞があまりに優しくて…それでできあがったドレスとパラソルで学校の参観日に出たレベッカに「よかったね!」と素直に拍手(流行たっぷりの見事なものだけど、これがちょっと微妙な雰囲気をかもし出す:笑)してしまいます。

ダイアナのような親友(笑)、エンマ・ジェーンにも恵まれ、学業も優秀なレベッカに、ミランダ伯母の不幸が降りかかります。厳しい伯母がレベッカに託したものは…見事な温かさに、「人の厳しさには理由があるんだなぁ」と当時の私は深く感じ入り、何度も本をめくったものでした。今読んだらどうなのかなぁ…とも思うのですが、思い出プラスでこの☆の数です。


この感想へのコメント

1.manu (2008/08/12)
Pipoさんは、見事に私のツボを突いてくれますねぇ。(笑)素晴らしい読書量だから、という事もあるんでしょうが…。
家庭小説関連は、はっきり言ってツボです。(笑)子供の頃は「アン」よりもレベッカの方が好きだったんじゃないかな?
ところで「レベッカ」の海外ドラマに記憶が無いんですが…。(汗)そのテのドラマは結構見てると思ってたんですが…。見てみたいなぁ。
2.Pipo (2008/08/12)
manuさん、ありがとうございます。「クラシック」のノートは思い出すまま作っていて、狙ってるわけじゃないんですけど…こういった読書歴の一致やニアミスは嬉しいです♪

海外の古きよき家庭小説は心地よくて私も好きです。「レベッカ」はお母さんやジェーン伯母さんのサイドストーリーがちょっと切なくてまたいい!ドラマは日曜の朝8時頃からの30分放送(関西地方)で、一生懸命見てました。配役がぴったりで素敵でしたよ。
 

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 2

ナスカ・砂の王国―地上絵の謎を追ったマリア・ライヘの生涯 (文春文庫)

著者 : 楠田 枝里子

出版社:文藝春秋

発売日:2006-02

評価 :

完了日 : 2008年08月06日

もともとはハードカバーで読みました。楠田さんが「ナスカの地上絵」の研究者、マリア・ライヘ女史(故人)にお会いになったときのインタビューをまとめたものです。

楠田さんご自身が地上絵に興味を持たれたのをきっかけに、ペルーの砂漠で地上絵を研究する、孤高の学者であったライヘ女史に会いに行こうと思い立ちます。ペルーに降り立った直後の激烈な高山病(微妙に気づかない)、風俗、名高い「クイ」の完食(完食プロセスの写真つき)などなど…どたばたっぷりをきわめて知的に、ユーモアをたたえた筆致で描かれています。

ライヘ女史がもともと教師としてペルーへ来たこと、地上絵に魅せられるようになったいきさつなども、きめ細かく知的に、ほどよく軽やかなタッチで描かれており、非常に美しい文章を書かれることに驚きました。地上絵に関するライヘ女史の説は有力なものではありませんが、それになぞらえた終わりかたなどは夢のようで、南半球の星空が見えてくるようです。

楠田さんといえば「実はロボット」とか、「『世界まる見え!テレビ特捜部』の、ハイテンションでヘンなひと」の印象の強いかたですが(笑)、こんなに素敵なエッセイを書かれるかたなのだから、詩情あふれるサイエンスライターとしてもっと活躍してほしいのに…と心から思ったものでした。今からでも遅くありませんので、ぜひお願いしたいものです。


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3.manu (2008/08/11)
まだアップしておりませんが、こちらで興味を持って早速購入。凄く面白い本を有難うございました。
購入したその日に、たまたま読んでいた別の本でも楠田さんのエッセイを薦める内容のものがありまして、なんだか縁を感じた1冊でもありました。
こういう縁ってありますよねぇ。
4.Pipo (2008/08/11)
manuさん、たびたびありがとうございます。楠田さんの本は、読まなきゃ人生の損です(笑)。端正で、しかもロマンチックなその語り口があまり知られていないのはすごく残念!楠田さん、もっとこちらをアピールしてくださいませ(笑)。

本を選ぶときは自分の直感で電波を拾っていました(笑)が、今はmanuさんをはじめ「たなぞう」の皆さんが手伝ってくださるので、出会いの喜びが増えています。ありがとうございます。

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 1

ノーマン・ロックウェル

著者 : ノーマン・ロックウェル,トーマス・S・ブッヒュナー,東野芳明

出版社:Parco出版

発売日:1985-10

評価 :

完了日 : 2008年07月04日

「古き良きアメリカ」を描かせたら右に出るものはいない、ノーマン・ロックウェルの画集です。画集にしてはリーズナブルな価格(笑)。

ロックウェルの作品を時系列で並べて解説しています。評判をとった「サタデー・イブニング・ポスト」紙の表紙絵は、その場の雰囲気まで閉じこめてしまったようなハートウォーミングな作品のオンパレードで、ただただ見事さにほれぼれしてしまいます。

ロックウェルのそういった側面だけではなく、政治的な側面も知ることができて面白いです。アメリカ歴代大統領の肖像画家をやっていたりしますし、宇宙開発を政府の依頼で描いたりもする。とはいっても、ものごとの本質を見つめる目は曇ってはいません。公民権運動を描いた、「我らの世代の宿題」と題された作品は、大勢の大人のボディーガードに囲まれて、白人と黒人共学の学校へ登校する黒人の女の子を描いていてインパクトのある作品です。彼女はハッピーというよりは、きっと顔を上げて毅然としながらも緊張を隠せないし、通りには彼女に向かって投げられたトマトのかけらが飛び散って…と厳しい現実をそのまま描きます。それでも、なんだか「人間の良心」みたいなものを信じた目線が見事です。今のアメリカ、ちっとは考えろ(笑)。もちろん、こういった路線ではないものも相変わらず素敵で、自画像制作中の自分を描いた作品などはただただラブリーで笑ってしまう(笑)。

絵の分量もこの値段にしては多く、解説が非常に的確なので、「ロックウェルの伝記」として読むことのできる作品集です。コストパフォーマンス高し!でこの☆の数です。ロックウェルのファンでもそうでなくても、おすすめできる1冊です。

[画集・写真集のノートを作ろうかどうか考え中なので、とりあえずこちらのノートに保存します]


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 1

リリアンと悪党ども (角川文庫)

著者 : トニー ケンリック

出版社:角川書店

発売日:1998-09

評価 :

完了日 : 2008年06月23日

WEB本の雑誌中の企画「第4回酒飲み書店員大賞」候補作品ということで、嬉しくなって感想を書きました。初めて読んだのは「マイ・フェア・レディーズ」のちょっと前くらいですから、10代はじめ?といったところです。

主人公のバニーは本業のほかに、ちょっとうさんくさい人材斡旋ビジネスをやってる小悪党。そこに、テロリスト4人が資金調達のため、アメリカに入国したという情報が…この4人を一網打尽にするという計画のために、彼は赤の他人、エラとリリアンとチームを組み、一夜にしてセレブ家族に!そして、「愛娘」リリアンを誘拐させるのだー!って…すごいなぁ(笑)。

この3人のキャラクターがすごくヘンで面白く読みました。バニーはかっこ悪いし、エラははすっぱだし、リリアンにはまったく可愛げがない…お互いに愛着を抱くという展開はみられず、このプロジェクトはうまくいくの?と思わせておいて、スリリングでスピーディーな展開が素晴らしく巧いです。それにふるっているのが、ほぼラストに、エラが傷だらけのバニーに言う台詞。これが粋でいいんだなぁ、もう(コドモだったからいまひとつ意味不明:笑)!往年の名画のように上品に、しかも切れよく締められる手腕に「これがオトナの世界か!」と魅了されたものでした。

原題が"Stealing Lilian"で、この邦題。訳者の上田さんのセンスのよさと小気味のいい訳に、本当は☆5つオーバーなのですが、年月が過ぎて薄まっても、まだこの☆の数です。


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 1

マイ・フェア・レディーズ (角川文庫)

著者 : トニー ケンリック

出版社:角川書店

発売日:1998-09

評価 :

完了日 : 2008年06月22日

ミステリは昔からあまり手にしませんが、ケンリックをめちゃくちゃ読んでいたときがありました(親の払い下げ)。その中でも、印象に残っている1冊です。

大きなクルミほどのエメラルドがついたネックレスをある高級娼婦に遺して、ある男が死にます。件の娼婦、ロイス・ピンクは行方不明。唯一の写真もピンぼけで、はっきり顔がわからない。それじゃあ、ロイスをでっち上げて宝石を巻き上げろ!というプロットが素敵(笑)。このでっち上げのプロットは、ちょっと三谷幸喜さんの「ザ・マジックアワー」に似ているかも?と思います。

才媛の誉れ高かったロイスのでっち上げに、主人公は四苦八苦。フツーの娼婦に教養高き高級娼婦をやらせてみたものの、あえなく撃沈。それならば、逆、行ってみよう!というこのあたりの展開をざっくりとらえての邦題「マイ・フェア・レディーズ」なんですよね。原題の"The Chicago Girl"では、雰囲気出ないし(笑)。もう、上田公子さんの翻訳センス、よすぎです!

読んでいたのはローティーンかなぁという時期(もちっと早かったかも)だったので、娼婦の何たるかもわからず読む、読む(笑)。軽やかなストーリーテリングと、上品な描写が往事の名画のようで印象的です。コドモでもオッケー(笑)。それに、不幸のどん底に沈む人間が出ないのがケンリック作品の魅力です。どんな局面でもなんだか笑っていられる。たぶん、私が「人がトリックで死ぬ作品」を好まないのはここから来ていると思います。最初に読んでずいぶん経ちますが、やっぱりこの☆の数で。

[2008.6.3にアップした感想を並べなおしました]


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 2

ヴォーグで見たヴォーグ (文春文庫)

著者 : グレース ミラベラ

出版社:文藝春秋

発売日:1997-03

評価 :

完了日 : 2008年06月16日

原題がずばり"In and Out of Vogue"。マイ・ベストギョーカイ内幕もの(笑)です。「プラダを着た悪魔」のモデルとして有名なアメリカン・ヴォーグの編集長、アナ・ウィンターの前の編集長、グレース・ミラベラによるヴォーグ時代の回顧録です。学生の頃はヴォーグの日本版がなく、読めもしないアメリカン・ヴォーグやらなんやらを買って家に置いてました(笑)。そんなファッション・ヴィクティム(ファッション狂い)の時代に読んでいました。

著者のイタリア系移民としての生い立ちから語られます。キャリア・ウーマンとして身を立てようと決意して百貨店に就職したものの、やはり男性社員とは差をつけられる。そしてコンデ・ナストへ転職し、憧れでもあったヴォーグの編集部へ。そこはどちらかというと、ガシガシ仕事をしていくというよりも、おとぎ話を追うようなセレブな世界でもあり(スタッフは雑誌編集者の「安月給」なんかどうでもいいようなお金持ちの子女だったりする)、彼女の暮らしていた世界とはちょっとどころではない違いです。そこで著者はファッション・エディターとして着実に足場を固めていきます。「リアル・クローズ」を仕掛け、タバコの広告を掲載しなくなったり…と流行+世論を作っていきます。このプロセスはなかなか激烈です。ちょうど、ベネトンが同じような社会的広告を打っていた時代ですね。ヴォーグに多くを貢献しながらも、あっという間に編集部を追われ、マードック・グループで新雑誌を立ち上げるくだりや、今までの仕事スタイルとマードック側のそれとのあつれきもピリピリした緊張感で読ませます。

おそらく、80年代のアメリカバブル映画よりもダイナミックな世界が描かれていると思います。ビジネスとしてのヴォーグでの生活だけではなく、そうそうたるデザイナーやモデル、カメラマンが登場しますので、ファッション誌の黄金時代の基礎知識を仕入れる本としても役立ちます。文句なく、この☆の数です。


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 5

黒猫/モルグ街の殺人 (光文社古典新訳文庫)

著者 : ポー

出版社:光文社

発売日:2006-10-12

評価 :

完了日 : 2008年06月12日

マイ・ファースト「死ぬほど怖く文章で描かれた話」(笑)。最初に知ったのは、小学生の頃の、少女マンガのストーリーだったと思います。

この本の中のラインナップでは、やはり表題作の「黒猫」だと思います。ある夫婦と、妻が溺愛している黒猫。ふとしたことで夫は妻を殺して死体を始末し、それを「見ていた」猫も同じ目に遭わせる。やれやれ…と思ったところ、その猫、プルートーとそっくりな猫が現れ、その首もとの模様が…とあまりにも有名なプロット。ビジュアルにするとなかなかグロテスクでキビシイものがありますが、なぜか文章表現では美しい。とはいっても、三島由紀夫の絢爛とした美しさとはまた違う、モノクロの静謐な美しさといった印象を受けます。今読んでも不思議な美しさを放っているので、嫌いとも好きともいえません。でも見事な話。

この短編集とは別に、ポーで怖い話のトップを争う(私の中で)のは異端審問の話、「落とし穴と振り子」。刃をつけた振り子が異端審問を受ける人物の胸めがけ、空を切ってゆっくりと下がってくるありさまがなんともいえず恐ろしかったものでした。今でも嫌だな(笑)。でも作品としてはいいです。


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1.ようちん (2008/06/12)
こんばんわ。お邪魔します。
うむむ・・・なんだか久々に読み返したくなりました。
こういった古典は、時間をあけて読み返すとまた、いいですよね。私は、江戸川乱歩の短編集を、いまでもたまに読み返してしまいます。共通いているのは、短くシンプルながらもひやっと怖かったりする不思議さ。何年も経ってもその世界は生きていますね。
2.Pipo (2008/06/12)
ようちんさん、初めまして。お運びいただき、ありがとうございます。

怖いのは嫌いですが、キケンな世界は時に好物です(笑)。乱歩もポーに心酔してそのペンネームに当てました(子どものとき、2人は同一人物だと思ってました:笑)が、やはりあの「ぐっと踏み込んでしまうとヤバいかも」という作品世界のきらめきを描くワザがどちらも見事だなぁと思います。

大甘ですっとぼけたノートですが、またお越しいただければ嬉しいです。
 

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 1

ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 (ハヤカワ文庫NF)

著者 : スティーヴン・ジェイ グールド

出版社:早川書房

発売日:2000-03

評価 :

完了日 : 2008年06月09日

マイ・ベスト古生物本(笑)。「カンブリア大爆発」といわれた、古生物の大発生期に現れたヘンな生き物たちの化石群、「バージェス頁岩」の中の生き物たちの姿を追ったノンフィクションです。

古生物の細かいことに興味がわかなくても、現在の常識からはちょっと考えられないような生き物のオンパレードを十分楽しめます。ぺらぺら、ぷにぷに、とげとげなど、神様がいろいろ試したのではないかと思える造形と質感。「君たちには生きていく心がまえがあるのか?」と思わずツッコミを入れてしまうことしきりです。でも、このみなさん(の一部)は私たち人類の遠い遠い祖先だったりするんですよね…。個人的には、オドントグリフスがよくわからなくて好き(笑)。

楽しめる側面だけではなく、古生物学の技術的な側面もきちんと描いておられます。頁岩の薄くはがれる性質を利用して化石を「解剖」してみたり、複数種の生物だと思われていたものが、ひとつの生物の各パーツだったりという研究側面も描かれています。古生物学者はなかなか楽しそうな商売…と思うのですが、「数十年の研究者生命を費やしても同定できるのはせいぜい数種」というしんどい現実も描かれるのが、科学エッセイとして正直でいいと思います。

軽妙な本文を書かれたグールドさんは数年前に逝去されましたが、古生物学の世界も日々進化しており、このエッセイで取り上げられている生物が実は違った造形だったり(ハルキゲニアはさかさまだったらしい)ということが訳者さんの後書きで補われているのも正直で素敵です。古代のヘンな生き物好きには必須の1冊です。持つなら、文庫本よりもハードカバーのほうがいいですよ。


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 1

ドードーを知っていますか

著者 : ピーター メイル,ポール ライス,ショーン ライス

出版社:福武書店

発売日:1995-02

評価 :

完了日 : 2008年06月07日

今の私の本棚に残っている数少ない絵本の1冊です。ドードーをはじめとした、今は滅んでしまった動物たち14種を紹介しています。

最初は、タイトルのとおりドードーから。このずんぐりとした、七面鳥のようなハトの仲間の鳥は人間を恐れなかったため、あっという間に当時の船乗りの食料として食べつくされてしまいました。だから、この鳥の全体像がわかるような標本は残っていないんだそうです。羽根の色さえわかりません。

オオウミガラスも衝撃的な滅びかたをします。もともと数が減っていたところ、生息地が海底火山の爆発で四散(これはどうにもならないけれど)!50羽ほどが生き残ったのですが、2羽を残して、残りは標本のためにすべて撃ち殺されてしまったとか。そんなの、意味ないじゃん!アメリカ大陸のリョコウバトも、数十億羽いたといわれたものが、あっという間に滅んでしまいます。もう、なんだかなぁ…。生物の盛衰は、ある面では進化論・生態学的にやむを得ない面があるのは否定しません。ですが、この本に出てくる動物たちはみな、人間の配慮のなさで歴史から消えていっています。読んでいて、そこにしゅんとしてしまいます。

文章の量は多くないので、子どもさんが自分で読んでも(漢字がちょっと多いけど大丈夫)、読み聞かせてもオッケーです。細密画のような美しい挿絵が夢のように美しい配色で描かれているため、よけいにやりきれなくなってしまいます(なぜに画像データがないのかな:泣)。私の持っているのは1982年出版のものですが、見開きに連続プリントされた、ドードーのイラストがとてもかわいい!

環境問題とか大層なことはいいませんが、人間は簡単に他の生き物の存在をつぶしていける力を持っているものなんだ、ということを思い知らされる本です。


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 1

お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ

著者 : 和田 誠

出版社:文藝春秋

発売日:1975-01

評価 :

完了日 : 2008年06月05日

イラストレーターの和田誠さんによる、名画のセリフ解説エッセイの第1弾です。今でも、年末の「本の雑誌」にカラーで掲載されていますので、ご存じのかたも多いと思います。

オープニングは「ジョルスン物語」という映画。本のタイトルもこの中のセリフから採られています。あまりにも有名なこのセリフは、少し原文とかけ離れた訳がされているのですが、エンターテイナー物語のセリフとして見事に生きてきます。「カサブランカ」の「君の瞳に乾杯」、「ローマの休日」のアン王女の最後のインタビューのセリフなど、素敵なセリフ、苦みばしったセリフが和田さんのイラストと文章でたくさん楽しめます。決めのセリフだけではなく、ちょっとした合間のやりとりなども紹介されており、くすっと笑ってしまいます。本当に、よく見ていらっしゃるなと思います。

セリフのよさを和田誠さんのイラストとエッセイで存分に味わえるというぜいたくな本ですので、この☆の数です。私は映画をあまり見ないのですが、この本のシリーズにはとてもお世話になりました。本を2時間読んでいるのは楽勝なのに、映画を2時間となると我慢できない体質なもんで(笑)。


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 11

チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷

著者 : 塩野 七生

出版社:新潮社

発売日:1982-09

評価 :

完了日 : 2008年06月03日

マイ・ベスト歴史謀略本(笑)。「ボルジア家の毒薬」で有名な、チェーザレ・ボルジアの生涯を描いた作品です。

オープニングはシエナという町の「パーリオ」という競馬のお祭りから。出場していたチェーザレが、ある理由から呼び戻されます。その理由が、彼の(というか彼の一族の)野望の始まり。ローマに向かって馬をとばす彼の、疾走感あふれるオープニングが印象的です。

ボルジア家といえば、「カンタレッラ」と呼ばれた「ボルジア家の毒薬」で政敵を葬っていくチェーザレを思い浮かべますが、そういう毒薬を用いた権謀術数とは全く異なる描かれかたをしています。「神の代理人」であるローマ法王に上り詰めた父、美しい妹、偉丈夫な弟…彼らすべてが政治のコマで、ときには切り捨てられもする。魔術がかった要素はなく、すべてが政治、支配のために用いられます。「ボルジア家の毒薬とは、結局…ではなかろうか」という、塩野さんの考察には大きくうなずいたものでした。登場人物では、チェーザレに影のように寄り添う懐刀、ドン・ミケロットがいい(笑)。

学生時代というのは、文学方向に行くか、政治・哲学方向に行くかにかかわらず、結構エッジの利いた本を読む時期だと思いますが、ご多分に漏れずこういうギラッとしたものばかり読んでいました(笑)。文章も華やかでごつくて素敵な塩野節で、非常に印象的な1冊です。当時は☆5つでしたが、だいぶ冷まされてきたので、この数です。


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 3

もの食う人びと (角川文庫)

著者 : 辺見 庸

出版社:角川書店

発売日:1997-06

評価 :

完了日 : 2008年06月02日

新聞連載時に読んで衝撃を受け、文庫化されたときに落ち着いて読んでまたまた衝撃を受けた辺見さんのルポ集。「食」をテーマに、様々な問題を抱える地域をめぐった1冊です。

初手からいきなり、バングラデシュの「残飯屋」さん。イスラムの考えに則り、豊かな人の(ホテルなんかでの)食べ残しを「ほどこし」ということで露店で売るというもの(らしい)のですが、いったんそれがわかってしまうと、日本人の辺見さんののどは通りにくくなる。「ダルバート(豆カレーとご飯)をすべての民に」というのが当時のかの国のスローガンだったといいますから(今でも似たものでしょうし)、食糧事情のうえで仕方ないことなんだろうとは思いますが、なんだか途方にくれてしまう章でした。

個人的に、非常に印象的な章が「食とネオナチ」。東西ドイツ統一あたりの時期に、ドイツではネオナチのトルコ系移民襲撃が大きく取り上げられましたが、これは本当に、「本音と建前」と「民族の文化に対する理解と共生の難しさ」の問題。「食に対する侮辱は、その民族を深く傷つける」という辺見さんの真理を突いた言葉にしんみりとうなずき、「本当のネオナチは、背広を着て穏やかに笑っている紳士のような人の中にある」というトルコ人青年のことばにひやりとします。100%ではないにしても、本当ですし。この隠し持った短剣が閃く瞬間がいつなのかは、自分にも他人にもわからない(自分が持っていることにも気づかない。もちろん私自身も持ってるかもしれない)ので、たちが悪いのですよー。

「食べる」というのは簡単なことだと思いますが、最後のハードルとしてすごく高かったりもします。友人や隣人、家族、日本の中でもそうだから、国を越えてなんてなおさらですね。なかなかのハードパンチをくれる本ですが、人としての基本をたたき直されるような気がする本です。ですのでこの☆の数です。


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ながいながいペンギンの話 (新・名作の愛蔵版)

著者 : いぬい とみこ,山田 三郎

出版社:理論社

発売日:1999-01

評価 :

完了日 : 2008年06月02日

マイ・ベストペンギン本(笑)。アデリーペンギンの兄弟、「くしゃみの」ルルと「さむがりやの」キキの冒険と成長の物語です。タイトルがカレル・チャペックの「ながいながいお医者さんの話」から採られているのは有名な話です(こっちも読まなきゃ:笑)。

大きく分けて3つのパートで構成された物語です。お母さんの言いつけを破って、広い海岸に出てしまったお兄ちゃんのルル。困っているところを捕鯨船の船員さん(刊行時には捕鯨がまだ産業として成り立っていた)に助けられます。船に乗ったルルを見つけて、仲間たちがとった行動は…。ドキドキ感と結末のほっとした感が素敵です。第2話の、ルルとキキとクジラの子どもの冒険も、シャチに遭遇した2羽と1頭、いったいどうなる?というドキドキ感が上手です。アデリーペンギンの生態をうまくからめて描いており、氷の上を滑ったり、水中をすばやく泳ぐ姿がリアルに描かれています。

オトナ的には、第3話がじんわりいいです。ルルを「あの時の子(この分かりかたがまたいい)だ」と見つけた船員さんに、「船に乗って一緒に行こう」と誘われたルルが決めたことは…結末は「こういう選びかたじゃなくてもいいかもしれないけど、やっぱりこれしかないんだよねぇ」と思う結末です。「ハッピーフィート」の100倍くらいいい(笑)。

幼稚園のころからのお付き合いの本ですが、今でも鮮明に内容を思い出したりします。話の構成も素敵で、この☆の数です。


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1.manu (2008/06/04)
いぬいとみこさんは、「木陰の家の小人たち」シリーズ(2冊ですが…)という話が大好きでした。
今でも私のベスト30ぐらいには入るのではないかと。(注と半端ですが…汗)
同じく小学生の頃読んでから、ずっと大切な物語です。

「ながいながいペンギンの話」図書館で借りてこようかなぁ。
読んでみたくなりました。
2.Pipo (2008/06/04)
manuさん、コメントありがとうございます。

いぬいさんの作品は子ども向けといいながら、お話の組み立てがしっかりしており、大人用の物語を読んでいる気分になったものでした。この作品も、極地のオーロラや氷山の様子、ペンギンのすばやい泳ぎなど、見たことのない世界を想像してわくわくしたものでした。

捕鯨船の船員さんという道具立てが少し過去のものになってしまいましたが、ずっと残ってほしい素晴らしい作品のひとつです。
 

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夢織り女 (ハヤカワ文庫 FT (73))

著者 : ジェイン・ヨーレン,村上 博基

出版社:早川書房

発売日:1985-03

評価 :

完了日 : 2008年05月21日

マイ・ベストファンタジー小説です。「夢織り女」「月のリボン」「百番目の鳩」という短編集をまとめた本です。

表題作「夢織り女」は、「1ペニーで夢を織ってあげるよ」と道行く人に声をかけるおばあさんのお話です。彼女が求められて織る夢が語られます。どれも寓意に満ちており、短いけれどじんわり奥深い話が7つ続きます。ですが、この話を注文した人が受け止められるかというと…このあたりが非常にうまく、「現代のアンデルセン」と呼ばれる作者の面目躍如、といったところです。私は3番目の夢の「木の女房」が好きです。

「月のリボン」も短編集。表題の「月のリボン」は、家族に恵まれない主人公のシルヴァが見つけたお母さんの手紙と銀色のリボンは…というお話。月光にきらきらと光るリボンが印象に残っています。「サン・ソレイユ(Sans soleil)」は太陽に当たることができない若者の話。彼に恋する女性が現れ…切なさ炸裂のお話です。

「百番めの鳩」も切なさでは負けない(笑)。領主の婚礼のごちそうの材料にに100羽の鳩を献上しようとした猟師のお話。彼が最後に見つけた鳩は…あああ、撃っちゃいけない!誰か止めて(笑)!この短編集のおすすめは他に「約束」です。師匠の錬金術師を裏切った弟子の少年と、幼なじみの少女の話。もうこれだけでロマンチックエンジン全開なんですが(笑)、結末がいいんだなぁ、これが!

イラストを天野喜孝さんが手がけており、これが物語の雰囲気とマッチして非常に素晴らしいのです。少し物憂げで幽玄な雰囲気を盛り上げてくれます。なぜ画像データがないの(笑)。

ファンタジーといえば壮大な世界観を持った長い物語が多いのですが、ヨーレンの作品は小さなカットを描いているようで、後ろに広がる世界がとてつもなく広くて美しい(月光が似合うのです)ように思います。今でも大事に読んでしまう1冊です。だから誰がなんと言ってもこの☆の数です。


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 1

シャーロットのおくりもの

著者 : E.B. ホワイト,ガース ウイリアムズ

出版社:あすなろ書房

発売日:2001-02

評価 :

完了日 : 2008年05月16日

ねずみの「スチュアート・リトル」の作者で名文家でもある、E.B.ホワイトの作品です。身体が弱くて処分されそうになった子豚のウィルバーと、ウィルバーが生まれた家の女の子、ファーン。ウィルバーはよその農家にもらわれていくのですが、そこで出会ったのは…とお話が動きます。

ウィルバーはどうでもいいんだけど(笑)、もう、シャーロットが素晴らしすぎます。知恵にあふれ、勇気もあって優しく、悲嘆にくれるウィルバーをたしなめ、励まし、生きていける道を見つけたりしてくれる…「素敵」だけではくくれない女性です。今でもマイ憧れの女性(笑)。昨年だったか、映画でリメイクされていますが、あれはダメだー。ワーナーのアニメ版の、青紫色のちょっとセクシーなシャーロットがいいのですー!

もとの飼い主のファーンの描きかたも素敵です。ファーンはシャーロットをはじめ、ウィルバーのお友達のことがわかるのですが、親御さんには「不思議ちゃん」と思われてお医者さんに診せられたりしてしまう(笑)。でもとても感受性豊かですてきな女の子。干し草置き場の鴨居に縄をつるしてブランコをつくり、高く積んだ干し草の上からそれに乗ってぽーんと空高く上がる姿はひたすらうらやましかったものです。

ずっと続くのかな…と思われたウィルバーとシャーロットの関係も冬が近づくにつれて変わっていきます。そこがしんみりと哀しいです。でも、春が来て…という展開がまた素晴らしく、大甘のハッピーエンドとは違った終わりかたながらも、子供だった私にも納得できました。

原題「シャーロットの巣(web)」を邦題に訳した訳者さんの優しい感覚が好きなのと、今読んでもほわりとしたいい気分になるのでこの☆の数です。


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井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室 (新潮文庫)

著者 : 井上 ひさし

出版社:新潮社

発売日:2001-12

評価 :

完了日 : 2008年05月12日

井上ひさしさんといえば、遅筆でとみに有名(笑)なこまつ座の座付き作家さんですが、「頭痛肩こり樋口一葉」などの文士もの演劇で知られるように、もちろん日本語に造詣の深い作家さんです。これは井上さんがある文章教室の生徒さんを相手に、日本語を書くうえでのあれこれを伝授するさまをまとめた本です。

作文するうえでのポイントはいくつかありますが、心に残っているのは、「~が、」でつないでいくと文章があいまいになってダメだ、ということ。よくやるんです、すみません(笑)。それに、「子供には感想文でなく、観察文を書かせる」ということです。確かに、感想だったら「面白かった」「つまらなかった」のひとこと感情論になってしまいますし、そこに行き着くまでの思考をまとめるにはそれ相応の語彙も必要です。それより、描写力を磨いて内面に迫る力を蓄えるほうがはるかに有益です。そして、最も大切なのは「人に伝えるには言葉が必要」な点。思考を理解してもらうには避けられないステップです。きちんと伝えられる言葉(数と質)を持つことは大事です。

井上さんの生徒さんだといっても、そんなに選び抜かれた文の達人でもない、フツーの人たちです。中には「文章が苦手」という人までいる(笑)。その人たちが楽しみながら、あるいは微妙にいやいやながら文章を自分のものにしていくさまがほんわかとして楽しいです。文章を書くのが好きな人も嫌いな人も、すいすいと読める文章読本です。


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