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ケロちゃんさんの読書ノート

2007年度読んだ本
2007年4月から2008年3月まで読んだ本。
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 24

夜の公園

著者 : 川上 弘美

出版社:中央公論新社

発売日:2006-04-22

評価 :

完了日 : 2008年03月31日

「好きだけど嫌い」「嫌いだけど、やっぱり好き」な相反する思いを持った、30代半ばのリリと春名の濃い友情物語。

リリは幸夫と結婚して専業主婦になり、春名は私立女子高校の有能な英語教師で独身。

リリは夫の幸夫が疎ましくなっていて、年下の恋人暁と逢瀬を重ねている。リリは、親友の春名が幸夫を好きであることに気付いていて、自分から幸夫を奪えばいい、と思っている。

リリ、春名、幸夫、暁、と主たる話し手が交替しながら物語は進むが、リリの春名を描写するところが怖い。
「なのに、春名は。」
と何回も繰り返す。「なのに、春名はなんだっていうの?」と気になっているところに、春名の凪のような目つきを述べている。ここも怖い。
「べったりとした、湿気の多い午後。風の死んだような海岸。そこにじっとうずくまる、春名。」
その海岸とはリリと幸夫の結婚生活のことなのか。

一方、春名は、リリから幸夫を紹介されたときから好きで、そのときからずっと肉体関係を持っている。その一方で、ほかの3人の男とも付き合っている。

この一見、表面張力を保っていたかに見えた微妙な二人の力関係が、リリと暁の逢引の場所に、春名と幸夫が居合わせたことで、内面から崩れていく。

後半に春名の目を通して描写される、高校生の女の子二人が、リリと春名の関係を物語っているのだろうか。沙耶は学校に出てこられず、えりなは心配しているが、そのえりなを、沙耶は疎ましく思っている。春名は、えりながリリに似ていると思うのだ。

春名が、女子高生を水の張った革袋のようであると描写してから、自らを省みるところが、いい。
「どんなに強く押したり引いたりしても、革袋には大きな疵をつけることができない」
と言ったあとで、
「あたしの革袋はなんて薄くて、脆弱で、くたびれているんだろう。いくら水を満たしても、無数にできている細かな孔から、いつの間にか水は漏れ出て、すぐにしぼんでしまう」
不倫の恋を、リリとの関係からではなく、個人の恋情から来ていると思い込んでいるから、すぐ気持ちが萎えてしまうのか。

悲しみや憎しみ、だれかを自分ひとりのものにしたい、と強く思う気持ち、そんなすべてが、心に現れては消えていくさまを、ぼんやり、というか、どんよりとした筆致でゆっくり書いている。

川上弘美の作品は、夢の中の情景のように色が満ちていて、輪郭がぼんやりとしている。情念と言うか、おどろおどろしさに満ちてもいて、見たくないのにじっと見ていたいような、不思議な感覚を呼び起こす。

川上弘美と江国香織の作風が似ている、という人もいるが、江国作品はもう少し現実味を帯びているのに対し、川上作品はとらえどころのない、夢の中の世界や、寝入る前に次々浮かんでくるとりとめもない思いのような不安定さや妖しさがある。

夜の公園とは、なんのメタファーなのだろう。満たされている人は、真夜中に公園を歩くだろうか。与えられた幸せや、現状に満足できないときに、読み返してみたい秀作。

「真鶴」ほどの、圧倒的な威圧感はないので、星4つ。


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 2

字幕の中に人生 (白水Uブックス―エッセイの小径)

著者 : 戸田 奈津子

出版社:白水社

発売日:1997-06

評価 :

完了日 : 2008年03月28日

映画字幕の大御所である戸田奈津子さんから、英語の力をつけたい人、翻訳の道に進みたい人へ、心温かいアドバイスに満ちた贈り物。

英語の力をつけたい人には
「文章を書いてごらんなさい」
翻訳の道に進みたい人には
「『外国語に自信がある』だけでは足りない。日本語の力が問われる」
字幕翻訳者を目指す人には
「映画のジャンルは多種多様。この世の森羅万象を一人で相手にすることになる。旺盛な好奇心を持ちつづけたい。『この仕事、知っていてソンをすることはない』」

外国映画に字幕をつけ出した黎明期の話が面白い。
一般の日本人として、新橋の芸者さんを集めてリサーチ。その後、縦一行十文字、となったという。

あの独特の字幕の字体も、半世紀以上をかけて改良に改良を重ねて、読みやすい現在の形になったことや、あの字幕の字体を書く人も、十数人しかいないことも初めて知った。

よく知られている話だが、戸田奈津子さんをはじめ、字幕翻訳をされる方々は、翻訳する映画を計3回見ただけであるということだ。最初に見て、全体のイメージをつかみ、台本にスラッシュを入れながら字幕の区切りをつける「箱書き」と呼ばれる作業を行う。一週間かけて翻訳し、二度目に見て、画面の細かい動きやディテールを合わせて翻訳のチェックをし、三度目は完成版を作るための最終チェックを行う。最初に一度観ただけで翻訳に取り掛かる、という神業を成し遂げているからこそ、年間の字幕翻訳映画が数十本という数がこなせるのかもしれない。

なるほどな、と思った例をひとつ。
"Good night, Manhattan! Say good night, Jack."
"Good night, Jack!"
「おやすみ、マンハッタン!ジャック、おやすみと言えよ。」
「ジャック、おやすみ!」
(『フィッシャー・キング』1991年)
ネイティブはここでクスリと笑う。「おやすみ」とだけ言えばいいものを、ジャック本人は、「ジャック、おやすみ!」と復唱しているからである。

ユーモアを交えたセリフを翻訳する際、日本で通用するジョークを転用して使用した例をあげて、数年後にはこの翻訳はまったくわからなくなってしまうだろうということを述べている。

「言葉は生きものである。『旬』に食べなければ、味が変わってしまうのだ」

の言葉に、視界に入っては消え、入っては消えする字幕、あくまでも本編の映画をより面白く見るための存在である字幕に一生を捧げる戸田氏の意気込みを感じる。


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 3

謎とき村上春樹 (光文社新書)

著者 : 石原 千秋

出版社:光文社

発売日:2007-12-13

評価 :

完了日 : 2008年03月27日

早稲田大学教授による、村上文学の謎とき本。
取り上げられている作品は、
『風の歌を聴け』
『1973年のピンボール』
『羊をめぐる冒険』
の鼠三部作と
『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』
『ノルウェイの森』
の計5作品。

妙に力強くて強引な説得力で、ぐいぐいと読ませる。

出色なのは、
「村上春樹はいつ終わるともしれない一つの「大きな物語」を書き続けているようだ。それを可能にしているのは、村上春樹の自己神話化である。村上春樹は自己のかつての小説を神話のように働かせて、新しい物語を書いていく作家なのである。」
と述べている点であろう。

そういえば、村上文学は、どこか別の村上作品で見かけたような風景・人物に出くわすことが多い。
『海辺のカフカ』の田辺カフカ君のことも、
「おまえ、中学生になってるけど、ワタナベトオルだな」と突っ込みながら読んだし、『ねじまき鳥クロニクル』で、野球のバットを持ち込んでもぐりこむ井戸だって、『ノルウェイの森』で直子が恐れる、あの井戸を連想させる。

『謎とき カラマーゾフ兄弟』が、キリスト教的社会という枠組みで、作品の謎ときをしたことを例にあげ、村上作品をホモソーシャル=男性中心的社会、という枠組みで読んでいる。ここに、まずびっくり。

著者によると、ホモソーシャル社会では
「女性は男同士の絆を強めるためにやりとりされる、いわば『貨幣』のような存在になる」
らしい。

『ノルウェイの森』を
ワタナベトオルのもとに「誤配」された直子を、
自殺したキズキのもとへ、直子を自殺させるという形で届ける物語、と明言しているのにも痺れた。

「そんな読み方もあるんだなぁ。ちょっと無理やりな気もするけど、面白いなあ。」と変に納得させる一方で、
「なにもそんなに厳密にならなくても…」と思わせる強引さもある。
たとえば、『風の歌を聴け』では、物語の初めから終わりまでの時間軸を作っているが、どうも1週間つじつまの合わない時間があるらしい。そこに、この作品のほころびがある、と指摘している。
また、『羊をめぐる冒険』では、誰とでも寝る女の子が、「25歳まで生きて死ぬの」と言っていたにもかかわらず、実際は26歳で死んでいるが、この余剰分の1年は、「僕」をつきあっていた1年を指し,それだけ、「僕」というのはその女の子にとって特別な存在であったことを意味するらしい。

小説の中の瑣末なできごとや、つじつまの合わないことに一生懸命取り組むあたり、キリスト教の一派で、原理主義者の人たちが、すべての動植物を積み込むのに十分な「ノアの方舟」の大きさを求めた、というのに通じるものを感じる。

とは言え、昔よんで、面白かった村上春樹の作品を、もう一度手にとって読みたいと思わせる魅力は十分ある。
ぜひ、次回作も同様のアプローチで書いて欲しい。そして、わたしにとって、謎だらけの「海辺のカフカ」や「ねじまき鳥クロニクル」あたりを謎ときしてもらいたいものだ。


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2.ケロちゃん (2008/04/08)
「たなぞう」で、はじめてコメントをいただきました。
うれしいです。どうもありがとうございます!
本当に、石原千秋さんのこの本を読んでいると、村上春樹の作品のいろいろな場面を思い出して、楽しかったです。よろしかったら、読んでみてくださいね。
3.猫野正 (2008/04/14)
購入して、読んでみました。いやぁ。実に刺激的です。ここに書いてある方法論、他の本でも自分で試してみたくなりますね。重ね重ね紹介ありがとうございます。

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 73

町長選挙

著者 : 奥田 英朗

出版社:文藝春秋

発売日:2006-04

評価 :

完了日 : 2008年03月26日

伊良部先生が戻ってきた!

第三作目は、ナベツネ、ホリエモン、黒木瞳をモデルにしたと思われる三作と、選挙戦に揺れる離島で孤軍奮闘する都会からきた青年公務員の姿を描いた表題作からなる。

今回は、看護師のマユミちゃんの関わりが多くなり、伊良部先生のハチャメチャぶりがトーンダウンしたようだ。一作目のように夜中のプールに忍び込んだり、二作目で標識にイタズラをしかけたり、居眠りしている老人のカツラを取ったりするような、突拍子もないことはあまりなくなった。

今回は、ナベツネらしき「ナベマン」をコンバーチブルに乗せて首都高速をかっ飛ばすとか、
ホリエモンらしき「アンポンマン」と系列の幼稚園を訪ねてかるた取りで大人げなく振る舞うとか、
黒木瞳らしき「白木カオル」が川島なお美らしきライバルと火花を散らす中、パーティーのご馳走をたらふく食べてぶっ倒れるなんてことしかしていない。
離島の町長選挙では、対立する両方の陣営からリベートを受け取って、両方の選挙応援に駆けつけるくらいだ。

あれ?けっこう伊良部先生、今作もハチャメチャだ。シリーズで読んでいるわたしの期待度が高まりすぎただけか。

患者となる有名人たちの症状がふるっている。

「ナベマン」はフラッシュが怖くて、騎馬を組んでもらってその上に乗らないと記者がたむろする玄関前を突破できない。

「アンポンマン」はすっかりひらがなが書けなくなって、「騒ぎ過ぎ」を「騒GI杉」なんて書いてる。

「白木カオル」は、自然体でいるのがウリなもんだから、みんなの前で「高カロリーなものを年齢もスタイルも気にせずにパクつく自然体なわたし」を演じてしまう。そのくせ、脂肪が体につくのが怖くて怖くて、その場でカロリー消費しようとやっきになる。

みんながみんな、多かれ少なかれ、ヘンなところはあるし、そのヘンさ加減を自覚している。わたしだって、戸締りをしっかりしたはずなのに、遅刻しかけているのに、通勤途中から戻ってドアやガスの元栓を確認してしまう。

今作のマユミちゃんみたいに、無愛想だけど、面倒見がよくて、あったかいところのある人と、組んで仕事がしてみたい。そして、ちょっと行き過ぎたときに、金ダライで後頭部をガツン、とやってもらいたい。

そして、ちょっとヘンだな、と自覚したとき、伊良部先生のところでコーヒーを飲んで、しゃべって、チクリと注射を受けてみたいものだ。


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 1

日本のファッション 明治・大正・昭和・平成

著者 : 城一夫

出版社:青幻舎

発売日:2007-09-20

評価 :

完了日 : 2008年03月25日

文明開化はなやかなりしころの明治時代から、2000年代に入ってからの日本のファッションを総まくりで楽しめる一冊。

とにかくイラストが豊富で、イラストが美しく、ファッション雑誌を眺めているよう。

明治時代から見て、平成の世の中まで続く日本人のファッションセンスの変化を楽しむもよし、現代から見ていって、明治時代の和洋折衷の妙に感じ入るのもよし。

本書のタイトルでは、「明治・大正・昭和・平成」となっているが、実際には、「1899年まで」「1990’s」「1910’s」と10年刻みで2000年代まで見られるので、自分の子供時代や学生時代の流行を思い起こしながら見られる。

個人的には、太陽族やみゆき族に特徴的だったスタイルを、プロポーション抜群のモデルが着こなしているのが美しくて気に入った。1960年代から70年代の現代にも通用する色使いやカッティングもかっこいい。
当時のテレビ映像や映画などで見る実際の70年代の若者は、服装や目指す方向はわかるのだが、いかんせん体型が現代のようにひょろりとして手足が長いわけではないから、寸足らずの印象だった。本書に描かれたスタイル抜群のアーミールックは本当にかっこいい。いつの時代も、若い人たちはセンスがよくて、流行に敏感で、素敵なものを身に着けているな、としみじみ思う。

パラパラとめくるだけで、幼いころにテレビでお兄さんやお姉さんがしていた格好を懐かしく思い出す。現代のファッションでは、白いワンピースにボレロを羽織ったフェミニンなエビちゃん系スタイルや、プレミアムジーンズと呼ばれる、2万円から3万円するインポートジーンズをはきこなすセレブ系カジュアルファッションも紹介されている。その一方で、着ぐるみをきた「着ぐるみんギャル」やロリータルックも登場するので、飽きさせない。

本書の後半は、日本の流行色や、年代ごとのファッション解説が詳しく載っている。「モボ」や「モガ」の説明から始まり、80年代の「カラス族」やボディコンファッション、90年代のヤマンバやコスプレ、現代になってからの「エロかわいい」や、「ちょいワルオヤジ」への流れなどが網羅されている。

職場や家庭で、年代の異なる人同士でこの本をサカナにおしゃべりしたら、きっと盛り上がるだろう。

島田紳助だか誰かが言っていたが、日本のいわゆるおばちゃんファッションというのは、彼女たちが若かりしころ、流行っていたスタイルを、いまだに引きずっているのを揶揄しているらしい。

肩まで届かない長さの髪にふんわりとパーマをあてて、ふくらはぎまでのプリーツスカートに、丸首のニットやカーディガンを合わせるスタイルは、ダウンタウンがコントでしていた「おかん」の扮装や、マンガ『ちびまる子ちゃん」のお母さんの服装に見受けられる。この、いわゆるおばちゃん風ファッションは、彼女たちが若いころ、流行っていてかっこよかったものなのだ。

となると、重ね着命!なレイヤードスタイルとか、美脚パンツとか、セレブ風カジュアルとか、エビちゃん系のかわいらしいスタイルは、みんながこのまま気に入って着続けていたら、30年後には立派なおばちゃんルックとして認知されることだろう。

くるくるとめまぐるしく変化する時代の流行に敏感でいるのは、なかなか大変だ。その流行の中から、今の自分にピッタリ似合うものを取捨選択するのは、もっと大変だ。ならば、おばちゃん上等!ファッションに敏感で多感だったころに似合った服装をずっと守り続けるのも、一つのファッションだ。


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 1

箱庭センチメンタル

著者 : 小林 キユウ

出版社:リトルモア

発売日:2002-01

評価 :

完了日 : 2008年03月17日

もと新聞記者で、現在フリーの写真家であり物書きである著者が、世間を震撼させた事件の現場を歩くルポルタージュ。

取り上げている事件は、音羽幼児殺害事件、新潟少女監禁事件、武富士放火事件、世田谷一家殺害事件、佐賀バスジャック事件など、犯行に至った経緯になぞが多い事件だ。

それぞれの事件の概要を説明した後、現場を歩いて、犯行現場や犯人がたどったであろう道を実際に歩いて写真におさめている。

怖い。気味が悪い。犯行現場は光の当たる戸外であったり、花が咲いていたり、現場近くに住む子どもが、事件をまったく怖がっていたりしないところがしっくりこない。著者も同感らしく、事件の凶暴性と、その後の現場のアンバランスさを書いている。


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 3

物は言いよう

著者 : 斎藤 美奈子

出版社:平凡社

発売日:2004-11-10

評価 :

完了日 : 2008年03月17日

女性を貶める発言をFC(フェミ・コード)とし、それに抵触するかどうかを★3段階で紹介。現首相の福田さんの「黒ヒョウ発言」も、石原都知事の「ババァ発言」もメッタ斬りで、読んでいると「そうそう!」と膝を打つことしきり。

テレビや新聞で見聞きして、なんだか後味悪かったあの発言もこの発言も、気味の悪さをわかりやすく、しっかりと伝えてくれるところがよい。

とはいえ、政治家の発言から、横山ノック裁判、ジェンダーフリー教育まで多岐にわたる事例のオンパレードで、一気に読むと疲れが出てくる。

職場や家庭で、FCにひっかかる発言がなされたときに、すぐ対処できるように、イメージトレーニング用に読むのがいいかも。


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 3

犬が星見た―ロシア旅行 (中公文庫)

著者 : 武田 百合子

出版社:中央公論新社

発売日:1982-01

評価 :

完了日 : 2008年03月12日

著者の武田百合子が、作家でもある夫と、夫の友人の竹内好氏とともに、ソビエト各地を回るツアーに参加した際の旅日記。

横浜港から船(!)でハバロフスクへ行く。そこからシベリア鉄道に乗って、ソビエト極東の町へ行き、数日滞在して、今度は飛行機に乗って各地を転々としたあと、モスクワにてツアーの仲間たちと別れ、武田夫妻と竹内氏でもってストックホルムへ行くまでをまとめている。

昭和44年というのが、いい。ストックホルムのポルノショップで、ポルノ雑誌を買い込んで、どうやって持ち帰るか悩んでいる。「羽田の検閲で没収されたらかなわないから、フィルムに撮って、雑誌は置いていこうかな」と言う男性陣に、著者は「いくらしたの?15ドル?そんなにしたんだったら、わたしがトランクに入れてもって帰ります」なんて言っている。15ドルが大金だった時代、洋物のポルノ雑誌が宝物だったころ、古きよき時代を思わせる旅の様子に微笑んでしまう。

ツアーの仲間で、著者にとっては旅のマスコット的存在だった銭高老人も光っている。「ロッシャはえらい国じゃ。わしゃ、前から知っとった。」と繰り返すのがたまらない。

ハバロフスクや、中央アジアを回っているころは、感動が大きくて、不便なことにもいちいち喜んでいるが、便利で近代的なはずのストックホルムに着くと、ロシアの不便さがなつかしくなるところも面白い。

あとがきの一言もいい。
「わたしはどこで途中下車したのだろう?」

今でも旅をしているであろう、夫の武田氏や、竹内氏、銭高老人へのレクイエムでもあろう。


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 6

蛇を踏む (文春文庫)

著者 : 川上 弘美

出版社:文藝春秋

発売日:1999-08

評価 :

完了日 : 2008年03月12日

ものすごい本を読んでしまった・・・

蛇を踏んだら、人間になってしまって家に居着いてしまう。しまいには蛇と取っ組み合いになって、部屋ごと流されたまま、物語が唐突に終わってしまう。(蛇を踏む)

兄が妻を迎えるが、その人は日に日に縮んでいき、兄もいなくなってしまう。その一家は吊り床で眠り、ゴシキと呼ばれる壷を崇めている。(消える)

短編を重ねながら、黄昏から夜更けまでの「ぼく」と少女の出会いと別れを描く。(惜夜記)

このなかで、「惜夜記」がいちばん訳が分からない。赤い細かいキノコ状のものが全身にびっしり生えるあたりで、途中で体中に総毛立ち、本を投げ出した。

「蛇を踏む」は妙に強力な磁場を持っていて、行きたくないのに、覗き込みたくないのに、変な場所に自分から入り込んでしまって、見なくてもすんだものをうっかり見てしまって、一生薄気味悪さに付きまとわれるような、不思議な読後感を残す。

きっと、狂うときはこんな感じで、思考がぐるぐるめぐって、狂うのだろう。

怖い。なのに後を引く。川上弘美は不思議な作家だ。


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 108

鹿男あをによし

著者 : 万城目 学

出版社:幻冬舎

発売日:2007-04

評価 :

完了日 : 2008年03月12日

テレビ版の配役を知りつつ読んだので、映像が勝手に浮かんで動き回って、脳内DVD状態で読了。

関西圏にあまり親しみのない者には、奈良は鹿が喋って、いささか古めかしい名前の高校生の女の子がいるところだとインプットされてしまった。

中盤の剣道の試合のシーンがいい。躍動感があって、剣道に親しみのない人にも手に汗握る臨場感が伝わってくる。


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 37

ひとり日和

著者 : 青山 七恵

出版社:河出書房新社

発売日:2007-02-16

評価 :

完了日 : 2008年03月12日

本好きの知人が絶賛するので読んでみたけど、わたしにはあまりぴんと来なかった。主人公が不器用ながらも一人暮らしへとソフトランディングする様子が、風邪をひいたときのだんだん回復してくる感じに似ている。
高校を卒業して、都会へ出て一人暮らしする前に、こんな場所があったらいいな、と思う反面、間借りしている親戚の家で彼をよんでいちゃいちゃするのは難しいかな、とも思う。
つかず離れず深追いせず、淡々と暮らしている吟子さんが渋いので星3つ。


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 18

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)

著者 : 山田 真哉

出版社:光文社

発売日:2005-02-16

評価 :

完了日 : 2008年03月12日

かねてからの疑問だった「さおだけ屋」と「校外の住宅地にある高級フランス料理店」の謎が解明されてすっきり!
この本を読んでから、CMの売り文句のウラを考える癖がついてしまった。auが人気なのね。と思っていたけど、ナンバーワンとうたっているのは「お客様満足度」っていう謎の指数なんだよね。
会計マインドのない人に、社会のいろいろなカラクリを気付かせたくれた肩のこらない会計入門書。


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 9

食い逃げされてもバイトは雇うな 禁じられた数字 〈上〉

著者 : 山田 真哉

出版社:光文社

発売日:2007-04-17

評価 :

完了日 : 2008年03月12日

数字のマジックのからくりに脱帽!「タウリン1000ミリグラム」って1gだったんだよね。すっかり「タウリンたくさん入ってるんだ」と思っていました。巷でよく見かける「2.0」の謎も解けたし、ゲド戦記がすごいこともわかったし、ためになった。
でも、この本を読んで得た知識を友人に話そうとしたけど、思い出せなくなった。異業種の人の話を聞いて「ふーん、そうなんだぁ」と納得したあとで、すっかり忘れてしまった感じの、さらりと読めて毒にならない本。


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 4

お部屋も心もすっきりする 持たない暮らし

著者 : 金子 由紀子

出版社:アスペクト

発売日:2006-12-01

評価 :

完了日 : 2008年03月12日

モノがいろいろあると、それだけでイライラがつのりがち。すっきりした生活を保つためには、捨てるだけではなく、家に持ち込むもののハードルを高くすることだと教えてくれる。必要なもの、本当に欲しいものだけを家におき、いらない物は持ち込まない、溜め込まない、を習慣にするといい、とあるけど、なかなか実践できないわたし。
この本は、部屋が散らかって、「さあ、一気に片付けるか!」という気持ちにさせてくれる効果が抜群だから、よく目に付くところに置いておいて、折りに触れてパラパラめくり、片付け気分をアイドリングしておきたい。


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 2

オバサンの経済学

著者 : 中島 隆信

出版社:東洋経済新報社

発売日:2007-04

評価 :

完了日 : 2008年03月10日

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 46

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

著者 : 村上 春樹

出版社:新潮社

発売日:2005-02-28

評価 :

完了日 : 2008年03月10日

なぞが多くて何度読んでも楽しめる。
仮に催眠をとく逆トリガーが「血」であるとすると、では佐伯さんに両方の世界を行ったりきたりさせているものは何なんだろう?そして、自分の身を傷つけてまで、カフカくんを元の世界に戻したがった佐伯さんはやっぱりお母さんだったのか。

ナカタさんが眠っているとき、星野くんはカーネルサンダースに出会うけど、ナカタさんが向こうの世界に行っているときの姿がカーネルサンダースなのか?

石が動く、猫と会話する、魚が降ってくる、気づいたら血だらけになってる、いろいろ不思議なことが起こる。そのことに違和感を持たずに物語に身を任せて読み進むと、すり鉢状になったあっちの世界にわたしも行ったような気になった。

「オイディプス」とか「ファウスト」が下敷きになっているようにも思う。そして、田村カフカくんにも、ワタナベくんのような既視感があるから、村上ワールドが好きな人も安心してどっぷり浸れる。また読みたい。


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 26

無銭優雅

著者 : 山田 詠美

出版社:幻冬舎

発売日:2007-01-31

評価 :

完了日 : 2008年03月10日

慈雨と栄の恋物語。40代前半って、また思春期みたいに揺れてもがいて楽しそうだなぁ。
予備校講師で乗り物に乗れない栄とフローリストで親と同居の慈雨。中央線の沿線ではぐくまれる恋に、障害があって行き違いがあって、また会いたくなって…と恋愛小説のエキスを感じた一冊。途中で名作の引用文があるけど、先に進みたくてそこを読み飛ばしてしまった。引用を読んだらもっと味わい深いかも。


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 36

風味絶佳

著者 : 山田 詠美

出版社:文藝春秋

発売日:2005-05-15

評価 :

完了日 : 2008年03月10日

「夕餉」がよかった。エリートの夫のもとから逃げ出して、好きになった男の帰りを待ちながら、真剣に料理を作る。しかも極上の材料を使いながら。料理が好きな人が読んだら、手順も味も想像できておなかがすくことうけあい。


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 14

号泣する準備はできていた

著者 : 江國 香織

出版社:新潮社

発売日:2003-11-19

評価 :

完了日 : 2008年03月10日

あ~、こういうのってあるある、って思ってしまう話が多い。親しくなった女友達からちょっと打ち明け話をされたような感じの読了感。
「こまつま」のしっかりした専業主婦が、デパートに出かけて、昔の彼がどこかで見ているかもって思って背筋を正して歩いたり、離婚を控えた夫婦がそれを隠して夫の実家に夕食を食べに集まったときの、「やっぱりこの家族は好きになれないなぁ。この好きになれない気持ちを理解してくれない夫とも続けていけないなあ」と思う感覚とか、きれいな日本語で、会話文にも違和感がなくてさらりと読める。読んだあと、すこしざらりとする感じがよかった。


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 5

ツレがうつになりまして。

著者 : 細川 貂々

出版社:幻冬舎

発売日:2006-03

評価 :

完了日 : 2008年03月10日

ツレさんがうつになり、苦しみ、治っていく過程を奥さんのテンテンさんの視点から書いた本。イラスト満載で読みやすい。うつって誰にも起こることをいまさらながらに思う。
ツレさんが死のうかと思っているとき、駅のホームで知り合いに声をかけられて踏みとどまった一節を読んでゾーッとした。これまで知り合いにあってもあんまり積極的に声をかけなかったけど、これからはバンバン声をかけよう。


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