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熊猫公司さんの読書ノート

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 19

本泥棒

著者 : マークース ズーサック

出版社:早川書房

発売日:2007-07

評価 :

完了日 : 2008年10月06日

戦時下のドイツで、養い親の元で暮らす少女が言葉を拠所に自分の世界を変えていく話。
語り手は死神なのだけれど、怖さとか不気味さとかは無縁で、それどころか読み手にショックを与えないように物語の先を提示してくれる親切ぶり。
しかし、さすがに本職の部分ではきちんとしている。
少女の周囲にいる人たちの描写も丁寧で、まるで通りの向こうの出来事のように感じられた。
呼んでいくうちに物凄く感情移入してしまったらしく、最終章である第10部では胸に詰まるものがあった。

戦争とかホロコーストとかについてはあえて云々するつもりはないのだけれど、一人の少女が言葉を得ることにより成長していく姿は、活字好きの心を揺さぶる。
以前観た「赤脚小子」という映画が自分の名前を書くこともできないほど「言葉」を持たない青年が、それ故に他人に利用されて、ついには破滅へ生道を歩かされるという内容だったのだけど、ある意味それと裏表の話じゃないかと読みながらしきりに思えた。
言葉を得ることで、自分を得、世界を得、未来を得る。人は考えるにも言葉を必要とするのだし。
作中に挿入されている「ワード・シェイカー」はとても象徴的だ。

そう思うと作中で少女が書いた自叙伝「本泥棒」の最後の一説がとても重く感じられる。

【わたしは言葉を憎み、言葉を愛してきた。
その言葉を正しく使えているといいのだけれど。】

こうやって感想を書いている自分も自戒しなければ。


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 2

九マイルは遠すぎる (ハヤカワ・ミステリ文庫 19-2)

著者 : ハリイ・ケメルマン

出版社:早川書房

発売日:1976-07

評価 :

完了日 : 2008年06月21日

たった10語から導き出される意外な結末…。
とか、紹介なんていらないくらい有名な1冊。
安楽椅子探偵の代表作。
何度目かの再読だけど、いつ読んでも面白い。
ネタバレとか関係なく、推理の過程を追っていくのが楽しくって。
きっとまた読むと思う。
手元から離せない1冊。


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 7

うろんな客

著者 : エドワード ゴーリー

出版社:河出書房新社

発売日:2000-11

評価 :

完了日 : 2008年05月16日

イラストも、原文も、訳文もすべてよかった。
タイトルからして秀逸。
ゴーリーを知らずとも思わず手に取ってしまうよ。大体「うろん」だよ、「うろん」。
こんな言葉日常では使わないって。名野に人を惹きつけて止まない字面と響き。たまらん。
韻を踏んだ原文もよかったけれど、日本人なら短歌風の訳文に痺れるだろう。
あのイラストに、この形の訳文をつけた翻訳者のセンスはすごい!
是非一読して。うろんな客の正体を市って欲しい。

あ、これ以上感想を書くと、本文の文字数を上回りそうだ。


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 3

ヒューマン・ファクター―グレアム・グリーン・セレクション (ハヤカワepi文庫)

著者 : グレアム グリーン

出版社:早川書房

発売日:2006-10

評価 :

完了日 : 2008年04月09日

イギリス情報部を舞台に二重スパイを機密漏洩の事実ごと闇に葬ろうとする上層部と、嫌疑をかけられた男たちの姿を描くスパイ小説の古典的名作。
何故今(といっても出版されたのは06年だけど)この本の新訳なのか?
スパイ小説とはいえ、銃撃シーンも敵の本部への侵入も秘密兵器も謎の暗号も出てこない。暴力シーンは極限まで削られている。ただスパイが主人公なだけ。
地味な人間ドラマがただ重厚に語られるのみだ。
そしてそれがスパイ悲哀、孤独などを鮮やかに描き出している。
二重スパイが何故そうなったのか、ところどころにキーワードが挿入されており、あとになってそのことが持つ重さを感じられるようになっている構成は見事。
そして改めてキーワードが出てきた冒頭へとページを戻し、とくと考え込んでてしまう。
人にとって故国とは、家族とは、世界とは何であるのか?

物語はラストに向け盛り上がり、【めでたしめでたし。】の後日談を伴って幕を下ろす。
あまりにも大きい「故国」を裏切った代償が余韻をもって描かれる。
それはやるせない未来を予感させる。
最後の1文はただただ切なく、読み手の心に染み込んでくる。
非常に上質な小説を堪能した。


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 21

クリスマス・プレゼント (文春文庫)

著者 : ジェフリー ディーヴァー

出版社:文藝春秋

発売日:2005-12

評価 :

完了日 : 2007年03月08日

面白かった!
16編すべてにどんでん返しが用意されていて、それが期待を裏切らないひっくり返し方で、読む毎に作中に引きずり込まれていった。
途中からちょっと悔しくなって自分でも捻ったオチを予想してみたりしたのだけれど、そんなものは当たり前だけどディーヴァーの発想には全く敵わなかったよ。
16作すべてがきちんと高水準を保っているのもものすごいことだと思う。
なにせ600ページ近いボリュームが物足りなく感じたくらい。
この手の短編集にはえてしてページ埋めとか枯れ木も山の賑わい的な作品が入りがちなんだけど、この短編集においてはどれも甲乙つけがたい出来だった。
その中でも自分のお気に入りを上げるとしたら、「ジョナサンがいない」と「ノクターン」。
前者は畳み掛けるような展開で、読み始めたばかりのこちらをぐっと作品にのめりこませてくれた。
後者は背筋が寒くなるような返し方の多い作品の中で、ハートフルで息抜きのような作品だった。
この先ディーヴァーは長編を主に書いていくのだろうけど、3年、いや5年に一度でいいのでこういう短編集を出してくれることを切に切に願う。

それにしても至福の1冊だった。


この感想へのコメント

1.anokeno (2007/04/05)
至福
いいですね
読みたいと思います
有難うございました
2.熊猫公司 (2007/04/07)
是非読んでみてください。
宝箱とか、お子様ランチみたいな短編集です。
 

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 7

砂漠で溺れるわけにはいかない (創元推理文庫)

著者 : ドン ウィンズロウ

出版社:東京創元社

発売日:2006-08

評価 :

完了日 :

ニール・ケアリーものの最終巻。後日談的要素が強いという話通り、事件はそれほど大仰ではなく、ページも少ない。
が、やはりこのシリーズということで、簡単な送迎依頼のはずが送り届けられる側の老人は逃げるし、ニールは命を狙われるし…で、とても一筋縄では終わらない。
しかし語り口に軽快さが溢れ、ニールの相変わらずの減らず口を黙らせてしまうほど強烈な個性を持った登場人物がいるおかげで、大笑いをしているうちに一気に読み終えてしまった。
勿体無い!
全体的な印象はシリーズ1作目に戻ったように思えた。軽くて、はちゃめちゃで、ちょっと切なくて。
前作が期待していたほど面白くなかったので、こんなに早いリリースにそのレベルを心配していたけれど、シリーズの最終巻に相応しいものだったと思う。
最後に、訳者の東江氏の後書には、申し訳なくも大爆笑してしまった。そうそう。待ってますからね、フロスト。
もちろん、ニール・ケアリーの新シリーズもね。


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